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8月号 わたしは街のパン屋さん 現地リポート!
最終更新日 2024年8月9日
皆さんは、横浜市内に障害のある方が働くパン屋さんがあることをご存じですか?
今月は、障害のある方たちが活躍している「わたしは街のパン屋さん」の現場を取材してきました。これを読み終わるころには、“街パン”に行きたくなること間違いなし!です。
なお、広報よこはま8月号(外部サイト)では、“街パン”も含めた市役所のイベント情報を紹介していますので、あわせてご覧ください。
「わたしは街のパン屋さん」とは??
「わたしは街のパン屋さん(通称:街パン)」は、障害者の社会参加の場の提供や、普及啓発及び販売力の向上等を図ることを目的とした事業で、横浜市内の障害者の日中活動の場を提供する施設・作業所が製造したパン等を横浜市役所内で展示販売しています。
毎週水曜日と金曜日(祝日除く)の12時から13時に、市役所2階の多目的スペースで開催しています。各日2事業所ずつの出店で、どの事業所も個性豊かな美味しいパンを販売しています。
※出店の年間スケジュールについては、横浜市のホームページ「わたしは街のパン屋さん」をご覧ください。
市役所での販売の様子
パン作りの現場に潜入してきました!
今回は、出店事業者の一つ、泉区中田西にある社会福祉法人開く会「共働舎」に、パン作りの様子を取材させていただきました。
こちらの施設では現在、12人の障害のある方がパンを製造しています。
使用する小麦粉は、栽培から石臼で挽く製粉まで手掛けるこだわりぶり。小麦は石臼挽きすると、外皮が入って小麦の風味が出るため、香ばしさとうま味がひきたつのだそうです。
取材当日は朝9時過ぎにお伺いしました。
さっそく調理室をのぞかせていただくと…パン作りの真っ最中!
パン職人(職業指導員)さんのアドバイスを受けながら、みんなそれぞれ自分の持ち場で、パンと向き合います。
10時から、敷地内にあるベーカリー&カフェでパンを販売するため、調理室は目のまわるような忙しさ。前日から準備して寝かしておいたパン生地を、いろいろな形や味付けに成形していきます。
ちなみに「わたしは街のパン屋さん」に出店する日は、製造するパンの数も増えるのでもっと忙しくなるとのこと。スタッフ総出で準備するそうです。
はかりを使って、パン生地を同じ重さに切り分けます
パン生地を伸ばして成形します
チョコチップを包み込む作業は、パン生地を破かないよう慎重に…
焼き立てのパン! これから最後の仕上げです
出来上がったパンは、調理室に隣接したベーカリー&カフェ「はなむら」で販売します。こちらでは、買った焼きたてパンを店内でいただくこともできます。
焼き立てのパンがどんどんと調理場から運ばれてくるので、販売担当のメンバーがお店に並べていきます。丁寧に一つ一つ透明の袋につめ、値札を貼り、自慢のおいしさがより伝わるように工夫しながら配置していきます。
共働舎では、食器など陶器の製作・販売も行っています。パンを陳列するお皿も、もちろん陶器チームの作品です。
店舗の厨房では、サンドイッチも作っています。
焼き上げた食パンをスライスしたら、マヨネーズやソースの量もしっかり測り、丁寧にのせていきます。具材たっぷり、きれいな盛り付けでとってもおいしそう!
働いているみなさんに、インタビューさせていただきました
◆販売担当の守谷さん
― 働くうえで、特に大事にしていることは何ですか?
「笑顔で売ることです。」
― おすすめのパンは何ですか?
「クリームパンです。手作りのカスタードクリームが入っていておいしいですよ。」
10年間販売担当ひとすじで、お客様のお顔を覚えるのが得意とのこと。
接客が天職ですね! “街パン”でも販売担当です。
◆パン製造担当の椎名さん
― どのパンを担当していますか?
「ピザ作りを担当しています。ソースの塗り方や具ののせ方など、見栄え良く仕上がるように考えています。」
― おすすめのパンは何ですか?
「迷っちゃうくらい、どれも美味しいですよ!1つに絞れないなあ。」
ご自身が作っているピザだけでなく、どれもおすすめと言ってくれる優しい椎名さんでした。
◆パン製造担当の新島さん
― どのパンを担当していますか?
「ウィンナーロールとチョコげんこつです。チョコげんこつは、チョコチップが外側に出ないように包み込むのが難しいけれど、丁寧に作業しています。」
― おすすめのパンは何ですか?
「キムチパンです!」
― あれ?キムチパンって今日売ってましたっけ…?
