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はまふぅど人24号

最終更新日 2019年3月19日

『生産者直売所「FRESCO」』苅部博之さん

大規模生産のブランド野菜に負けない。世界にひとつの「苅部ブランド」を作りたい

苅部博之さんの写真
苅部博之さん


保土ケ谷区で13代続く農家を継ぎ、約2.5ヘクタールの畑でキャベツやジャガイモ、ネギ、大根など、年間7種類から80種類の野菜を栽培している苅部博之さん。畑の近くで直売所FRESCO(フレスコ)を営みながら新品種のオリジナル野菜を開発したり、就農希望者を支援する百姓塾を開講するなど、意欲的に活動しています。

昔ながらの農法を守りつつ。オリジナル野菜を作る試みも

苅部さんが江戸時代から続く農家の13代目を継いだのは、今から16年前。父・勉さん(6年前に他界)が実践していた丁寧な畑仕事を守り、土づくりからこだわった昔ながらの手間ひまかけた栽培方法で野菜作りをしています。
そのひとつが堆肥づくり。土づくりにとても力を入れている苅部さんは、堆肥を自分で作る農家が減る中で、市内産の稲わらや鶏糞、米ぬかなどの材料に、独自の材料を混ぜたこだわりの堆肥を作り続けています。
また、自家採種をして在来種の野菜を残すことに取り組む一方で、在来種に別の種類を掛け合わせてオリジナル野菜を作ることにも力を注いでいる苅部さん。苅部ブランド野菜の代表格ともいえる「苅部大根」は、東北地方の赤家地大根に他の種類を掛け合わせて改良を重ねた、世界にひとつのオリジナル大根です。紫→赤→ピンク→白の美しいグラデーションと、瑞々しさや甘みが特徴で、葉っぱもおいしく、日持ちがすることから、レストランからの注文も多い大根です。
「すりおろした苅部大根に、ゆずなどの柑橘類を加えるときれいなピンク色になるのですが、それを魚料理のソースとして使っていたレストランがあって、プロの料理人の発想に驚かされました」。

畑で大根を見る苅部さんの写真
「うちでは、苅部大根をサラダや大根おろしにして食べることが多いですね」


栽培する土地によって変化を遂げる。在来種の野菜

「苅部大根を理想の形に仕上げるまでに、9年もかかりました」と話す苅部さん。毎年、大根の種取りをして、理想の大根に近づけるために改良を重ねましたが、うまくできたと思ったら、次の年にはまた元に戻ってしまったりと、9年もの年月をかけて試行錯誤を繰り返したそうです。
「特に在来種の作物は、同じ種をまいても土壌や気候など、その土地の特徴によって変化していくので、手間と時間がかかります。でも、そこがおもしろいところでもあるんです。また、野菜同士にも相性があることがわかってきました」。
ある野菜を作った後の畑である野菜を栽培すると、野菜の色がきれいに出たり、虫がつきにくくなって農薬や肥料を軽減できることが、経験を重ねるにつれてわかってきたそうです。そうした野菜の組合せを考えながら作付けを考えるのは、パズルをしているようで楽しい作業なのだとか。
現在、苅部さんが力を入れているのがオリジナルのネギ作りです。「地元の伝統野菜である西谷ネギに海外の品種を掛け合わせて、改良を重ねている段階。まだまだ時間がかかると思いますが、オリジナルの苅部ネギを目指しています」。

