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第一話:石になったお比丘(びく)さん

最終更新日 2024年3月15日

「石になったおびくさん」の民話のイラスト

 今からおよそ千三百年くらいむかし。武蔵(むさし)と相模(さがみ)の国境(くにざかい)にある上瀬谷(かみせや)は、あちらの山すそにぽつんと一軒、こちらの川のほとりにぽつんと一軒と家もまばらな所でした。
 あるとき、この里へひとりの尼さんがやってきました。尼さんは名を明光比丘尼(みょうこうびくに)といい、小さな庵(いおり)に住んで毎日仏さまにお仕えしていました。里の人が仕事に疲れたり、悩みごとがあると、いつも仏さまの教えをといて聞かせては人々をなぐさめていました。里の人たちからお比丘(びく)さんと親しまれている明光比丘尼は、病があるのか、話しながらよく苦しそうに咳きこんでいました。ほっそりと色の白いお比丘さんのそんなようすを心配して、人々は食べ物を届けたり、好きなお茶を煎(せん)じてあげたりしました。そのころは、お茶がまだ珍しく、薬として用いられていたのです。
 ある日のこと、いつものように里の人たちが庵(いおり)を訪ねると、お比丘さんの姿が見えません。庵の中にはお比丘さんが朝夕、仏さまにお経をあげる時に座っていた敷物があり、その上に、墨染(すみぞめ)の衣をかけた大きな石が一つあるだけでした。いったいこれはどうしたことかと驚いた里の人たちも、やがて、お比丘さんは石になってしまったのだ、と悟りました。それからはいつとなく、この石に願をかけると咳(せき)の病がなおるといわれ、多くの人々がお詣(まい)りするようになりました。病がなおるとお礼に竹筒にお茶を入れてお供えしたということです。
 今でも妙光寺には、明光比丘尼の小さい祠(ほこら)があり、お茶の入った竹筒を見かけることがあります。
お比丘さんの石は、長津田の大石神社のご神体。大和市深見の要石(かなめいし)とともに三奇石といわれています。

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