蚊媒介感染症は、ウイルスや原虫などの病原体を持った蚊が、ヒトを吸血することで感染する感染症です。
ウエストナイル熱、黄熱、ジカウイルス感染症(ジカ熱)、チクングニア熱、デング熱、日本脳炎、マラリアなどがあります。
海外では、蚊が媒介する感染症が多く報告されています。
海外に渡航する際には、渡航前に現地での流行状況を把握し、感染予防対策を行いましょう。
さらに、これらの感染症の多くは、日本に広く生息する蚊(ヒトスジシマカなど)も媒介できることがわかっています。
海外で感染して帰国した人から、国内に感染が拡大することを防止するため、帰国後も注意が必要です。
感染を防ぐための対策は、感染を防ぐためにをご確認ください。

- 厚生労働省の「蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針」及び「デング熱・チクングニア熱等蚊媒介感染症の対応・対策の手引き 地方公共団体向け」に基づき、「横浜市蚊媒介感染症対策指針」を策定しました。
「横浜市蚊媒介感染症対策指針」(PDF:338KB)(平成28年4月) - 市内の公園や港湾地域等で蚊のモニタリング調査を実施しています。蚊の生息状況調査の概要や、ウイルス検査実績は「横浜市の蚊のモニタリング調査について」のページをご覧ください。
- 平成26年8月、東京都で発生したデング熱の国内発生に伴う横浜市の対応については、「デング熱の国内感染例への対応について」のページをご覧ください。
- 原因:ジカウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
- 感染経路:ジカウイルスを持った蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどのヤブカ類)に刺されることで感染します。また、献血や性交渉により、感染する場合があります。
- 発生地域:アジア、中南米・カリブ海諸国、アフリカ、オセアニア・太平洋諸島、北米地域で発生しています。
- 症状:2~12日(多くは2~7日)の潜伏期間の後、軽度の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、発しん、結膜炎などがあらわれます。また、妊婦の感染は胎児の小頭症発生の原因となることや、神経症状(ギラン・バレー症候群)の原因となることが分かっています。
- 治療:特別な治療法はなく、対症療法を行います。
- 予防:ワクチンはありません。蚊に刺されないようにすることが唯一の予防方法です。
特に、次のことに注意しましょう。
- 流行地域に渡航される方へ
蚊に刺されないように、十分な対策を行いましょう!対策方法は「感染を防ぐために」をご覧ください。
- 妊娠している方やそのパートナーの方へ
妊娠中のジカウイルス感染は、胎児の小頭症を引き起こす可能性があります。
妊娠の可能性のある方や妊婦の方は、出来る限り流行地域への渡航を控えましょう。
やむを得ず渡航する場合は、現地で厳密な防蚊対策を講じることが必要です。
また、性行為感染の予防に関して、次のことが推奨されています。
- 男女ともに、流行地に滞在中と、流行地から帰国後最低6か月間(パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中)は、症状の有無に関わらず、性行為の際に、コンドームを使用するか性行為を控えること。
- 流行地域に渡航歴のある挙児希望の女性については、症状の有無に関わらず、最低6か月間は妊娠を控えること。
- 原因:デングウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
- 感染経路:デングウイルスを持った蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどのヤブカ類)に刺されることで感染します。
- 発生地域:アジア、中南米、アフリカなど、熱帯・亜熱帯地方で発生しています。毎年、世界中で5,000万人~1億人の患者がいると報告されています。
- 症状:2~15日(多くは3~7日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、発しんなどがあらわれます。一部は重症型のデング出血熱になることがあります。
- 予防・治療:ワクチンはありません。また、特別な治療法はなく、対症療法を行います。
海外で感染し、帰国後に発症する人の報告が近年増えており、平成26年には約70年ぶりに国内感染が確認されました。
(当時の横浜市の対応は「デング熱の国内感染例への対応について」のぺージをご覧ください。)
横浜市でも毎年10人~20人前後の方が報告されており、注意が必要です。対策方法は「感染を防ぐために」をご覧ください。
- 原因:チクングニアウイルス(トガウイルス科アルファウイルス属)
- 感染経路:チクングニアウイルスを持った蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなどのヤブカ類)に刺されることで感染します。
- 発生地域:アフリカ、南アジア、東南アジアで発生しています。平成19年にはイタリアでも流行が報告されました。
- 症状:3~12日(通常3~7日)の潜伏期の後、突然の発熱、関節痛、頭痛、筋肉痛、発しんなどがあらわれます。
- 予防・治療:ワクチンはありません。また、特別な治療法はなく、対症療法を行います。
- 原因:ウエストナイルウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
- 感染経路:自然界では、鳥(主にカラス)と蚊の間で感染が繰り返されています。ウエストナイルウイルスを保有する蚊(アカイエカなどのイエカ類、ヒトスジシマカなどのヤブカ類)に刺されることで感染します。
- 発生地域:アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジアの広い範囲で発生していましたが、近年まで報告のなかったヨーロッパやアメリカなど西半球にも流行が発生しています。
