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第21回「市長と語ろう!」
最終更新日 2023年3月22日
開催概要
≪テーマ≫防災(地域の防災への取組について)
≪日時≫
令和5年2月25日(土曜日) 15:00~
≪会場≫
高田地域ケアプラザ(港北区)
≪対話団体≫
高田地区連合町内会
≪団体概要≫
区の中心を鶴見川が流れ、洪水浸水想定区域が区域の約40%となっており、一部では河川氾濫時に最大で10mに迫る浸水深が想定されている港北区において、過去に当該地域で発生した水害の経験をもとに、今後発生しうる災害のリスクや避難の考え方などをわかりやすくまとめた冊子を作成し、洪水浸水想定区域内の住民に配布するなど、地域において独自の防災・減災の取組を積極的に行っている。
対話概要
※ 文意を損なわない範囲で、重複部分や言い回しなどを整理しています。
市長挨拶
市長
本日は休日にもかかわらずお時間をいただきましてありがとうございます。皆様には日頃から地域の防災をはじめ、さまざまな市政に関することに多大なるご尽力をいただきましてありがとうございます。
最近もさまざまな防災・減災の取組の必要性を感じさせる出来事が国内外で起こっています。大きな地震も近い将来、発生すると想定されていますし、また、水害やがけ崩れなど、横浜市はさまざまな災害の発生に備えなければなりません。
高田地区連合町内会では、地域で発生しうる災害リスクに対する認識を高め、備えをしていただく必要性を広く共有していくために、さまざまな取組を行っていると伺っております。
取組を進めるにあたり、過去の災害の経験や今後すべきことを整理されたということで、そういったお話を直接伺うことによって、本市の防災・減災に関する施策の参考にさせていただきたいと思っております。
この地域でも災害がいつ起こるかわからない
参加者
我々の地域における防災への取組について、大きく3つお話をさせていただきます。
まず1つ目が高田地区の災害リスクについて。2つ目が防災に関する主な取組について。3つ目が今後の活動について、順番に説明させていただきます。
1つ目の高田地区の災害リスクについてですが、高田地区の南側は早淵川に接しています。鶴見川は昔、「暴れ川」と呼ばれたこともあり、早淵川はその支流で、昭和33年の狩野川台風(台風22号)や昭和41年の台風4号で水害が発生したことがあります。今日参加している方で、被害に遭われたことがある方もいます。近年は国策により、鶴見川流域の総合治水対策が行われたので、以前に比べるとリスクは低くなりました。代表的なものとして、日産スタジアム横の鶴見川多目的遊水地、雨水を溜めて直接海に流し込む新羽末広幹線があります。これらは、川をただ広げるだけではなくて一時的に溜めておくという対策になります。
そのかいもあり、令和元年の台風19号はかなり大きな台風で、川の水は遊水地に流れ込んだのですが、被害はほとんど発生しなかったです。
このような水害対策は進みましたが、この高田地区はハザードマップでいうと、土地が低い地域では浸水深が3m以下のところが広く続いています。今後、想定外の気象状況で災害が起こらないとも言い切れませんので、この地域でも災害がいつ起こるか分からないと思っています。
高田地区には、高田中学校と高田東小学校の2つの地域防災拠点(※)があり避難所になっています。この2つの地域防災拠点は地震の時だけではなく、風水害のときの避難所にもなりますが、高台にあるので、高齢者や子どもたちが避難するには厳しいことが、地域としても大きな課題になっています。
※地域防災拠点
横浜市では、身近な市立の小・中学校等を指定避難所に指定し、地域防災拠点として防災備蓄庫の設置、防災資機材・食料等の備蓄を進め、また、被害情報等の情報受伝達手段として、各拠点にデジタル移動無線を配備している。
【主な役割】
①避難所
②最低限の水と食料の備蓄場所
③安否情報・被害情報・救出・救援物資情報の収集・伝達場所
自分たちが住む地域のことをもっと知って、正しい認識を持ち、共有する
参加者
2つ目の防災に関する主な取組ですが、まずは「水害への備え」という冊子を作りました。きっかけは、国土交通省京浜河川事務所が行っている鶴見川流域防災連続講座を受講した際に、自分たちが住む地域のことをもっと知って、正しい認識を持ち、町内会の皆さんに共有することが必要だと感じたことで、ハザードマップや「鶴見川の記録」(冊子)など、自分たちの地域に関するものを一冊にして令和3年の3月に浸水想定地域約2,000世帯に配らせていただきました。
