ここから本文です。

暑さ対策の効果検証

最終更新日 2024年3月5日

環境科学研究所は、国立研究開発法人海洋研究開発機構(以下、JAMSTEC)と共同研究を実施しました。
JAMSTECとの共同研究の取組のうち、暑さ対策の効果検証では実測調査に加えて、数値シミュレーションによる解析を取り入れることで、仮想条件下で暑さ対策を導入した場合(例えば、ミスト付近に仕切りを設定するなど)の効果や、暑さの緩和に影響する設定値(例えば、樹木の葉の密度の濃さなど)を変えた場合の暑熱環境の変化等について検証しました。
このページでは、各取組の一例をご紹介します。

横浜市のヒートアイランド対策関連ページ

各取組へのリンク

舗装の保水率の違いによる暑熱環境の差について

保水性舗装や透水性舗装などの特殊舗装は、雨水を舗装に蓄え、保水した水分の気化熱で舗装表面の温度 (地表面温度)を低下させることで、暑さを和らげる機能を有しています。
横浜市金沢区の泥亀公園の一部にこれらの特殊舗装が導入されており、この場所における特殊舗装の保水率を任意に設定し、舗装面からの蒸発効率を変えることによる地表面温度の違いについて、数値シミュレーションで検証しました。
検証の結果、保水性舗装や透水性舗装の場所では、通常時の保水率を設定した場合と比較すると、乾燥時の保水率を設定した場合の地表面温度は2~8℃高く、湿潤時の保水率を設定した場合の地表面温度は4~8℃低い結果となりました。


特殊舗装の保水率を変えた場合の地表面温度の違い

また特殊舗装の保水率の違いは、地表面に近い気温(高さ0.5m)にも影響していることが分かりました。
乾燥時は地表面からの水分の蒸発が少なく、熱が地表面温度を上げることに使われるようになり、結果的に周辺の空気を暖めることになります。このため、通常時と比較すると、公園南側の保水性舗装付近で最大0.3~0.4℃高くなりました。
一方、湿潤時は地表面からの水分の蒸発に熱が使われるようになるため、地表面温度が上がりにくくなり、周辺の空気を暖める効果が弱まります。このため、通常時と比較すると、保水性舗装や透水性舗装の付近で最大で約0.7℃低く、公園全体での気温の低下も確認できました。


特殊舗装の保水率を変えた場合の気温の違い

このように、実測調査では検証が難しい取組であっても、シミュレーション技術を活用することで、暑熱緩和の効果を見積もることが可能になりました。
この取組の詳細については、成果報告書のP.10~P.15(※1)をご覧ください。

仕切りを設けた場合のミストの冷却効果について

ミストには、霧状の水滴を噴霧することで、水滴が蒸発する際に熱を奪う気化熱の作用により、空気を冷却する効果があります。
ミストの冷却効果をより高く保持するため、風下側に仕切りを設けることによるミストの拡散抑制の有効性について、横浜市金沢区の泥亀公園に設置しているミストを事例に検証しました。
シミュレーション技術を活用し、仕切りを設けた場合の気温などの変化を予測した結果、通気性のあるメッシュ状の仕切りを設けることで、仕切りの内側で気温などが下がることが分かりました。
また、実際に金沢区泥亀公園のミストの風下側に仮設で防風ネットを用いた仕切りを設置したところ、実測調査においても仕切りの内側で気温などが下がっていることを確認できました。

以上により、ミストの効果を高めるには風下側に仕切りを設けるなどのミストの拡散を防ぐことが有効だと考えられます。
この取組の詳細については、成果報告書のP.16~P.26(※2)をご覧ください。

街路樹の緑陰による暑熱緩和効果について


横浜市内には、2018年時点で13万本を超える街路樹(歩道並木やその他の高木)があります。街路樹には様々な役割があり、例えば、緑陰を作って夏の暑い日差しを遮る、葉の蒸散作用によって気温を下げる、植物の呼吸や大気汚染物質の葉への吸着によって空気を浄化するなどの効果があります。
街路樹の緑陰による暑熱緩和効果を調べるため、横浜市戸塚区鳥が丘付近から泉区領家付近までの街路樹(ケヤキ)が植えられている幹線道路の歩道上で、実測調査を行いました。その結果、強剪定(落ち葉を減らすために、幹や太い枝を切り払い、樹形を小さくする剪定)の緑陰に比べ、柔らかい剪定(樹形を生かしつつ、一定の大きさを維持する剪定)の緑陰の方が、暑熱環境が緩和されていたことを確認しました。
柔らかい剪定の方が木全体での緑の濃さが濃く、枝葉がより日射を遮るため、暑熱緩和効果が大きく、また、大きな緑陰を形成するため、涼しさを感じられると期待される面積(範囲)が大きくなったためと考えられます。

さらに、実測調査を行った街路樹をモデル化し、数値シミュレーションによる検証も行いました。
数値シミュレーションでは、街路樹の役割のうち、緑陰の涼しさに影響する要素を調べるために、街路樹の樹高や、樹冠体積(Case1~6の6通り(※3))、葉の密度の濃さ(Case7~12の6通り(※3))を変化させた場合、暑さ指数(WBGT)がどのように変化するのかについて、検証しました。
その結果、緑陰での暑さ指数は地表面に達する日射強度に依存し、葉の密度が濃くなる、または樹冠体積が大きくなるほど、暑さ指数が低下し、人が感じる暑さを和らげる効果が大きくなることがわかりました。

また、数値シミュレーションで得られた結果から、樹冠特性(葉の密度の濃さや樹冠体積)と暑さ指数との関係を概念図に示すと、下図のようになりました。
葉の密度を薄くせざるをえない場合には、樹冠体積を大きくすること(横軸の値を大きくすること)で、また、樹冠体積を大きくできない場合には、葉の密度を濃くすること(縦軸の値を大きくすること)で、それぞれ暑さ指数を下げる、すなわち、暑熱環境の改善を図ることができることがわかりました。


樹冠特性(葉の密度の濃さや樹冠体積)と暑さ指数の関係(概念図)

取組の詳細については、成果報告書のP.27~P.43(※4)をご覧ください。

関連リンク

PDF形式のファイルを開くには、別途PDFリーダーが必要な場合があります。
お持ちでない方は、Adobe社から無償でダウンロードできます。
Get Adobe Acrobat Reader DCAdobe Acrobat Reader DCのダウンロードへ

このページへのお問合せ

みどり環境局環境保全部環境科学研究所

電話:045-453-2550

電話:045-453-2550

ファクス:045-453-2560

メールアドレス:mk-kanken@city.yokohama.lg.jp

前のページに戻る

ページID:621-856-790

  • LINE
  • Twitter
  • Facebook
  • Instagram
  • YouTube
  • SmartNews