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第14回「市長と語ろう!」
最終更新日 2022年11月2日
開催概要
≪テーマ≫子育て(困難を抱える高校生への支援)
≪日 時≫
令和4年7月28日(木曜日) 10:30~11:30
≪会 場≫
南区役所(南区)
≪対話団体≫
ようこそカフェ(南区)
≪団体概要≫
市立横浜総合高校内のフリースペースに平成28年オープン。家庭の事情、将来のこと、いじめ、不登校など様々な困難を抱えながら、これから社会に出ていく高校生に対し、社会的孤立の予防やコミュニケーション能力の向上、キャリア形成等の継続的な支援が求められているものの、多忙な学校教員だけでは対応が難しい状況において、地域のNPO 法人と連携して、身近な「居場所」「相談の場」となるようオープン。カフェでは、青少年育成や若者支援の分野で活動する団体のスタッフを中心に、大学生から社会人のはば広い年代のボランティアが食育、体験活動などを通した、なにげない会話の中で高校生の悩みや不安に耳を傾け、直面する課題に一緒に向き合う活動を行っている。
対話概要
※ 文意を損なわない範囲で、重複部分や言い回しなどを整理しています。
市長挨拶
市長
横浜市には大変多様な課題がありますが、優先をしたいことの一つとして「子育て」を考えています。子育てといっても乳幼児から成人になる一歩手前までと非常に多様です。また、それぞれで多様な課題があると思います。子育てとは人間を育てる過程ですから、様々な側面があって当然だと思います。
今日は困難を抱える高校生への支援という観点で、是非色々お話を聞かせていただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
一人でも、グループでもふらっと立ち寄れる場所「ようこそカフェ」
参加者
横浜総合高校は3部制の高校で、朝・昼・夜、非常に多くの生徒が通っており、総合学科の単位制で、枠組みとしては定時制の学校ということになります。様々な背景を抱えている生徒も通学している実態もあります。学校という枠組みの中で、対応できる問題ばかりではなく、複雑な事情を抱えている生徒もいることから、様々な外部機関にも相談をさせていただいて、このカフェ事業が始まりました。
参加者
「居場所カフェ」という事業は、学校内で若者支援団体などが学校の職員と連携をして運営しているものです。県外の経済的困難を抱える高校からスタートし、全国に広がり神奈川県内では現在12校で13のカフェが運営されております。
本校の「ようこそカフェ」という名前は、横浜総合高校を略した「よこそう」と「誰でもいつでもようこそ」を生徒がもじってつけてくれた名前です。2016年10月にオープンし、6年目を迎えております。4つの若者支援団体の方々に運営していただいて、県内では一番大きな規模で、横浜市内、横浜市立の学校の中では唯一のカフェです。
「ようこそカフェ」にはいくつか役割があり、一番大事なのが、生徒たちの居場所であるということです。カフェに集まってくるのは、基本的には生徒ですが、地域の方々も見えたり、高校生に何か支援したいという企業さんもいらしたりします。あとは当校に入りたいと中学校の生徒が「どんな雰囲気かな」と見に来たり、見学者の方は非常に多いです。また、全国的にも珍しい取組ですので、マスメディアの取材も多いです。
とにかく大事なのは生徒の居場所ということで、一人でも、グループでもふらっと立ち寄れる場所にしています。アルバイトやお家のお手伝い、学校に塾にと忙しい生徒が多い中で、先生たちもあんまり入って来ないので、ゲームをしたり、一人でのんびり過ごすことができる、ほっと一息つける居場所になっています。
市長
先生たちはあんまり足を踏み入れないのですか?
参加者
あまり踏み入れないですが、雰囲気がすごく楽しいし、中々授業に出てこない子もカフェには顔を出していたりするので、気になる子に会いに行ったりしています。
先生でもなくお家の人でもない、お話ができる人がいる場所
市長
オープン時間は水曜日の12~17時半と書いてありますけど、夜も需要がありそうかなと思うのですが?
