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第41回 横浜市公立大学法人評価委員会会議録

最終更新日 2020年3月6日

第41回 横浜市公立大学法人評価委員会会議録

【日時】平成23年10月24日(月曜日)14時~16時
【会議室】第一総業ビル4階会議室
【出席者】川村委員長、蟻川委員、岸委員、桐野委員、山上委員
【欠席者】なし
【開催形態】公開(傍聴者0名)
【議題】
1 公立大学法人横浜市立大学の第1期中期目標期間における業務の実績評価について
2 その他

【配布資料】
資料1.公立大学法人横浜市立大学の第1期中期目標期間(平成17年~22年度)の業務実績の評価(案)(PDF:564KB)
資料2.第1期中期目標期間における公立大学法人横浜市立大学の業務実績に対する各委員評価一覧(PDF:177KB)
資料3.各委員評価のまとめに向けた総合調整項目(PDF:112KB)

議題1:公立大学法人横浜市立大学の第1期中期目標期間における業務の実績評価について

  • 事務局より、資料1「公立大学法人横浜市立大学の第1期中期目標期間(平成17年~22年度)の業務実績の評価(案)」、資料2「第1期中期目標期間における公立大学法人横浜市立大学の業務実績に対する各委員評価一覧」、及び、資料3「各委員評価のまとめに向けた総合調整項目」につき、説明した。
    【川村委員長】今回の議論は、資料1「公立大学法人横浜市立大学の第1期中期目標期間(平成17年~22年度)の業務実績の評価(案)」に沿い、総論、各論の順に進めることとしたい。
    <1.総論>
    【桐野委員】5段落目の「また特に、」以下で触れられている事項として、地域貢献、学生支援、附属2病院の取組があげられているが、各論における評価をみると、地域貢献と学生支援が高く評価されているのに対し、附属2病院の取組はそれほど高く評価されていないというように、総論の評価と各論の評価が対応していないように見受けられる点がある。
    この点についてはこれから審議するという理解でよいか。
    【川村委員長】各論の検討の際合わせて審議し、後ほど振り返って検討していただければと考える。
    【山上委員】内容としてはよくまとまっていると思うが、いくつか気になる点がある。
    まず、用いる言葉について。4段落目に「一例として」という言葉が用いられており、すべてを書ききれないというので主だった取組を記載するという意図は理解できるが、人によっては軽い感じを受けると思うので、「具体的には」という言葉がより適当ではないかと考える。
    次に、記載事項の並べ方や段落内での整理の仕方について。同じく第4段落目における例示の最初の3項目が「国際総合科学部への学部統合」「大学院の再編」「共通教養教育の体制確立」の順で並べられているが、「共通教養教育の体制確立」は「大学院の再編」の前に触れられるべきではないか。また、それらのすぐ後ろに「附属2病院における健全な病院経営の確立」が続けて並列されていることには違和感を覚える。取組の目的で整理分類するという観点からは、「国際総合科学部への学部統合」「大学院の再編」「共通教養教育の体制確立」など教育体制の整備に努めた、「附属2病院における健全な病院経営の確立」など医療体制の充実に努めた、というように、目的が共通する取組についてはそれらを通じて何を目指したのかが分かるような記述を加えると、それらの取組の意義がより明確になるのではないか。
    次に、言葉の用い方について。6段落目に「コンプライアンス意識のさらなる高度化」という言葉が用いられているが、今一つすっきりせず、意味が分かりにくい。「コンプライアンスのさらなる徹底」でよいのではないか。同様に、「真にふさわしい責任と権限を明確にした」という言葉も、「適正なガバナンスの構築」でよいのではないか。また、「よい良い大学となるための学内コミュニケーションの一層の円滑化」という言葉も、「学内コミュニケーションの一層の円滑化」だけで十分意味は通じるし、良い大学になるための方法は他にもある中で、この言葉にだけ「より良い大学となるための」という修飾語がついているのか、文面だけからは判然としない。
    要するに、総論全体として書いてあることは十分満たされていると考えるが、表現そのものに工夫をした方が良いというのがここでの意見である。
    【川村委員長】言葉遣いや表現を整理した方が良いというのは同感であり、具体的に修正した方が良いと考える。
