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「よこはま彩発見」紙面連載バックナンバー(2023年分)

最終更新日 2023年12月1日

「広報よこはま」紙面連載のバックナンバーをお届け

よこはま彩発見ロゴ

 海、港、緑、歴史、地域、人々、さまざまな魅力を持つ横浜。この街の彩りを連載でお届けしている「よこはま(さい)発見」。2023(令和5)年1月号から「広報よこはま」紙面に連載し、さらに詳しい情報をウェブサイトに掲載しています。ここでは紙面の過去の連載(2023年)を再掲しています。また、ウェブの掲載内容は各月記事の右下「さらに詳しい話」のリンク先をご参照ください。

2023年12月号 来て、見て、買った! 横浜橋通商店街

横浜橋通商店街
横浜橋通商店街(南区、市営地下鉄「阪東橋」駅下車)

作家 荻野 アンナ

 初めてなのに懐かしい場所が商店街です。大根一本でも、八百屋の店先に置かれるとピカピカ輝いて見える。効率を求めるならスーパーでしょうが、モノとの対話、売り手との会話を楽しむなら商店街でしょう。
 私は「買い者」を自称しています。横浜市の全区の商店街を巡りましたが、原点となっているのは横浜橋通商店街です。約350メートルの通りが、その二倍ほどにも感じられるのは、アーケードが遠近感を強調するからでしょう。中東のバザールのような、とは大げさでしょうか。
 1928(昭和3)年から100年近い歴史を持つ横浜橋は、港湾労働者相手の露店に近い商売から始まりました。今も昔も変わらないのはその安さ。プロが買い出しに来るという噂もあります。私もレタス百円には思わず手が伸びました。
 そしてこの街には企画力があります。最近では秋田の中学校から生徒が来て、踊りも披露しつつ、いぶりがっこなどの名産品を「物販」していきました。売上金はユニセフを通じて子ども達に寄付されました。年内には熊本県、来年には釧路の生徒も来る予定。
 暮れといえば大売り出し。商店街が一番輝く季節です。横浜橋の他にも、市内には実力派が揃っています。ふらりと出かけてみませんか。

さらに詳しい話

 荻野 アンナ(おぎの あんな)
 作家、慶應義塾大学名誉教授。1956年横浜生まれ。慶應義塾大学博士課程修了。ソルボンヌ大学博士号取得。1991年『背負い水』で芥川賞受賞。2001年『ホラ吹きアンリの冒険』で読売文学賞受賞。2008年『蟹と彼と私』で伊藤整文学賞受賞。近著は『老婦人マリアンヌ鈴木の部屋』。
【問合せ】政策局広報課 Tel:671-2331 Fax:661-2351

2023年11月号 古くて新しい、日本文化のワンダーランド

三渓園 内苑と色づく紅葉
内苑と色づく紅葉

公益財団法人 三溪園保勝会 学芸員 中村 暢子

 三溪園ってどんな場所?と聞かれたら、一義的には「庭園です」と答えるでしょう。しかしそれだけでは不十分。横浜スタジアム約5個分の敷地面積には、創設者が「私有すべきではない」とした景色が広がっています。
 この庭を造ったのは、原三溪(本名:富太郎 1868年-1939年)、生糸貿易で財を成した実業家です。先代から受け継いだ本牧の地に、京都や鎌倉などから古建築を移築し各所に配置。梅や菖蒲などの草木を植え、渓流を配し、四季折々に美しい庭を造り上げました。「三之谷」という谷あいの地形を巧みに生かして造られた景観は、茶の湯や美術にも親しんだ三溪のセンスそのものとも言えます。
 約100年前に完成したこの庭は、古いものでは室町時代の建物を愛でることができる特別な空間。17棟の古建築のうち10棟は重要文化財、庭園そのものが国の名勝にも指定されている三溪園は、毎日が特別展開催中といっても過言ではありません。
 ときには港町から足を延ばしてタイムスリップ。三溪が「三溪園の神髄」と称した内苑は、11月頃から銀杏や紅葉が色づき、華やかな季節を迎えます。

さらに詳しい話

【問合せ】三溪園保勝会 Tel:621-0634 Fax:621-6343
【交通】「横浜」・「桜木町」・「元町・中華街」各駅からバスに乗り「三溪園入口」下車、徒歩5分。または、「根岸」駅からバスに乗り「本牧」で下車し、徒歩10分。駐車場(有料)もあり。
【休園日】12月26日~31日