参加者
17時10分から3部の夜の子たちの授業が始まって、授業中になってしまうので、夜参加したい子はちょっと早く来るのが今の状況です。
この場所は相談できる場所にもなっています。若者支援団体の皆さんとか大学生のボランティアの皆さんがいらっしゃっていますので、軽い日常の話から深刻な話まで、大体いつも同じボランティアさんが来ていただいているので、先生でもなくお家の人でもない、お話ができる人がいる場所になっています。
その他に、様々な体験活動の窓口にもなっていて、いつものスタッフの方に「これ行ってみなよ、面白そうだよ。」と背中を押してもらって、農業体験や漁業体験といった貴重な体験をしています。
コロナ禍でもカフェのスペースを守っている
参加者
2017年5月からは食育事業も始まり、旬の食材を使った栄養満点のお料理を提供しています。
市長
食材の入手などはどうしているのですか?
参加者
食材は色々な企業や保護者の方からの寄付で賄っております。また、カフェとしても予算を付けていただいています。
コロナ禍では、飲食を伴うカフェは逆風でしかない状況でしたが、生徒たちの憩いの場を絶やすわけにはいかないとNPO団体の方々が色々工夫を凝らしていただいて、休校期間は悩み相談を受け付けることしかできなかったのですが、休校が明けてからは外なら感染リスクも少ないだろうということで、室内にあった丸いテーブルを中庭に出すなど、手を変え品を変えながらカフェのスペースを守っています。
地域のボッチャ協会の方にいらしていただいて、カフェの片隅でボッチャのレクチャーが始まったり、キャンプ用の椅子を購入して中庭に置くことで、なんとなくキャンプ気分を味わえたりしています。学校職員もカフェのお手伝いをしてくださったりします。
カフェで作ったおにぎりを会話の糸口に
市長
料理はカフェの中のメインの取組になっているのでしょうか?
参加者
ほかの居場所カフェでここまで食育やキッチン部門があるのは珍しいと思います。
カフェで、スタッフの方々に「授業行ってきたら?」とか言われて渋々行く生徒もいます。
市長
雰囲気がいいから足を運ぶのだろうと思っていて。雰囲気がいいのはなんでなんだろうと思ったのですが、それは料理とか食育とかで結び付いているのですね。
参加者
ただ相談に乗るよということだと中々人は来ないです。飲み物とかお菓子とか、カフェで作ったおにぎりを会話の糸口にして、少しずつ関係を築いていける部分はあります。生徒たちからは、もっとしょっぱくしてほしいとか、お肉使ってほしいとかリクエストも結構あります。
市長
そこまで言える関係になっているということですよね。
参加者
毎回同じメンバーで来てくれているというのがカギになっていて。毎週話を聞いてくれる、自分を受け入れてくれるという経験が彼らの中では積み重なっていると思います。
1部から3部まである中、カフェで出会って、なんとなく話すようになって仲良くなる「カフェ友」なんていう言葉も生徒の中から出てきたりして、のんびり思い思い過ごしています。
学校職員のカフェへの想いの変化
参加者
2015年に、居場所カフェを開く場を探されていた「よこはまユース」と、生徒の居場所に関しての執筆をされていた横浜市立大学の先生が、横浜総合高校に行き着き、2016年にカフェが開設されました。「よこはまユース」を軸として「多文化共生教育ネットワークかながわ」と「横浜メンタルサービスネットワーク」の3つの団体で構成していたところに「ユカナガシマクッキングサロン」が参入し、学校と一体で運営しています。
その後、それまで散発的であった就業産業体験を、漁業体験・農業体験のような第一次産業体験として常設するようにしました。そのほかにも、DVの関係で、「エンパワメントかながわ」が参入しました。
開設当初の立ち上げから携わってきた各団体のスタッフの方々や、高校も農業体験等で活躍された先生が他校に異動されたりして、今まで活動に関わってきていただいた方々も入れ替わる、そういう時期に差し掛かっています。ちょうど節目に当たるような時期になっています。
横浜総合高校にも複雑な課題を持った生徒が入ってきます。家庭に原因があったり、あるいは本人の障害や病気、または過去の学校との関係など、課題は様々です。それらは学校の中だけでは解決できないものもあります。外部のスクールソーシャルワーカーなどがいる場所として、カフェが存在します。
