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第7回「市長と語ろう!」

最終更新日 2022年8月24日

開催概要

≪テーマ≫子育て(不登校児童・生徒の居場所づくりについて)

≪日時≫

令和4年6月29日(水曜日) 9:30~

≪会場≫

いちょうコミュニティハウス(旧いちょう小学校内)(泉区)

≪対話団体≫

一般社団法人かけはし(泉区)

≪団体概要≫

子ども達が安心して過ごせる居場所づくりやESD(持続可能な開発のための教育)、学習支援を通じて、新しい時代の中で次世代を担う子ども達が自己肯定感を高め、よりよい社会を想像していく一助となるように努め、社会に貢献することを目的に、元教員の現代表夫妻が令和3年に設立。「居場所づくり事業」「相談事業」「学習支援」などの事業のほか、区内の子育て支援団体と連携して「泉区こども若者の居場所連絡協議会」を運営。

対話概要

※ 文意を損なわない範囲で、重複部分や言い回しなどを整理しています。

市長挨拶

市長

皆さん、今日はお忙しい中お時間いただきありがとうございます。
子どもの政策を動かしていくことは大都市ならではの様々な課題があります。いろんな事情を抱えているお子さん達との共生社会をどのように作っていくかがとても大きな課題だと思っています。
このたび、「かけはし」の皆さんが不登校児の居場所づくりに関する活動をされていることを知り、みなさんと直接会って話すことを楽しみにしていました。みなさんから直接知見をいただくことで、今後の横浜の子育て支援に生かしていきたいと思いますので、今日はよろしくお願いいたします。

自己否定感を自己肯定感に

参加者

今も隣の教室から、子ども達のにぎやかな声も聞こえてくると思います。居場所があることで元気になってきましたが、最初に来たときは表情が無いというか声が出せない状態でした。今こうやって居場所で皆さんに支えられて、本来の子ども達の力が湧いてきたという印象を持っています。
私と妻も14年と17年教員を続けてきて、その中で、生きづらさを抱えている子ども達との出会いがものすごく大きく、1年3か月前に、ここで中学生の1人の男の子から居場所づくりが始まりました。
その子は、中学になって1回も学校に行っていないという話を聞いて、その子にとっての居場所を学校の中で作ることが難しいなら、学校以外の場で作る必要がある。妻は専任(※)をやっていましたので、学校に行きづらい子や保護者と向き合ってきた中で、学校以外に子ども達が安心できる居場所を作りたいという同じ思いで、二人で設立しました。
今では30人以上の子ども達がここに通っていて、多い時には同時に23人来ました。人間関係で悩んだりとか、学校の仕組み自体に違和感があったり、一人ひとりの背景によって不登校になっている子はたくさんいます。ただ、共通しているのは自己否定感です。「自分なんて本当に生きる意味が無い」とか、不登校の状態になるとそこまで苦しくなっています。親もまた苦しんでいる状態にあって、私達はその自己否定感を自己肯定感に変えたいという気持ちで活動してきました。

※児童支援専任教諭
小学校における児童指導の中心的役割を担う教諭で、横浜市独自の制度として全校に配置。いじめをはじめとした問題行動への組織対応のコーディネート、他機関との連携、担任のサポート、保護者との連携、特別支援教育コーディネーターとしての役割などを担っている。担任を持たず広い視野で学校内を俯瞰できるため、いじめのみならず福祉的分野でも役割や期待は拡大している。

「土になりたい」を合言葉に

参加者

私達は、「土になりたい」を合言葉にしています。良い土があれば自然に植物が育つように、その子に合わせた良い環境があれば自然と本来の力を発揮できると思っています。「私達は環境の一部」その子にとって良い環境になるという意味で子ども達一人ひとりと寄り添いたいと思っています。
 こういった居場所を開催するにあたり、下和泉地域ケアプラザ、いずみ野地域ケアプラザの地域交流コーディネーターの方々とも連携をさせていただいています。ケアプラザやコミュニティハウスを活用させていただき、曜日毎にそれぞれの場所に移動する形で活動しています。決められたカリキュラムは特に無いので、「自分で決めていいよ」と言っています。最初は来てすぐ帰る子も居たのですが、その想いにとことん寄り添い、その子に決定権を委ねる、それが信頼関係を築いていく一つになると思っています。

