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2023年11月号 古くて新しい、日本文化のワンダーランド~三溪園

 海、港、緑、歴史、地域、人々、さまざまな魅力を持つ横浜。この街の彩りを「よこはま彩発見」としてお届けします。今回は中区の 三溪園からです。

最終更新日 2023年12月1日

「広報よこはま」2023年11月号「よこはま彩発見」の掲載内容はリンク先をご覧ください。

古くて新しい、日本文化のワンダーランド

公益財団法人 三溪園保勝会 学芸員 中村 暢子

 三溪園を造ったのは、原三溪(本名:富太郎1868-1939)、生糸貿易で財を成した実業家です。先代から受け継いだ本牧の地に、京都や鎌倉などから古建築を移築し庭園を造成。1906(明治39)年に開園し、一般に広く公開しました。「三之谷」という谷あいの地形を巧みに生かして造られた景観は、美術に親しんだ三溪のセンスそのものと言えます。

浮世絵の題材にもなった風光明媚な本牧

歌川広重「富士三十六景 武蔵本牧のはな」
歌川広重「富士三十六景 武蔵本牧のはな」(三溪園寄託)

 三溪園は、1887(明治20)年頃、先代の善三郎が本牧の地に別荘「松風閣」を構えたことに始まります。この地の購入を善三郎に決めさせたのは、江戸時代の浮世絵、歌川広重「富士三十六景 武蔵本牧のはな」と言われています。富士山の手前には磯子の浜、そして、江戸時代からその名を知られた杉田梅林を表したと思しき、白と桃色の帯をうっすらと確認することができます。

絵葉書「(横浜名所)三渓園内山ノ上原氏別荘」
絵葉書「(横浜名所)三渓園内山ノ上原氏別荘」(三溪園所蔵)

 松風閣が建てられたのは、眺めの良い海岸寄りの山上で、その名は伊藤博文によってつけられたものと言われています。残念ながら、1923(大正12)年に起きた関東大震災により倒壊してしまいましたが、跡地に建てられた展望台からは、今でも海景に富士の姿を楽しむことができます。

三溪の庭造り

絵葉書「横浜本牧三溪園」
絵葉書「横浜本牧三溪園」(三溪園所蔵)

 1899(明治32)年に逝去した善三郎に代わり、原家の家業を継いだ三溪は、1902(明治35)年頃から、土地を買い足し、田畑や湿地を埋立て、三溪園の造成に注力していきます。
 三溪の庭造りは、庭師を育てることから。親しく交流した法隆寺門前の古美術商・今村甚吉に宛てた書簡には、庭園研究のため、園庭師の海老沢亀吉を奈良や高野山、京都に派遣するので、面倒をみてほしいと依頼したことが記されています。三溪園の造園に、奈良や京都の名所・旧跡を参考にしていたのです。特に注目されるのは、ある地点から塔と三笠山を望む奈良の風景をぜひ見せてやってほしいと強調している点。三溪園の代表的な景観となっている、池越しに三重塔を望む風景との関連性が想像されます。

大正11(1922)年頃 造成中の内苑
1922(大正11)年頃 造成中の内苑(三溪園所蔵)

 三重塔をはじめ、敷地内に点在する古建築は、鎌倉や京都から移築してきたもので、庭園の景観を形成する要ともいえます。京都・大徳寺から譲り受けた旧天瑞寺寿塔覆堂の例にみられるように、三溪は所有者が維持できなくなっていた状態のものを譲り受け、念入りに修理して三溪園へ移築しました。
 熟慮タイプの三溪は、移築場所を決めるのも慎重です。1906(明治39)年に入手した臨春閣の移築が始まったのは1913(大正4)年と、7年もの歳月を要しています。踏ん切りがついたのは、前年に旧燈明寺から移築した三重塔の位置が山上に定まったから。このとき三溪は、臨春閣の室内から三重塔が眺められる位置を考慮し、建物の配置を入れ替えた上で移築するといったこだわりぶりを発揮しました。

 「神髄たる残り半分」と三溪が称した内苑エリアは、聴秋閣の移築完成をもって、1922(大正11)年に完成。34歳から始めた庭造りは足かけ20年にわたり、完成形をみたとき、三溪は54歳を迎えていました。1923(大正12)年には、三溪園の全園完成を期して大師会茶会を華々しく開催。園内全域を用いて18席が設けられ、茶の湯に親しむ多くの人でにぎわいました。

時を超えて引き継がれる美しさ

三溪園内苑と色づく紅葉
内苑と色づく紅葉

 100年の歳月を経たいま、三溪園は重要文化財10棟、横浜市指定有形文化財3棟を含む計17棟を有し、庭園そのものが国指定名勝に位置づけられています。四季折々に趣きを変える庭園のなかで、時を超えて引き継がれた古建築が佇むさまは、一幅の絵画にもたとえられる美しさです。
 横浜の歴史を振り返れば、1859(安政6)年の横浜開港は大きなインパクトをもった出来事だったといえるでしょう。近代日本の一軸を担った横浜において、西洋文化が尊重されるなか、日本の文化と歴史を(まも)り伝えようとした三溪の想い。そして、自らも書画を(たしな)んだ美的センスによって造られた三溪園は、古くて新しい、日本文化のワンダーランド。100年前と変わらず、今日もみなさまのお越しをお待ちしています。

紅葉ライトアップを開催!

 ライトアップで一層華やぐ夜の庭園散策をお楽しみいただけます。この機会にぜひお越しください。

日時

 2023(令和5)年11月23日(木曜日・祝)〜12月10日(日曜日)の 金・土・日・祝日限定
 日没〜19:30(最終入園19:00)  ※16:30からは観覧範囲を制限します。

料金

 無料(入園料別途)

園内マップ

 三溪園は広さ175,000㎡の広大な日本庭園です。公式サイト(外部サイト)では、上の園内マップ(外部サイト)を閲覧・ダウンロードできるほか、おすすめの散策コース(外部サイト)も掲載されています。あわせて、 開園時間・入園料(外部サイト)交通アクセス(外部サイト)などもご確認いただけます。

【受付終了】読者プレゼント

三溪園入園招待券

  応募受付は終了し、当選者に12月1日(金曜日)に賞品を発送しました。ご応募ありがとうございました。
 いつも『広報よこはま』・「よこはま彩発見」をご覧いただき、ありがとうございます。感想をお寄せいただいた方の中から抽選で、三溪園入園招待券を5組10名様にプレゼントします。ご希望の方は、次の6項目※を明記し、郵便はがき(〒231-0005 横浜市中区本町6-50-10 横浜市役所政策局広報課 あて)又は電子メール(ss-saihakken@city.yokohama.jp)でご応募ください。締切は2023年11月30日(木曜日) 必着です。
※ 1.郵便番号、2.住所、3.氏名、4.感想、5.読んでみたい記事、6.「11月号プレゼント希望」
 なお、当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。また、いただいた個人情報は、賞品の発送以外の目的には使用しません。

読者プレゼント問合せ先 横浜市役所政策局広報課 TEL:045‐671-2331 FAX:045‐661-2351

このページへのお問合せ

三溪園

電話:045-621-0634

電話:045-621-0634

ファクス:045-621-6343

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ページID:355-619-055

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