第33期横浜市社会教育委員会議 第4回会議録 日時:令和4年8月31日(水)午前10時00分~午後12時00分 開催場所:横浜市庁舎 9階 共用会議室9-N12 出席者:牧野議長、安藤委員、野口委員、副島委員、長尾委員、齋木委員、松島委員 欠席者:中西委員、高木委員、大橋委員 開催形態:公開(傍聴人0名) 議事:重点取組について(テーマ議論) ・重点取組3「司書、司書教諭、学校司書等の人材育成」 ・重点取組4「効果的な広報・啓発戦略」 (報告) 視覚障害者等を対象にした読書に関するアンケート調査(速報版) 資料:「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリ ー法)」に基づく本市取組の方向性について(資料1) 視覚障害者等を対象にした読書に関するアンケート調査(速報版)(資料2) 第33 期横浜市社会教育委員会議 第3回会議録(資料3) ■議事 【牧野議長】 本日は、重点取組3「司書、司書教諭、学校司書等の人材育成」及び重点取組4「効果的な広報・啓発戦略」に関するテーマ議論を行います。 はじめに、今後の議論にも関わるかと思いますので、事務局が実施した「視覚障害者等を対象にした読書に関するアンケート調査(速報版)」の結果について、まず事務局から報告いただき、続けて重点取組3の説明をお願いします。 【事務局】 視覚障害者等を対象にした読書に関するアンケート調査(速報版)(資料2) 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」に基づく本市取組の方向性について」(資料1)の「重点取組3 司書、司書教諭、学校司書等の人材育成」を説明。  ただ今の説明箇所について、本日ご欠席の中西委員、大橋委員から、ご意見をいただいているのでご紹介します。 中西委員からは、「資料のアンケート結果を見て、半数近い方に情報が届いていないことを再確認した。利用したいけれど利用できない現状をなんとかしなければならないと切に思う。行政と一体となった、広報、啓発活動が必要だと思う。」といただきました。 大橋委員からは、市立図書館における司書の人材育成について、「司書職員の数も多いため、繰り返し実践的な研修を実施する必要がある。障害の特性に応じた接遇の在り方を学ぶとともに、個々の利用目的に対応した司書の専門性を追及してほしい。初めて図書館を利用した時の印象によって、その後の図書館のイメージが決まってしまった、という友人の感想も多い。『サービスは人なり』とは、名言だと思う。」といただいています。また、学校における司書教諭、学校司書等の人材育成について、「盲特別支援学校の図書館をはじめ、テキストデイジーやマルチメディアデイジーなどの製作に当たっている施設や団体から、情報とノウハウを学校司書や父母に伝えるための『特別授業』などを実施する必要性を感じる。スイス・ジュネーブで8月22日から始まった障害者権利条約に関する国連の審査の結果によっては、司書教諭、学校司書の役割が一層問われることになるであろう。世界の潮流は、我が国の分離教育を基盤とした教育制度ではなく、健常者と障害者が共に学ぶ『インクルーシブ教育』だからだ。教育関係者に対して、障害者の権利条約の重みを自覚してほしいと申し上げたい。」といただきました。 【牧野議長】 重点取組3「司書、司書教諭、学校司書等の人材育成」についてご意見をいただきたいと思います。本日ご欠席の委員のご意見にもあったように、読書バリアフリー法に基づき、視覚障害者等の支援を行う司書、司書教諭、学校司書がどのように力を発揮するのかということ、また、アンケート調査の速報値から、半数以上の人に情報が届いていないという現状を踏まえ、どういった情報提供の在り方があるのかということも含めてご議論いただけたらと思います。 【松島委員】 司書に対する研修について、健常者だけで行っても、障害者のことを理解することは難しいと思います。研修に障害者が加わることで、司書に障害者の特性を理解してもらうことができるのではないかと思うのです。例えば、市立図書館の会議で障害者も、健常者も集まる機会をつくり、そこで司書が障害者に会い、お話を聞くなどして、自然と障害について学ぶことができるのではないかと思います。障害者抜きで、障害のことを学ぶことはできないと考えています。 【牧野議長】 学校では障害のある方、ない方が共に学ぶインクルーシブ教育という考え方が言われていますが、専門職の育成にも、障害者の方にも入っていただいて研修をできないかというご意見をいただきましたが、いかがでしょうか。 