    【山上委員】総論の部分は非常に重要と考えるので、少し神経を使って文章を作ったほうが良いと考える。
    【川村委員長】ご指摘を踏まえて後ほど検討したい。
    <2.各論>
    (1)大学の運営に関する目標
    【蟻川委員】取組を強化すべき事項中、3ページ目の一番上にあげられている、学部研究科横断の教育研究推進体制に関する記述中、「その意図する機能の確保、充実を図ること」とあるが、我々委員にはその意図するところは理解できるものの、初めて読む人には「その意図する機能の確保、充実」が何を意味するのか、文面だけでは内容を理解できないと考える。1行くらいでも補足が必要と考える。
    【川村委員長】ご指摘の点はそのとおりと思う。ちなみに、この項目については、横断的学際的教育研究の充実という目標があり、それに向けてその推進母体となる組織である「研究院」ないし「学術院」の組織活動体制を見直す、というのが法人の意図であると理解している。
    【蟻川委員】文面からは、「研究院」ないし「学術院」の機能の確保、充実を図ること自体が目的であるように読めるのではないか。
    【川村委員長】意図が伝わるよう、表現を工夫した方が良いと考える。
    【桐野委員】取組を強化すべき事項中、2ページ目の1つ目にあげられている医師国家試験の合格率について、直近3か年の合格率が補記されているが、これを記載する意味に多少の疑問がある。数字だけを追っていくと、このままいけば合格率が90%を切り85%にまで低下するのでは、という推測が立ちそうだが、医師国家試験の合格率は、全国的にも高い時とあまり高くない時があるので、単純に合格率を追っていくだけでは予測や判断を誤ることになると考える。評価案の記載自体を大きく変える必要はないと考えるが、その点は注意してほしい。
    ちなみに、合格率を向上させ、また、低下を防止するため留意しないといけないのは、留年生と医師国家試験浪人のケアである。規模の大きい総合大学では、留年も浪人も自己責任と考え、特段のケアを行わないことから、合格率が年により大きく落ち込むことがある。こうしたことを事務方には理解してもらいたい。
    横浜市立大学では医学部医学科の入学定員を60名から90名に増やしたが、全国で行われたこの増員の規模は、新たに1つ医科大学を新設したのと同じくらいの、稀に見る大規模なものであり、学生の質にもバラつきが出てくることが想定されるのに加え、再来年からは地域枠で入学したグループが医師国家試験を受験することになることから、留年生と医師国家試験浪人のケアは、きわめて重要であると考える。
    【川村委員長】記述の中に医師国家試験の合格率を入れておくことについてはどうか。
    【桐野委員】入れておくことに意味があるのかどうか疑問である。ちなみに、記載されている合格率は、全国レベルで見た場合、それほど悪い数字ではなく、むしろ上位に入る。
    【川村委員長】合格率の記載は削除することとしたい。
    以上の検討を踏まえ、記載事項の見直しについては、医師国家試験の合格率に触れている記述から合格率の数字を削除する、研究院に関する記述を整理する、ということで整理したい。
    次に、評価について、資料3「各委員評価のまとめに向けた総合調整項目」中の、委員会としての評価を確定させたい。
    小項目ごとに見ていくと、全ての委員の評価が一致しているのは、大学の運営に関する目標、教育内容に関する目標、学生支援に関する目標の3項目であり、それぞれB評価、B評価、A評価とされているのに対し、研究に関する目標については、A評価とB評価に割れている。資料2「第1期中期目標期間における公立大学法人横浜市立大学の業務実績に対する各委員評価一覧」を見ると、精力的な取組を評価する意見がある一方で、生命科学分野再編の遅れを問題視される向きもあるようである。ちなみに、法人の自己評価はB評価である。
    【山上委員】B評価の背景には、確かに科学技術振興調整費などの大幅な増額などからは努力の跡がうかがえるものの、奨学寄附金に関する不適切な会計処理の問題が発覚し、研究体制に汚点を残すこととなったことを問題視し、A評価とするには躊躇があったのだろうと考える。他の委員も別の項目で同様の指摘をしている。
    私も同じ理由から、B評価とせざるをえないと考えた。
    【蟻川委員】私は当初、奨学寄附金の問題は確かに遺憾であるものの、大いに努力し成果をあげたという点は他の委員も認めるところであり、励ましの意味も込めて、A評価を妥当と考えた。しかし、ただ今の山上委員のご意見を踏まえ、今はB評価やむなしと考える。
