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第二話:大歳(おおとし)の火

最終更新日 2019年3月7日

「おおとしの火」の民話のイラスト

 むかし、瀬谷村のあるところに、母親と息子が二人でくらしていました。その息子が嫁(よめ)を迎えた年の大晦日(おおみそか)の夜のことです。この家にきてはじめて正月を迎える若い嫁にむかって、姑(しゅうと)は
「今晩のかまどの火は明日の朝までけっして消さないようにしておくれ。その火で元旦の祝いの膳(ぜん)をつくるのが、この家のならわしだからね。」
といい、さらに、
「大晦日の火を守るのが嫁のつとめだよ。」
と念をおすと、先に寝てしまいました。
 嫁はいわれたとおり、かまどの火をたやさぬように気をはって見守っていましたが、昼間の疲れでついうとうととねむりこんでしまいました。
 はっと目がさめた時は、火はすっかり消えて灰になっていました。さあ大変、あれほどきびしくいわれていたのにと、嫁はいてもたってもいられず、門口に飛び出し
「燈々無尽(とうとうむじん)、お助けください。」
とむちゅうで唱えました。
 すると夜明け前のほの暗いなかから、ちゃん、ちゃんと、鉦(かね)の音がして、小さい灯が近づいてきました。それは葬式(そうしき)の行列でした。嫁はかけよって、
「私はだいじな火種(ひだね)を消して困っています。どうか提灯(ちょうちん)の火を貸してください。」
とたのみますと、行列の男は、
「火だけを貸すわけにはいかぬが、葬式ごとあずかってくれるというならみんな置いていくがな。」
と答えました。
 元旦早々縁起(えんぎ)でもないが、今は何より火がだいじだと考えた嫁は、葬式一切を納屋(なや)にあずかりました。こうしてやっと分けてもらった火種でかまどをたきつけ元旦を迎えました。
 起きてきた夫に、嫁は一部始終を打ち明けました。夫は
「それほど母のいいつけや家のならわしをだいじに思ってくれたのか。」
と嫁をいたわりながら、
「それにしてもお葬式を粗末(そまつ)にしてはすまない。」
と二人で納屋に行き、お棺(かん)に手を合せてふたをあけました。おどろいたことにお棺のなかには、金・銀小判が元旦の光にまばゆいばかりにかがやいていました。
 この嫁の心根(こころね)が姑にもよくわかり、それからのち一家は末長くしあわせにくらしたということです。

相模民俗学会編『神奈川の民俗(元旦の葬式)』より採話


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