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はまふぅど人14号

最終更新日 2019年3月19日

はまふぅどナビ14号(2009年9月29日発行)

「横浜野菜のおいしさを伝えたい」ホテルならではの地産地消のカタチ

高橋明さん(横浜ロイヤルパークホテル総料理長)

日本一の高さを誇る「横浜ランドマークタワー」の高層階に位置する「横浜ロイヤルパークホテル」。70階のスカイラウンジ「シリウス」やメインダイニングのフレンチレストラン「ルシエール」をはじめとする館内6つのレストランと宴会料理で、新鮮な地場野菜を使用する取り組みを行っています。

横浜産野菜の旬がわかるホテル

高橋明さんの写真
横浜ロイヤルパーク総料理長の高橋明さん

「雨の影響で小松菜が収穫できなかったため、代わりにほうれん草を使っております」。横浜ロイヤルパークホテル内のレストランでは、料理を注文する際に、ウエイターからこんな言葉がかけられることがあります。4年前から横浜産の野菜を使用し、全館で地産地消に力を入れているこのホテルでは、決して珍しい光景ではありません。
地産地消を選択し、この取り組みの陣頭指揮を取っているのは、ホテルの総料理長である高橋明さん。総料理長とは、ホテルの各レストランの料理長の上に立ち、和洋中すべての料理に権限を持つ立場です。
「うちのホテルでは、ないものはないときちんとお客様に説明するよう、各レストランの料理長に指導しています。今の時期はこの食材はないので、代わりにこれをご用意しましたと説明すれば、お客様は納得してくれます。最初は勇気がいることでしたが、そこは頭を下げてきちんと伝えようとスタッフに話しました。昔は、レストランは365日同じ料理がないとダメだと教わっていましたが、今は食事情も変化し、食材の旬に応じてメニューが変わることを、お客様に理解していただけるようになりました」。
地元野菜のおいしさを多くの人に伝えたいという高橋さんの使命感が、ホテルの地産地消の取り組みの原動力になっているようです。


農家と仲介業者、料理人の信頼関係がおいしい料理を作る

高橋明さん
「横浜市の農家は本当にいろいろな種類の野菜を作っています。ローズマリーなどのハーブ類もすごく香りがいいですね」

相模湾の鮮魚や神奈川県のブランド豚やまゆりポークなど、このホテルには、地元の食材を使ったメニューが豊富です。当初、野菜は鎌倉や三浦産を使っていたそうですが、やはりホテルがある横浜産を使いたいという高橋さんのこだわりが強く、業務用野菜を専門に扱う藤代商店(本誌12号で紹介)を介して、横浜野菜を仕入れることになりました。
「藤代商店の中野さんが小机周辺のいくつかの農家に連れて行ってくれたのですが、その時に初めて市内に規模の大きな農家があることを知り、これなら横浜野菜でいけると確信しました。料理人なら誰もが市場や農家に足を運び、素材を自分の目で確かめて仕入れたいという思いは持っていますが、ホテルの場合、流通の関係でなかなかそれができません。藤代商店さんのような信頼できる納め屋さんがいてくれて、とても助かっているんです」。
現在は週に4回、1回につき6種類から7種類以上の旬野菜をおまかせでホテルに届けてもらっています。最初は品種や数量を指定していたそうですが、地産地消でやろうとすると、注文しても入らないものがあります。ならば、その時に採れる一番いい野菜を届けてもらおうと、試行錯誤の結果、今のおまかせスタイルに落ち着きました。時期によっては同じ種類の野菜が続く時もあり、5ケース全部がなすだったこともあったとか。そんな時でも大きな宴席や各レストランにまわして、さまざまな料理に使用します。こうした対応が可能なのも、大型ホテルだからこそだと言えますが、高橋さんは、使う側が固定概念をなくさないと地産地消は難しいと言います。
「天候によって、来るはずのものが来ないこともありますから、野菜が届いてからメニューを変更するなど、臨機応変に対応しています。夏には、朝採りのとうもろこしが何十本も届きますが、茹でたてをランチブッフェに出すと、メニューにないものが出て来るので、お客様も喜んでくださるんですよ」。旬野菜のサプライズメニューは、アットホームなホスピタリティとして、ゲストの印象に残るはずです。
「大きな宴席で出す料理は、3ヶ月くらい前に藤代商店さんに種類の指定と数量を相談して、農家さんのOKが出たところでメニューに載せます。横浜野菜にこだわるんだったら、それくらいのことはしなければいけないと思っています」。


