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2025年1月号 横浜中華街の風物
海、港、緑、歴史、地域、人々、さまざまな魅力を持つ横浜。この街の彩りを「よこはま彩発見」としてお届けします。 今回は1月29日の春節にちなみ、横浜ユーラシア文化館(中区)からです。
最終更新日 2025年2月3日
「広報よこはま」2025年1月号「よこはま彩発見」の掲載内容はリンク先をご覧ください。
横浜中華街の風物
横浜ユーラシア文化館 副館長 伊藤 泉美
横浜はお正月が二度やってくる華やかな街です。一つは新暦の正月で、もう一つは旧暦の正月「春節」です。横浜中華街では、新暦の大晦日には「迎春カウントダウン」が関帝廟と媽祖廟で、旧暦の大晦日には「春節カウントダウン」が山下町公園で賑やかに繰り広げられます。
古くは1883(明治16)年2月の『ジャパン・パンチ』という英字雑誌に横浜中華街の春節の記事がありますが、1913(大正2)年の横浜のガイドブックにも横浜の年中行事の一つとして「中華民国正月」が紹介されています。当時も春節の時期には、中華街の家々の軒先や玄関に、ランタンや新年を祝う吉祥柄を描いた年画が飾られ、中国情緒あふれるにぎやかな雰囲気だったのでしょう。
【写真1】2022年春節の巨大ランタン
それから時は流れて、1986(昭和61)年に第1回春節祭が開催されました。従来とは異なり、観光客にも向けた中華街のイベントとして、特設ステージで獅子舞・龍舞・舞踊などが披露されました。以来、赤いランタンや百節龍などの春節燈火が街を飾り、年々にぎやかになりました。新型コロナウィルス感染症の流行でいったんは規模が縮小されましたが、その後はさらに飛躍し、中華街だけでなく、みなとみらい線の各駅などに巨大なランタンオブジェが登場しました【写真1】。2022年からは横浜市役所も後押しし、「横浜春節祭」と銘打ち、巨大ランタンオブジェがランドマークプラザ、馬車道、マリンタワー、元町、そして横浜駅や羽田空港第3ターミナルなど、32か所に設置されました。もはや、中華街の祭事から横浜中心部を挙げての早春の一大イベントへと発展しています。
春節のほかにもう一つ、横浜中華街の代表的な祭事があります。夏の関帝誕です。関帝誕は横浜関帝廟の主神・関羽の誕生日のお祝いです。関羽とは三国志の英雄で、信義に厚い武将であるとともに、そろばんにもたけていたことから、商売の神様としてあがめられ、本国中国や世界各地の中華街に廟が建てられています。横浜の関帝廟の歴史は古く、幕末の開港期に小さな祠がつくられたのが始まりです。1871(明治4)年には本格的な初代関帝廟が建立されました【写真2】。その後、1891(明治24)年に大規模な改修が行われ、レンガ造りで城郭のようだと表現された廟となりました【写真3】。関帝誕も明治の初年には行われていたという記録がありますが、1910(明治43)年7月には関帝廟改修25周年を祝い、大規模な関帝誕が営まれ、その記念絵はがきが出たほどです【写真4】。
【写真2】初代 関帝廟
【写真3】大改築後の関帝廟
【写真4】関帝誕の行列
【写真5】横濱関帝廟の出土物展示
その関帝廟は1923(大正12)年9月の関東大震災で倒壊焼失してしまいます。その後に第2代関帝廟が再建されますが、かつてのように街を練り歩く大規模な関帝誕は姿を消しました。そして、第2代関帝廟も1945(昭和20)年の横浜大空襲で焼失しました。しかし、その2年後、1947(昭和22)年に第3代関帝廟が建立され、40年近く中華街の街と人びとを守りました。ところが、1986(昭和61)年元旦に火事が起き、廟の一部が焼け落ちました。3度焼けた関帝廟ですが、この時も中華街の人びとが力を結集し、1990(平成2)年に第4代関帝廟が建立されました。そして、翌1991(平成3)年8月、「復活第1回関帝誕」として、関帝廟内部の祭事から、中華街全体の祭事として関帝誕が営まれるようになりました。