2023年10月号 市民の熱い想いで誕生したマラソン大会

1981(昭和56)年11月の第1回大会
1981(昭和56)年11月 第1回大会

横浜マラソン組織委員会事務局

 横浜ランドマークタワーをスタートし、市内の観光名所や首都高速道路を駆け抜ける横浜マラソン。今では神奈川県内で最大規模の市民マラソンの一つとして定着した横浜マラソンですが、この始まりは市民の署名活動だったということをご存知でしょうか。
 1980(昭和55)年、世界的に市民マラソンブームが広がる中、横浜でマラソン開催を求める市民が中心となり、署名活動が始まりました。署名活動は県内にとどまらず、全国的に呼び掛けられ、集まった署名はなんと103,741人。これを受けて、1981(昭和56)年に第1回横浜マラソン大会が開催されることとなりました。
 10km・20kmの2種目で始まり、第12回大会からはハーフマラソンが開始、第33回まで開催されました。そして、フルマラソンを望む多くの声を受け、2015(平成27)年に待望のフルマラソンとして新たに横浜マラソン2015が開催されました。
 そんな市民の熱い想いで誕生した横浜マラソンが今年も10月29日(日)に開催されます。今大会から、ペアリレー、ファンラン(ファミリー)、ファンラン(中学生)の3つの種目が新設されるとともに、給水所ではさまざまな給水パフォーマンスも予定されており、ランナーだけでなく、より多くの方に楽しんでいただける大会となっています。お近くの方は、ぜひ沿道でランナーの応援をお願いします。
 横浜マラソンを通して横浜とスポーツの魅力を再発見してみませんか。

さらに詳しい話

【問合せ】横浜マラソン組織委員会事務局 Tel:651-0666 Fax:226-5037

2023年9月号 関東大震災 ―横浜市民の被災体験―

八木熊次郎が描いた地震発生時の状況
八木熊次郎が描いた地震発生時の状況(横浜開港資料館蔵)

横浜都市発展記念館 主任調査研究員 吉田 律人

 1923(大正12)年9月1日、神奈川県を震源とするマグニチュード7.9の大正関東地震が発生しました。横浜市は激しい揺れに襲われ、市街中心部では多くの建物が倒潰(とうかい)、さらに289カ所から発生した火災は強風に煽られて急速に燃え広がっていきます。横浜市内の犠牲者数は推定2万6623人、当時の人口が約44万人だった点を考えると、およそ17人に1人が亡くなった計算となります。そうした大災害を生き抜いた横浜市民は、日記や回想録、スケッチなどに当時の様子を残していきました。
 現在の中区、元街小学校の教師であった八木熊次郎(彩霞)もその一人です。午前11時58分、元町5丁目の理髪店で地震に遭遇した熊次郎は、『大正十二年九月一日関東大震災日記』に「遠雷のやうな響きがしたと思ふと間なしに烈しく上下震動が起った」と、地震発生時の様子を記したほか、スケッチブックにも描いています。熊次郎は両手で鴨居と柱をつかみながら、揺れに耐えましたが、我慢できず、裏口から外へ飛び出しました。その直後、理髪店は倒潰します。そして熊次郎の目に飛び込んできたのは、破壊された元町と負傷した被災者の姿でした。
 現在開催中の特別展では、市民の残した記録から横浜の関東大震災を再現しています。今から100年前に横浜を襲った大災害の様子を広く知っていただき、防災意識を高めていただければ幸いです。

さらに詳しい話

特別展「関東大震災100年 大災害を生き抜いて―横浜市民の被災体験―」
2023年12月3日(日曜日)まで横浜開港資料館(みなとみらい線「日本大通り」駅下車 徒歩2分)で開催(有料)。
【問合せ】横浜開港資料館 Tel:201-2100 Fax:201-2102

