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脳卒中ってどんな病気?
最終更新日 2021年4月1日
脳卒中ってどんな病気?
脳卒中には、大きく分けて脳の血管が詰まる虚血性脳卒中(脳梗塞)と、脳の血管が破れる出血性脳卒中(脳出血、くも膜下出血)があります。
脳梗塞
脳梗塞は脳血管が何らかの原因で詰まって血流が悪くなり、酸素や栄養が不足して脳の細胞が壊死することで発症します。その原因により、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞の3つのタイプがあります。
アテローム血栓性脳梗塞
頚動脈(首の左右にある、頭部に血液を送る動脈)など比較的太い動脈の内側の壁に、コレステロールがおかゆ上に固まったアテロームができ、血管を狭くして血流を悪くしたり、アテロームが破れて血小板が集まり血栓を作り、それが流れて脳の血流を塞いで発症します。
心原性脳塞栓症
心房細動などの不整脈や心筋梗塞後で心臓の中に血栓ができ、それが流れて脳の血管を塞いで起こります。一般に広範囲の脳梗塞を起こすことが多く、脳梗塞の中では最も症状が重いのが特徴です。
ラクナ梗塞
脳の内部にある細い血管(穿通枝)が詰まることで発症します。まひなどの後遺症が残ることはあっても命にかかわるような重症例はまれな脳梗塞です。
脳出血
脳出血の多くは、高血圧性脳出血です。
高血圧性脳出血は、高血圧が原因となり、もろくなった脳内の小血管(200~300㎛)に動脈瘤(こぶ)が発生し、それが破れて脳の中に出血して発症します。
それ以外にも「脳動静脈奇形」、t-PAなどの血栓溶解剤やヘパリン、ワルファリンなどの抗凝固剤、アスピリンなどの抗血小板剤などの「薬による副作用」、加齢に伴い脳の血管壁にアミロイドと呼ばれる異常たんぱく質が沈着して、もろくなって出血する「アミロイド血管症」などによる脳出血があります。
くも膜下出血
くも膜下出血は、10%が病院到着までに、35%が発症8時間以内、約50%が1か月以内に死亡すると言われています。
通常は脳脊髄液で満たされている脳の表面にある軟膜とくも膜との間のくも膜下腔に、脳血管の破裂による血液が流れ出てくも膜下出血は発症します。
脳血管の破裂の原因としては、「脳動脈瘤」(脳動脈が分岐する付け根の部分が膨らんでできたこぶ)や、生まれつきの血管奇形である「脳動静脈奇形」などがありますが、40歳以上のくも膜下出血の多くは脳動脈瘤破裂によるものです。
脳動脈瘤の原因はいまだに明らかになっていませんが、先天的な素因、加齢による血圧の上昇、動脈硬化などが関与していると考えられています。
症状は?
次の症状のうち1つでも突然発症した場合は脳卒中を疑いましょう。
まひ・脱力・しびれ
顔や手足など、特に身体の片側に力が入らなかったりする“運動まひ”、ビリビリとしたしびれを感じたり、感覚が鈍いと感じる“感覚障害”があります。
言語障害
思ったことがうまく話せない(運動性失語症)、他人の言うことが理解できない(感覚性失語症)などの“失語症”と、口や筋肉のまひでろれつが回らない“構音障害”があります。
めまい・ふらつき
めまいには、周囲がグルグル回転しているように感じる“回転性めまい”と、自分がグラグラ揺れているように感じる“浮動性めまい”があります。脳卒中ではこのどちらも起こりえますが、回転性めまいは内耳(耳の奥にある器官)の障害でも生じます。
視野障害
視野が半分欠けて見えたり、物が二重に見える症状です。
頭痛
脳卒中、特にくも膜下出血、脳出血による頭痛は突然発症するという特徴があります。
脳梗塞
脳梗塞は脳の細胞が壊死するため、一般的には頭痛は伴いません。
脳出血
脳出血による頭痛も急に起こりますが、くも膜下出血に比べて頭痛の程度は軽く、ほとんど頭痛を感じない場合もあります。
くも膜下出血
くも膜下出血では、突然発症する“今まで経験したことのない”、“ハンマーで殴られたような”頭痛に注意してください。この頭痛は、後から「○時○分に急激に頭が痛くなった。」と思い出せるくらい突然発症します。また、ほとんどの場合、頭痛に嘔吐を伴います。しかし、脳梗塞や脳出血と違い、運動まひ、感覚障害、言語障害などの症状を伴わないことが多いのも特徴です(後述の「FAST」があてはまらない脳卒中)。さらに、くも膜下出血の前触れとして、脳動脈瘤から少し血液が漏れる程度の出血が起こり、一過性の頭痛を伴うことが約50%の患者さんに見られますので、この前触れの小発作である“警告発作”を見逃さないように注意しましょう。
治療方法は?