苅部ダイコンのアップ写真
見た目もきれいな苅部大根は、普通の大根に比べてサイズも大きい


自分のブランドで勝負するために地産地消のスタイルに方向転換

畑で採れた新鮮そのものの旬野菜は、西谷駅近くにある直売所「FRESCO」(注1)で販売しています。週3日営業する直売所は口コミで徐々にリピーターが増え、今ではオープン前からお客さんが列を作るほどの人気ぶり。この直売所のほか、ランドマークプラザの野菜市や都内のマルシェなどにも出店していますが、そこで苅部さんの野菜を購入したお客さんが、FRESCOに買いに来るケースも少なくありません。
苅部さんがFRESCOを始めたのは、今から12年前。それ以前は主に市場に野菜を卸していましたが、大規模生産地の野菜と競合するよりも、地産地消に方向転換しようと直売所をオープンしました。
「市場では、安定供給できる大規模産地の野菜には勝てないんです。朝採りの質のいい野菜を持って行っても、ネームバリューのあるブランド野菜に高値が付くんですね。それなら、地元の消費者に目を向けて、収穫したものをその日のうちに販売できる地産地消のスタイルに切り替えようと思いました。生産地のブランドではなく、自分のブランドで勝負しようという気持ちもありました」。
直売所のオープン当時28歳だった博之さんは、若い世代の人たちも利用しやすい直売所にしたいと考え、ディスプレイを工夫しました。「見せる野菜」を意識し、色とりどりの少量多品目の野菜をカラーコーディネイトを考えて並べたり、かごに盛ったりして視覚に訴えたところ、店内の写真を撮っていく人が増えました。その結果、徐々に女子高生から年配の方までとリピーターの年齢層が幅広くなり、女性客だけでなく、男性が買い物をしている姿もよく見るようになりました。

ランドマークプラザ野菜市の出店の様子の写真
ランドマークプラザの野菜市にも出店。かわいらしいディスプレイに、足を止める人が多い


野菜を作りたい人のための百姓塾&農業塾を開講

苅部さんは3年前から、農業に興味のある人を募って「百姓塾」と「農業塾」(注2)を行っています。「百姓塾は、仕事を辞めて農業を始めたいと考えている人のために始めました。新規就農を希望している人にとっては、農業で生活していけるかどうかを見極めるのは難しい。憧れだけで農業を始めるのはとてもリスキーなことです」。
苅部さんと一緒に畑仕事をしながら、実際の農家の作業がどんなものなのかを1年を通して体験できる百姓塾は、就農を希望する人にとっては貴重な機会。実際に、苅部さんの百姓塾を経て神奈川農業アカデミーに通い、新規就農を果たした人もいます。
一方の農業塾は農作業の手伝いをしてみたい人向け。週1回畑に通い、苅部さんに教わりながら一緒に農作業をしたり、割り当てられた自分の畑で作物を作っています。
「農業塾の塾生たちとは、畑でさまざまな実験をしています。たとえばトマトを10さく作る場合、1さくごとに肥料の種類や配分を少しずつ変えて、収穫した作物を食べ比べてみます。味や色、収量など、いろいろな項目で点数をつけ、苅部ブランドのトマトの方向性を探っています」。

消費者の信頼を得るために畑の見学ツアーを行う

「都市農業の現状を知ってほしい」という思いから、忙しい農作業の合間を縫って、毎年苅部さんが行っているのが、畑の見学ツアー(注3)です。参加者は、一般消費者から学校の先生、野菜ソムリエのグループなどさまざま。一度に20名から30名のグループを率いて、直売所から堆肥小屋、数か所の畑をまわります。ツアーでは、苅部さんが土づくりのこだわりや肥料配分のこと、野菜の見極め方法までを説明。食の安全に関心の高い消費者にとっては、非常に勉強になる機会でしょう。
「消費者と生産者の信頼性を築くには畑を見てもらうのが一番いいと思って、見学ツアーを始めました。野菜を見ただけではわからない土づくりのことなどを知ってもらうことで、より安心してうちの野菜を食べてもらえます。そうして信頼関係が築けたお客さんは、値段を見ないで買っていく人が多いんですよ。そんなお客さんたちのためにも、もっと努力して、おいしくて安心して食べられる野菜を作らなければと思っています」。

注1:直売所「FRESCO」
アクセス:相鉄線西谷駅から徒歩1分(駐車場あり)
営業:月曜日・水曜日・金曜日の午後2時から午後6時まで
電話:090-2646-4147(苅部さん)

直売所フレスコの外観写真
直売所では旬野菜のほか、手作りの漬物などの加工品も購入できます


注2:「百姓塾&農業塾」について
百姓塾、農業塾とも期間は1年間。週1回で年会費は1万円。毎年2月に募集しますので、興味のある方は苅部さんにお問合せください。
注3:「苅部さんの畑見学ツアー」について
10名以上の団体であれば、見学OK。農作業の都合があるので、電話(上記と同じ)でお問合せください。

このページへのお問合せ

環境創造局農政部農業振興課

電話:045-671-2637

電話:045-671-2637

ファクス:045-664-4425

メールアドレス:ks-nogyoshinko@city.yokohama.jp

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