次の取組は、「無事ですタオル」の配布です。これは令和3年の7月に高田町内会全3,400世帯に配布しました。災害発生時に「在宅避難(※)」した際は、自宅等で無事に被災生活を送っていることを、誰もが分かるようにした方がいいということで、地域防災拠点の運営委員長の発案で取り組みました。昨年の9月1日には掲示訓練をしました。
また、区役所で作っていただいた「在宅避難のすすめ」(リーフレット)も配布しました。避難所(地域防災拠点)に来ても受入可能人数は限られていますので、地域の方みんなが避難できる場所ではありません。そのため、ご自分の家が安全だったらご自宅で被災生活を送ってくださいと呼び掛けています。横浜市では「在宅避難」の周知を進めていますが、こちらにはそのために何が必要かということが書かれていますので、高田町内会全域の全6,700世帯に配布しました。
あとは、スタンドパイプ式初期消火器具の設置です。この地域には木造密集地域もありますので、5自治町内会に6台を設置しており、訓練もこれを設置してある場所で消防署や消防団と協力して地域の消火栓を利用してやっています。
※在宅避難
災害が発生した際、地域防災拠点(指定避難所)ではなく、安全が確保されている自宅や親戚の家で被災生活を送ること。プライバシーも確保され、住み慣れた家でストレスが少なく避難生活を送れることや、感染症のリスクが少ないなどといったメリットがある。また、「在宅避難」をしていても、地域防災拠点の食料や物資の供給を受けることや仮設トイレの使用なども可能。
防災に関するイベントを通じて意識を高めていこう
参加者
3つ目の今後の活動については、たかた防災ふれあいまつりです。
今までは、秋に運動会をやっていたのですが、運動会の競技にお年寄りや小学生が参加しにくい状況でした。防災に強く関心を持ってもらいたいということで、お祭り的なものをやって防災に関する意識を高めていこうと運動会に代わるものとして、スポーツ推進委員、計画推進委員、青少年指導員、消防団、防災保健委員、消防署などいろいろな方の協力を得ながら開催したいと思っています。
一番良いと思うのはマイ・タイムラインを作っておくこと
市長
いろいろな取組を教えていただきありがとうございます。ぜひ参考にさせていただきたいと思いました。
過去にこちらの地域で発生した水害の被害のレベルはどのくらいでしたか?
参加者
昭和33年の狩野川台風の時の被害は床上浸水。30cmくらいだったと思います。皆さんに一番伝えたかったのは、この時と同じ台風が今来たらどうなるのかということです。どこどこに避難するといっても、2次災害を起こす可能性があります。どのくらいの雨が降ったら、この地域はどうなるかという認識を正確なものにしてあげる必要があります。
冊子に書いたのは、まず早淵川は、どのくらいの危険度なのかということを正しく認識して、どのように避難したらいいかということ。住む場所によっては高台に避難しなければならないこともあるかもしれない。
そういったことを意識していく中で、一番良いのはマイ・タイムライン(※)を作っておくことです。いざ、災害が発生した時にどうすべきかを、みんながそれぞれ考えておかないといけないと思います。
※マイ・タイムライン
台風や大雨の水害等、これから起こるかもしれない災害に対し、一人ひとりの家族構成や地域環境に合わせて、あらかじめ時系列で整理した自分自身の避難行動計画。
市長
防災訓練が訓練のための訓練になってしまっている場合もあるでしょうし、防災訓練を個々人がしっかりと意識を持ってもらうための訓練にしなさいというご指摘だったと思います。
「水害の備え」を見させていただいて、掲載されている写真がばっと目に入ってくるなと思いました。実際に被害に遭われた住民の方のことも写真を見た後の方が目を通すと思いました。やはりこういったものが必要なのだと改めて感じています。
役所は市民の皆様に分かり易くお伝えするところを、もっと向上させていかなくてはならないと感じています。
日ごろの備えが大切だということを認識してもらうだけでも意味がある
市長
各世帯にお配りして、反響はいかがでしたか?