様々な背景を持つ生徒の中には単純ではない事情を抱えている生徒もいます。そういった中に、カフェを作ったからといって、最初からすんなり上手くいくようなことは当然ありませんでした。
学校は保守的な部分もありますし、外部の協力を求めるカフェに対して当初は風当たりが強かったこともありしました。「そもそも指導というものは外部の人に任せるのではなく、自分たちでやらなくてはいけない。」という強い意思を持たれている先生もいました。また、なんとなく「外から来た人って嫌だよね。」といった意見もありました。あと、そもそも反対でも賛成でもなく、カフェの意義を理解するというところに至らなかった人もいました。一方で、「やってみようよ。」という賛同者もいました。
当初、学校としては「場所を貸してあげている。」というスタンスでした。それが、5年経ち、多くの職員はカフェに協力して貰っているという思いに今は変わっています。元々はカフェに反対していた教員で定年後には、率先してリーダーとして活動に協力していただいている方もいらっしゃいます。
カフェと連携しての生徒指導
参加者
進路指導において、当初は、卒業後に進学するでも、就職するでもなく、何もしないという生徒が3~4割いたのですが、学校の頑張りがあるというのも前提にありますが、カフェの効果もあり、その割合が10%台まで落ちてきているという成果が数字として出ています。
開設にご協力いただいた大学の先生のお考えもあり、学校の中に学校じゃない場所を作る方が生徒は発言がしやすいということで、教師の関与は最低限に抑えています。でも、カフェのスタッフの皆さんと連携を取って生徒指導に反映しています。教師がカフェの情報も参考にしながら指導するので、指導に一貫性が出ます。
そして、食べることに困っている生徒もいるので、食育も行われています。それを発信しているところにも強い面があります。マスメディアの取材や、県外から見学も多数お越しいただいて、具体的な検討をする際のモデルになっています。
市長
こういった取組で居場所を作るっていうのがすごくうまくいっている事例なんじゃないかなと、拝聴して思いました。
「居場所ってこういうことだな。」
市長
このような取組は、他の高校などにもっと広がっていいと思いますが、課題はありますか?
参加者
高校は義務教育ではないので、中学校のように横の繋がりではなく、学校単体で動いているところがあります。加えて、県立と市立の違いもあり、横の繋がりが取りづらいのが現状です。
市長
他の高校もこうした取組に関心を持たれていますか?
参加者
関心がある方もたくさんいると思いますが、広がりの難しさは「居場所」という言葉の捉え方の難しさもあります。私も長く活動して、「居場所ってこういうことだな。」って解るようになってきた部分があります。生徒からのメッセージには「安心して過ごせる。ありがとう。」とか「笑って迎えてくれる。ありがとう。」といった言葉があります。自分の生活環境の中では、大人たちがいつも怒っていたり、家に帰ったら家が真っ暗だったり、自分が居ていいと思える環境がなかなか見つからない。その裏返しのようなメッセージがたくさん散りばめられており、「居場所ってこういうことだな。」っていうのが4年目、5年目くらいのときにやっと気付くことができました。居場所づくりと言われた時に、先ほども「カフェには顔を出す。」とありましたが、「授業をさぼってそこにいるのはけしからん。」という先生方の価値観に対して「カフェって何ですか。」と聞かれたときに、「こういうものです。」と説明することの難しさはあります。カフェサミットというものがあって、各校のカフェマスターが集まって座談会をする機会がありますが、「ようこそカフェ」以外のカフェマスターさんは、「先生方の理解、協力」についての課題で熱弁されていることが多いです。
市長
学校とはどうあるべきかという捉え方の範囲が、各学校の考え方にも依存するのですね。そこをどう柔軟に考えるかですよね。メリット・デメリットはあると思いますが、「ようこそカフェ」でのデメリットはありますか?
それを上回る「居場所づくり」というメリットがあるからこそ、続けようっていう判断になっていると思うのですが。
参加者
当初は職員会議で意見の相違が出ましたが、今はほとんどありません。デメリットを聞いていただいたのですが、考えてもあまり浮かばなくて。カフェに入っていただいて本当によかったという感じです。
「心を満たすためには飴玉一つでも口に入れること。」
市長
食育、料理の提供という形で活動にご参加いただいたのは、どのようなきっかけでしたか?