    【川村委員長】他にないようなので、研究に関する目標について、当委員会の評価はB評価としたい。
    (2)地域貢献に関する目標
    事務局より、附属病院の地域貢献に関する取組については、附属病院に関する目標中の小項目「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」へと記載を移した旨報告があった。
    【川村委員長】評価については、法人の自己評価及び委員4名の評価がA評価、1名の委員がB評価としている。私は当初、B評価が妥当と考えた。理由は、地域貢献の多くが附属病院によるものであったのではないかと考えたこと、地域貢献センターの取組は計画期間中に急きょ立ち上げたものであり、中間評価の際はむしろ取組が遅れているとされたことが頭にあったことの2点である。ただ、そこに特にこだわるものではなく、他の評価がすべてA評価ということもあり、特に意見がないようであれば、当委員会の評価はA評価としたい。
    (3)国際化に関する目標
    【岸委員】特筆すべき取組の注記中、「市大」という記載があるが、ここは「横浜市立大学」とすべきではないか。
    【川村委員長】ご指摘の点を含め、字句を整理して必要な修正を行う。評価については、法人の自己評価、委員評価ともB評価であり、特に意見がないようであれば、当委員会の評価はB評価としたい。
    (4)附属病院(附属病院・市民総合医療センター)に関する目標
    【桐野委員】私は当初、小項目中「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」と「良質な医療人の育成に関する目標」についてはA評価、ただし、前者はいわば大きなA、後者はいわば小さなAと考えた。
    今は、「良質な医療人の育成に関する目標」については、資料2に記載のある他の委員の意見ももっともだと考えるので、これについてはA評価にこだわるものではない。
    しかし、「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」については、特筆すべき事項中、3、4、6、7番目の4つがこれに該当するものであり、これだけ特筆すべき事項がありながらB評価とするのはバランスを欠くと考える。もちろん、課題は少なくないものの、横浜市立大学のように大規模な病院を有し、財務に占めるウェイトの7割から8割が病院という体制においては、多少はやむをえない部分もあると考える。取組を強化すべき事項を勘案しても、「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」については、目標に掲げられたことを十分、それ以上に達成していると考える。
    【岸委員】言葉の使い方が気になる点を2つ。特筆すべき事項の2番目で人件費比率の「適正化」ということがあげられているが、この言葉を使う場合、そもそも目標があったのか、あったとしてそれを達成したのかがポイントになると考える。包括外部監査でも人件費は相当高額との判定を受けていることからして、改善したということは理解するが、「適正化」といってよいかは慎重に考えるべきであり、文章を再考していただければと考える。それと、細かいところだが、「期中の診療報酬改定」とあるが、「期中」という言葉は一般的ではないと考える。
    【山上委員】評価の記載について。2行目の「医薬材料費比率の改善は目標に達しなかったものの」という記載についてであるが、これは記載の冒頭ということもあり、際立って重要な印象を与えてしまう。しかし、大学の附属病院としての役割を果たすうえで必要な医薬材料もあることを考えると、必ずしも医薬材料費比率が低ければよいというものではないと考える。そうだとすると、ここでの評価の記載においては、「医薬材料費比率の改善は目標に達しなかったものの」との記載は不要であり、医業収入の大幅な増収によるというところから書き出しても良いのではないか。医薬材料費比率の問題については、取組を強化すべき事項で触れられており、評価の記載で重ねて表現する必要がないと考える。
    なお、評価について、私は当初、「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」をB評価と考えていたが、地域医療への貢献に関する取組を地域貢献に関する目標ではなく附属病院に関する目標の中で評価するということであれば、A評価でよいと考える。
