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CPAPの歴史
最終更新日 2021年3月10日
マスクを口鼻に当て、気道陽圧を与えて治療を行った一番古い記述は、1912年です。この年、麻酔学者のスターリング・バンネルが、胸部手術中に肺の膨張を維持するためにマスクを使ったことを報告しています。これがマスクCPAPの最初と考えられています。
1940年代初めに技術が発達し、高高度飛行時代が到来しました。顔マスクによる陽圧〈マスクCPAP〉は高高度(40,000フィート≒12,000メートル以上)を飛行するパイロットの低酸素血症予防に利用されました。
マスクCPAPは100年以上の歴史がありますが、睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS)へ使用は最近のことです。医学部の学生だったオーストラリアのコリン・サリバン(Colin Sullivan)は1968年7月の朝、母親がベッドの上で死亡しているのを発見しました。発見した時にはまだ体に温かさが残っていたそうです。彼が夜、遅く帰宅すると大きないびきがいつも聴こえ、それは朝5時まで続いていたそうです。母の急死事件は、彼を睡眠障害の研究へと進むきっかけになりました。
コリン・サリバン博士
サリバンがSASという病気があることに気づいたのは1973年のことでした。睡眠障害の初期研究で知られるクリスチャン・ジェレミノー(Christian Guilleminault)の論文に惹かれ研究を始めました。1979年、サリバンはシドニー大学附属病院、皇太子アルフレッド記念病院で臨床医として働くかたわら睡眠障害の研究に従事していました。そして1980年6月、サリバンは、SAS治療目的で気管切開(頚部に穴を開ける手術)を予定している患者の協力を得て、睡眠中に鼻にマスクを当て陽圧をかける実験的研究を行い、治療効果があることを証明しました。また、自宅でも治療を続けることが可能であると報告しました。この時使用されていた送風ファンは、日立製の掃除機だったそうです。
その後もサリバンと同僚は持続的気道陽圧(CPAP)装置の開発を進めました。オーストラリアで酸素療法の機器を製作していた会社に機器を製造させ、1989年の段階で約1,000人が使用していたそうです。
CPAPは現在、世界中で罹患者が9億3600万人を超える睡眠時無呼吸に対するゴールドスタンダードの治療法となっています。装置は治療効果と快適性を高める研究が行われ、現在は多くのメーカーが複数の装置を提供しています。
参考文献:Sullivan CE. Nasal positive airway pressure and sleep apnea. Reflection on an experimental method that became a therapy. Am J Respir Crit Care Med 2018; 198: 581-587.
※この記事は院内配架しているCPAP新聞No.116をホームページ用に再編したものです。
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