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はまふぅど人31号

最終更新日 2018年8月27日

野菜で生産者と消費者をつなぐ横浜の“農業コーディネーター”
Shine’s on(シャインズ・オン) 代表 橋本幸一(はしもと こういち)さん

橋本幸一さん

地場野菜を農家から直接仕入れ、市内各地のスーパーや飲食店などに配送・販売している橋本幸一さん。5年ほど前に起業する際、“農業で横浜を照らしたい”との思いから「shine’s on」の屋号を掲げました。積極的、精力的に生産者と消費者を応援し続ける橋本さんに、その取組みや今後の展開についてお話を伺いました。

忙しい農家の手助けがしたいと野菜専門の配達業者に

橋本さんが卸売・配送の仕事を始めたきっかけは、市場からの依頼でした。その当時、市場は新たに地場野菜のコーナーを作りたいというスーパーのリクエストで、仕入先を探していました。そこで、元農協職員の橋本さんに、地元の農家を紹介してほしいと持ちかけます。しかし、課題は野菜の流通手段。農家は日々の農作業に追われ、自ら野菜を届けることはできません。橋本さんは農家が生産に集中できるよう、配達の代行を始めます。
橋本さんは、ただ野菜を届けるだけではありません。配達先に、野菜の特徴やおいしい食べ方はもちろん、誰が育てたのか、どのように育ったのか、この季節にどんな野菜が採れるのかなどを伝えます。そうした情報を提供できるのは、普段から農家と顔を合わせている橋本さんだからこそ。「地場野菜の魅力を納得してもらえるように伝えるのが、腕の見せどころ。農家の立場で話せるのが強みだね」。
ときには“年末は市場が休みで野菜が足りない”と悩むスーパーに、大みそかまで収穫してくれる農家を探したり、“芋掘りしたい!”というサークルの要望で農家を紹介したり。農業にまつわる多種多様な要望を調整する“コーディネーター”として、消費者と生産者の間をつないでいます。そんなきめ細やかな対応で、1店のスーパーから始まったお得意さんは少しずつ増えていきました。

生産者と消費者の距離が近い横浜だから臨機応変に対応しやすい

横浜の農業の特徴は、大きな消費地が市内にあること。「配送にあまり時間がかからず、鮮度が落ちないのはメリット」と橋本さん。さらに、そのときどきの状況に応じて柔軟な対応ができるのが、橋本さんの特徴です。
例えば、ある野菜の大きな産地が悪天候で不作のとき、スーパーなどから“横浜産はどう?”と連絡が入ります。普段から農家に出入りし、作付け状況も把握しているので、イレギュラーな状況でもスピーディーに納品できます。逆に、農家から“来週は、この野菜がたくさん採れそう”との情報が入ると、スーパーに連絡。すぐに専用コーナーをつくってくれます。「一度食べるとその味のファンになって、地場野菜のリピーターもいるスーパーもあるみたいだよ」。
飲食店の間でも地場野菜のファンは確実に増えています。料理人がお気に入りの農家を指定して注文することも多いとか。「生産者の顔が分かるものを使いたいって思うんだろうね。これからは消費者が農家を選ぶ時代なんだな」。
これまで横浜の農家の多くは、畑のすべてを使ってキャベツや大根などの一品目を大量生産し、農家同士が集まって一緒に市場に出荷していました。しかし今では、例えば畑の8割でキャベツを育て、あとの2割は直売用に珍しい野菜を少量ずつ多品目で育てる農家が増えました。その直売用の畑で新しい品種にチャレンジするのです。「例えばナスなら、以前は千両ナスが一般的だった。最近は生で食べられるサラダ紫とか、長ナス、緑ナス、白ナスなどをつくっている農家さんがいるね」。
農家への情報提供も、大事な仕事の一つ。配達先のニーズや、特売情報を参考にした今後の市場価格予想など、農家にフィードバックする情報はさまざまです。橋本さんにとって農家は昔馴染みで、言いたいことを言い合える“ツーカーの仲”です。野菜のパッケージの仕方をアドバイスすると、逆に売り方をアドバイスされることも。
野菜の種類が少なくなる端境期には、農家に種を持参して作付けをお願いすることもあります。「横浜の農家は多品種を作っているので、品目を増やすことにも臨機応変に対応してくれる。チャレンジ精神があって協力的だよね」。クリスマスが近づく12月初旬は、色鮮やかな野菜が人気。そこで赤カブや紫の大根などをリクエストするそうです。

農家と苦労をともにするだからこそ仕事が面白い

橋本さんは、野菜の選別や袋詰めを代行することもあります。その作業の手間とかかる時間は予想以上だったとか。「農家の人って本当に大変だなってつくづく思う。手間をかけた野菜が安く売られちゃうと、悲しいな」。例えばキャベツの適正価格は1個150~200円。農家も採算が取れて、スーパーも売りやすい価格だそうです。「それでもまだ、現実とはけっこう開きがあるよね」。
農家の苦労に触れるにつれて、橋本さん自身、この仕事を続けていけるのかと、不安がよぎります。それでも頑張れる理由を聞くと、「やっぱり必要としてくれる人がいるからじゃないかな」。
それを特に実感したのは東日本大震災が起きたときです。あらゆる流通がストップし、横浜でも市場が動いていませんでした。商品がなくなり、スーパーの棚は空っぽに。横浜の農家の野菜を届けようとしても、配達のためのガソリンも手に入りにくい状況でした。そこで、携行缶を買ったり、ガソリンスタンドの長い列に並んだりして、苦労して手配し、配達を続けました。「あのときは、なんとかしたいと必死だったね」。
また、日常的に橋本さんを頼りにする人が増えています。配達先のお得意さんから口コミが広がり、ホテルのシェフや居酒屋の板長、イベントの主催者など、それまで面識のなかった人たちからも連絡が来るようになりました。「いろいろな人と知り合えて楽しいよ。苦労があるからこそ、仕事が面白くなる。仕事は楽しくやらないとね」と橋本さん。

野菜を、市民をつなげるコミュニケーションツールに

横浜の農家には、いつまでも野菜をつくり続けてほしいと願う橋本さん。「やっぱり市内産のおいしい野菜を子どもや孫の世代にも食べてもらいたいからね」。
今後の展望を聞くと、「やりたいことはいっぱいある。例えば宅配とか」。以前テレビを見ていて、横浜にも買い物難民がいると知った橋本さん。そのときは意外に感じたそうですが、高齢者が増えるにつれ、毎日の買い物が難しくなる人が増えるかもしれないと考えています。
また、スーパーだけでなく、地場野菜を扱いたいというところには農家を紹介したり、配送したり、協力していきたいと思っています。「サークルのイベントとか、マンションのエントランスや駐車場などで野菜を売りたいという人たちが出てくれれば、地域の人たちのコミュニケーションの場になって、いいんじゃないかな」。
橋本さんの挑戦は、まだまだ道半ば。「あらゆる可能性がクリアできたら、達成感が感じられるのかな。そのときが来るのは、死ぬ間際にやっと間に合うかもね」と笑う橋本さん。その言葉に、一生の仕事として農業を応援していく覚悟と心意気が見えました。

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環境創造局農政部農業振興課

電話:045-671-2637

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ファクス:045-664-4425

メールアドレス:ks-nogyoshinko@city.yokohama.jp

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