    【川村委員長】今ご指摘があったとおり、医薬材料費比率に関しては目標に達せず、取組を強化すべき事項でも言及されていることから、これを評価の記載に重ねて加えるのは病院にとって厳し過ぎることから、評価の記載の方は削除した方がよいと考える。また、岸委員からご指摘のあった人件費比率の「適正化」については、表現を見直したい。
    それと、取組を強化すべき事項の1番目について、バランスを考慮するかどうかは1つの考えどころではあるが、中間評価などで他に指摘はなかったか。
    【岸委員】そういう意味では、取組強化の目的や内容が異なる事項が、医薬材料費をキーワードとして1つの項目に並列されてしまっているように感じる。特に、在庫の適正化は内部統制の問題であるのに対し、医薬材料費比率は目標があってそれを達成するかしないかの問題であるなど、中身は大きく異なる。医薬品の共同購入もしかりである。
    座りが悪いようであれば、分けて簡潔に記載するのも1つの方法だと考える。
    【川村委員長】ご指摘のとおりだと考える。
    なお、「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」について、私は当初B評価を妥当と考えていたが、もともとA評価とすべきか迷っていたところであり、法人の自己評価であるB評価に引きずられてしまったようにも思えることから、A評価を妥当としたい。法人の自己評価は、前に進もうという強い意志を謙虚な姿勢で示されたものだと今は理解している。
    ここまでの議論を踏まえて評価を整理すると、附属病院に関する目標はB評価、小項目中の「安全な医療の提供に関する目標」はB評価、「健全な病院経営の確立に関する目標」はB評価、「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」はA評価、「高度・先進医療の推進に関する目標」はB評価で一致した。
    「良質な医療人の育成に関する目標」は1名の委員がA評価で他の委員はB評価、法人の自己評価はB評価となっているが、どうか。
    【桐野委員】先ほど申した通り、当初はA評価を妥当と考えたが、B評価でよいと考える。
    【川村委員長】では、小項目「良質な医療人の育成に関する目標」についての当委員会の評価はB評価としたい。
    なお、「患者本位の医療サービスの向上と地域医療への貢献に関する目標」をA評価とすることに伴い、桐野委員からご指摘があった通り、評価の前提となっている特筆すべき事項、すなわち、待ち時間短縮や地域との連携に関する記述は生かしておくこととしたい。
    また、岸委員からご指摘があった、特筆すべき取組中の2番目の人件費比率に関する記述については、見直しを行うこととしたい。
    (5)法人の経営に関する目標
    【岸委員】項目全体の評価としては、当初C評価が妥当と考えたが、問題点は小項目「業務運営の改善及び効率化に関する目標」で集約されており、それでよいと考えるので、B評価が妥当と考える。
    【桐野委員】例えば法人化した国立大学などでは、コンプライアンスやガバナンスの問題は大変重視されており、第1期において横浜市立大学で生じた事件や問題に当てはめると、ロードマップやアクションプランを作成させられたうえ、それらを確実に実行することが必須になるほどの重大事と考えられており、ただ改善に取り組むべしとの指摘を行うだけで改善されるかについては不安を感じる。評価書の記載事項にそこまで書き込む必要はないと考える。私の感覚では、大学本部としてあまり大した問題では無いと思っておられるように思えるが、ここを確実に改善していかなければ大学本部は何をするのかというくらい重要な問題だと思う。
    【岸委員】桐野委員のご指摘は、先ほど総論の記載について検討した際に山上委員が言及された、「真にふさわしい責任と権限を明確にした適正なガバナンスの構築」という一節に表れていると考える。若干余計な記載もあるが、それくらい重要だということで、総論にその一節が入れられたのだと理解している。
    項目全体の評価として、C評価が妥当であるとも考えたが、法人経営に関する目標全体の評価がC評価だとすると、それこそ大学本部の存在意義を問われかねない状態ということになってしまうが、問題とされている不祥事が、大学経営の体をなしていないと認定するほどに他の成果をあげた取組を否定してしまうものかについても疑問があることから、評価自体はB評価とし、総論で特に言及するという方法が妥当と考えている。