参加者
土地が低いエリアは水害の危険性が高いので、少しずつ身に着けてもらいたいと思っています。
あとは、被害が出た当時と比較して、人口や地域も発展しています。引っ越して来られた方たちの多くは水害があったことも知らないので、我々としては、ここは危険なところで、風水害が起きた時には日ごろの備えが大切だということを認識してもらうだけでも意味があると思っています。
市長
これを作るのにどれくらいかかったんですか?
参加者
作成には時間も手間もかかりました。
作成のきっかけは、「水害時の避難行動を考えよう」という小冊子を区役所が作成したので、地域の全世帯に配布したいと思ったのですが、数に限りがあるとのことでした。それなら、我々でその小冊子も含めて、国土交通省の講座でもらったパンフレットなどのさまざまな資料を全部まとめて1冊にしてしまおうとなりました。サイズの違う冊子もあり、A4サイズに合わせる手間もありましたが、作った本人が言うのもなんですけれども、出来上がりとしては、かなり良いものではないかと思っています。
「在宅避難」の推奨と地域防災拠点のあり方
市長
本当に良く作られていると思いました。見入ってしまいました。家に帰ってからもゆっくり見ようと思っています。
実際の被害想定や経験談も交えて、その地域に合ったものとして作られているところがすごいと感じました。写真などもビジュアル的にパッと入ってきますし、やはり当事者意識を持たせる工夫をしていると思いました。
「無事ですタオル」を発案されたきっかけは何でしょうか?
参加者
防災に関する取組の事例発表の場に参加させていただき、何かできないかと考えていた時に、発災時に地域の避難の状況を調べるにあたって、マンションに立ち入れない、坂の上まで行って調べるのも大変ということで、道路から見えるところにおける黄色い大きいタオルを出してもらうのが良いという発想で、町内会の方に提案して、了承を得て、全戸配布しました。訓練も毎年やっていきたいと思っています。
市長
多くの方に知っていただいて、いざという時に活用されることで力を発揮する。効率化という視点でも力を発揮するアイデアだと感じました。
区役所で作成した「在宅避難のすすめ」のリーフレットはいかがですか。
参加者
こちらに書いていただいた内容も、皆さんが知っていなければならないことと区役所に話をしたところ、増刷をしてもらえて全戸配布することができました。やはりこういうことは、皆さんが知っていないといけないと思っています。
私たちが直接伝えるのはとても労力がいるし、難しいことなので、皆さんに現物を見ていただいた方がいいと考えています。
市長
こちらも分かりやすく、見やすく作られているので、他の区でも活用していかないといけないと思っています。
参加者
ある町内会では、このリーフレットの中に避難者カードを入れて、震度5強以上の地震が発生しても一時避難場所に行って避難者カードを提出して「在宅避難」することを伝えれば3、4日すると救援物資が届くという工夫もしています。
あと、配布について一つ気付いた点がありました。お年寄りの家を回る機会があった時に在宅避難の話をしたら、「なんか来ていたけどよく分からないからそのへんに置いといたら、どこに行ったか分からなくなっちゃった。」という話を聞いて。配布するに当たっては、町内会それから行政もここに気を付けてくださいとかもう少し目立つように広報誌などでも訴えることが必要だったと、細かい気配りが必要だったと反省しています。
市長
いわゆる「在宅避難」について地域の皆様の反応、お考えはいかがですか。
参加者
今までは何かあったらすぐ防災拠点に避難してくださいとなっていました。ただ、うちの地域でいうと避難先は山の上なので、そこまで登って行く途中にはがけ崩れの危険性のある所を通って避難することもあります。避難所への避難もすごく大事なことですが、「在宅避難」を取り入れて地域防災拠点のあり方を考えていただきたいと感じます。
