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ぐるっとSTORY(2024年秋号)
最終更新日 2024年10月7日
「お仕事ステーション」では、地下鉄やバスで働く人たちを紹介しています。
日常生活のなかではなかなか知る機会のない、市営交通の裏側にフォーカスした本連載。誌面に入り切らなかったインタビューをWEB限定記事としてお届けします! 今回は、2013年から2014年度に交通局へ入局し、交通局総合司令所で働くAさん、Bさん、Cさんへのインタビューです。
失敗できない仕事。プレッシャーをやりがいに変えて
一歩足を踏み入れると、総合司令所は緊張感が漂う現場だった。今日の取材を受けてくれたのは、AさんとBさん、Cさんの3人。2024年3月にここへと配属されたばかりだが、総合司令所の所長が「イチオシの3人です」と太鼓判を押す。
左からAさん、Bさん、Cさん。2024年3月に総合司令所へ配属され、4月に本格的な業務を開始。同僚として働いている
3人の主な担当は「情報司令」といわれるものだ。Bさんはその業務についてこう説明してくれた。
「お客さまや駅の職員に運行情報を発信するのがメイン業務です。目に触れやすいところでいえば、駅の改札口にあるデジタルサイネージなどに『平常運行』とか、『他社線の振替輸送を受け入れています』といった運行情報を発信して表示させています」
総合司令所は運輸司令・情報司令・電気司令といった3つの部署が集まる。各列車の運行情報や電気設備、市営地下鉄各駅の状況がすべてこの場所に集まり、一元管理されているそうだ。
列車の遅れや振替輸送などのトラブルがあったとき、情報発信は正確さと早さが肝心。一度でも曖昧な情報を発信すれば、現場の職員やお客さまに混乱を与えかねない。Bさんは「失敗できない仕事」と話し、こう続ける。
「プレッシャーを感じますよね。でも、帰るときには達成感があります。私たち総合司令所職員は、お客さまと対面する機会がありません。ですが、正確な情報を発信して、最前線の現場で働く職員を支えることができたとき『今日は、ちゃんと伝わっていたよな。』とお客様とのつながりを感じて帰路についています。」
情報収集には、鉄道各社との直通電話や公式HP、気象庁などのウェブ情報の確認も欠かせない。総合司令所から発信する情報はダブルチェックを行うなど、誤配信防止に特に力を入れている
3人とも交通局入局後は駅員からキャリアが始まり、その後はAさんとBさんがグリーンライン、Cさんがブルーラインの運転士として働いてきた。だからこそ、最前線で働く駅員や運転士の「この情報をもらえて助かった」という言葉が励みになっている。
では、交通局を志した理由はなんだろうか。まずBさんが答えてくれた。「地元が横浜で、乗り物が好きだったからでしょうか。駅員や運転士として、地元の方に貢献できるということが魅力でした」。続いてCさんもはにかみながら話してくれた。
「僕も市営バスを通学で使っていたのが大きいですね。学制服を着て居眠りしていると、バスの乗務員さんが『ほら、降りないと』と起こしてくれて遅刻をせずに済んだことがあって……。交通局にいいイメージをもっていたんです」
Aさんも、Cさんと同じように交通局に親しみをもっていた。Aさんの父も市営地下鉄の運転士だった。子どもの頃から父が運転士として働く姿を見てきたそうだ。
父が市営地下鉄の運転士だったAさん。現在も父は助役を務めているという
「新人も先輩も関係ない。ここはチームだから」
そんな彼らでも、総合司令所に対しては「ハードルの高い職場」というイメージをもっていて、不安が大きかった。だが、その不安はすぐに拭い去られた。
総合司令所には39人の職員がいて、その39人が3日1回、24時間勤務のシフトを組んで働く。食事や仮眠をともにするのだから、その団結力は固い。Aさんは配属されて間もない頃、先輩職員から言われた言葉が印象に残っている。
「『新人も先輩も関係なく、分からないことがあったらなんでも聞いて。ここはチームで動くから』と言っていただいて、心強く思いました。配属されたばかりでなにもできないのに、『もう仲間なんだから。』と言われてすごくうれしかったですね」
勤務の間、列車の遅れや電気設備のトラブル、お客さまの救護など迅速な対応を要するアクシデントは枚挙にいとまがない。毎日たった十数人の出勤者で対応していることに、あらためて3人も驚く。Aさんは「そんな先輩たちと一日でも早く肩を並べて仕事ができるようになりたい」と意気込む。
総合司令所に「厳格な職場というイメージがあった」と言うBさん。でも今は、先輩たちがよく気を配ってくれて働きやすいと話す
自分の子どもが誇れるような大人でありたい
「仕事の目標や抱負はありますか?」この質問へのそれぞれの答えから、3人の謙虚さや責任感といった人柄が伝わってきた。まずはAさんが話してくれた。
「足手まといにはなりたくないですよね。先ほども言ったのですが、ここで働いている人たちの一員として早く認められるようになりたい。何事にもチャレンジして習得していく意識は曲げずにもっていたいですね」
Bさんもそれにつなげるように言葉を重ねていく。
「『今日はこの人と一緒だから安心して仕事ができるな』と思われる存在になりたいです。知識と経験を日々身につけて交通局を支えていきたいと思います」
そして、Cさん。Cさんは2歳の子どもがいる父としての思いも込めて語ってくれた。
「『お父さんは交通局で働いているんだ』と子どもが友達に誇れるような大人でありたいですね。交通局の経営理念に“信頼を心で運ぶ市バス・地下鉄”というメッセージがあります。学生時代に私を起こしてくれたバスの乗務員さんは、このメッセージのとおり私に信頼を運んでくれました。当時の私が感じたように、市営交通は安心・安全で優しい気持ちをもらえるところだと市民の皆様に思っていただけることを目指して、自分はなにができるだろうって考えながら働いています」
かつて自分を優しく起こしてくれたバス乗務員さんを例に、そういった行いをつないでいきたいと話すCさん
「次の世代がここで働きたいと思えるように貢献したいね」と顔を見合わせ、「一緒にやっていきましょう!」と明るくインタビューを締めた3人。所長が「イチオシの3人」と彼らに太鼓判を押した理由が分かった。
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