    ところで、取組を強化すべき事項の2番目において、大学部門の人件費比率に関して触れている記述に「算出方法に課題があったとはいえ」という前置きが付け加えられているが、我々委員はこれまでの議論を通じてその意味を理解しているものの、読んだだけでは意味が分からないのではないか。数値目標を達成できなかったのは事実である以上、この前置きは不要ではないか。
    【川村委員長】文面だけからは意味が分かりにくいこと、目標未達であることは事実であるということはご指摘のとおりであると考えるので、ここは修正したい。
    【山上委員】全体の評価をC評価にするかB評価にするかは大いに悩んだところである。小項目「業務運営の改善及び効率化に関する目標」は法人、委員ともC評価で一致しているが、全体の評価をC評価とするかどうかについては意見が分かれている。不祥事を重視すればC評価に傾きやすいとも考えるが、大きいとはいえ個別の問題を捉えて全体の評価に反映させるという方法は、評価の方法として疑問がある。確かに、第1期に生じた一連の不祥事は、法人経営の根本であるコンプライアンスなりガバナンスの面で失格だと言われても仕方ないほど重大なものだが、6年間積み上げた実績が不祥事のために評価上なかったことになるということには疑問があることから、C評価とまでは言えないと考える。ただ、心情的にはC評価に極めて近いB評価である。
    なお、評価の記載についてであるが、総論の検討の際にも指摘した通り、目的や性質の異なるものが単純に並列されてしまっているだけのように感じられる。すなわち、財務分析の精緻化、外部資金獲得額の増加、新たな人事制度の構築といった事項が単純に並列されてしまっているが、それらの取組は特定の成果をあげることを目的にしていることから、例えば、月次決算など財務分析の精緻化により経営管理の強化が図られたとか、外部資金獲得額の増加により財政基盤が改善されたといったように、目的ごとにグルーピングしたうえで、得られた成果を付け加えた方が、文章としてはまとまりがよいと考える。
    また、言葉遣いについても、取組を強化すべき事項の1番目に「コンプライアンス意識の高度化」という記載があるが、総論の検討の際にも指摘したとおり、「高度化」という言葉は適当ではないと考える。そして、評価の記載において、学内コミュニケーションの問題が触れられていないが、これは大変重要なことなので漏らしてはいけないと考える。取組を強化すべき事項の1番目には触れられているが、評価の記載でも触れておいたほうが良いのではないか。
    【蟻川委員】私は特に迷うことなく、B評価と考えた。
    【川村委員長】横浜市立大学を法人化した目的は、総論にも記載のとおり、法人運営における自主性、自律性の確保にあり、これがなければ例えば運営交付金の計画的削減ができないという意味で、法人運営における自主性、自律性の確保は基本的な事柄であると考える。
    第1期の6年間を振り返ると、確かに努力の跡がうかがえる。しかし、自主性、自律性の確保にあたり、特に国公立大学の運営において、コンプライアンス、ガバナンスが確立されていることが最も基本的な事項であるにもかかわらず、横浜市立大学の場合はそこがなお十分には確立されていないのではないかと感じている。そうしたことを踏まえ、全体の評価としては、当初C評価が妥当と考えていたが、山上委員がご指摘のとおり、不祥事という個別の問題は全体の評価とは別の次元で考えるべきということももっともであり、全体の評価は他の委員と同じく、B評価としたい。
    【桐野委員】川村委員長がうまく説明されたが、偶発的な不祥事というものは、組織の人数が多ければそれだけ起こる可能性も多くなるのはやむを得ない面もあると考える。ただ、その時一番問題になるのは、不祥事が起きた際、しかるべきプロセスを経て取り扱う仕組みがあるかどうかである。しかし、第1期中に生じた、副学長や学部長が絡んだ不祥事は、大学内での責任ある方が起こされたという意味で、外部委員の目から見ると、大学という組織が本来有すべきガバナンスから遅れている、表現の適否の問題はあるが、30年くらい前の常識が通用しているのではないかという気がする。
    【事務局】ただ今桐野委員からがご指摘のあった、コンプライアンス、ガバナンスの問題については、市会からも同様の指摘を受けている。私たちも、市会、市長、法人と、コンプライアンスやガバナンスの確立をこれまで以上に軸にしていこうと話し合った。特に第2期中期目標を作成するにあたっては、各方面から同様のご意見を頂いたことをうけて、コンプライアンス、ガバナンスの確立を目標の中で明確にし、法人の第2期中期計画にも取り入れてもらった。