参加者
カフェに伺った時に、「このカフェが始まってこのように生徒が変わった。」と、先生が目を輝かせながら仰っていた時に、私もここでやることがあると確信しました。子どもたちが食に乏しいといった状況がよく分かっていましたので、様々な子どもたちに「必ずあなたたちには支える大人がいるよ。」ってことを示すことが絶対できると思い、そこからすぐに動き始めて最初は3色わらび餅を作ったのです。何回も何回も取りに来る男の子がいて「あ、お腹がすいているんだな。」って思いました。最初は「一緒に作ろう。」でしたが、一緒に作るよりも、とにかくお腹を満たしてあげようと思いました。
コロナ禍になっても、子どもたちは職員の姿であったり、地域の人の姿を見て育っています。なので、私たちがいかに工夫して、どのように対応しているか、彼らのことを「一人ずつしっかり見ているよ。」ということをそれぞれの立場、それぞれの形で示すことがいいと思っています。そして、私はやっぱり食をツールにしています。「心を満たすためには飴玉一つでも口に入れること。」、よく赤ちゃんがミルクを飲むために乳首を吸うのはやっぱり安心感があるからですよね。その満たされるものは何かと思いながら活動しています。中には昨日から何も食べていないとか、3日前に買った食パンで今過ごしていると聞けば聞くほど、一人1個ずつおにぎりを渡して、カップによそう時には、目を見て「元気だった?」と、全員の様子の違いに気付くということをスタッフと心掛けています。それを大学生ボランティアの方やよこはまユースの方が輪をかけてフォローしてくださりながら、空気感を作っていくことが何より大事だと思っています。私たちが協力していることが分かるからこそ、先ほどのような数値にもでるし、子どもたちもこのカフェに来たいっていうことに繋がっていくのではないかと思います。
「活動への想い」と「今後の課題、展開イメージ」
市長
その事業に関わられている想いと今後の課題、展開イメージをお聞かせいただけますか?
参加者
学校の中でいろんな生徒の話を聞いていますが、コロナ禍に卒業した生徒が、親御さんの仕事が無くなって、奨学金を貰いながら進学をして、勉強をしているけど誰にも相談ができない。誰に話したらいいのか分からないといった状況でその子が思い出してくれたのが当時のカフェのスタッフだったということがありました。そのスタッフが今いる場所がたまたま分かっていたので、「ちょっと困っている。」と相談しに行って、そこから私たち現在のカフェのスタッフに繋いでくれました。カフェの繋がりが無かったらその子が困っているときに、話を聞ける大人は居なかったと思います。繋がり自体は細いけれども、繋がっていたから本当に困った時、どうやって生きていったらいいか分からない時に相談することができたっていうのが、このカフェの必要性というか、誰にとっても必要な場所なのではないかと私は思っています。だから、やっぱり広がっていった方がいいと思っています。
参加者
少しでも同じような課題を抱えている学校に、就業体験の機会を一緒に提供していくことを大事にしていきたいと思っています。あと、高校生は高校生だけで固まってしまって、異年齢の交流の機会がありません。今は、放課後キッズクラブとか学童保育がありますので、そういった子どもたちに、部活動とか趣味を活かしたワークショップを高校生にやっていただいて、交流していくことをやってきたいと考えているところです。
今、学校にはカフェを理解していただきましたが、地域の方にもご理解いただきたいというのもあります。地域の防災イベントなどに参加して、そこで例えば農業体験で得たものを販売して、その利益を防災の物品の購入に充てたりする取組を少しずつはじめていますので、来年度はそういった活動を拡大したいと思っております。
参加者
小中連携は教育委員会でしているのですが、なかなか高校だと地域に開かれないのが課題だと感じています。市立だからこそ市立の小中学校と繋がる方がいいと思っています。市立高校の役割として、地域との関わり合いをもっと積極的にできる土壌が必要じゃないかと思っていて、それこそ「ようこそカフェ」を核に横浜総合高校が基盤になって、広がっていくと良いと思っています。
参加者
当校の生徒にも、複雑な背景を抱えた子も多くいます。学校に対する肯定感とか信頼感といった点でも小中学生で躓つまずいてしまった子もいます。だからこそカフェに救われているところがあると感じています。いろんな学校に勤めて、自己肯定感が高くて自分でしっかりやれてしまう、自分で勉強もでき、自信をもっている生徒も多く見てきましたが、そうでない生徒たちの「居場所」としてカフェが求められるのだと思います。だからこそ大事にしなくてはならないと考えています。
市長コメント
市長
他の子育て団体のお話を聞いていると、自治会町内会と連携をされている事例もありました。こちらの活動も、自治会町内会と連携し、さらに地域との繋がりを持つことで先進事例になる気がします。
今後の展開イメージはいろいろあると思いますが、私も皆様のお話を聞かせていただいて、様々な可能性がある活動であると思っていますので注目しています。ありがとうございます。
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