2023年8月号 夜の動物園が楽しめる「ナイトズーラシア」

ナイトズーラシアの様子
昨年のナイトズーラシアの様子

よこはま動物園ズーラシア集客担当 上田 佳世

 よこはま動物園ズーラシアは、横浜市が計画的に緑の保全を行うために定めた「緑の七大拠点」の一つ三保(みほ)新治(にいはる)地区の一角に作られ、1999(平成11)年4月に開園しました。園内にある「自然体験林」では、現在も四季折々の草花や野鳥の姿を楽しむことができます。また、横浜市には他に野毛山動物園と金沢動物園があり、市内に3つの動物園を有することは全国的にも珍しいことです。
 2001(平成13)年から開催している「ナイトズーラシア」は、もはや夏の風物詩とも言える人気のイベントです。通常は16時30分に閉園しますが、8月の土・日曜と祝日は開園時間を20時30分まで延長します。そのため、夜行性動物の活発な姿や昼行性動物の寝姿など、普段は見ることができない夜の動物たちの様子をご覧いただくことができます。あわせて、飼育員によるガイドやナイトバードショーで動物たちの詳しい生態も知ることができるでしょう。さらに、自然豊かな園内をイルミネーションなどでライトアップし、さまざまなグルメフードやコンサートなどが楽しめる「ズーラシア ナイトフェスタ」も開催します。この夏は、お腹いっぱい、思い出いっぱいの夜のひとときを、ズーラシアで過ごしてみませんか。
 ※「ナイトズーラシア」は8月の土・日曜、8月11日(金・祝)開催予定です。

さらに詳しい話

【問合せ】よこはま動物園ズーラシア Tel:959-1000 Fax:951-0777
【交通】相鉄線「鶴ヶ峰」・「三ツ境」駅、JR横浜線・市営地下鉄線「中山」駅下車。 各駅でバスに乗り換え。「よこはま動物園」下車、徒歩1分。 ※有料駐車場あり
【休園】毎週火曜(祝・休日の場合は翌平日)・年末年始 ※臨時開園あり

2023年7月号 海の公園で横浜の海を体感しよう

海の公園 砂浜
約1kmの長さを持つ海の公園の砂浜

海の公園園長 宮口 均

 横浜はその名のとおり東側に長い海岸線を有し、昭和初期には本牧や磯子、金沢に海水浴場が並び、水遊びや潮干狩りなど海を楽しめる場所が多くありました。しかし、高度経済成長期に行われた沿岸部の埋立により、自然の海浜は失われていきました。その後、市民に親しまれた横浜の海浜を復元するため、金沢地区の埋立事業に合わせ八景島とともに整備され、1988(昭和63)年に市内唯一の海水浴場のある公園として開園したのが「海の公園」です。安藤広重の浮世絵にも描かれた金沢八景の景勝地の一つだった乙艫(おっとも)海岸の往時を忍ばせるような白砂青松の景観が、どこか懐かしくもある居心地の良さを感じさせてくれます。
 遠浅で波も静かな海の公園では、海水浴だけでなく、さまざまな海の楽しみ方を体験できます。春から夏にかけては、自然繁殖しているアサリなどの貝を採取する潮干狩りを、また、バーベキュー場(冬季除く)や三陸産のカキやホタテが味わえるかき小屋(冬季)で、一年を通じ本格的なバーベキューを楽しむことができます。ウインドサーフィンやSUP(さっぷ)※などのマリンスポーツ、ビーチバレーやビーチサッカーなどのビーチスポーツ、その他にもジョギングやバスケットボール、サッカーなど、潮風の中でスポーツや健康づくりができるのも大きな魅力です。
 海洋ごみ問題など海の環境は私たちの暮らしや未来と密接につながっています。横浜の豊かできれいな海を間近に体感できる海の公園にぜひお越しください。
※Stand Up Paddleboardの略で、大きめのボード(板)の上に立ち、パドル(水かき)を漕いで水面を進んでいくスポーツ。

さらに詳しい話

【問合せ】海の公園管理センター Tel:701-3450 Fax:701-3334
【交通】JR線「新杉田」駅・京浜急行線「金沢八景」駅でシーサイドラインに乗り換え。「海の公園南口」駅・「海の公園柴口」駅・「八景島」駅下車、徒歩2分  ※有料駐車場あり

2023年6月号 〈新映像プログラム公開〉横浜みなと博物館で横浜港に親しもう!