    コンプライアンスやガバナンスの確立が遅れているという各方面からの指摘は確かにそのとおりだと考えており、それらの確立は確実に前に進められねばならない。教職員を含め、法人としてのコンプライアンス意識を確立していかないといけない。
    この点、法人からは、事務局トップが中心となって確立のための努力や調整を進めており、コミュニケーションの問題についても、理事長をはじめとする経営陣と現場の医師や教員との対話の機会をこれまで以上に増やしているとの報告を受けている。
    そうした努力を通じコンプライアンスやガバナンスを確立し、コミュニケーションのより一層の円滑化を図られたい。具体的な成果が生じるのはもう少し先のことかと思うが、前向きに対応してもらえていると理解している。
    【川村委員長】コンプライアンス、ガバナンスの確立に関し、当委員会としては、指摘すべき点はいくども指摘したと考えている。先ほど申し上げたとおり、このことは法人化の基本にある事項であり、原点に立ち返って、取組を進めてほしい。
    以上の検討を整理すると、まず評価の記載につき、構成を整理し、「高度化」等分かりにくい言葉を削除し、学内コミュニケーションに関する記載を加える。次に、取組を強化すべき事項については、「より良い大学となるために」「算出方法に課題があったとはいえ」などの修飾語は削除し、より適切な表現に改める。評価については、他に意見がなければ、全体の評価はB評価、小項目「経営内容の改善に関する目標」はB評価、小項目「業務運営の改善及び効率化に関する目標」はC評価、小項目「広報の充実に関する目標」は法人の自己評価及び全委員の評価どおりB評価としたい。
    (6)自己点検・評価、認証評価及び当該状況に係る情報の提供に関する目標、その他業務運営に関する重要目標
    【川村委員長】ここについては、法人の自己評価及び各委員の評価ともB評価であり、記載内容についても特に意見がないようなので、当委員会の評価は、小項目を含めすべてB評価としたい。
    <3.予算、収支計画及び資金計画>
    【岸委員】第2段落において、「第2期において目的積立金が発生した際には、主として市民の税金により運営されている法人であることを踏まえ」という表現があるが、収支計画をみると、運営交付金が収入の柱になっているとはいえないのではないか。税金は確かに投入されているが徐々に減ってきており、むしろ病院の収入が多くの割合を占めている。それゆえ、「主として市民の税金により運営されている」と言い切って良いのかどうかは検討を要すると考える。
    【桐野委員】運営交付金が収入に占める割合はおおよそ20%くらいか。
    【事務局】20%から25%くらいと理解している。
    【桐野委員】収入に占める補助金なり運営交付金の割合は、私立で10%くらい、国立が50%を切って今は45%くらいなので、その中間ということか。私立の場合、補助金の割合を20%まで引き上げるというのが本来目指していたところであるが、それが国の予算上難しいということで、10%のままになっていると理解している。横浜市立大学において、運営交付金の割合を私立並みの10%にまで引き下げる考えなのかは、相当大きな問題であると考える。
    【川村委員長】かって昭和51年かに現在の私学振興助成法が立案された際の私学への助成目標は50%とされていたように記憶しているが、実際に制度がスタートした際の当面の目標は20%とされ、その後次第に低下していって現在の実際の助成率は10%前後になっていると理解している。
    【蟻川委員】話は若干それるが、私学の経営者としては、私立大学が学生全体の75%くらいを教育していることを考えると、もう少し助成の割合を増やしてもらってもよいのではないかと考えている。
    【山上委員】以前の委員会で、積立金の使途について議論した際にも触れたが、40億円が大学の判断で退職金の引当に充当されたり施設の整備や改修に用いられたりすることが妥当かについては、やはり疑問を感じざるを得ない。収入に占める割合はさほど多くないという見方ができるとしても、税金から運営交付金という形で支援を受けているのは事実である。市全体の行政ニーズを考えれば、他に優先される使い道があるのではないか。そう考えると、運営交付金をさらに減額する、あるいは繰り越された40億円のうち一部を市に返還するという判断もありうるのではないか。大学の判断で全て支出してしまうことは、すべてが大学の経営努力で生み出されたものであれば問題ないと考えるが、今回の40億円は、主として診療報酬の改定という大きな外部要因により生じたものである。また、その40億円は計画段階では織り込まれていないが、もし当初から見込まれていれば、その分運営交付金を減額することもありえたのではないか。
