第33期 横浜市社会教育委員会議提言【概要版】 ー「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」に基づく取組の方向性についてー 誰もが読書をできる社会を目指して、令和元年に「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(以下、「読書バリアフリー法」)」が施行されました。横浜市においても、早急に読書バリアフリー法に基づく取組を進める必要があります。 本提言では、読書バリアフリー法で「視覚障害者等」として定義されている「視覚障害、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍について視覚による表現の認識が困難な人」の市立図書館・学校図書館を中心とした読書環境の整備の方向性について、同法の基本理念を軸に「第33期横浜市社会教育委員会議」で検討を重ねてきた結果をまとめています。 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法) 基本理念 1視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等が、視覚障害者等の利便性の向上に著しく資することに鑑み、その普及が図られるとともに、視覚障害者等の需要を踏まえ、引き続き、視覚障害者等が利用しやすい書籍が提供されること 2視覚障害者等が利用しやすい書籍等の量的拡充及び質の向上が図られること 3視覚障害者等の障害の種類及び程度に応じた配慮がなされること 〇提言「基本的な取組」~従来からの取組を継続的に実施するもの~ 1視覚障害者等が利用しやすい書籍等及び読書支援機器の拡充 ・視覚障害者等が利用しやすい書籍等や読書支援機器の拡充 ・市立図書館による視覚障害者等が利用しやすい書籍等の学校図書館への貸出 ・視覚障害者等が利用しやすい書籍等の製作人材の育成 2視覚障害者等が利用しやすい書籍等を誰もが利用できる環境づくり*1 ・市立図書館の活字資料での読書が困難な人へのサービスの対象拡大*2に関する周知 ・一般利用が可能な視覚障害者等が利用しやすい書籍等の周知 ・視覚障害者等の読書環境整備に必要な用具の給付 3円滑な図書館利用のための合理的配慮 ・市立図書館における視覚障害者等へのサービスの充実 ・市立図書館の施設整備や改修における、視覚障害者等の円滑利用への留意 ・学校図書館における、児童生徒、教職員のニーズ等に応じた円滑な図書館利用のための支援 *1 著作権法第37条により製作される書籍等は、利用対象が「視覚障害者等」に限定されています *2 市立図書館では、令和4年4月から活字資料での読書が困難な人へのサービスの対象を、「視覚障害者」から、発達障害、肢体不自由その他の障害により、書籍について視覚による表現の認識が困難を伴う「視覚障害者等」に拡大しています 〇提言「重点取組」 ~「基本的な取組」を基盤とした上で、特に重点的に推進していくもの~ 横浜市の特徴や、インクルーシブ教育などの視点を踏まえて、多様な主体との連携・協働を推進しながら、4つの重点取組を行うものとします。 (重点取組1)連携・協働による視覚障害者等が利用しやすい書籍等の製作 【背景】 ・視覚障害者等が利用しやすい書籍等の製作を担う図書館協力者やボランティアの高齢化に伴う、製作人材の確保が課題 ・製作人材の確保にあたっては、ボランティアのみに頼ることなく、様々な方策の検討が必要 【施策】民間事業者等と連携した視覚障害者等が利用しやすい書籍等の製作 ・視覚障害者等が利用しやすい書籍等の製作工程の分担など、出版社や大学等への働きかけ ・障害者就労施設等との連携による、市立図書館における視覚障害者等が利用しやすい書籍等の迅速な製作 (重点取組2)インターネットサービスの利用促進 【背景】 ・人口規模の大きい横浜市では、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等が集約された「サピエ図書館」や「国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス(以下、「国立国会図書館」)」のインターネットサービスの利用促進が有効 ・インターネットサービス利用促進にあたって、視覚障害者等のデジタルデバイド(情報格差)解消が課題 ・市立学校では1人1台端末が整備され、学校におけるインターネットサービス活用が期待される 【施策1】「サピエ図書館」「国立国会図書館」のインターネットサービスの利用支援の充実 ・操作方法、検索方法などに関する相談対応、講習などの支援 【施策2】学校におけるインターネットサービス利用支援の充実 ・司書教諭、学校司書などへの研修等を通じた、児童生徒のインターネットサービス利用支援 (重点取組3)図書館職員、司書教諭、学校司書等の人材育成 【背景】 ・一人ひとりのニーズに応じた支援を行うためには、障害特性や障害者サービスの内容を理解し支援方法を習得することが重要 ・人材育成の対象は、図書館司書、司書教諭、学校司書に加えて、視覚障害者等と接する市立図書館や学校に関わる人たちにも広げることが必要 【施策1】市立図書館における職員の人材育成 ・視覚障害者等との交流や読書支援機器の操作体験など、障害特性の理解促進や支援方法を学ぶための取組の実施 【施策2】学校における司書教諭、学校司書等の人材育成 ・司書教諭や学校司書をはじめとした教職員に対する、市立図書館等との連携による研修や先進事例の共有、視覚障害者等との交流など、障害特性の理解促進や支援方法を学ぶための取組を実施 (重点取組4)効果的な広報・啓発戦略 【背景】 ・読書バリアフリーに関する支援情報は点在しており、必要な情報にたどり着くまで相当な時間を要する(市立図書館におけるサービス対象に新たに加わった、発達障害、肢体不自由の障害者等には特に配慮が必要) ・発達障害など気づきにくい障害のある人は、障害特性について本人も認識できていない場合があるため、障害の有無に関わらず、幅広く広報・啓発を行うことが求められる ・視覚障害等により読書や図書館利用を諦めてしまっている人に対する働きかけも必要 【施策1】各種支援情報の一元化・見える化 ・支援情報を集約したウェブサイト作成、ウェブサイトを活用した横断的な庁内支援体制の整備 【施策2】「誰一人取り残さない」ための情報発信 ・視覚障害者等が日頃よく利用する施設や機関などでの幅広い広報、視覚障害者等への情報提供に関する支援者(障害者団体、相談支援専門員、ヘルパー、ボランティア等)への働きかけ ・市立図書館、学校での、障害の有無に関わらず知識や情報を得る機会の充実 ・身近な施設や地域イベント等での、視覚障害者等が利用しやすい書籍等を体験する機会の提供 【施策3】地域共生社会の実現に向けた読書バリアフリーへの理解促進 ・身近な施設等における様々な機会を捉えた読書バリアフリーへの市民理解の促進 ・児童生徒同士の支え合いに関する理解の促進 【参考1】視覚障害者等が利用しやすい書籍等 視覚障害者等が利用しやすい書籍等には、従来の点字図書や拡大図書などの紙媒体のもののほかに、タブレットや専用機器などの電子機器を使って読む「視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等」があります。 「音声デイジー*1」や「音声読み上げ対応の電子書籍」「オーディオブック*2」などは、資料の内容を音声で聞くことができ、視覚障害者等が読書をする際に有効です。 また、「マルチメディアデイジー*3」や「テキストデイジー*4」などは、資料の内容を音声で聞きながら、読み上げられる文章の背景に色をつけるハイライト機能があります。弱視、発達障害などにより読むことが困難な人は、読みやすい文字の大きさやフォントの種類、ハイライトの色などを変えることができるため、一人ひとりのニーズにあわせた読書を可能にします。 *1音声デイジー 視覚障害者等用に本の内容を録音して音声にしたもので、再生には専用の再生機器や再生アプリ等を用いる *2オーディオブック 本の内容を朗読した音声データ *3マルチメディアデイジー 文字や画像をハイライトしながら、その部分の音声と一緒に読むことができる *4テキストデイジー テキストデータ(文字)に見出し情報やページ情報等の文書構造を付加したもの。音声合成機能で読み上げさせる 【参考2】サピエ図書館、国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービス 「サピエ図書館」と「国立国会図書」は、視覚障害者等が、無料で、視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を入手することができるインターネットサービスです。全国の点字図書館、公共図書館、大学図書館等で製作された音声デイジーやマルチメディアデイジーなどの書籍データ(サピエ図書館:約30万タイトル、国立国会図書館:3万タイトル)が集約されています。 視覚障害者等は、サピエ図書館、国立国会図書館を通じて、全国で製作された視覚障害者等が利用しやすい電子書籍等を、自宅などからダウンロードして読むことができます。また、地域の公共図書館や点字図書館に電話等で申込みをして、郵送等で書籍データを記録した記憶媒体を手に入れることもできます。 令和5年2月 第33期横浜市社会教育委員会議 編集・発行: 横浜市教育委員会事務局総務部生涯学習文化財課 〒231-0005 横浜市中区本町6丁目50番地の10 TEL: 045-671-3282 FAX: 045-224-5863 ホームページ: https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kyodo-manabi/shogaigakushu/hokokusho/shakaikyoiku/shakaikyoiku.html 【資料は以上です。】