VRシアター「ヨコハマクロニクル」
VRシアター「ヨコハマクロニクル」(イメージ)

横浜みなと博物館 学芸課長補佐 島宗 美知子

 横浜みなと博物館は開港前から現代までの横浜港の歴史、役割などを豊富な資料や写真、模型などで紹介しています。コロナ禍の2021年度に常設展示室の約半分を一新し、2022年6月28日にリニューアルオープンしました。高精細の大型映像展示、日本で初めての埋立と築港の技術と歴史をテーマにした常設展示、シミュレーターやタッチウォールなどの体験型展示を導入し、子どもも大人も楽しんで横浜港に親しめる展示となりました。
 また、今年6月2日の横浜開港記念日からは、人気のVR(バーチャルリアリティ)シアター「みなとカプセル」と、ペリー艦隊の模型とともに上映する大型映像展示で、それぞれ新しいプログラムを公開します。
 VRシアターで上映するのは「ヨコハマクロニクル~SINCE 1854~」。開港をきっかけとして始まる横浜港の移り変わりを躍動感たっぷりの映像でご紹介します。最近のクルーズ客船や2020年から始まった新本牧ふ頭の建設工事の様子、ガントリークレーン操作の映像など、普段見ることのできない視点からのダイナミックな横浜港の映像も楽しめます。さらに、大型映像展示では、新プログラム「横浜開港~事象の波~」を公開します。縦4メートル横8メートルの大型スクリーンで黒船来航から横浜開港までの歴史をご紹介します。
 みなさまのご来館をお待ちしています。

さらに詳しい話

【問合せ】横浜みなと博物館 Tel:221-0280 Fax:221-0277
【交通】JR根岸線・市営地下鉄ブルーライン「桜木町」駅、みなとみらい線「みなとみらい」駅・「馬車道」駅下車、徒歩5分
【休館】月曜(祝・休日の場合は翌平日)・年末年始 ※臨時休館日あり ※有料

2023年5月号 横浜に完成した世界一のプラネタリウム!

プラネタリウムで映し出された星空
プラネタリウムで投影された星空

はまぎん こども宇宙科学館プラネタリウム解説員 甲谷 保和

 今年は、ドイツで世界初のプラネタリウム投影機が発明されてから100周年という記念の年です。世界初のプラネタリウムは、ドイツから見える4500個の星を映し出して世界から喝采を浴びたといいます。
 2022年12月、磯子区洋光台にある はまぎん こども宇宙科学館(横浜こども科学館)では、21年ぶりにプラネタリウムをリニューアルしました。このプラネタリウムが特に優れているのは宇宙望遠鏡で観測された最新のデータをもとに星を投影する能力で、プラネタリウム内部に備えられたGIGAMASKという部品には、星を表す穴が約12億個も空いているというから驚かされます。いちばん暗い星の穴の大きさは1mmの5000分の1以下という精密さで、星と星の隙間も1mmの1000分の1の約1マイクロメートルしかありません。
 このプラネタリウムMEGASTAR-IIAを開発・製造したのは、都筑区にある有限会社大平技研です。「もしかして、横浜のMEGASTAR-IIAは世界一すごいのではないだろうか?」、そう考えた科学館では、オープン前の2022年11月にプラネタリウムで投影できる星の数のギネス世界記録TMに挑戦することにしました。
 ところが、さすがに世界記録への挑戦は簡単ではありません。プラネタリウムで撮影した詳細な画像をもとに、天文学者の先生方が検証をしてくださり、いったい何個の星を投影できるのか最終的な結果が出たのは3か月後の2023年2月になってから。その数は少なくとも7億個。これまでの記録を5倍も上回る新記録で、ギネス世界記録TM※達成です!
 大人もこどももみんな世界一の星空と宇宙を体験しにおいでよ!
※プラネタリウム投影機により投影された星の最多数(ワンオフ)
 Most stars projected by a planetarium projector (one off)
 認定日:2023年2月8日(水曜日) YOKOHAMA SCIENCE CENTER

さらに詳しい話

【問合せ】はまぎん こども宇宙科学館 Tel:832-1166 Fax:832-1161
【交通】JR京浜東北・根岸線「洋光台」駅下車、徒歩3分
【休館】第1・3火曜・年末年始 ※臨時休館日あり ※有料