市長
人口が多いことも横浜市の特徴で、発災時には多くの避難者がでますから、地域防災拠点の収容力の問題などもありますし、コロナ禍では感染症のリスクも考えると「在宅避難」も周知していかなければいけないと思っています。
参加者
「在宅避難」をすることは賛成です。ただ、「在宅避難」だとさまざまな情報の入手が難しいと思っています。
地域防災拠点をただ避難所にするだけではなく、情報支援基地として「在宅避難」をしている方々と地域防災拠点を繋ぐことが重要かと思います。
避難するとき、まず一時避難場所に集まることになっています。その一時避難場所と地域防災拠点との間をどのようにしてコミュニケーションを取るかということが大事で、それができると「在宅避難」も生きてくると思っています。そこのところを行政も含めみんなで考えないといけないと思っています。
市長
一緒に考えないといけないですよね。
参加者
災害時に携帯電話は繋がらなくなってしまうので、地域防災拠点と各町内会の間で、負傷者の受け入れなどのやり取りをトランシーバーですることを始めました。そういう情報受伝達の方法を作っていただければと思います。
避難してきた方が誰でも避難所開設ができるように
市長
地域防災訓練において、課題と感じられているところはありますか?
参加者
一番課題を感じているのは、参加者が少ないことです。特に若い男性の参加は少ないです。
成果としては、横浜市が作成した「『地域防災拠点』開設・運営マニュアル」というのがあり、それを基に、防災訓練を行っていますが、全体のレイアウトなど、その地域防災拠点独自のものも有ります。また、我々運営委員が、発災時に必ずしも地域防災拠点に行けるか分からないので、一般避難者の誰もが、避難所を開設できるように避難所解説のアクションカードを作成しました。「運営委員の参集、鍵の入手、防災備蓄庫より必要備品の準備、検温・消毒、体育館、学校施設の点検、避難所開設連絡。要援護者発熱専用スペースを準備。一般避難者と発熱避難者等の導線分け。避難者受付の設置。集計用ボードの準備。トイレパットの準備」といった11の項目をまとめてあります。
同じ意識を持ってそこに参加することが大事じゃないかなと
市長
たかた防災ふれあいまつりを企画されたきっかけはなんでしょうか。
参加者
運動会のマンネリ化もありました。
高齢者の方は運動会となると参加が難しいです。小さいお子さんは参加できる競技があり、小さいお子さんが来ると保護者の方も来るので、それに防災を紐づけて親子一緒に参加してもらおうと考えました。運動会的なものも取り入れて、例えばバケツリレー競争をやることも考えています。
防災の要素が入ってくれば、さまざまな団体がありますので、町内会だけではなく、いろんな団体が同じ意識を持って参加することが大事だと思っています。
市長
子どもからお年寄りまで参加できて、訓練に参加される方が少ないという課題も踏まえての仕掛けですね。
市長コメント
市長
皆さまの実体験に基づいたさまざまなアイデア出しから、それを実行に至るまでの取組を聞かせていただきまして、私も横浜市政を預かる身として、防災・減災の取組をより進めていく必要性を感じました。
地域に応じてさまざまな災害の種類があり、リスクの程度も異なってきますので地域ごとにきめ細かく対策を考えていく必要があると思います。併せて、より多くの住民の方々に訴求・カバーするような仕掛けや取組が必要であるということを改めて感じましたし、行政として自治会町内会の皆さま方と連携して皆さまの「これでは分かりにくい」「こうすれば伝わる」そういったご意見等をきちんと汲んで、取組をさらに進めていきたいと考えております。
本日は誠にありがとうございました。
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