2019年、中華街の中にある横濱中華学院の校舎新築工事の際に、関東大震災以前の関帝廟とそれに隣接する中華会館の遺構が出土しました。その時発掘された御影石の敷石などは、現在、横浜関帝廟の脇に設けられた屋外展示スペースで見ることができます。中華街の歴史を実感できる貴重な場所です【写真5】。
さて、横浜中華街から歩いて数分の距離にあり、「横浜で世界とつながる」をコンセプトとした博物館が横浜ユーラシア文化館です。東洋学者の江上波夫氏からの寄贈資料を中核とし、ユーラシア地域のさまざまな民族の歴史や文物を紹介するとともに、横浜の国際性に注目し、この街に息づく多様な文化を紹介しています。横浜中華街に関する企画展もこれまで2度開催し、開港以来の街の歩みやそこに伝わってきた服飾文化も紹介しました【写真6】。この1月からは常設展示室の「装う」のコーナーに、新たに横浜華僑の婚礼衣装を展示しています【写真7】。
また、中華街の東西南北の牌楼(門)に関係する、漢王朝時代の瓦当拓本も展示しています【写真8】。瓦当とは軒先部分の瓦のことで、それに墨をあてて紋様を写し取ったのが瓦当拓本です。中国古代の思想によれば、東西南北の方角にはそれぞれを司る神獣がいて、それぞれを表す色も定められています。東は青龍、西は白虎、南の方角は瑞鳥の朱雀、北の方角は亀と蛇が合体した黒の玄武です。東西南北の方角には神獣をかたどった瓦をつけ、建物に邪気が入るのを防ぎました。中華街の牌楼もこの考えに基づいてデザインされています。
【写真6】企画展 図録
【写真7】横浜華僑の婚礼衣装
【写真8】瓦当拓本
春節や関帝誕の祭事などで横浜中華街にお越しの際は、ぜひ、横浜ユーラシア文化館まで足を伸ばしていただき、中華街の歴史や文化の一端に触れていただければ幸いです。
- 写真1:みなとみらい線馬車道駅の巨大ランタンオブジェ 2022年春節 撮影:伊藤泉美
- 写真2:明治初年の関帝廟の祭壇 The Far East、1871年9月16号、横浜開港資料館蔵
- 写真3:大改築後の初代関帝廟 『横浜名所写真帖』1909年 横浜開港資料館蔵
- 写真4:関帝廟改修25周年記念関帝誕の行列 1910年 横浜開港資料館蔵絵はがき
- 写真5:横濱関帝廟の出土物展示 2024年 撮影:伊藤泉美
- 写真6:『横浜中華街160年の軌跡―この街が、ふるさとだから。』と『装いの横浜チャイナタウンー華僑女性の服飾誌』展の図録
- 写真7:横浜華僑女性の婚礼衣装 1940年頃 廣東會舘倶楽部寄贈・横浜ユーラシア文化館蔵
- 写真8:瓦当拓本 玄武(上)と朱雀(下) 横浜ユーラシア文化館蔵
【受付終了】読者プレゼント
応募受付は終了し、当選者に2月3日(月曜日)に賞品を発送しました。ご応募ありがとうございました。
いつも『広報よこはま』・「よこはま彩発見」をご覧いただき、ありがとうございます。感想をお寄せいただいた方の中から抽選で、横浜ユーラシア文化館と横浜都市発展記念館の常設展および横浜都市発展記念館企画展「運河で生きる~都市を支えた横浜の"河川運河"」の招待券を5組10名様にプレゼントします。ご希望の方は、次の6項目※を明記し、郵便はがき(〒231-0005 横浜市中区本町6-50-10 横浜市役所政策経営局広報課 あて)又は電子メール(ss-saihakken@city.yokohama.jp)でご応募ください。締切は2025年2月2日(日曜日) 必着です。
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