市長

自己肯定感の醸成に「自分で決められる」。

参加者

「自分で決める」ことを大事にしています。将来自分で自分の生き方を決めていく時の一つの助けになるという思いがあるので、私達が決めない。私達は、決めることをサポートするスタンスでやっています。

「心の声」を真剣に受け止めていきたい

参加者

小学1年生から中学3年生までいますので、最初はバラバラで、私達も個々に寄り添ってきましたが、今は子ども達が自然に仲良くなっています。ここではクラスなどの枠が無いので子ども達自身が関係を作っていく。子ども達は人間関係を作り出す力があることを証明してくれています。
かけはしの「まなべる居場所」に来ている一人の子は、学校に行けなかった理由を言葉にしてくれて「僕は学校行くのを辞めた、一人で生きていくことを決めた」と言ったのです。
私が「実際に一人でいたとき、どうだった?」と聞くと、「一人で居てやっぱり寂しかった」と言ったのです。一人で居ることを決めたけど、やっぱり一人は寂しいということに気づいて、本当に孤独だったと思います。その孤独に大人である私が、寄り添って安心できる居場所を作るしかないと今でも強く思っていますし、誰かと関わりたいけど動けない、声が出せないという「心の声」を真剣に受け止めていきたいと思っています。

点で頑張るのではなく、線で結んで網目に

市長

「泉区こども若者の居場所連絡協議会」を発足されて他の団体と横連携をされている取組もすごく素晴らしいなと思っています。

参加者

私達ができることは居場所づくりや学習支援ですが、ほかに泉区内で子ども食堂や無料塾、コミュニティカフェなど草の根で頑張っているいろんな団体と連携をして、繋がりあう中で網目を作ろうと思っています。点で頑張るのではなく、線で結んで網目にして、取り残されている子や支援が行き届かない子を救っていこうと2か月に1回の協議会でも参加団体の方から話が出ています。
 まだ手探りでやっているので、課題は山ほどありますが、居場所としても成長していきたいという想いはあります。保護者の負担が厳しい家庭もたくさんいらっしゃるので、減免制度を用いて、経済的困難を抱えている家庭の子を受け入れたりして、全ての子ども達に教育を受ける権利を保障するために、誰でも来られるような居場所を作りたいと思っています。そういった財政面での課題に、無償ボランティアの方々の優しさでなんとか成り立っている場所です。1年半で30人以上の方がボランティア登録をしてくれて、本当にマンパワーに支えられているので、これからもそういった繋がりを大事にやっていきたいと思っています。

「自分が自分で良い」と思えない

市長

自己否定感がどの子も強いと仰いましたが、来られているお子さん達が抱える悩みとか心配事で多いことはどういうことですか?

参加者

学校に行けない状態というだけで、「人とは違う」と自分を責めたり、社会から外れたみたいな、そういった想いはきっとあると思います。
子どもの心の傷が、すごく深く、その状態が長くなるほど、将来が不安になってくる。自分が学校に行けてなくて将来どうなってしまうのだろうとか、保護者も同じだと思いますが、その子自身が誰とも関われていない中で孤独感がありますし、「自分が自分で良い」と思えない状況にあるのかなと思います。

支援の場を学校以外にも

市長

小学校の教員のお立場から、「かけはし」を作られて子ども達を支援する立場に変わられたわけですが、個々の小学校だと難しい側面もありましたか?

参加者

限界はあると思います。本当に先生達は、ものすごく頑張っています。不登校の子どもがいれば、誰かが傍に寄り添いたい。でも、そこに人が割かれるし、絶対的に人が足りていない。先生達もできる限りのことをやってはいるのですが、現場も疲弊していると思う。なかなか支援しきれないので、支援の場を学校以外にも作っていかないと学校も潰れてしまうと思います。


市長

利用者の方々は、どうやってかけはしを知ったのですか?

