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第5回:鶴見の伝統芸能(その2)

最終更新日 2024年11月7日

市場神代神楽

神代神楽は別名「岩戸神楽」とか「里神楽」と呼ばれ、主に日本神話などをもとに演じる仮面黙劇で、鶴見には、市場神代神楽と子安神代神楽がある。
市場神代神楽は旧東海道沿いにある横浜市鶴見区市場の熊野神社宮司家に伝承されたもので、元禄3年の神楽に関する古文書が残っているので、それ以前から行われていたものと思われる。現在は矢向の日枝神社に受け継がれている。
神楽に用いる楽器は、大太鼓・大拍子・笛(能管・篠笛)、鉦などのお囃子と各演目の役割に応じた面(姫・老人・鬼など)をつける。主に「古事記」「日本書紀」の神話を題材にして演じるが、能や狂言、歌舞伎などからの影響も受け、芸術性や娯楽性も加味されている。
神職系神楽師の市場町熊野神社と矢向町日枝神社宮司萩原家により伝承された市場神代神楽は、現在、日枝神社の社務所で週1~2回の稽古を重ねながら、鶴見区、川崎市近辺の神社を中心に活動している。主な曲目としては「天之浮橋(あめのうきはし)」「黄津醜女(よもつしこめ)」「墨絵大神(すみえのおおかみ)」「天之岩戸(あまのいわと)」「八雲神詠(やくもしんえい)」「幽顕分界(ゆうけんぶんかい)」などがある。
岸谷の杉山神社では昭和初期ごろまで神奈川区子安に伝わっていた子安神楽が演じられていた。また、区内各地域の神社の祭礼では奉納神楽が演じられていた。


愛宕神社の湯花神事

湯花神事は湯立(ゆだち・ゆだて)とも呼ばれ、煮えたぎった湯をふりまく厄除けの神事である。また、無病息災、家内安全、五穀豊穣を祈る神事として古くから行われてきた。
祭礼の日には社殿前に青竹4本を立て、そこに大釜を据えて湯を沸かし、神主が煮えたぎったお湯を熊笹に含ませ祭神に向かってふりかけてお祓いをした後、参拝者たちにも同じように煮えたぎったお湯をふりかけてお祓いをする。この湯がかかると「1年間病気をしない」「願い事がかなう」といわれ、現在も広く信仰を集めている。
湯花神事は祓い浄めの行事になっているが、湯立によって占いや託宣を行うのが本来の形であり、神意を問うという素朴で普遍的な神事であったとも言われている。
鶴見区では、上の宮と鶴見の八幡神社、下末吉の愛宕神社で行われてきたが、現在は毎年8月第1日曜日に下末吉の愛宕神社のみで行われている。


鶴見の田祭り

江戸時代末期に編纂された「新編武蔵国風土記稿」の鶴見村の項に、杉山大明神(鶴見神社)について「昔より此社にて毎年正月16日の夕方、百姓等がうたいおどる明神の田祭歌というものあり、殊に古風なるものにて関東の守護三島大明神といえることあり、是らにても北条の頃の物たることしるべし」と記されている。この田祭歌が鶴見の田祭りで歌われる「神寿歌(かみほぎうた)」である。
「ねれねれねれや我前をねれよ・・・・」からはじまる全体で3段におよぶ神寿歌は、文学的にも優れ、当時のこの地域の民俗、信仰、風習、農耕のあらましなど、いろいろの内容を含んだ貴重な文献といわれている。
古来稲作農業を主な生業としてきた日本人は、春には山から田の神を迎えて、その年の稲作の豊穣を祈る予祝行事を行い、秋には収穫に感謝し田の神を山に送る祝祭行事を行ってきた。鶴見の田祭りはその年の五穀豊穣を祈る春の予祝行事である。田祭りはまた田遊びとも言われている。
「新編武蔵風土記稿」にも記されているように、毎年正月16日の夕方、氏子である農家の人たちが鶴見神社の境内に集まり、執物(鎌や鍬などの農耕具を模したもの)を使い、田のくろ・畦に似せてつくったヤッサイ(笹竹を芯にわらで包み、長方形に折り曲げたもの)を田んぼに見立てて、この周りで稲人頭(いなんどがしら)・作大将を中心に稲人連(いなんどつれ)10人の計12人が神寿歌に合わせて、春の鍬入れから田起こし、種まき、田植え、草取り、鳥追い、稲刈りなど、主食である米が収穫できるまでの稲作に関する一連の所作を演じてきた。
鶴見の田祭りは、今から約700年前の鎌倉時代からこの鶴見の地に受け継がれてきた伝統ある行事が明治維新後の1875年(明治5年)に中断されてしまったが、旧家の古文書や鶴見神社の元宮司黒川荘三の「千草」などに神寿歌や田祭りに使われていた執物に関する記事が残されていた。貴重な伝統文化を復活させようと鶴見歴史の会や地元の有志により静岡県三島大社の「田打ち」祭や東京都板橋区徳丸の北野神社、同板橋区赤塚の諏訪神社の田遊びなどへ出向いての調査研究や神寿歌の解読作業などを経て1987年に再興された。現在は毎年4月29日のみどりの日に鶴見神社境内で行われている。早乙女や牛などの子役も出演して、ほほえましさと親しみをかもしだしている。また、当日は地元の町内会やボランティアグループが焼きそばや綿あめなどの模擬店も出し、田祭りを盛り上げている。

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鶴見区総務部区政推進課

電話:045-510-1680

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メールアドレス:tr-kusei@city.yokohama.lg.jp

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