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過去の海づくり事業
最終更新日 2020年7月15日
日本丸ドックで水質浄化の予備実験(2007年)
赤潮プランクトンや降雨による濁水は、海面付近を漂う傾向にあります。
写真の赤潮のときは、水深2m付近に境目(ユラギ)が現れ、それよりも深いところは清澄な海水でした。
簡易な水中スクリーンでも遮断効果が期待できると考え、海面から水深5mまで水中スクリーンを垂らし、
赤潮や降雨時の濁水を防除できるかを検討しました。
水深約5mまでの水中スクリーンを設置した直後に赤潮が発生しました。
この時の赤潮は海面から水深3m程度に達しましたが、浄化ゾーンに赤潮は入り込みませんでした。
淡水の雨水は海水よりも軽いため、静かな海面では表層付近を漂います。
海域に流入した濁質を含む雨水は、水中スクリーンにより遮断されています。
その結果、写真のようにスクリーンの内側(浄化ゾーン)には赤潮や濁水は入らず、清澄な状況が保たれることが分かりました。
水中スクリーンの効果を確認するために、降雨後の水質調査しました。
水質測定の結果、透明度は2回の測定とも水中スクリーンの効果が現れていました。
クロロフィルa、CODの測定結果は、水質調査をした時期が秋と冬だったことから、
プランクトンの発生量が少なく、効果を確認することはできませんでした。
濁度については、12月23日の測定で差が見られましたが、10月28日の調査では差が現れませんでした。
山下公園前海域における水質浄化実験-深浅測量編-(2007年)
日本丸ドックでの実験結果を受けて、さらに実験を拡大するため「山下公園前海域」、「象の鼻港内海域」、「汽車道及び北仲通にはさまれた海域」の3海域において、高精度の3次元深浅測量、ヘドロ層の堆積状況調査及び生物分布調査を行い、最終的に船舶の航行状況、海底の形状やアピール性などを考慮して水質浄化実験の実施地点を山下公園前海域として選定しました。
山下公園前海域の深浅測量図(平成20年3月22日)(PDF:305KB)
山下公園前海域における水質浄化実験-部分浄化実験編-(2008)
2007年度末に行った予備調査の結果、山下公園前の海底は岸壁から沖合い約30m、水深3mから5mまでの海底に、護岸から落ちた貝殻が堆積してできた海底(シェルベット)があり、そこに比較的豊かな生物の生息していることが分かりました。
2008年度は海が本来持っている水質浄化能力を高めることが重要であると考え、海面付近を漂う傾向にある赤潮や降雨による濁水などの流入を抑制するために水中スクリーンによって物理的に仕切った水質浄化実験海域を設け、生き物による水質浄化効果の検討を行いました。また、山下公園前海域が平成21年8月の「2009横浜国際トライアスロン大会」のスイム会場となることに決まったため、「泳ぐことのできる海」も重要な目標としました。
実験施設
実験施設の設置図
実験施設の3D画像
調査概要
- 調査地点
横浜市中区 山下公園前地先
- 実験期間(スクリーン設置期間)
平成20年7月15日~平成21年3月26日
- 調査内容
一般環境項目、水質項目、底質項目、生物相調査等を行いました。
また、トライアスロンのスイム会場として利用することが分かっているため、水浴場水質判定基準の観点からも評価を実施しました。
調査結果
- 透明度の結果
山下公園前の透明度の経過です。水質浄化実験施設の設置後3か月ほど経過するまではどの地点でも差はありませんが、
3か月を境にSt.1-2はSt.2やSt.3と比べ透明度が上がっていることがわかります。
これは水中スクリーンやアンカー等に多くの濾過性2枚貝等の生物が生育するようになり、生物付着基盤として機能し、透明度などの
海域環境の改善に寄与することが分かりました。St.1は水深が3m程度のため、底泥の巻き上げが起こる事から低い値が出ていることが分かります。
- 底質調査の結果
山下公園前の護岸は石積形式で、表面にはマガキやフジツボ類、ムラサキイガイなどの付着生物が確認され、
護岸下には護岸から脱落したマガキやムラサキイガイなどの貝殻が堆積したシェルベッドが形成されていました。
水深が深くなるにつれてシルト・粘土分を多く含む有機汚濁が進んだ還元的な海底となっていました。
このことから、夏季には貧酸素状態であっても生息可能な硫酸還元菌等の生物に限られてしまうものと考えられます。
- 山下公園前の海底
護岸直下
水深1~3m
水深3~5m
水深5m以深
山下公園前海域における水質浄化実験-トライアスロン編-(2009年)
平成20年度には、日本丸ドック、山下公園前でパイロット実験として、スクリーンで仕切ることの効果を把握しました。
その結果、赤潮、濁水の影響緩和、生物の浄化機能による糞便性大腸菌群数の低減や透明度の向上など効果が得られました。
平成21年度は、山下公園前の海域で、実用化に向けた実験を行いました。なお、山下公園前は多くの市民が訪れ、「2009横浜国際トライアスロン大会」も予定されていたことから、市民へ関心を高めてもらうため、積極的に情報提供するなど広報も展開しました。
護岸直下
実験施設
実験施設の設置図
実験施設の3D画像
調査概要
- 調査地点
横浜市中区 山下公園前地先
- 実験期間(スクリーン設置期間)
内側スクリーン:平成21年7月13日~平成21年9月25日
外側スクリーン:平成21年7月24日~平成21年9月11日
- 調査内容
水生生物による水質浄化効果、水中スクリーンによる赤潮等の濁水の防除効果、および生物付着基盤の設置や覆砂による生物の浄化能力の把握を目的に実験を実施しました。
調査結果
- 水質調査の結果
照度、透明度ともに、水深が深い地点ほど低下しています。これは、浅海域に生息する生物、スクリーンに生息する生物、スクリーンそのものの物理的防除効果などが考えられます。
特に、浅海域(st1付近)では、山下公園前の護岸に、ムラサキイガイなど生物が多数付着しており、水質浄化能力を有していると考えられます。
- 浄化能力を高めるための実験結果
生物付着基盤は平成21年7月27日に設置し、付着生物が全くいない状態からの遷移状況(平成21年9月4日)を目視観察により確認しました。
- 使用した材料
生物付着基盤1(コンクリートパイプ)
生物付着基盤2(自然石:安山岩)
生物付着基盤3(鉄パイプ)
生物付着基盤4(スラグ製品)
覆砂(山砂)
今回の実験から、生物付着基盤は、生息環境の改善につながったと考えられます。覆砂は、生物の増加が見られ、効果的であったと考えます。
また、水深が浅く溶存酸素量の確保できる場所に設置することで多くの付着生物が得られると考えられました。
素材については、今回の実験だけで優劣を判断することはできませんでした。
生物付着基盤(コンクリートパイプ)
覆砂上にハゼやイソギンチャクが定着
海づくり懇談会
・第1回懇談会について(平成22年3月18日)
・第2回懇談会について(平成22年7月25日)
海域浄化の実践に向けた取組(2010年)
これまでに山下公園前海域等で行ってきた部分浄化実験の結果、横浜港の水質をより向上させるためには、海域生物の浄化能力を活用した海づくりが重要であることが分かりました。
市民の皆様に親しみを持っていただける、生きのもが豊かな浄化能力の高い海づくりを推進するため、市内海岸の現況を把握し、海域浄化を推進する候補地の選定、候補地における海域の状況に適した浄化方法等の検討を行いました。
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みどり環境局環境保全部環境科学研究所
電話:045-453-2550
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