2025年7月号 
横浜と宇宙のつながり

海、港、緑、歴史、地域、人々、さまざまな魅力を持つ横浜。この街の彩りを「よこはま彩発見」としてお届けします。今回は、横浜と宇宙のつながりについて、磯子区にある、はまぎん こども宇宙科学館からです。
広報よこはま2025年7月号に紙面掲載した「よこはま彩発見」の内容は、こちらのリンク先をご覧ください。

横浜と宇宙のつながり

はまぎん こども宇宙科学館
館長 的川 泰宣

古川宇宙飛行士(左)と的川館長(右)

横浜の中心街は、2つの台地に挟まれています。北西の野毛山公園は市民の憩いの場所で、動物園もあり、みなとみらいが見晴らせます。南東の山手は閑静な住宅地で、かつての外国人居留地。坂の上からの眺望も魅力の1つです。


天体望遠鏡の台石
提供:国立天文台

今から約150年前の1874(明治7)年、この2つの高台に、当時は少し見慣れないメキシコの国旗を掲げた小屋が出現しました。これは、「金星の太陽面通過」という珍しい現象を観測するためにはるばる日本を訪れたメキシコ隊の観測小屋です。
「金星の太陽面通過」とは、太陽と地球の間に金星が入り込み、その影が太陽を横切る現象のことです。地球からは、金星が小さな黒い丸となり、太陽の表面を移動していく様子をみることができます。
この現象は、100年に2回くらいしか起きない非常に貴重なものです。当時、その観測の適地として日本が選ばれ、世界各国から観測隊が横浜(メキシコ隊)、神戸(フランス隊)、長崎(アメリカ隊)を訪れ、観測を行いました。かつての航海は、星の位置を頼りに船の位置を知る天文航法で行われていました。「金星の太陽面通過」を観測すると、太陽から地球までの距離が正確に測定できると考えられていたため、精密な天体観測が安全な航海につながる、とても重要な情報でした。それもあり、世界各国が天体観測に力を注ぐ時代だったのです。


金星太陽面経過観測記念碑(野毛山)
出典:横浜市西区役所ウェブサイト

横浜に来たメキシコ隊を率いていたのは、フランシスコ・ディアス・コヴァルービアス隊長(当時41歳)。日本水路寮の海軍中尉吉田重親らも協力して、野毛山と山手の2地点で実施された観測は見事に成功を収めました。メキシコ隊が観測機器を据え付けた台石が、現在も民家の一角に残っています。
それから100年、1974(昭和49)年になって、これら観測地の近く(現在の県立青少年センターとフェリス女学院)に、天文学を愛好する有志によって記念碑が建てられました。


金星太陽面経過観測記念碑(山手)
提供:フェリス女学院

日本天文学会は、この歴史的な観測地を「日本天文遺産」に認定しています。当時の観測台や記念碑が残る横浜のほか、同様の観測を行った神戸(フランス隊)と長崎(アメリカ隊)の観測地も一緒に登録されています。
そして2024年2月、西区制80周年の記念事業の一環として、横浜市立老松中学校において、上記の観測150周年を記念したイベントが開催されました。川崎市の天文同好会の方々が、明治時代の資料を基に、当時の模様を生き生きと紹介してくれました。


メキシコ・トレオン市プラネタリウムのアントニオ・バウティスタ館長

また同年12月には、メキシコ・トレオン市のプラネタリウムのアントニオ・バウティスタ館長が、はまぎん こども宇宙科学館に来館され、少し前にメキシコで観測された皆既日食のことや、上述の150年前の観測にまつわる興味深いエピソードを話してくれました。「当時スペインから独立して間もない新興国メキシコにとって、遠征隊の横浜派遣は、国家の威信を示す意義が大きかった」と語っていました。

科学・技術というものは、エネルギーを生み出すために「発明」されたものではなく、初めは人間が生きていくために必死に工夫を重ね、やがてそこから生じた自然や生き物への純然たる好奇心が、その自然や生き物との対話を限りなく繰り返しながら、世代から世代へ受け継ぎながら創り出してきたものです。
その科学・技術は、これまでに世界の各地で発達してきた人類の豊かな文明を根底から支え、古代や中世の人々の生活ぶりと比較しても、私たちは実に素晴らしく「贅沢」で「便利」な毎日を送っていますね。


はまぎん こども宇宙科学館のプラネタリウム

はまぎん こども宇宙科学館には、「宇宙」を感じながら子どもの時代を生きてきた先輩たちによって生み出された現代の素晴らしい科学・技術の成果の一部が展示されています。その展示では、楽しい遊びを交えながら、現在の科学・技術を支えている最も基本的な原理や考え方が、多面的に身に付くよう工夫されています。
さらに、現在世界一の星の数を誇るプラネタリウムを擁していますから、併せて楽しんで帰ってくださいね。この投影機の原板には12億個の星を映せるように穴が開いているのですが、暗い星になるほど穴が小さくなっていき、ある暗さの星から先は、穴の直径が光の波長より小さくなってしまいます。そのため光が素直に穴を通過してくれないとか、明るい星と暗い星の光が重なるとか、いくつかの制約が生じて、スクリーン上に確認できる星の数は「少なくとも7億個」と言われています。それでも世界一の凄い夜空が実現していますから、ぜひ経験してみてください。

≫はまぎん こども宇宙科学館 公式サイト(外部サイト)

問合せ

はまぎん こども宇宙科学館
TEL 045-832-1166
FAX 045-832-1161

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【2025年7月31日(木)締切】】※応募受付は終了し、当選者へ8月4日(月)に賞品を発送しました。ご応募ありがとうございました。

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