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第六話:橋戸(はしど)の雨乞(あまご)い

最終更新日 2024年3月15日

 むかし、たいそうなお日照(ひで)り続きの年がありました。水田は亀のこうらのようにひび割れて、稲はほばらみのまま、畑の野菜もほとんどかれそうになってしまいました。
 これは一大事と橋戸の村の衆は皆集って雨乞(あまご)いの相談をしました。
「雨は竜神(りゅうじん)さまが降らせるもの、わらで大きな竜(りゅう)をつくり川の竜神さまにお供(そな)えしよう。」
「いや、雨降(あぶ)りの神、大山さまのお水をいただいてきておいのりしよう。」
「いっそのこと、両方ともやれば霊験(れいけん)あらたかになろう。」
 こう話はまとまり、さっそく、村中総出でわらを持ち寄って、とても大きな竜をつくり、回向橋(えこうばし)下の川のまん中へ青竹をおし立ててその竜を巻きつけました。また、足の速い若者を二人ずつ数組選んで、大山さままでお水をもらいに走らせることになりました。竹筒にお水をもらって帰る若者は、少しでも足を止めると、そこで雨が降ってしまうからと、村まで休みなく走り続けて、お水を持ち帰りました。
 持ち帰ったお水を竜の頭からかけ、村には西福寺の半鐘(はんしょう)で合図して、
「六根清浄(ろっこんしょうじょう)、雨降らせ!六根清浄、雨降らせ!」
と祈りました。このかけ声に合わせて、村の人々はいっせいに
「竜神さま、阿夫利(あふり)さま、どうぞ、雨を降らせてください。」
と唱(とな)え、小さな千匹の竜になぞらえたわらを流して雨乞いをしました。
 すると、ふしぎ、一天にわかにかき曇り、大粒の雨がざーざーと降ってきたということです。

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