    そういうことも含めて、その40億円が発生した原因をきちんと分析し、場合によっては市への返還も検討されるべきではないかと、以前の委員会で発言した。その際、事務局からは、逆の場合、例えば診療報酬引下げなどの外部要因で予定外の欠損が生じたとしても市から追加で補てんすることは考えにくい旨のコメントがあったが、そのあたりは柔軟に対応できないものだろうか。また、市と法人との間では、市の厳しい財政状況を踏まえたきめ細かい調整をしているだろうとは思うが、より透明性のある明確なルールなり基準なりがあってよいのではないか。
    今お話ししたようなニュアンスを本文に織り込めればよいと考える。
    【桐野委員】山上委員のご指摘はもっともだと考える。そこで1点確認したいが、そもそも退職引当金は市側で積んで法人に計上させるものではないのか。それを法人が引き当てているのであれば、ある意味で退職金の半分を法人が市になりかわって負担したことになるのではないか。
    【事務局】今回問題になっているのは、法人固有職員の退職引当金である。
    【桐野委員】法人固有職員はもともと市の職員だったということではないのか。
    【事務局】法人化後に採用された職員である。
    【法人】横浜市から転籍した職員の市派遣職員時代の分については、桐野委員のご指摘どおり、運営交付金として頂いている。今回法人が退職給付引当金として計上しているのは、市派遣職員が転籍後に法人の固有職員となった期間分と、法人化後に採用された固有職員の分である。
    【桐野委員】それがわずか5年間で20億円も発生したということか。
    【事務局】見方をかえれば、市役所からの転籍を含め、法人が職員の固有化を急速に進めているということである。むろん、その当否については議論が分かれるところではある。
    【桐野委員】もしそうであれば、初年度から計画的に引当を行うべきだったのではないか。それを今回のように積立金が大幅に生じたからといって一気に引き当てるというのでは、やるべきことやっておらず、今回急に思いついたということにならないか。大いに理解に苦しむ。山上委員のご指摘はもっともだと思う。
    【川村委員長】今議論になっている問題は、法人経営に関する審議の際にも申し上げたが、やはり法人としての自律性の不足ないし欠如から生じているのではないか。桐野委員からも言及があったとおり、大学は本来的に社会性公共性の強い存在であり、国立大学にしても横浜市立大学にしても、自前で収支を均衡させるということはありえないし、あってはいけないと考える。附属病院など医療部門だけを見ればありえない話ではないが、少なくとも教育研究の領域においては、国家社会が共通して負担をするというという原則は基本的に貫徹されるべきことだと考える。同じ理由から、附属病院の運営についても、100%自前の収入で賄うということが理想のスタンスであるとは到底思えない。
    逆に言えば、法人は、文案にも記載されているように、市民の税金を頂いて運営しているということを骨身にしみて業務を進めてもらいたい。文案の「主として」という表現にはそうした意味が込められているのではないか。先ほどの私立大学への補助に関する議論は、まさに高等教育機関が有する社会性や公共性に関する議論ではないかと思う。「主として市民の税金により運営されている」という表現は、先ほど来のご意見をも踏まえた表現ではないかと考えている。
    他に意見がないようであれば、字句の修正については、頂いたご指摘を踏まえて行うこととし、その扱いについては、委員長に一任いただき、事務局と精査して改めて確認をお願いすることとしたい。
    <4.項目別評定結果一覧>
    事務局より、委員会としての評価結果の確認が行われ、ここまでの議論を踏まえて字句を修正する旨、報告があった。
    【川村委員長】事務局から確認のあった評価結果に間違いはないようなので、この後の進め方として、特に異議がなければ、字句の修正については委員長にご一任いただき、修正結果を改めて各委員に御確認いただいたものを市長に報告する、という順序で進めたい。
    【山上委員】総論について、一連の不祥事に対する法人の危機感や反省が今ひとつ感じられないとの指摘があったが、そうした指摘を踏まえ、表現を強くしてはどうか。例えば、6段落目最後の「着実に実施されたい」は「着実に実施されることを強く望む」というような表現である。