脳卒中の治療には、脳梗塞に対するt-PA静注療法や血管内治療、脳内出血に対する開頭手術など、様々な治療法があります。
当院では、3テスラMRI等の高度医療機器を活用しながら、脳神経内科と脳神経外科が連携し治療にあたっています。
脳梗塞の治療
脳梗塞は、急性期には内科的治療(薬物療法)や血管内治療(血栓除去療法)が中心に行われます。また、発症予防として外科的治療が行われます。
内科的治療
内科的治療として行う薬物療法には、
- 血栓を溶かす治療(血栓溶解療法・t-PA)
- 血栓ができるのを防ぐ治療
- 脳の腫れを抑える治療
- 脳の壊死を防ぐ治療
などがあります。
血栓溶解療法(t-PA)
脳の血管に詰まった血栓をt-PAという薬を注射して溶かし、血流を回復させる治療法です。
この治療は発症後4時間30分以内に行う必要があります。
発症してから病院に到着し、様々な検査を行い、薬を注射するまでを4時間30分以内に行わなければいけないため、脳卒中が疑われる症状が見られた場合には、なるべく早く救急車を呼ぶことが大切です。
また、発症から時間が経過し、脳や血管が傷んでしまった後にこの治療を行うと脳出血を起こす可能性があります。
血管内治療(血栓除去療法)
血管内治療とは、主に足の付け根の血管から脳血管が詰まっている部分までカテーテルという細い管を入れて誘導し、その中に器具を通して行う治療です。血管内治療は外科的治療(開頭手術)に比べて体に対する負担が少なく、治療効果も上がっていることから希望される方も増えています。しかし、血の塊などが脳の血管に詰まってしまったり出血がおこるなどのリスクがあります。
脳梗塞の急性期治療では
・ステントリトリーバー
・Penumbra(ペナンブラ)システム
といった、脳の血管に詰まった血栓をカテーテルを通じて取り除き、血流を回復させる治療が行われます。
ステントリトリーバー
先端がメッシュ状になっているワイヤーで血栓をからめとることで血栓を取り除き、血流を回復させる治療法です。
Penumbra(ペナンブラ)システム
カテーテルを通じて血栓を吸引することで取り除き、血流を回復させる治療法です。
外科的治療
脳梗塞の外科的治療の目的は、血流を回復させるための血行再建で、将来の脳梗塞を予防するものです。アテローム血栓性脳梗塞の多くは、頚動脈にアテロームが形成されて血流が悪くなることが原因です。
治療法としては、
- 頚動脈内膜剥離術
- ステント留置術
- バイパス手術
があります。
頸動脈内膜剥離術
頚部頚動脈を切開して、血管が狭くなる原因となっているアテロームを除去し、根本から治すことを目指した手術です。
ステント留置術
血管内治療の技法を用い、筒状のメッシュ合金(ステント)を細く伸ばした状態で血管が狭くなっている部分まで送り込み、そこでステントの内側からバルーンを膨らませて血管を拡張して、ステントのみを留置する手術です。
バイパス手術
頭蓋骨の外側にある浅側頭動脈と、内側にある中大脳動脈とを縫い合わせてバイパス(血流の抜け道)を作る手術です。
脳出血の治療
脳出血急性期の脳の損傷を最小限にとどめるために止血剤を用いたり降圧剤を用いたりします。頭蓋骨の内側の圧力が上がらないようにするために手術を行うこともあります。
通常は内科的治療(血を止めたり脳の腫れを抑えたり血圧を下げるための薬物療法など)を行いますが、出血が大きい場合には外科的治療(手術)が必要になる場合があります。
手術法としては、
- 開頭手術
- 定位的手術
があります。
また、血腫が脳室内に及んで水頭症(髄液が脳内に溜まり脳室が大きくなってしまう状態)を起こした場合は、脳室ドレナージ(脳室にカテーテルを挿入して血液や脳脊髄液を排出させる)を行うことがあります。
開頭手術
頭蓋骨に穴を開け、脳内の血腫を顕微鏡で見ながら除去するもので、被殻出血、小脳出血、皮質下出血の場合には開頭手術を行います。
定位的手術
頭蓋内に2cmほどの小さな穴を開けて(穿頭術)細い管を血腫内へ挿入し、CTで撮影しながら血腫を吸引除去する「CT誘導血腫吸引術」や、神経内視鏡を入れて血腫の状態を見ながら吸引する治療も行われています。
くも膜下出血の治療
くも膜下出血は、主に脳動脈瘤の破裂により発症します。
脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血になった場合は、2回目の出血(再発)を予防するために外科的治療が必要です。
脳動脈瘤の手術法には、
- 開頭手術(クリッピング術)
- 血管内手術(コイル塞栓術)
があります。
これらの治療法にはそれぞれ長所・短所がありますので、担当医師と相談したうえで適切な治療法を選択する必要があります。
開頭手術(クリッピング術)
全身麻酔の下で開頭し、顕微鏡下で脳動脈瘤の根元にクリップをかけて出血を防ぐ方法です。
血管内手術(コイル塞栓術)
全身麻酔または局所麻酔のもとで、足の付け根の血管からカテーテル(細い管)を脳動脈瘤まで誘導し、カテーテルの中を通してプラチナ製のやわらかいコイルを動脈瘤の中に詰めることにより出血を防ぐ方法です。
※脳卒中の治療にあたる各診療科のご案内
脳神経内科
脳神経外科
脳卒中・神経疾患部門
合言葉「FAST」
FASTとは脳卒中発症時の症状とその際の適切な対応を表す標語です。
Face 顔がゆがみ
Arm (and legs) 腕(と足)に力が入らず、
Speech 言葉がもつれます。
上記の症状のうち、どれか1つでも突然発症した場合は、
Time 発症時間を確認して、ただちに専門医を受診してください。
脳卒中予防10か条
- 手始めに 高血圧から 治しましょう
- 糖尿病 放っておいたら 悔い残る
- 不整脈 見つかり次第 すぐ受診
- 予防には たばこを止める 意志を持て
- アルコール 控えめは薬 過ぎれば毒
- 高すぎる コレステロールも見逃すな
- お食事の 塩分・脂肪 控えめに
- 体力に あった運動 続けよう
- 万病の 引き金になる 太りすぎ
- 脳卒中 起きたらすぐに 病院へ
日本脳卒中協会
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脳卒中・神経脊椎センター医事課
電話:045-753-2500(代表)
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