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はまふぅど人33号

最終更新日 2018年8月27日

食の大切さや喜びを発信したい
れすとらん さいとうオーナーシェフ 齊藤良治(さいとうよしはる)さん

はまふぅど人33

港北区・菊名駅のほど近くにあるカジュアルフレンチ「れすとらん さいとう」のシェフの齊藤良治さんはお店の外でも活躍中。さまざまな取組を続ける齊藤さんに、活動の様子や今後の展開についてお話を聞きました。

サラリーマンから料理人へ
きっかけはお父さんのキュウリ

元はサラリーマンだった齊藤さん。激務とストレスから体を壊した経験が、その後の人生を大きく変えました。「出版社に勤めていて、昼も夜もデスクワークしながらおにぎりをほおばるような、やっつけの食生活。体が病んでるんで、味覚もおかしくなってたんじゃないかな」と当時を振り返ります。ある日、背中のむずがゆさとだるさに危険を感じ、病院へ。肝臓と胃が悲鳴をあげていました。
しばらく治療を続けて、体調は回復。すると一気に味覚が戻ってきました。そのとき、お父さんが家庭菜園で作った、朝もぎたてのキュウリを口にします。「その味が本当に衝撃的でした。なんでこんなにおいしいのかと。食材の本質の味がキャッチできたんですよね」。この体験から、食の大切さや喜びをみんなに伝えたいと考えるように。料理人としての一歩を踏み出しました。
レストランで味わえるのは、地場の野菜をふんだんに使った創作フレンチ。日本人の口に合うように、横浜産のしょうゆや味噌、ごま油、麹なども活用します。「自然の恵みをよりおいしくして出すのが僕の役目。食材の本当のおいしさを味わってもらいたいから、なるべく余計なことはしないように意識していますね」。前菜やメインはもちろん、パンやデザートのアイスクリームに至るまで、丁寧に手作り。化学調味料や着色料、保存料などは入れません。
地場の食材をたくさん使うのは、「とにかく地産地消を進めたいからとは少し違う」と齊藤さん。古くからの“身土不二(人間の身体と土地は切り離せない)”という考え方に共感し、その土地の自然の恵みを味わって生活する、本来あるべき姿に戻っただけだと言います。「おいしいものは近くにあるんですよ。おいしいものを探していたら、結果的に地産地消になっただけ」。生産者と消費者が近くにいるのは横浜の農業の特徴。若手の生産者も多く、恵まれた場所だと言います。
それでも、横浜で農業が盛んなことを知らない人が多いのも事実。「横浜には新鮮でおいしい野菜がいっぱいありますから、もちろんその普及に努めたいし、農家さんを盛り上げたい」。おじいさんの代までは農家だった齊藤家。幼い頃、おばあさんの背中を追いかけて畑で過ごした思い出がある齊藤さんにとって、農業はごく身近な存在です。

メニュー開発の現場は畑
野菜との対話から生まれる一皿

元々付き合いのある農家からの紹介や、料理人のネットワーク、ときには飛び込みで農家を訪れることも。齊藤さんの農家との付き合いは広がっています。さらに、「農家さんに育てていただいている面もありまして」。農家から提案される素材が新メニューの開発につながることもあるからです。例えば神奈川区の生産者・平本英一さんは「大豆あげるから、何かやらない?」と。齊藤さんは“お題”をもらった気分で試行錯誤し、その大豆を豆腐に。「豆腐屋さんのようなキメ細かいのではなく、手作り感アリアリですけどね。せっかくの素材ですから」。平本さんに持っていくと、とても喜んでくれました。齊藤さんは、仕入れた野菜をどんな料理にして出しているのか、“野菜っておいしいね” というお客さんの言葉とともに農家に伝えるようにしています。「僕の周りの農家さんは、お客さんの反応をモチベーションに変えて、どんどんパワーアップしていますね」。
メニュー開発に行き詰まったときは畑や直売所を訪れます。野菜を見たり、かじったり、“対話”していると、自然とアイデアが浮かびます。「人間も野菜も生き物なので、どこか通じ合える。お客さんには野菜の生きたおいしさを味わってほしいですね」。
毎日変わる野菜のコンディションに合わせて調理すると、同じ素材で同じ料理でも、毎回違う味になるそうです。「同じ土地のキャベツでも季節の採れ始めと、終盤ではまったく味が違う。そこが野菜を扱う面白いところなんですよ」。そのときどきの野菜のおいしさを最大限に引き出して、今しか味わえない“一期一会の一皿”が生まれます。
昨年11月の地消地産月間のランチには、“たねとファーム”とのコラボレーションメニューが登場。たねとファームは、横浜の種苗会社“サカタのタネ”が開発した品種の普及を目的に、その種を野菜に育てて販売しているグループ子会社。都筑区にある同社の畑で“タイニーシュシュ”という白菜が栽培されていると知った齊藤さんがコラボレーションを提案し、実現しました。「横浜の種苗会社が開発した種で、その会社の人自身が横浜の畑で育てた野菜。それを、横浜のシェフが料理して横浜のお客さんに食べていただいたら、完璧な地産地消だなと思って」。はまぽーくとタイニーシュシュを合わせたこのメニューは大好評でした。

地産地消と子どもたちへの食育
活動フィールドはレストランの外へ

齊藤さんはレストランの外でも、横浜市主催のイベントに参加したり、中学校に講師として呼ばれて横浜の農業について話したり、さまざまな活動をしています。
また、食育を自身の活動の大きなテーマとし、夏休みに小学生親子を対象とした料理教室を開催。ここでは料理をするだけではなく、地元の生産者を招き、野菜の特徴や生産の苦労などを話してもらいます。「僕が話すよりも説得力があって、子どもたちは食い入るように聞いています」。朝採ったばかりの野菜に触って、生で試食。舌の味蕾(味をキャッチするセンサー部分)が発達する子どものうちに積んだ“味わう”経験は、その後の人格形成にも深く関わってくると齊藤さんは考えています。
農家や栄養士、メーカーなど、食に携わる人たちが横浜の地産地消を盛り上げようと立ち上げた“濱の料理人”プロジェクトでは、生産者を訪ねるツアーイベントや料理コンテストなどを開催しています。その濱の料理人メンバーとして齊藤さんは、小学校給食のメニューを考案する“スーパー給食”に一昨年参加。“やまゆりぽーくのロースト 地元野菜の洋風あんかけ風”を担当し、実際に大きな釜で給食を作りました。「子どもたちは“レストランの味だ”って喜んでくれました。“レストランのシェフが作ってるんだから、当たり前じゃん”」と笑う齊藤さん。これらの活動を通して、子どもたちにも食の大切さを伝え続けています。

横浜の農業にさらなる魅力を
よりよい一皿を目指して

横浜の農業に期待することを聞くと、「いつまでも畑を続けてほしい。少しでも後継者が増えるように、“横浜で農業やるのが魅力”というベースができたら」。そのために、これからもさまざまな活動を通して農家をバックアップしていきたいと考えています。
また、今後はできる限り、自分でも野菜を作っていきたいとか。「野菜を実際に育てることで、理解が深まる。それがよりよい料理の提供につながると思うんで」。野菜と真摯に向き合い、対話しながら、日々進化する齊藤さんの料理。明日の“一期一会の一皿”が楽しみになりました。

このページへのお問合せ

環境創造局農政部農業振興課

電話:045-671-2637

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ファクス:045-664-4425

メールアドレス:ks-nogyoshinko@city.yokohama.jp

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