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大気安定度

最終更新日 2018年8月21日

大気汚染の状況は、風、雨、日射などの気象条件に大きく影響されます。
一般に、大気汚染物質は、風が強いときは風に吹き飛ばされて、また、雨が降っているときは雨に洗い流されて濃度が低くなります。一方、風の弱い晴天のときには大気汚染物質が滞留しやすく、濃度が高くなることがあります。
このほか、地上と上空との気温の差によっても、大気汚染の状況は異なります。

工場・事業場や自動車などから大気中に排出された大気汚染物質は、時間とともに大気中に広がって(拡散)、排出源から離れるにしたがってその濃度が薄くなっていきますが、この「濃度の薄まり度合い」あるいは「拡散のしやすさ」は、気温の鉛直(上下)分布や風速などの気象条件によって異なります。
大気中における大気汚染物質の拡散現象を数式で表す「拡散式」では、この「拡散のしやすさ」を表す「拡散係数」あるいは「拡散パラメータ」を与える必要があります。
この「拡散のしやすさ」の強弱を表すため、気象条件(風速、日射量、雲量など)を組み合わせて考案されたカテゴリー指標(数値ではなく分類)が、「大気安定度分類」です。
大気安定度分類として代表的な Pasquill-Gifford Chart では、拡散しやすいケースから順に「不安定」(A~C)、「中立」(D)、「安定」(E~F)と6階級に分類し、水平(Y軸)方向及び鉛直(Z軸)方向の拡散パラメータを、風下(X軸)方向の距離の関数として図示(グラフ)しています。日本では、この分類に強安定(G)を加えています。

山の上などの標高の高いところでは気温が地上よりかなり低くなり、100m高くなるにつれて気温が1℃ほど低下します。
乾燥した大気の塊(大気塊)が外部から熱の供給を受けず(断熱的)に、現在の高度から上昇すると、上空ほど気圧が低いため膨張(断熱膨張)します。このとき、大気塊は外部に向かって力を加えながら膨張していくので、外部に対して仕事をしたことになり、エネルギーが消費されます。
しかし、空気は熱を伝えにくい物質であるため、短時間では外部との熱交換はほとんどおこりません。このため、膨張するのに必要なエネルギーは外部からは供給されず、大気塊の内部エネルギーを消費することになり、その結果、気温は低下します。逆に現在の高度から下降すると、気圧が上昇するため圧縮(断熱圧縮)されて気温は上昇します。

熱力学の第1法則によると、外部から加えられた熱量(Q)、外部に対する仕事量(W)、内部エネルギーの変化量(△U)との間には、次式に示すエネルギーの保存則が成り立ちます。

Q = W + △U

断熱変化の場合は、外部との熱交換がない(Q=0)ため、W=-△U となり、外部に対する仕事がすべて内部エネルギーの変化となって表れることを意味します。
気体を断熱膨張すると(W>0)、内部エネルギーの変化量は負値(△U<0)となり、気体の温度は下がります。
逆に断熱圧縮すると(W<0)、内部エネルギーの変化量は正値(△U>0)となり、気体の温度は上がります。

この高度によって気温が低下する割合を「気温減率」あるいは「気温逓減率」といいます。
乾燥した大気を断熱的に上昇させたときの理論的な気温減率である Γd = -0.98℃/100m を「乾燥断熱減率」といい、大気の鉛直方向の温度分布を見る際の基準となっています。
一方、雲や水蒸気など水分を含む湿った大気の場合は、上昇して断熱膨張すると気温が低下しますが、飽和水蒸気圧も低下して大気中の水分が凝結し、潜熱が発生して大気塊を暖めるため、乾燥断熱減率よりも小さな気温減率となります。これを「湿潤断熱減率」といい、大気中の水分量によってその値は異なり、-0.5℃/100m ~ -0.7℃/100m 程度の幅がありますが、一般には -0.65℃/100m が使われています。

晴天の日には、日の出とともに、太陽からの熱で地面が熱せられるため、地面に接している大気塊は地面からの熱で暖められて膨張し、密度が小さく(軽く)なって上昇します。このため、時間がたつにつれて地表付近から気温が上昇して、日中には地表付近が高温で上空が低温という気温の鉛直分布が出現します。
このように、大気の上層と下層との間に温度差(密度差)が生じることにより、上昇気流が発生して、鉛直方向に対流が発生します。
この対流が発生している層(混合層)では、地表付近で排出された汚染物質を含む大気塊は、対流により上空に運ばれて拡散し、大気汚染物質の濃度が薄まります。この状態のことを「大気が鉛直方向に移動しやすく、同じ場所に止まっていない」という意味で、「不安定」(Unstable)状態にあるといいます(図1)。

気温減率が乾燥断熱減率にほぼ等しい場合を「中立」(Neutral)状態といい(図2)、曇りや風の強い場合などが該当します。
この場合は、周囲との温度差がないため、上下方向の動きは起きません。

一方、冬の風が弱くよく晴れた夜間などには、地面から天空に向かって放射される 赤外線(熱)を遮断する雲がないため、地面からの放射( 赤外放射)の度合いが強くなり、地表付近はどんどん熱が奪われて冷え(放射冷却)、早朝には霜が降りたりすることがあります。この場合は地表付近は低温で上空が高温となるため、対流は発生せず、汚染物質は拡散しにくくなります。この状態のことを「大気が元の位置から動きにくく、外力に影響されず安定している」という意味で、「安定」(Stable)状態にあるといいます(図3)。

さらに、地表付近の気温が低下すると、地表付近の気温が上空よりも低くなるという通常とは逆の現象が発生することがあります。この状態のことを気温の鉛直勾配が通常とは逆転しているという意味で、気温の「逆転」(Inversion)といいますが(図4)、特にこの場合を「接地逆転」といいます。
気温の逆転が発生している層を「逆転層」といい、大気の安定の程度が強く「強安定」状態となり、汚染物質は上空に拡散せず地表付近に滞留して、濃度が高くなる場合があります。

大気安定度の分類図(不安定,中立,安定,逆転)

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