2023年4月号 山手の西洋館

山手234番館 写真
蓄音機によるコンサートも開催される山手234番館

 海抜10~40m程度の丘の上に位置する山手は、海から見ると切り立った崖の上にあることから開港当初、外国人からThe Bluff※と呼ばれていました。横浜の開港場に設置された外国人居留地は当初、今の中区山下町にあたる山下居留地のみでしたが、増え続ける外国人に対応するため、山手も1867(慶応3)年に外国人居留地とされたのです。緑豊かな高台にある山手居留地は主に住宅地として発展しました。
 日本で商売する外国人たちの住宅が建ちはじめ、お雇い外国人が活躍しはじめた明治10年代になると本格的な洋風建築が主流となり、独・仏・英・米など出身国の建築様式を取り入れた洋館が建てられました。さらに、教会、劇場、公園、病院、学校など暮らしに欠かせない施設が揃い、西洋風の街並みが形作られました。しかし、平穏な日々は1923(大正12)年に起きた関東大震災により一変します。山手も壊滅的な被害を受け、西洋館のほとんどが倒壊し、家を失った多くの外国人が神戸や長崎、上海などへと移ったのです。このため、現在も山手に残る西洋館の多くは関東大震災の後に建築されたものです。
 その一つ、山手234番館は1927(昭和2)年ごろに建築された外国人向けのアパートメントハウスでした。震災で横浜を離れた外国人に戻ってもらおうと、震災復興事業の一つとして現在の敷地に建てられました。昭和50年代までアパートメントとして使用された後、1999(平成11)年から一般に公開されています。
 山手エリアには、この他にも明治~昭和初期に建てられた西洋館が(たたず)み、市が所有する7館は入館無料で公開されています(休館日あり)。季節の花々で彩られた庭園を通り建物に入ると、暖炉やサンルームなどを備えた広い室内には往時の家具や調度品がしつらえられ、外国人の暮らしぶりをしのぶことができます。穏やかな春の一日を異国情緒あふれる山手の街で過ごしてみませんか。
※Bluff:「断崖」「絶壁」「切り立った岬」などの意

さらに詳しい話

【問合せ】横浜山手西洋館ベーリック・ホール  Tel・Fax:663-5685

2023年3月号 バラと横浜の歩み

「はまみらい」写真
明るいサーモンピンクの大輪で香りのよい品種「はまみらい」

 市の花としてバラが制定されたのは1989(平成元)年。元号が昭和から平成に代わり、みなとみらい21地区で横浜博覧会が開かれるなど節目の年でした。
 横浜とバラのつながりは古く、横浜開港とともにやってきた貿易商らによって洋バラが持ち込まれ、居留地や外国人住宅の庭先で咲き誇っていました。その後、出入りの植木職人や商人を通じて日本人宅にもバラが植えられるとともに、新種の輸入も盛んになるなどして、大正時代には一般市民に広まったといわれています。
 1923(大正12)年の関東大震災で壊滅的な被害を受けた横浜に対し、アメリカから多くの義援金や支援物資が届きました。このお礼として横浜市からシアトル市に桜の苗木や石灯篭を贈ったところ、1930~31(昭和5~6)年にかけシアトル市から米日友好親善の印として約200種類、3,000株のバラの苗が届けられたのです。市は贈られた苗を野毛山公園、山下公園などに植え、愛好家の市民を中心に苗が増やされました。1932(昭和7)年の開港記念日には、繁殖された苗の市民への頒布を始めました。当初の価格は大苗20銭、小苗5銭と市販の苗に比べ安価で、「日米親善のバラ」と呼ばれ大いに人気を博しました。開港記念日は「バラ祭」とも呼ばれ、バラ展、バラ行進、バラ賛歌などの行事も行われたそうです。
 戦後、1949(昭和24)年の日本貿易博覧会では、「バラ展覧会」が開かれ、サンフランシスコから空輸されたピースという品種などが展示されました。1951(昭和26)年には、戦前に行われていたバラの造花「愛市の花」の頒布が復活し、街頭などで販売された収益は、みなと祭りの経費などに充てられました。
 高度経済成長期にはバラの行事は下火になりましたが、市の花としてバラの制定を求める市民運動も行われました。市は、開港130周年・市制100周年にあたる1989(平成元)年に市民投票を行い、最多の票を得たバラが市の花として選ばれたのです。震災や戦災、戦後の接収・人口急増など激動の時代を駆け抜けてきた横浜、その街中は美しいバラの花々で彩られてきました。