    なお、今回問題となった一連の不祥事は、評価委員会が評価する以前の問題であると考えている。すなわち、評価委員会の役割、中期計画や年度計画に対して実績がどうであったかを評価する機関であるのに対し、不祥事の問題については、本来、法人内に経営審議会や監事といったチェック機関があり、それらの機関がどのような問題意識で、どのような改善策を講じているのか、外部の委員会としてうかがい知ることには限界がある。
    それゆえ、今回のような不祥事が続発すると、学内にさほど危機感がないのではないか、マネジメント機関が果たすべき、あるいは当然期待される役割を果たしていないのではないか、あるいは、マネジメントの機能の問題であれば、法人評価委員会としての評価の対象となるが、そこでコンプライアンスやガバナンスといってみても、ただ聞き流され、見過ごされているのではないか、学内の自浄作用は働いていないのではないか、という疑問が生じる。
    一人ひとりの職員、すなわち、現場で非常に苦労されている医療スタッフ、教員、事務職員の皆さんは、それぞれ大変ご苦労をされ、様々なことに地道に取り組んでいるのだと理解している。だからこそ、一連の不祥事のような大きな問題がひとつ起きたことにより、そうした頑張りが帳消しになり、大学の信頼が失われてしまうということは、非常に残念である。そういう意味での危機感が組織の中に少し足りないのではないかと思うが、そういうことをなかなか評価の中では表現できないのが難しいところである。
    【川村委員長】ご指摘のあったとおり、原案の総論の表現はやや隔靴掻痒の感があり、山上委員が示された危機感は私も同感である。そもそも横浜市立大学を法人化したことがよかったのかという不審の念すらわいてきている。
    【山上委員】不祥事や事件が起きても当事者ないし加害者の属人的な問題として軽く扱われているように見えるが、そうした不祥事を生み出す風土なり土壌なりがあるのではないか。イレギュラーケースとされた不祥事が次々と発生しているのであるから、風土なり土壌なりの問題に目を向けるのは自然だと思うが、そういう感覚が感じられない。
    【桐野委員】公立大学法人における監事は制度上強い権限を持っており、理事長以下経営陣の行為が適切性を欠くと認められる場合、かなり強い権限でそれをストップさせられるはずである。我々委員がそのことを直接監事に聞く権限はないが、聞いてみたい気がする。
    【岸委員】マネジメントの権限に対応する責任が明確になっていない、すなわち、内部統制が十分に機能していないことが、そうした不祥事が続発する理由ではないか。そこが民間との大きな違いだと考える。過去の不祥事対応をみても、マネジメントを行っている者が停職なり免職なりという処分を受けたことはなかったと理解しているが、そこを明確にし、監事のチェックを受けるまでもなく、マネジメントを行っている者は自主的にそうした制度を作るべきだと考える。
    今述べたことは評価委員会の権限の範囲を超えるが、そうした対応への民間との違いを痛切に感じる。
    【蟻川委員】私が理事長兼学長として勤務する日本女子大学では、教学委員会と法人委員会という2つの組織を有し、それぞれが自己点検評価を行う分業体制を敷いているが、私がこの評価委員会に参加して感じることは、教育の実態がこの評価では見えづらいということである。確かに言葉では色々書いてあるが、実態が実感として伝わってこないような気がする。
    今後はそうした見えづらい部分が見えるような評価の仕組みを構築していけば良いと考える。
    【川村委員長】ガバナンスの問題についてはどうか。
    【蟻川委員】私が勤める大学では、懲罰を与える制度は有しているが、今のところこの制度に抵触するような事例がない。ただ、いざ事が起きた際には、他山の石として、本委員会での経験を参考にしたい。
    【川村委員長】ここまでの議論やコメントを踏まえ、総論の表現などご意見のあった部分の表現については、更に適切に我々の意思が伝わるようなものとしたい。
    また、今後のことについて、別の機会にご意見をいただきたいと考えている。

議題2:その他

  • 特になし。

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電話:045-671-4273

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