【野口委員】 松島委員の障害者の方に司書向けの研修に入っていただくというご意見は、おっしゃる通りだと思います。先週、滋賀県の生涯学習課主催の読書バリアフリー研修会に呼んでいただきました。滋賀県は今年の3月に、読書バリアフリー計画を策定し、今年度から、研修を実施しています。研修会で、私は概論を担当させていただきましたが、概論の前に当事者の方のお話があり、その後行ったグループワークにも、当事者の方が一緒に入って、議論を深めていくというような研修を展開していました。今回参加させていただいて、当事者の方が入り、研修をすすめていくということは、有意義なことであると感じました。 重点取組3に関わるところで2点ありまして、1点目は、学校図書館の専門職の研修や育成の視点も大切ですが、一般の教員が、読書バリアフリーのことを知るということがとても大切だと思います。アンケート調査で情報が約5割の方に届いていないという話がありましたが、学校図書館の担当者だけで情報を届けることができるのかと考えると、難しいと思います。クラス担任などの身近な教員が、読むことに困っている児童・生徒に対して、読みにくさを補う方法や図書館に行くと機器や読みやすい書籍があることを知らせていくことが大切だと思います。全教員を対象にした研修が大切だと思います。読書バリアフリーといテーマだけで研修を行うのが難しい場合には、特別支援教育の研修の中に、読書バリアフリーのことを盛り込んでいただくといったこともできるかと思います。 もう一点は、アンケート調査の中で、デイジー図書の製作を増やしてほしいという意見もありましたが、製作人材の育成支援という視点で、デイジー図書の製作団体の研修をサポートするようなことも盛り込んでいただいても良いかもしれません。すでに市立図書館が既に行っているかもしれませんが、位置付けていくことも大事なのではないでしょうか。 申し上げた2点については、重点取組3にも、重点取組4にも関わる要素かと思います。 【牧野議長】 重点取組3の人材育成については、図書館、学校図書館の専門職を対象としていますが、対象を狭めすぎてはいないだろうかというご意見をいただきました。いろいろな方に情報を届けるために、一般教員の方にも研修を行い、書籍を作る方も含めて人材育成をしていく必要があるのではないかというお話でしたが、その他にご意見はありますでしょうか。 【副島委員】 学校関係者としてアンケート調査の結果を重く受け止めました。ディスレクシアの方の回答が多く、10代以下の回答が全体の半数を占めたということは、ニーズに対して、学校現場にいる大人が気づくことができていない、対応できていないということの表れだと思います。 視覚障害のある児童・生徒の方は、盲特別支援学校でサポートを受けられている一方で、ディスレクシアの児童・生徒は、学校の理解も進んでいない中で、ディスレクシアかどうか分からないままの児童・生徒もたくさんいらっしゃると思うのです。アンケート調査のご意見を重く受け止め、広く知らしめたいと思いました。資料の7ページのご意見を読み、お子さんたちのことを考えると、苦しくなりました。学校の授業の在り方がお子さんに合っていないというご意見や、ディスレクシアについて学べるよう学校の先生を教育する機会を設けてほしいというご意見が出てきてしまうことは、申し訳ないことだと思うのです。また、学校での支援がほしいというご意見は、保護者の方が、学校現場に支援を求めていることの表れであると痛切に感じました。 先ほど学校での全教員に対する研修のお話がありましたが、現在の特別支援教育の研修の内容は、概論がほとんどで、学校現場の教員が子供を支援する、サポートするというところまで、たどり着いていないと思っています。周りの大人から気づかれないで、読むことに対しての困難を抱えている子供がいることを知り、具体的な支援ができるよう、早急に研修を行うべきだと思うのです。全教員に対する研修に学校司書が必ず参加するという形があって良いと思います。学校司書は非常勤の立場なので、一般的な学校の研修の対象に、学校司書は入らないケースが多いのです。現在の特別支援教育の研修に、学校司書が必ず参加するというのは、周知すればすぐに行えると思います。現場はすぐに動かないといけないと思うのです。 学校司書は小中学校企画課、特別支援教育は特別支援教育課が担当して双方で研修を実施していただいていますが、うまく連携して、具体的な支援につながる研修を実施してほしいと切実に思います。 