地場野菜が教えてくれた料理人としての原点

風景
みなとみらいを象徴する横浜ランドマークタワー。高層階のレストランでは、絶景を眺めながら食事が楽しめる

地場野菜を使い始めてから野菜本来の味を思い出し、自然回帰していると言う高橋さん。畑から採ったばかりの野菜と、地方から数日かかって運ばれて来た野菜との違いを知るために、時折、農家を訪れて生産者から作物について教わっているそうです。
「収穫したてのレタスは、切った瞬間に切り口から真っ白な液が溢れ出します。スーパーの野菜で育っている子どもたちはそんなこと知らないですよね。料理人になって31年になりますが、自分自身、料理人になりたての頃に感じていた野菜の青臭さ、トマトの酸っぱさを、いつの間にか忘れていました。本当に鮮度のいい野菜を扱うようになってからは、調理方法にも新しい発見ができるようになったんですよ」。
たとえばズッキーニ。これまでは塩茹でしてからバターで炒めていましたが、新鮮なものは茹でずにそのままオリーブオイルで炒めると、中は芋のようにほくほくして、外側が香ばしく仕上がるそうです。
また、一般スーパーなどには流通しませんが、市内では、色や形がユニークな珍しい品種の野菜が数多く作られています。たとえば鮮やかな色が特徴のオレンジブロッコリーや、ピンクと白の渦巻き柄の断面が美しい渦巻きビーツ、生のまま食べられるコリンキーというカボチャなど。高橋さんはこれらの野菜も積極的に取り入れて、新たなメニュー作りに日々励んでいます。
「地産地消は料理の表現力をふくらませてくれるもの。この取り組みを始めてから、勉強することがたくさんあって苦労しますが、それが楽しみでもあるんです」。


横浜ならではの料理を提供するホテルに

横浜野菜のベジタブルスープ
カフェフローラでは朝食も提供。朝食メニューの「横浜野菜のベジタブルスープ」が人気

特に女性客が多い地下1階の「カフェフローラ」をはじめ、横浜ロイヤルパークホテルのレストランは、他と比べて野菜がたくさん食べられると定評がありますが、「ゆくゆくは、横浜野菜を食べにここへ来るというようになればいいですね」と高橋さん。
「和食に地元素材を使った郷土料理があるように、フレンチやイタリアンにも横浜産の素材を取り入れ、横浜フレンチや横浜イタリアンが食べられるホテルになるとうれしい。そのために、フランスやイタリアの野菜を横浜で栽培してもらえないかと思っています」。
海外から洋野菜の種を取り寄せて横浜で作れるようになったら、それこそ地産地消ですよね、と話す高橋さんは、さらに意気込みを語ります。
「みなとみらい近辺のホテルの料理長に声をかけて地元野菜を扱ってもらい、みなとみらいに来れば地元野菜が食べられるというように、横浜野菜のブランド力をもっと高めていきたいんです」。
地元のホテルで、旬の横浜野菜を使った料理を食べ比べる。近い将来、そんな新しいホテルの楽しみ方ができるようになるかもしれません。


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環境創造局農政部農業振興課

電話:045-671-2637

電話:045-671-2637

ファクス:045-664-4425

メールアドレス:ks-nogyoshinko@city.yokohama.jp

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