さらに詳しい話

【問合せ】市民局地域活動推進課  Tel:671-3624 Fax:664-0734

2023年2月号 幕末期の横浜、日本の風景を古写真からめぐる

金沢八景の九覧亭から野島(左奥)を望む
金沢八景の九覧亭から野島(左奥)を望む 岡山洋二氏蔵

 スマートフォンの普及で、写真は気軽なコミュニケーションツールの一つになってきています。写真は外国人居留地が置かれた横浜にいちはやくもたらされ、海外の写真家が横浜の風景を撮り、日本各地からやってきた旅人は横浜の写真館で肖像写真を撮影しました。横浜は日本の「写真発祥の地」の一つなのです。
 明治維新(明治元年・1868年)の前年、日本にやってきた一人のカメラマンがいました。チャールズ・ウィード(Charles Leander Weed, 1824-1903)というアメリカ人です。ウィードは「マンモス・プレート」と呼ばれる大型のカメラを持ち込み、江戸時代最後の年(慶応3年・1867年)の日本を旅してまわりました。しかし、その作品は日本にはほとんど残らず、彼の名前も忘れ去られていました。ところがウィードの写真31枚が一昨年(2021年)に見つかったのです。
 大判サイズにプリントされたその古写真には、横浜・金沢八景・鎌倉・江戸・長崎といった日本各地の風景が鮮明に記録されていたのです。横浜の山手から撮った写真には、日本人大工が建てた「半欧米風」の街並みがひろがっています。一方、金沢八景を写した写真には、海と岬が織りなす美しい光景が鮮やかに焼き付けられていました。
 今回の展覧会では、初公開となる岡山氏所蔵のウィードが撮影した写真に加え、当館と国内の機関が保管するウィードの作品も展示し、これまで紹介されることのなかった幕末日本の風景を今によみがえらせます。皆さんも古い写真から昔の横浜と日本に思いをめぐらせてみませんか。

さらに詳しい話

特別展「幻の写真家 チャールズ・ウィード -知られざる幕末日本の風景-」
2023年3月12日(日曜日)まで横浜開港資料館(みなとみらい線「日本大通り」駅下車 徒歩2分)で開催(有料)。
【問合せ】横浜開港資料館 Tel:201-2100 Fax:201-2102

2023年1月号 金属活字の伝来と情報発信のはじまり

展示タイトルを活字で組んだ組版
展示タイトルを活字で組んだ組版(組版画像を反転)

横浜市歴史博物館 学芸員 石崎 康子

 パソコンやスマートフォンで使われる文字は、デジタル化された書体(デジタルフォント)です。デジタルフォントにはさまざまな書体がありますが、その一つに明朝体という書体があります。
 明朝体は、中国の明王朝・清王朝初期(14~17世紀)に、整版(木版)印刷用に作られた書体でした。印刷技術が整版から活版に発展すると、金属で活字が作られるようになりました。
 中国語を記す明朝体の漢字活字を制作したのは、驚くことに、東洋学が盛んになったヨーロッパで、キリスト教のアジア伝道に伴い中国に伝わりました。その技術は明治2(1869)年、上海から長崎に伝えられ、その翌年には横浜に伝えられます。活版印刷術の活用によって印刷される文字数と部数は格段に増加し、印刷物が伝える情報量が高まったことで、横浜は日本における主要な情報発信基地としての歩みを始めます。
 現在開催中の展示では、活版印刷と明朝体活字の誕生、活字と印刷術の日本への伝来、そしてその後の発展の歴史をたどります。デジタルフォントに囲まれた現在の文字文化の原点に触れてみませんか。

さらに詳しい話

企画展「活字 近代日本を支えた小さな巨人たち」
2023年2月26日(日曜日)まで横浜市歴史博物館(市営地下鉄「センター北」駅下車 徒歩5分)で開催(有料)。
【問合せ】横浜市歴史博物館 Tel:912-7777 Fax:912-7781

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政策経営局シティプロモーション推進室広報課

電話:045-671-2331

電話:045-671-2331

ファクス:045-661-2351

メールアドレス:ss-koho@city.yokohama.jp

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