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はまふぅど人9号

最終更新日 2019年3月19日

はまふぅどナビ9号(2008年6月2日発行)

地域の子ども達や都市住民、更には企業をも巻き込みながら街なかで生き残りを懸ける

団体参加の体験ファームを模索する農業者:三枝浜太郎さん

横浜の農業は都市の中にある「都市農業」!!

三枝浜太郎さんの写真
団体参加の体験ファームを模索する農業者の三枝浜太郎さん

三枝さんは高校生だったある時、横浜の地図を見ていて「横浜の農業は都市近郊農業なんて生易しいものではない。農業が都市のただ中にある正に都市農業だ!」と衝撃を受けたそうです。
そして昭和43年に就農。当初は5反の畑を耕しキャベツとじゃがいも、にんじんで農協の共販制度に参加していましたが、その後採算の合わない作物はやめ、現在2町歩の畑で主にキャベツを専作しています。三枝さんの住む神奈川区片倉町には、以前はそうしたキャベツ専作農家が20軒もあったそうですが、資材の高騰と価格の低迷でキャベツ専作の農業経営だけではとてもやっていけず、農家の経営は年を追う毎に厳しくなっていきました。それでも、多くの農家は不動産経営でかろうじて持ちこたえてきましたが、それももう限界。都市化の波が押し寄せる中、今はわずか3軒だけになってしまったとのことです。
そのような状況の下、三枝さんは近隣の農家が農地を手放してしまうことに強く危機感を抱き、さらに「農家の存在意義は単に食料供給だけではない。地域を守るには農家の役割が重要であり、伝統行事を後世に伝えるには農家の存続が必須。農家が居ないと伝統行事・文化が無くなってしまう。」と危惧されました。


地域の子ども会、都市住民は農作業を楽しむ農地保全の応援団

子ども会の写真
子ども会のジャガイモの芽吹き

三枝さんの畑は片倉町の駅から徒歩5分ほどの場所に一面に広がっており、まさに都市農業を肌で感じられます。三枝さんは、数年前から地域の子ども会や「はま農(の~)楽(ら)」を中心とした鶴見区の市民グループと一緒に農作業をし、農地保全の一翼を担ってもらうとともに、地元片倉町の神社やお寺に伝わる伝統文化を子どもたちに伝えていくよう、子ども会の農作業プログラムに伝統行事をうまく組み合わせた様々な農業イベントを実施してきました。また、春・秋には三枝さん宅の近所みんなで自主的に防災訓練をし、三枝さんの畑にある野菜を使って炊き出し訓練もするとのこと。
これらのイベントを実施していると、子どもたちだけでなく農作業を経験したことのない大人たちも、他所の畑に平気で踏み入ってしまったり、成育途中の野菜を収穫してしまうこともあって、農作物の知識や隣近所との付き合い方を学んでもらう必要性を痛感することがしばしばあるそうです。「でも、何度か畑に通う内に、そんな子どもや大人たちも、徐々に踏んでいいところと悪いところが解るようになる。そして、一旦それが分かるようになるとそんなことはしなくなるんだ。」と、三枝さんは長い目で優しく見守っています。
昨年は、子ども会が育てたジャガイモが地元の学校給食の特別メニューとして提供されたということ。今年は学校と正式に契約して、6月・7月の学校給食に出されることが決まっています。また、既に活動が5年続いている鶴見区の市民グループは、自分たちが任された畑で野菜作りの指導をしてもらうお返しに、三枝さんの農作業の手伝いをするという持ちつ持たれつの関係にあります。グループのメンバーは収穫した野菜を三枝さんの作業場の片隅で調理して食べたりすることもあるとのこと。「今では自由に畑に入り、農作業をして、採ってきた野菜や雑草を休憩小屋で自由に食べているよ」と、メンバーの家族同然の振る舞いを三枝さんはむしろ楽しまれているようです。


安全でおいしいものを食べたいなら、自分たちで手間ひまかけて育てること

そんな三枝さんに「地産地消で最も大切なことは何でしょうか?」と伺ってみたところ、「安心できる本物の野菜を食べたければ、人まかせ、農家まかせにしないこと。自分たちで野菜をじっくり育てて食べることだ。」と明解に答えられました。さらに「手間ひまかけて堆肥をたっぷり使った土づくりから自分でやらなくては、本当に安心できる野菜は食べれませんよ。」と念を押されました。また、「今の時代、例えば小麦は卸値が安すぎるので、農家は採算を考えるととても作っていられない。でも、市民グループならば、自ら小麦を栽培して仲間と一緒においしいうどんを作ったり、石焼釜でパンを焼いたり、といった楽しみ方だってできるんだ。」と、農家と違って採算を考えなくてもよい市民の視点での農作業のあり方を提示されます。また、正月には繭玉だんごを作り豊作を願い、春には筍飯作り、柏餅作り、収穫祭には流しそうめんなど、伝統や旬を大切にしています。

都市農業を守る団体体験型農園「野菜道場」に企業も参加

このような取り組みは、農地の保全や伝統文化の伝承には大きな意義がありますが、経済的なメリットはいま一つ。そこで、三枝さんはこれまでのノウハウを生かしつつ、農業経営の安定化を目指して、今年から新たに企業を対象にした団体体験型の農園に取り組み始めました。
知り合いが仲立ちした近隣の会社とは500平方メートルの畑での農作業と収穫予定の農産物代金を合わせて年間50万円で契約。今年度はとりあえずジャガイモ1.5トン、ダイコン2.5トンの収穫を予定しているそうです。一見するとかなりうまい話に思えますが、「農業収入だけで生活するためには、本来これくらいの収入がなければ農家は食べていけない。」という三枝さんの本音に、企業サイドが「企業の社会的責任の一つとして、地域環境を守るために欠かせない農業、そして、農業を営む農家を直接支援することに取り組むべきだ。」と応えた結果です。三枝さんは「家庭菜園ではなく、一緒に農家になった気持ちで畑仕事をするんだ。200平方メートルから300平方メートルを一単位として同一作物を作付けし、それらの位置を毎年移動して輪作体型をとることによって、連作障害を回避できるんだよ。」と、団体利用の体験農園のメリットを強調されます。
「この事業はまだ始まったばかり。やってみたいというグループや企業がいたら大歓迎!」とのこと。「将来的には自宅近くの80アールの畑全体で取り組んでいきたい。」と将来の夢を語ります。
三枝さんは、この団体体験型農園に「野菜道場」と命名。その心は、「一方的な指導をする教室では無く、お互いに人間の考え方も勉強しあうという意味で道場にしたんだ。」とのこと。日頃から「何をするにも人が集まらないと始まらない。」と言い切る三枝さんの心意気を強く感じる素敵な名前です。

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電話:045-671-2637

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メールアドレス:ks-nogyoshinko@city.yokohama.jp

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