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はまふぅど人19号

最終更新日 2019年3月19日

社会福祉法人グリーンのみなさんと施設長の石田周一さん

集合写真
手前右が石田さん


障害者が取り組む無農薬野菜づくり自給的な暮らしを楽しむ「グリーン農園」のメンバーたち。のどかな農村風景が今も残る青葉区の「寺家ふるさと村」。その一角にある約8反の畑と約3反の田んぼからなる「グリーン農園」では、障害のある人たちが、年間約30種の野菜や米、大豆などを栽培。彼らはここでゆるやかな自給的な暮らしを楽しみ、日々汗を流しています。

無農薬野菜と米作りに取り組む障害者の農園

「グリーン」は、障害のある人々の自立を支援する障害福祉サービス事業所です。18年前に地域作業所としてスタートし、平成19年に社会福祉法人の認可を受けました。施設に通うメンバーは現在38名。自閉症やダウン症、比較的重度の知的障害のある人が多く、養護学校の高等部を卒業して入所した人たちが大半を占めています。
グリーンが実践しているのは、農業を取り入れたユニークな福祉の形です。一般に障害者の作業所は施設内での軽作業が多いのですが、ここでは、土作りから、種まきや草刈り、農作物の収穫と、メンバーが畑仕事のすべての行程に関わり、農作物の直売や加工品の販売を行っています。
障害者支援に農業を取り入れた理由を施設長の石田さんに尋ねると、「外に出て、自然の中で体を動かして働くことが癒しや鍛錬になり、豊かな暮らしができると思った」と答えてくれました。大学時代、教員を目指していた石田さんは、ボランティアとして障害児グループに関わるようになり、そのグループを引き継ぐ形でグリーンの設立にかかわったそうです。
ヒントとなったのは、栃木県足利市にある「こころみ学園」の活動でした。知的障害のある人たちが働き手となって、ブドウ栽培からワイン醸造を行っているこころみ学園は、「ココファーム&ワイナリー」として全国にその名前を知られています。カフェを併設したワイナリーは、自家製ワインを味わいにたくさんの人々が訪れる人気スポットですが、ここでは、ワイン作りと並行して、しいたけの原木栽培も行っています。
こころみ学園の活動をモデルにして、当初は山林でのしいたけ栽培からスタートしたグリーン。いろいろな試行錯誤を経て寺家ふるさと村にある畑や田んぼを借りることができ、少しずつ、今のようなスタイルに変わっていきました。
石田さん自身に農業の経験はなく、「野菜や米を作るなんて無理だろうと思っていた」そうですが、農家に指導を受け、農業大学の学生たちに参加してもらうなどしてメンバーと共に学んできたそうです。「正直言って、今のように、グリーンのメンバーだけで農作業ができるようになるとは思っていませんでした。しかし、年を重ねるごとにメンバーが成長して力を付け、いい意味で裏切られました(笑)」。

野菜を育てながら、自分も育つ

グリーンに入所した頃は落ち着きがなく、集中して物事に取り組むことが難しかった人も、仲間と一緒に畑で働くうちに体力や集中力が付き、年を重ねるごとに、それまでできなかったことができるようになる。畑を耕し、野菜や米を育てる中で、メンバーの心も大きく育ってきていることが実感できると石田さんは言います。
「『アースする』と表現することもあるのですが、青空の下で土に触れていると、放電するように気持ちがおだやかになるんです。朝、イライラした様子でやって来たメンバーの釣り上がった目が、畑仕事をしているうちに垂れてくるのはよくあることです」。青空の下で体を動かして汗を流し、自分たちで作った野菜や米を食べ、夜はぐっすりと眠る。そんな規則正しい生活も、精神の安定をもたらしているのでしょう。
しかし、メンバーの心に落ち着きを与えている一番の要因は「自分にはやるべき仕事がある」という責任感かもしれません。障害のあるなしに関わらず、人間は誰しも「自分は社会から必要とされている」と感じていたいもの。社会から必要とされている実感がなければ、誰だって気持ちがめげてしまいます。
「特に障害のある人はそういった状況に置かれがちです。できないことが多いために、「あなたは面倒を見られる側の人」という烙印を押されるケースも多々あります。社会に貢献する場があることは、人間が生きていく上でとても大切なことなのだと思います」(石田さん)。

畑の収穫物で作る手作り弁当や自家製味噌

農園で収穫した季節の野菜や果物や米、加工品などは、青葉区内にあるグリーンの施設前で直売するほか、大量に採れた野菜は地元の給食サービス会社に引き取ってもらうこともあります。グリーンには調理班がいて、収穫物で全員の昼食を作ったり、「おにぎり畑」という名称でお弁当を作る仕事もしています。天日干しのお米や野菜をたっぷり使った地産地消の手作り弁当は、近隣の専門学校などへ持って行って販売していますが、地域の方々から注文が入ることもあります。
また、畑で採れたものを加工するのも調理班の仕事。「中でも、畑の大豆で仕込む「グリーンの手前味噌」は特に人気がありますよ」と石田さん。米麹や麦麹、玄米麹と大豆、黒豆を合わせた無添加の味噌は数種類ありますが、グリーン農園の無農薬大豆を自然塩と麹だけで仕込んだ手作り味噌は香りがよく「お味噌汁にするのはもったいない」と言われる。ほかにも、小麦は業者に依頼し製粉したりうどんの乾麺にしたり、梅干しや手作りラー油、赤シソジュースなどの加工品が陳列棚に並ぶこともあります。

障害のある人もない人も。地域の人々が集うオープンな畑にしたい

グリーン農園では、味噌作りや芋ほりなどの体験の場を用意し、地域の人々と交流する機会を設けています。芋ほりには、近くの保育園や障害児者など、年間約200名の参加者がありました。こうした地域の人々と交流する機会をもっと増やし、多くの人が集まる場を作りたいと石田さんは考えています。
「障害者のためのボランティアということだけではなく、『農業を体験したいから』でもいいし、『おいしい野菜を買いたいから』でもいい。グリーンを開かれた施設にして、さまざまな人たちが集まる場所にしたい。そこからいろいろな関係性が生まれて、障害のある人たちが自然と地域に溶け込んでいけるような街づくりができたらいいと思っています」。
さらに、グリーンのメンバーが楽しみながら畑や田んぼにかかわることで、寺家ふるさと村などの里山の緑がこれからも緑であり続けるお手伝いになれば、と話す石田さん。農ある福祉を実践しているグリーンの活動は、今後、地域の街づくりや環境保全につながっていくことでしょう。
「グリーン農園」では、ボランティアを募集しています。興味のある方は下記までお問合せください。

電話:045-961-0305
メールアドレス:green@n00.itscom.net
社会福祉法人グリーン
ウェブサイト
https://www.green1993.or.jp/(外部サイト)

ブロッコリーの苗を植える
マルチを張った畑にブロッコリーの苗を植える

たい肥運び
収穫前の大豆畑を横切り、せっせと堆肥を運ぶ


田んぼ
通常より太いしっかりした稲を、2~3本ずつ田んぼに植える

調理班
お弁当作りを担当する調理班


休憩
畑仕事の合間の休憩時間

直売
直売所の代金箱は近くの美大生が作ってくれた


このページへのお問合せ

みどり環境局農政部農業振興課

電話:045-671-2637

電話:045-671-2637

ファクス:045-664-4425

メールアドレス:mk-nogyoshinko@city.yokohama.lg.jp

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