参加者

最初は知り合いからの紹介が多かったですが、いろんな公共施設に「こういう場所を作り、活動をしています」とお伝えして、そこからのご紹介や、区役所からもパンフレットでご紹介いただいています。あと学校や教育委員会からの紹介や、ご自分で「不登校 居場所」とかでネット検索してという方もいます。

「一歩外に出るための場所」としてあり続けるために

市長

活動の仕方は色々あると思うのですが、ゴールは子ども達の笑顔を見ることだと思います。そのゴールに向かって、もっとこの輪を大きくしたいと思います。去年の4月頃始められて、昨年後半くらいに協議会を立ち上げていますが、持続可能にしていく上での課題をお聞かせ下さい。

参加者

私は「かけはし」とは別に、15年前から不登校の子を持つ保護者の悩み相談や居場所づくりしてきました。元々は不登校のお子さんの保護者の方も、とても悩んでいるということで「保護者の会」として区が立ち上げたものですが、小学校の低学年の子たちを置いて保護者だけの会では保護者も心配なので、お子さんも一緒にいられる居場所を立ち上げました。
本当に部屋からも出てこられないというお子さん達が一歩外に出るための場所として始めているので、今は出て行かれないけれども「そこがあるから、もう少し頑張ってみる」とか、親も子も心の頼りにしているところがあるので、私達は彼らが来なくてもやっていないといけない。採算性とかは一切無しで、続けていなければならない。ある時突然「人が来ないのでやめます」とすると、この方達は「え!何かあったら行けばいいと思っていたのに。自分達はどこに行けばいいの。」となる。だから、来なくてもとにかく「続けます」「待っています」というスタンスで活動しています。

参加者

無償ボランティアさんに支えられているのですが、その人たちに何か少しでも恩返しできるような仕組みが無いと持続可能にはならない。私達もその方々と繋がっていけるかというのはすごく不安定すぎると思う。
子ども達一人ひとりが抱える悩みは、心理的な面をすごく抱えている子もいる。そういう保護者も不安定な状態です。そこを支えられる人材がいるのかというと、居場所以外の時間帯に専門的なケアができる人材も不足している。頼るところがなかなか無く、私達を頼ってくださいますが、それに応えられるだけのものがないと持続可能にならないかなと。

参加者

今は繋がりをつくることで補っています。色々自分達だけで抱えないで、詳しい方に繋げていくという形です。

市長

協議団体を作ることは、そういうことに横連携していくという意図があるのですか。

参加者

あります。私達にもメリットがあるし、ほかの団体にとってもメリットがあると思います。

機動力・行動力でニーズを掘り起こす

市長

泉区では、団体がきちんと横連携できているのは素晴らしいと思っています。我々行政としても、情報を得やすい環境であるとか横連携しやすくするとか、そういうところで団体の安心感を強めていきたいと思います。区役所と今後どういう連携が考えられますか?

参加者

居場所だけではなくてコミュニティカフェというのを作りました。不登校になった子は、学校の次に社会に出るという大きな壁があります。保護者の方は「自分の子が社会にどうやって出ていけばいいか」という不安がものすごく強い。そういう子供たちが緩やかなステップになるような就労支援に繋がる場が欲しいという話があり、コミュニティカフェを作って若者が働いています。そのカフェのことを区役所が発信してくださり、私たちの取組をすごくバックアップをしていただいていると思っています。そういったバックアップのおかげで、活動が段々広がってきて、不登校に悩むご家庭の方々にも届くようになってきています。ネットワークの活動も、区役所に話し合いの内容を伝えて、理解してもらう流れになっています。区役所と連携が取れているので、しっかり情報を共有して、こういった課題があるというのを公民連携じゃないですけど、行政が動けないところを機動力・行動力で動けるところがあるので、ニーズを掘り起こして少しでも困っている家庭が減るように努力したいと思います。

笑顔になるヒント

市長

学校との連携ですが、他区や他市の子が通う学校とも連携を取られていますか?

参加者

入会をしたら必ず保護者と子どもに学校連携を希望するかを確認しています。希望する場合は、専任や担任とどのように連携をしていくかを相談します。

市長

皆さんの活動を知っている校長先生ばかりではないですよね。中には難しい学校もありますか?

参加者

初めて電話する学校に一般社団法人「かけはし」と言っても、繋げてくれない学校もあります。最初は不信や不安があると思いますが、私達もしっかり子どもの様子を具体的にお伝えしています。これだけ子どもを見て、支えているということを伝えていることや、元教員ということで教育現場を知っているという点で信頼もいただいているので、そこは自分達の強みを生かしながら関わらせていただいています。

市長

学校との連携はどのようにされているのですか?

