2024年11月号　昭和モダンと季節の移ろいを楽しむ場所 ー 俣野別邸庭園の魅力

　俣野別邸は、住友家16代当主の私邸として、建築家の佐藤秀三の設計・施工により、1939（昭和14）年に建てられました。
　昭和初期モダニズムの影響下における和洋折衷住宅として、2004年（平成16年）国の重要文化財に指定されました。その後、主要部分の焼失により指定は解除されましたが、横浜市が資料をもとに、保存していた部材も使用して再建しました。
　当時の郊外邸宅の在り様を物語る歴史的価値の高い建造物として、2017（平成29）年に横浜市認定歴史的建造物に指定され、同年４月から一般公開しています。
　再建にあたっては、一部改変、付加した部分はあるものの、主な部屋の造りや仕上げはオリジナルを忠実に再現しています。
　外観でひときわ目立つのは、２階にある半円形の展望室です。晴れた日には、遠く富士山や丹沢山系を望むことができます。外観や眺望に加え、壁や床材、扉や灯具など、内装にもさまざまな意匠が施され、随所に見どころがありますのでご注目ください。特に、象嵌(ぞうがん)模様が美しい玄関ホールの引き戸や、秀逸なデザインが目を引く居間のランプシェードは必見です。
　喫茶室「ひだまりガーデン」では、静かで居心地の良い芝庭を眺めながら、ティータイムをお楽しみいただけます。

緑豊かな庭園と俣野別邸　ⓒBAUHAUSNEO

　相模湾の沿岸地域は、明治時代から政財界人や文化人の別荘地として発展してきました。神奈川県は、現存する歴史的建造物や庭園を保全活用し、地域の活性化につなげる「邸園文化圏再生構想」※を推進しています。
　当園も、周辺地域の歴史的建造物や庭園を管理されている皆様とともに、この構想を推進するプロジェクト「湘南邸園文化祭」に参画しています。今年の秋もコンサートや写真講座、クラフト講座などを開催し、当園の魅力発信と文化財のさらなる保全活用に貢献します。
　当時の暮らしの面影が感じられる意匠を凝らした住宅建築と、地形を生かした緑豊かな庭園とが調和する俣野別邸庭園。都市部にありながら、今なお自然が多く残る唯一無二の特別な空間へ、ぜひご来園ください。

※相模湾沿岸地域一帯に残る、邸宅、庭園や歴史的建造物について、所有者、県民、行政などの協働により、新たな文化発信の場や地域住民と来訪者による多彩な交流の場として保全活用し、地域の活性化につなげようとする構想