「私、辛いものが大好きなんです!キムチもきっとパンに合うと思うので、キムチパンを作ってみたいと思ってます!」
新作のアイデアも豊富な、お茶目な新島さんでした。
みなさんとお話ししての印象は、笑顔がいっぱいで、生き生き・楽しそうに働いていらっしゃるということ。そして何より、ご自身が携わるパン製造・販売というお仕事に、プロ意識と誇りをもっていて、「美味しいパンを、より多くのお客さんに届けたい」というプライドをとても感じました。
就労支援をしている職員のみなさんにも話を伺いました
ピザ作りで具材をのせる順番を示した紙
「障害の程度は人によって様々ですので、得意なこと・難しいことがそれぞれあります。そのため、その人の特性にあわせた作業を選び、一つ一つ習得できるようにしています。また、作業を分業し、イラストや見本などで確認しながらできるようにしています。そうすることでちょっと難しそうに見える作業も、周りの人がやっているのをみて「自分もやってみたい!」となって新しいチャレンジができるんですよ。各々に合わせた役割分担で、より美味しいパンを作るにはどうしたら良いか、をみんなで考えています。」
(障害福祉サービス事業所 共働舎 係長 我妻さん)
ベーコンを均一に切り分けるための見本や、ピザ生地を同じ大きさに広げるための見本
「ここでは、1人でパンを作るのではなく、チームでパンを作っています。パン作り30年のベテランの方も、働き始めて1年ほどの方も、みんな一緒に働いているので、自分の仕事を次の世代へ受け継ぎ、またお互いに学んでいくということも大切にしています。」
(障害福祉サービス事業所 共働舎 職員 井上さん)
すべては、美味しいパンを作り続けられるようにするため。みんなの最終目標は常にそこにあります。
だから、こんなに食べたくなる、魅力的なパンがそろっているんですね!
わたしは街のパン屋さん、開店です!
7月19日(金曜日)、市役所で開催された“街パン”も取材しました。出店者は「共働舎」と「ギッフェリ」の2店。販売の舞台裏をご紹介します。
11:30 店舗の設営スタート
お店のディスプレイにも個性がでます
看板となるスタンドを設置します
11:40 商品の準備と陳列
最後の仕上げのシール貼り
商品紹介ポスターで、アピールは積極的に
いつもの店舗で売るのと違い、準備もたくさんで大忙しです
12:00 さあ、いよいよ開店です
次々にやってくるお客さんたちが、好きなパンを選んでトレーにのせ、会計の列に並びます。
サンドイッチなどの総菜パンや甘いパンのほか、焼き菓子も一緒に販売しているので、「お弁当を他のお店で買ってきたけれど、とっても美味しそうなのでおやつ用に」と買っていく方も。
13:00 とうとう閉店です
両店舗とも客足は途切れず、売れ行きは好調。ほとんどのパンをお客さんに購入していただけました。
大忙しの1時間ですが、自分たちが作ったパンが目の前で売れていくのを見られることは、とても励みになるそうです。
自分らしく生きることができるまちヨコハマを目指して
「わたしは街のパン屋さん」の事業所管課である、健康福祉局障害自立支援課にも話を聞きました。
なぜ、“街パン”という事業がはじまったのでしょうか?いきさつなど、教えてください。
きっかけは、平成17年度に始まった有志職員によるプロジェクトでした。“街パン”を通じて、障害のある方の就労について、理解を深めてもらう場になればと考えています。障害のある人もない人も、誰もが人格と個性を尊重し合いながら、地域共生社会の一員として、自らの意思により自分らしく生きることができるまちヨコハマを目指しています。
“街パン”の今後の展望について、教えてください。
ありがたいことに、常連となって買ってくださる方もたくさんいらっしゃいます。フェア等の機会も活かしながら、すそ野を広げ、より多くの方に“街パン”に接していただくとともに、障害者施設等の取り組みや就労支援についても知っていただければと思います。
就労支援や啓発は、他にはどのような取り組みがありますか?
市内の障害福祉事業所が生産・製造した野菜・農産物加工品等を市庁舎内で販売する『農福マルシェ』、障害福祉サービスの利用者が企業での多様な働き方を見学・体験できる『働きたい!私の職業見学・体験会』などがあります。
また9月6日には『働きたい!わたしのシンポジウム』と題して、障害のある方が「働く」ことへの理解を深め、「働きたい」と思えるきっかけづくりを目指す、就労をテーマにしたシンポジウムを開催します。障害のある方だけでなく、その御家族、支援機関、企業等も対象です。障害者施設等の製品の販売も実施予定ですので、ぜひ会場の市役所アトリウムにお越しください!
横浜市ホームページ「働きたい!わたしのシンポジウム」令和6年9月6日(金曜日)開催
取材を終えて
今回の取材をとおして、社会参加することの大切さ、同じ目標を持つ仲間とともに働くことが生み出す可能性の大きさを感じました。社会の中で働くことで、できることが増えていき、喜びも増えていく。皆さんの一生懸命な思いがつまったパンは、その美味しさもひとしおでした。
「わたしは街のパン屋さん」は、市内の多くの障害者施設等が出店しており、日ごとに特徴のあるパンを購入することができます。季節限定メニューも豊富なので、各施設の工夫が詰まったパンをぜひ味わってみてください。
また、いつもの出店スケジュールと合わせて、様々なフェアも実施しています。次は、8月28日(水曜日)と30日(金曜日)のカレーフェア!
美味しいパンのラインナップは、どうぞご自身の目で確かめてみてくださいね。
お待ちしています!
このページへのお問合せ
健康福祉局障害自立支援課
電話:045-671-3992
電話:045-671-3992
ファクス:045-671-3566
ページID:281-312-091