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はまふぅど人29号

最終更新日 2018年9月10日

田奈恵みの里加工班
顧問 益田清子(ますだきよこ)さん

益田さん写真

農家の生活や取組みに寄り添う毎日女性たちの情熱にエールを

田奈恵みの里にある農産物直売所「四季菜館」。人気のお総菜やお菓子は、農家の女性たちが集まった加工班が地場の新鮮な農産物で手作りしています。かつては県の生活改良普及員として、現在は加工班の顧問として、農家の女性たちをサポートし続ける益田さんに、その取組みと今後の展開についてお話を伺いました。

農家に向き合いながら女性パワーで農村・農業に活気を

益田さんが平成20年まで、37年間勤めた生活改良普及員は、農業者の健康管理や生活改善を支援する県の職員。農業者の衣、食、住、家族関係など、さまざまな問題点をピックアップし、解決に向けて働きかけをしました。

益田さん写真2
農業については無知のまま
生活改良普及員になったという益田さん

新人時代は、農家に嫁いだ若い女性たちを誘って講座を開催しました。子どものためのおやつを作ったり、子育ての講義をしたり。それまで農業と縁のなかった女性たちが孤立しないよう、同じような環境の人たちが集まって助け合える仲間をつくることが狙いでした。1年のカリキュラムが終わると、その後も定期的に活動していこうと、受講者たちによる若い組織が誕生しました。

また、昭和50年代は専業農家への支援が多く、益田さんは農作業環境の改善に取り組みました。当時のイチゴ農家では、収穫のときにイチゴの入った重い木箱を持って、何度も畝間を行ったり来たりしなければならず、腰痛に悩まされる人が多くいました。その姿を見た益田さんは、作業環境を改善しようと民間の会社と農家と共に畝間をまたいで箱を置ける作業車を検討・導入しました。「農家の女性たちは家事をしながら、農業経営にも男性と同じように参加していました。よく働きましたね。体を壊さないでほしいとの一心で、私も一生懸命でした」。

そして、昭和57年に横浜市へ。ちょうど現在の青葉区に「寺家ふるさと村」が整備されているときでした。市の職員と共に、施設内に農産加工室を整備するために一緒に取り組みました。「看板商品を何にしようかとみんなで考えて、田んぼの風景は寺家の一つの財産だし、米と大豆もたくさん採れていたので、米こうじを使った味噌に加工できるようにしようと」。味噌加工のための器具や機械を入れ、それに合わせて調理機能を加えた農産加工室を完成させるなど、市との連携で活動しました。そのときに始まった味噌作りの講習会は、今でも寺家の人気プログラムの一つとして続いています。

都筑区の大熊町では直売がめずらしい時代に直売所の立ち上げをサポートしたこともありました。「農家なのに野菜を買っているから、畑で自給用の野菜を作ろうと」。共同で種を買って、アスパラやバイアム(ジャワホウレンソウ)、オカヒジキ、落花生などを育てました。そのうち、たくさん採れた野菜を地域の人にもおすそ分けしようということになり、昭和59年に直売所がスタート。「屋根がないから、雨が降ると閉店。それで市の援助でテントを買ってもらったんです。そんな草の根の活動をやっていた時代があったんですね」。この直売所は、「大熊にこにこ市」として、野菜はもちろん、漬物やジャムなどの加工品の販売、オリジナル買い物バッグの開発、海外からのファームステイの受け入れなど、女性たちのアイデアが満載の活動に発展しています。

農協の新プロジェクト素朴で健康によい農家の食卓を再現

各地で農家の女性たちの取組みを支援してきた益田さん。現在は、田奈恵みの里加工班の顧問として加工活動を応援しています。田奈地区初の農産物直売所「四季菜館」がオープンしたのは昨年5月。加工班はここで販売する味噌やお総菜、お菓子などを製造しています。メンバーは農家の女性たちで、50~60代を中心に26人。料理や加工についてはベテランでも販売は初めてで、手探り状態のスタートでした。

まず、益田さんはそれまでの問題点をチェックしていきました。例えば、同じレシピでも作り手によって味にばらつきがあります。そこで野菜の切り方や大きさ、火加減や調理時間などをそろえて、味が均一になるようにしました。また、毎日通ってくれるお客さんに目を向け、多品目に。消費期限の長い商品を少量ずつ作って、売れ残りを抑える工夫も。

そうして棚に並んだのは、地元で採れた新鮮な農産物を使った品々です。田奈の米から作った米粉の蒸しケーキやクッキー、田奈産の野菜が入った白あえ、ポテトサラダ、炊き込みおこわなど。「昔から農家の食卓で食べていたような、シンプルでナチュラル、添加物を使わない体によいもの。お客さんを家族だと思って、丁寧に作っています」。切り干し大根の煮物や他のお総菜は伝統を生かし、メンバーと相談しながら、薄めの味付けを心がけ製造しています。

加工班の取組みは、メンバーの生きがいにもつながっているとか。個人で加工品を販売しようとすると、さまざまな届け出や手続きが必要で、料理や加工の腕に自信があっても思いとどまる人が少なくありません。この加工班はそんな女性たちの技術を生かす場でもあります。「もちろん売り上げを上げるのは目標ですが、お金もうけだけが目的ではありません。女性にはお金だけではない価値観があって、潜在的に喜びを感じる能力を持っている。だからやるんです。メンバーは自分の作った料理や加工品がお客さんに喜んでもらえて、うれしいんです」。

田奈野菜の魅力をアピールしてお客さんと共に成長する直売所へ

今後の加工班の展望を伺うと、「田奈はいろんな野菜が採れ、都会の中に水田が残っています。今後は、米や一つひとつの野菜にもっとクローズアップして、地場産の魅力をアピールしていきたい」と益田さん。「例えば田奈産の根菜類は定評がありますので、ニンジンを使ったお総菜やお菓子を商品化して生産者情報なども一緒に紹介できたら良いですね。ラベルに“田奈産”と書いて売るだけではなく、ストーリー性のある売り場にしたいんです」。

また、加工班の取組みが製造だけで終わることなく、お客さんとの交流の場づくりが必要です。「やはり直売所は、作る人とお客さんの両方がいないと成功しない。お客さんと共に農業の大切さを考え合いながら一緒に盛り上げていかないと」。

益田さんは、今後、加工の取組みの中にさまざまなアイデアを自ら出せる女性が加工班の中から出てくればと期待を寄せています。「お客さんにメッセージを送るのは、農政関係者のようなアドバイザーの仕事かもしれません。でも、旬を大事にする、食物を大事に最後まで食べつくすなど、日本の農村が昔から大切にしてきた食生活については、実際に作っている人の言葉が一番説得力がありますからね」。

「四季菜館」はもうすぐ1周年。記念イベントも開催予定です。5月末には端境期が終わり、さまざまな野菜が登場するので、加工班の商品もお楽しみに。

このページへのお問合せ

環境創造局農政部農業振興課

電話:045-671-2637

電話:045-671-2637

ファクス:045-664-4425

メールアドレス:ks-nogyoshinko@city.yokohama.jp

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