【牧野議長】 アンケート調査の意見欄にある声を、学校がきちんと受け止める必要があるではないかということと、重点取組3は、専門職の育成とありますけれど、全学校の教員に対して研修を行い、学校の教員に理解してもらい、その中に専門職の研修も組み込んでいくという在り方もあるのではないかというご意見をいただきました。 【齋木委員】 最初に本を読んで挫けるのは、図書館の本ではなくて、学校の教科書ではないかと思います。教科書が読めない児童・生徒に対して、対応をする人は教員なので、教員への研修の必要性は、とても高いと思います。ただ、すべての教員が難しいところまで把握することは、難しいと思います。そのため、教員に対する研修を行うことを前提に、専門職として一段階高い知識を身に着けている人が学校図書館にいて、さらに詳しい知識を身に着けている人が市立図書館の司書となっていないと、きちんと回らないのではないかと思います。例えば、先ほど研修での障害者の方との対話というお話がありましたが、すべての教員が障害者の方と対話することは難しいと思いますので、市立図書館の司書と障害者の方との対話といったような傾斜の付け方が必要なのではないかと思います。 私の会社では、電子書籍のサブスクリプションサービスを行っています。音声読み上げができる書籍も入っています。音声読み上げは、私の会社やジャパンナレッジなどでも出しています。普及しているかというとそこまで至ってはいない状況です。これらのデイジー図書やマルチメディアデイジー以外の民間の音声読み上げサービスをどのように取り扱うかというのは、今後、学校や図書館の課題になっていくのかなと思います。コロナで電子図書館を導入している公共図書館も増えたと思いますが、それらを、アクセシビリティという観点で、どう伝えていくか、当事者の方にどのように知っていただくかというところがポイントになっていくのだろうと思います。 【牧野議長】  重点取組3は、重点取組4にも関わってきますので、切り分けが難しいところですが、司書、司書教諭、学校司書等、専門職の人材育成をどのようにしていくか、読書バリアフリー法に関わる視覚障害者等に対する配慮や支援をどのようにしていくかということがポイントになろうかと思います。ここまでの議論で、学校の中で、一般教員の方への研修を強化する必要がある。さらに専門職の方には、障害者の方と学んでいただく必要があるという意見が出ました。まずは、教員の方に、きちんと研修をして、司書教諭、学校司書の専門職の方には、その研修に入っていただくといった論理の切り替えが必要ではないかというお話がありました。さらに、様々な支援機器や技術がありますのでそれらを活用しながら、読書バリアフリーの支援体制づくりを実現していくというお話がありました。技術を活用するということも専門職の役割だと思いますが、他にご意見はありますでしょうか。 【齋木委員】  重点取組3と重点取組4の切り分けとして、重点取組3は、学校と図書館にして、重点取組4は一般にするというのもありますか。 【牧野議長】 学校でも先生方への啓発や研修が必要ですが、子供たちに対しても教えていく必要があるのではないかと、議論はどんどん広がっていくのではないかと思います。それも重点取組4で議論することになると思います。読書バリアフリーというと、関係者という枠組みでセグメントされてしまうということが起こりがちですが、一般の方にも理解をしてもらい、その中に障害を持っている方にどのように入っていただくかという議論もあっても良いかもしれません。 【野口委員】 誰もが、高齢になることで読みづらさを感じる可能性を持っていることから、読書バリアフリーは自分には関係のない人は誰もいないと思うのです。今の時点の当事者の方に知らせるだけではなく、すべての方に知ってもらうことが大事になってくると思います。 【齋木委員】 障害に対して、昔ほど壁がなくなっているのではないかと思います。アンケート調査の中で、オーディオブックのように朗読してもらった方が良いという意見があったと思います。これまでの議論で無機的に読むのが良いという意見があったと思いますが、そういった意識を改めなければならないかもしれません。障害者はこうだから、私たちはこのようにするべきなのだというように考えてしまうことで、読みにくい人たちの読書機会を逸してしまうこともありうるかもしれません。ですから、これまでのメソッドを変えなければならないと思います。そういう点を意識した方が良いと思いました。 【野口委員】 先ほどの一般の教員向けの研修の話がありましたが、横浜市では短い研修動画をつくって配信してらっしゃると思います。