参加者

必ず訪問して、出席簿と子ども達の日々の記録をかなり詳細に共有しています。
「こんないい面があると気づきました」「こういうことに今興味あります」と直接とお伝えすると、その子にとってプラスになって笑顔になるヒントがお互い見つかります。話し合いをできることにとても意義があると考えています。

お互いの強みを知り、信頼関係をつくる

市長

泉区は人口が15万人で1つの市の規模に近く、不登校児を支える団体さんも多く、横連携が重要だと思います。横連携することで、どのような効果を期待できるか、それから課題を教えていただけませんか?

参加者

教員を辞めるまで、これだけ地域に子ども達を支援してくださっている団体があることを知らず、学校の狭い枠の中でなんとかしようという思いがありました。何らかの事情で家庭に居場所が無い子ども達にケアプラザが居場所を開いている、そこにボランティアで関わらせていただいた。ケアプラザも、泉区のコーディネーターの方々が本当に子どもの支援に取り組んで下さっていますし、NPO法人や、子ども食堂もまた新たに区内にできています。親の会も15年前からやられていたり、行政と繋がっている子ども・若者を支援している民間団体がたくさんあり、頑張っています。でも、それぞれ葛藤やもどかしさみたいなものはあります。今年はそれぞれの場所を見学することにしています。見学して、お互いの強みを知り、信頼関係をつくる。そこからと思っています。会議には、これからの横浜を背負っていく若者が議事録を作ることに参加してくれています。

学校全体と地域全体が大きく繋がること

参加者

私は今、学生をしており、教員を目指しています。学校にボランティアで行かせていただいていますが、学校という枠組みがかなり強く、排他的になってしまうと感じています。教師が個人で頑張るのではなく、地域でも学校を支えていく、地域と学校の繋がりを強化していかなければならないと感じています。
さらに個人で情報を持つのではなく、学校と地域が大きく繋がっていけると、よりこの活動は広まっていくのかなと感じます。

市長

そういう気持ちをもった学生さんが横連携していくことが重要かなと思いました。前向きに情報を取りに行って関わってくれる方がたくさんいれば良いですが、そういう情報があれば関わりたいという学生さんも少なからずいると思います。

参加者

それは非常に多いと思います。ただ、教員を目指す人達って、学校が好きだった人が多いのです。学校に毎日通えた人が多いので、不登校がどのような状況なのか、そもそも知らないという人が教員になる。こういったところよりも学校現場にボランティアに行こうという人が多いですね。

きっかけは「応援したい」という気持ち

市長

(泉区ローカルライター(※)として「かけはし」を取材して、活動にも加わった参加者に)「かけはし」を知ったきっかけや、継続して関わられようと思ったきっかけや想いを教えていただけますか?

※泉区ローカルライター
泉区の自主企画事業。区民が関心のある地域資源を取材し、泉区の魅力として情報を発信。

参加者

知ったきっかけは、私の子達が通っていた幼稚園で、卒園した子を対象にした催しに代表が来て下さったのが最初のきっかけです。その時にお話を聴いていたら、すごく「応援したい」という気持ちになり、たまたま去年、泉区のウェブサイトに記事を書くことになった時に「かけはし」が頭に浮かび、取材をさせていただきました。
その後は、個人的な興味が一番でした。ホームページのブログが全然更新されていなかったので、そこなら手伝えるし、やってみたい、楽しそうという思いです。子どもが仕事をしている人と関わる「こどもキャリア大学」を去年取材して、ブログに書くことがすごく面白く、私自身が楽しかったという理由で今年も関わらせていただいています。

市長コメント

皆さんが気持ちを持って子ども達のために関わられている思いを、こちらも受け取らないといけないと思いました。泉区や泉区以外の17区も、いろんな子ども達や笑顔が見られない子ども達をどうやって笑顔にするかという皆さんの思いを、行政として受け取って、さらに連携してやっていかなければいけないと強く思いました。本当に皆さんの活動には頭が下がります。
活動を立ち上げて、継続していく上での課題や横連携していくことの大切さも学びました。より良い行政との連携のあり方をもっと検討していきたいと思います。
本日はお時間をつくっていただきまして本当にありがとうございました。

このページへのお問合せ

市民局総務部広聴相談課

電話:045-671-2335

電話:045-671-2335

ファクス:045-212-0911

メールアドレス:sh-shukai@city.yokohama.jp

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