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フィリピン国における汚泥脱水装置の公共・民間セクターへの普及事例(フィリピン)

最終更新日 2019年7月23日

フィリピン・セブにおけるトイレからの汚水による環境汚染の現況

セブ市における汚泥投棄の様子の画像
セブ市における汚泥投棄の様子

 フィリピン・セブには下水道が整備されていません。家庭や事業所のトイレ等から排出される汚泥は、一度、住宅内に設置されたセプティックタンク(腐敗槽:トイレからの汚水を一時貯留するコンクリート製の貯留槽)に溜められます。数年に一度引き抜かれることがありますが、バキュームカーで引きぬかれた腐敗槽汚泥(セプテイジ)は、適切に処理されずに廃棄物処分場等にそのまま投棄されています。また、住宅によっては十分に引き抜かれずに雨水と一緒に河川に流れ込んだり、そもそもセプティックタンクが整備されずに直接河川に流れこむ状況も見られます。このことにより、河川や地下水が汚染され、健康被害の発生の原因になるなどの大きな都市問題になっています。

 

汚水が流れる川で遊ぶ子供達の画像
汚水が流れる川で遊ぶ子供達

 横浜市は、2012年3月にセブ市と「セブ市の持続可能な都市開発に向けた技術協力に関する覚書」を交わし、同年7月に市内中小企業のアムコン株式会社(横浜水ビジネス協議会会員企業※)を含む21社とともに、セブ市の都市課題解決支援を目的とした、合同調査を実施しました。

 アムコンは、ここで得た現地ニーズ情報やセブ市当局とのネットワークを活用して、同社の持つ汚泥脱水装置の技術について、平成26年1月から平成28年1月にかけて、JICA中小企業海外展開支援事業「汚泥脱水装置の普及・実証事業」を実施しました。

※横浜水ビジネス協議会:Y-PORT事業の一環として、新興国などにおける水環境に関する課題解決や、市内企業等のビジネスチャンスの拡大を通じて、市内経済の活性化等を目指す横浜市・企業・団体等で構成される協議会

アムコンの技術を用いた普及・実証事業の実施

セブ市での実証事業の様子の画像
セブ市での実証事業の様子

 JICA普及・実証事業において、アムコンの脱水装置は、腐敗槽汚泥を効率的に固形分と水分に分離させることができ、かつ目詰まりしにくいという特徴から、バキュームカーで引き抜かれた腐敗槽汚泥の処理過程において、大変効果的であることが確認されました。横浜市も、この普及・実証事業において、セブ市で汚泥処理に関する条例が施行されるように横浜市内での浄化槽からの引き抜き処理に関する制度をセブ市職員に説明したり、横浜市内の施設運営についての視察を受け入れるなど、セブ市の担当職員への技術協力を行いました。このような、公民連携による活動の結果、同社の技術はセブ市にとどまらず、フィリピン国公共事業・道路省や国内他自治体、食品工場等の民間事業体等からも高い関心が寄せられ、バギオ市やタルラック市などの公共下水処理場への導入が始まる契機となりました。

 さらに、民間工場等への納入実績をフィリピン国内で積み重ねており、JICA普及・実証事業後に21台が納入されています。

汚泥脱水処理装置の導入実績推移画像
図:汚泥脱水処理装置の導入実績推移

汚泥脱水処理装置の効果及び導入実績

(1)公共セクター(下水処理場や汚泥処理施設等)への導入普及

 JICA普及・実証事業は、フィリピン国における下水処理場への納入実績を増加させる契機になりました。JICA普及・実証事業の対象都市であったセブ市でのパイロットプラントへの導入に加えて、バギオ市、タルラック市の下水処理場や汚泥処理施設の拡張・資機材更新にあわせて、2施設への納品につながったことは、同社製品の海外販路拡大の大きな成果となりました。

 また、バギオ市下水処理場では、①汚泥処理(自然乾燥)時間の短縮(2か月程かけて乾燥させ販売用の堆肥を準備していた作業時間が大幅に短縮できること)、②場内衛生面の改善(汚泥が場内搬入された後、悪臭やハエ等の発生が大幅に低減される)等といった事業効果が報告されおり、海外都市の環境改善に貢献しているといえます。

(2)民間セクター(食品工場等の幅広い分野の民間施設)への導入普及

 現地の食品工場や化学系企業、電子部品を扱うメーカー、自動車メーカーを始めとする、幅広い業種の民間工場への導入が進んでいます。今後は、現地ホテル運営企業など、セプテイジ排出が多く、導入の効果が期待される企業からも着目されており、民間セクターへの導入普及が一層進む見込みです。

(3)その他の効果

 同社にとって、JICA普及・実証事業の効果は、フィリピン国内での普及効果に留まらず、様々な場面でもその効果が拡がっています。

 アムコン海外営業グループの鈴木さんにJICA事業の効果を伺ったころ、セブでのJICA事業の実績は、日本企業からの関心にもつながっているようです。様々なメディアやJICAホームページに掲載された情報等から、日本の総合商社からの引き合いにつながりました。日本の総合商社から、フィリピン国政府に提案する移動式汚泥脱水車に車載する脱水装置に同社の機器を使いたい、と声がかかったとのことです。

 また、リクルートにも効果がありました。「海外展開の強化のため国際人材を募集したところ、海外の環境問題への関心が高いJICA青年海外協力隊の経験者がこれまでに2名入社するなど、同社の組織体制にも影響があった」とのお話がありました。

このページへのお問合せ

国際局国際協力部国際協力課

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