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坂道の郷愁
最終更新日 2024年9月10日
ここで紹介しているの内容は、現在とは異なる場合がありますのでご注意ください。
9.坂道の郷愁 (東久保町19の8・現在は区外へ移転)
久保町から富士見丘学園へ登る坂の途中で、大きなふろしき包みを背負った人を見かけた。懐かしいな、と思った途端、私の中で、ざっと半世紀ほどのタイムスリップが起きた。
そう、この辺り、われら悪童にとっては格好の遊び場だったのだ。樹も草もたくましく繁り、蔦はからまり、虫もオタマジャクシも、蛇だっていたのだ。だれもがターザンだった。
そんな中でも、われわれの心を捉えて離さなかったのが、この店であった。並んだガラス瓶の中の妖しげな、不思議な物たち。絡み合い、チロチロと黒い舌を吐く生きた蛇たちの目。ウインドーのガラスにおでこを押しつけて子どもたちは、未知の世界への恐れとあこがれをかき立てられたのだった。
文・絵 長谷川 泰 (西区文化協会 騎虎の会主宰)
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