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2024年2月号 ヨコハマの輸出工芸

 海、港、緑、歴史、地域、人々、さまざまな魅力を持つ横浜。この街の彩りを「よこはま彩発見」としてお届けします。 今回は横浜の輸出工芸についてです。

最終更新日 2024年2月26日

「広報よこはま」2024年2月号「よこはま彩発見」の掲載内容はリンク先をご覧ください。

ヨコハマの輸出工芸

 横浜市歴史博物館 学芸員 小林 光一郎

横浜眞葛焼「鷹ガ巣細工花瓶」
A 横浜眞葛焼「鷹ガ巣細工花瓶」(一対のうち) 宮川香山眞葛ミュージアム所蔵

 今回、展示する横浜眞葛焼、横浜芝山漆器、横浜彫刻家具、横浜輸出スカーフのうち、前の三者は、写真A 横浜眞葛焼「鷹ガ巣細工花瓶」(宮川香山眞葛ミュージアム所蔵)や、写真D 横浜彫刻家具「箪笥」(横浜市歴史博物館所蔵)のように、明治期工芸の独特のスタイルともいえる立体的な装飾による意匠や模様などを用いたスタイルを作り上げました。技術に裏付けられたこれらの造形は、日本から欧米への輸出拡大という当時の国策を追い風に、折からのジャポニスムブームと相まって、国内外に多大なインパクトを与えました。
 また、本展示で取り上げる輸出工芸品は、職人集団の分業制による制作という特徴をもっています。横浜眞葛焼であれば、成形工や画工。横浜芝山漆器であれば、絵師や塗師、蒔絵師、彫込師といったそれぞれの職人たちによる分業制によって、制作できる数量を確保するとともに、それら職人たちの高い技術力によって裏付けられた作品であったため、美術品のように高く評価された工芸品であったことが特徴です。

横浜眞葛焼「黒釉芥子画花瓶」
B 横浜眞葛焼「黒釉芥子画花瓶」  横浜市歴史博物館所蔵

 横浜眞葛焼では、人気の流行り廃りに合わせるように、立体的な意匠の流行が下火になる前に作風を転換・変更し、市場の嗜好に合わせた対応を行いました。ちなみに、このように時代に即した対応力を持った横浜眞葛焼ですが、1945(昭和20)年の横浜大空襲により窯や工房などが被災し焼失、その歴史を閉じています。

横浜輸出スカーフ「茶びん柄」 
C 横浜輸出スカーフ「茶びん柄」

 横浜輸出スカーフは、開港(1859 年)して間もない時期のハンカチーフ(手巾)製造から始まりましたが、昭和初期に至って、海外からの注文をもとにスカーフを製造するようになります。江戸時代の印刷技術として、浮世絵や草双紙などの普及によって発達した木版刷り「 捺染(なっせん)」という技術があります。この木版刷り「捺染」によるスカーフの染織は、大正から昭和初期までに全盛を極めました。その後、昭和初期には、絹のスクリーンに柄となる部分を覆った型版を用いて生地に色を重ねていく「スクリーン捺染」という技術が導入され、木版捺染と違って長い生地を染めることができ、しかも、蒸しによる色止め、水洗による余分な染料などの洗い落としができたので、色落ちのしない美しい製品が作られるようになりました。このスカーフ染織の歴史は、それまでの技術を基に、新たな技術を導入することによって産業を大きく発展させた事例だといえるでしょう。

横浜彫刻家具「箪笥」(一部拡大) 
D 横浜彫刻家具「箪笥」(一部拡大)

 横浜彫刻家具は、社寺建築に見られる彫刻の技法「宮彫り」を取り入れ、龍や松竹梅などの東洋的意匠を、椅子やテーブル、箪笥(たんす)などにあしらった和洋折衷の家具です。1890年代の後半から1930年代まで、主に横浜で輸出用として製作されるとともに、横浜居住の外国人邸宅でも使用されました。写真D 横浜彫刻家具「箪笥」は、大正末から昭和初頭に作製された横浜彫刻家具で、所蔵者のご夫人が結婚に際し持参したもので、豊穣の象徴である「ぶどう」が宮彫りにて家具全体に配されています。これは外国人に向けて作られたものよりも幾分落ち着いたデザインで、彫のデザインについて注文をして制作されたものだと考えられます。

 今回は、横浜眞葛焼、横浜芝山漆器、横浜彫刻家具、横浜輸出スカーフと、横浜を冠するこれらの資料を一堂に見ることができる貴重な機会です。これら輸出工芸の歴史を概観するだけでなく、「世界に通じる魅力」も感じていただければと思います。
 なお、当企画展は令和5年度横浜市指定・登録文化財展と同時開催となります。

横浜市歴史博物館企画展「ヨコハマの輸出工芸展」

会期    2024(令和6)年2月3日 (土曜日) ~2024(令和6)年3月10日 (日曜日) ※

休館日:月曜日〔ただし2月12日は開館し、翌2月13日(火曜日)を休館〕

開館時間  9:00~17:00(券売は16:30まで)
会場    横浜市歴史博物館 横浜市都筑区中川中央1-18-1
      (市営地下鉄「センター北」駅下車 徒歩5分)
観覧料ほか リンク先(外部サイト)でご確認ください。

【受付終了】読者プレゼント

招待券

 応募受付は終了し、当選者に2月26日(月曜日)に賞品を発送しました。ご応募ありがとうございました。
 いつも『広報よこはま』・「よこはま彩発見」をご覧いただき、ありがとうございます。感想をお寄せいただいた方の中から抽選で、ヨコハマの輸出工芸展(~3/10まで、同時開催の横浜市指定・登録文化財展にも入場可)の招待券を10組20名様にプレゼントします。ご希望の方は、次の6項目※を明記し、郵便はがき(〒231-0005 横浜市中区本町6-50-10 横浜市役所政策局広報課 あて)又は電子メール(ss-saihakken@city.yokohama.jp)でご応募ください。締切は2024年2月25日(日曜日) 必着です。
※ 1.郵便番号、2.住所、3.氏名、4.感想、5.読んでみたい記事、6.「2月号プレゼント希望」
 なお、当選者の発表は賞品の発送をもってかえさせていただきます。また、いただいた個人情報は、賞品の発送以外の目的には使用しません。

読者プレゼント問合せ先:横浜市役所政策局広報課 TEL:045‐671-2331 FAX:045‐661-2351

このページへのお問合せ

横浜市歴史博物館

電話:045-912-7777

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ファクス:045-912-7781

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