- 症状:2~14日の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、背部の痛み、筋肉痛、発しんなどがあらわれます。重症化すると髄膜炎や脳炎を発症することがあります。
- 予防・治療:ワクチンはありません。また、特別な治療法はなく、対症療法を行います。
Plasmodium属原虫のPlasmodium vivax(三日熱マラリア原虫)、Plasmodium falciparum(熱帯熱マラリア原虫)、Plasmodium malariae(四日熱マラリア原虫)、Plasmodium ovale(卵形マラリア原虫)などの単独又は混合感染
- 感染経路:マラリア原虫を保有する蚊(ハマダラカ)に刺されることで感染します。
- 発生地域:アフリカ、アジアや南太平洋諸国、中南米など、熱帯・亜熱帯地方で発生しています。世界保健機構(WHO)の推計によると、年間2億人以上の罹患者と200万人の死亡者がいるとされています。横浜市でも、海外で感染した人の報告が毎年数例あります。
- 症状:10~30日の潜伏期の後、発熱、顔面紅潮、頭痛、筋肉痛、呼吸器症状、胃腸炎症状などがあらわれます。発熱は、発熱期と無熱期を繰り返します。(潜伏期間、症状、発熱の間隔はマラリア原虫の種類により異なります。)速やかに治療を行わないと、重症化して死に至ることもあります。
- 予防・治療:抗マラリア薬の予防内服が有効です。また、マラリアと診断されたら抗マラリア薬の投与により治療します。
- 原因:黄熱ウイルス(フラビウイルス科フラビウイルス属)
- 感染経路:黄熱ウイルスを持った蚊(主にネッタイシマカ)に刺されることで感染します。
感染環は以下の3つがあります。
(1)熱帯雨林(森林)型サイクル・・・ヒト以外の霊長類-蚊-ヒト以外の霊長類 (偶発的にヒトに感染する)
(2)都市型サイクル・・・・・・・・・ヒト-蚊-ヒト
(3)中間(サバンナ)型サイクル・・・ヒト-蚊-ヒト以外の霊長類
都市型サイクルは大規模なアウトブレイクを起こす場合があります。
- 発生地域:アフリカや中南米の熱帯地方で流行しています。世界保健機関(WHO)の試算によると、年間8万から17万人の罹患者と6万人の死亡者がいるとされています。
- 症状:3~6日の潜伏期の後、発熱、頭痛、筋肉痛、背部痛、嘔吐などがあらわれます。多くは感染しても症状がないか、軽い症状のみで終わりますが、発症者の約15%は重症化します。その場合は、数時間から一日程度の寛解(完全に治癒していないが、一時的に症状が軽減または消失すること)期に引き続き、高熱の再燃と、黄疸や出血傾向が進行し、20~50%が死亡すると言われています。
- 予防・治療:予防接種が有効です。治療は対症療法が中心になります。国によっては入国に際し黄熱の予防接種証明書の提示を求められる場合があります。黄熱の予防接種は、特定の接種機関でのみ接種できます。
海外へ渡航される方へ ~蚊に刺されないように注意しましょう!~
虫よけ剤(忌避剤)の使用のポイント(参考:蚊媒介感染症の診療ガイドライン)
- 蚊を防ぐために有効な成分「ディート(DEET)」や「イカリジン(ピカリジン)」が含まれるものを選びましょう。
(日本では、ディートは最高30%、イカリジンは最高15%の濃度のものが販売されています。) - 年齢に応じた用法・要領や使用上の注意を守って、適正に使用しましょう。
- 水や汗により、効果の持続性は落ちるため、こまめに塗り直すようにしましょう。
日焼け止めを使う場合は、その上から虫よけ剤を塗りましょう。 - 首、耳、手の甲、足首などの小さな露出部分も忘れないようにしましょう。
- 屋内でも蚊取線香や蚊帳(かや)などを使用し、蚊に刺されないよう対策を行いましょう。
(ネッタイシマカは屋内で活動します。) - 帰国時や帰国後に発熱などの症状があった場合は、検疫所や最寄の福祉保健センターにご相談ください。
- 発熱などの症状があった場合は、市販の解熱鎮痛薬は飲まないようにしましょう。
- 帰国後は、症状がなくても2週間程度は蚊に刺されない対策を行いましょう。
- 輸血による感染伝播を予防するため、海外からの帰国日から4週間以内の献血は自粛しましょう。
- 海外に渡航する場合の感染症対策についてまとめました。「海外に渡航される方へ」のページもご覧ください。
ヒトスジシマカに対する対策はチラシ「蚊に気を付けて」(PDF:623KB)(平成30年2月更新)をご覧ください。
海外渡航歴がある場合・・・他のウイルス性疾患との鑑別を含め、横浜市立市民病院のご紹介をご検討ください。
海外渡航歴がない場合・・・経過や診察結果からデング熱やジカウイルス感染症が強く疑われる場合は横浜市衛生研究所での検査を検討しますので、下記までご相談ください。
〔平日8時30分~17時15分〕各区の福祉保健センター福祉保健課健康づくり係の連絡先
〔上記時間外〕夜間・休日の各区福祉保健センターの連絡先
- デング熱が疑われる患者を治療する際には、処方する解熱剤にご注意ください。
処方するのはアセトアミノフェン等とし、以下のものは使用すべきでないと明記されています。(国立感染症研究所「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」(外部サイト)を参照) - アスピリン等サリチル酸系の解熱剤・・・出血傾向やアシドーシスを助長するため
- イブプロフェン等非ステロイド性抗炎症薬・・・胃炎あるいは出血を助長するため
平成29年度
平成29年6月1日「蚊の対策をバスと地下鉄で呼びかけます~今年の夏も蚊を増やさない!蚊に刺されない!~」記者発表資料(PDF:405KB)
平成28年度
平成28年5月18日「蚊媒介感染症の予防啓発を強化します」記者発表資料(PDF:733KB)
平成27年度
平成27年6月2日「市内25か所で蚊のモニタリング調査を開始します!!」記者発表資料(PDF:348KB)