研修動画のテーマを、読書バリアフリーで作成していただくということも良いかもしれません。既存のシステムを活用することで、受講する教員にとっても負担なくできると思います。 【牧野議長】 研修の手法についてご意見をいただきました。従来の司書、司書教諭、学校司書を含めた人材育成について、専門性を発揮しながら、障害を持った方の読書バリアフリーを支援するという在り方、研修の在り方についてご意見いただければと思いますが、いかがでしょうか。 図書館司書だけではなくて、図書館職員にも広げていくという議論にもなるかもしれませんが、いかがでしょうか。 【安藤委員】 副島委員に学校図書館の役割は何かということについてお聞きしたいのですが、横浜市立の学校では、学校図書館に行けば学校司書がいて、パソコンがあって、いろいろな情報が調べられる場になってきたと思います。調べたいことがあったら図書室へ行き、知的好奇心を満足させる、メディアセンターという機能の充実に取り組んでいたと思うのです。そのような図書館教育の目的、目標をご説明いただけたらと思います。 【副島委員】 学校司書を配置して10年ほどたちますが、学校図書館には、読書センターと、自分自らの課題を解決するための情報センターという2つの機能があります。 学校司書導入前の、従来の学校図書館は、休み時間だけ空いていて利用する児童・生徒もわずかという状態でした。 最初は、朝読書という取組ができて、本に親しむということを目標に取り組んでいたと思いますが、その後、課題を解決していくプロセスを身に付ける情報センターということに重きが置かれるようになりました。 個人的な経験から、今にして思えば、様々な困難を抱えた児童がたくさんいたと思いますが、当時は知識も情報もない中で、本が読めない児童が相当数いたという事実に愕然としました。教科書は読みやすくなっているので読めるのですが、自由読書に取り組むことができない児童がとても多かったです。今にして思えば、それぞれのお子さんに困難さがあったのだろうと思いますが、当時はそれを分からない中で、あの手この手で読書に親しめるようにしてきました。私は、自分が読みたい本を読むことができることが、最高の幸せで、自己肯定感を高めることにつながると考えています。学校図書館は、自分が読みたい本が読める場所で、根源的な価値のある場所だと思っています。 【齋木委員】 学校図書館は、よく言われるのは、読書センター、情報センター、学習センターの役割があって、何年か前から居場所としての場所として言わるようになっています。居場所としての役割が話題になったのは「ぴっかりカフェ」だったと思います。 【野口委員】  居場所としての役割については、随分前から文部科学省からも言われていますが、実践という意味では、「ぴっかりカフェ」の影響は大きかったのかもしれません。 【齋木委員】  実際に学校図書館を逃げ場にしていた人が、大人になって学校図書館で働くという例もあるようです。学校図書館は、逃げ場所として、機能していると思います。 【安藤委員】 学校図書館の居場所としての役割というお話がありましたが、ここ10年で学校図書館が変わったと思います。四季にあわせ本を選び、テーマに沿った平積みを行うところが増えていて、学校図書館が楽しいところになってきていることは、とても良いことだと思います。 ただし、先ほど、特別支援教育の中のディスレクシアの教育についてお話もありましたが、それは読書とは別の問題で、分けて考える必要があります。学力保障をどうするかという問題や教育の観点で学び損なうことのないようにしなければならないといった問題は読書とは異なる視点で検討されるべき課題です。 一方、図書館にしかない雰囲気をもっと良くしていくという意味では、ディスレクシアとか読むことができない子供と限定せず、だれがいつ行っても良いというような在り方になってほしいと思います。例えば、授業中に教室にいるのが辛いという子供が、図書館で勉強するという選択ができるようになっても良いと思います。教室の中にいられない子供が学校図書館を逃げ場というと、否定的な感じがしますが、そうではなく、自分の気持ちを立て直す、子供達の拠り所とポジティブな捉え方になっていくと良いと考えています。学校図書館自身の在り方を楽しくしていくところに、重きを置いてほしいと思います。 【齋木委員】 学校図書館の担当者は、いろんな工夫をしてとても頑張っていると思います。一方で、図書館の雰囲気が好きではない子供もいます。例えば、どちらかというと外で遊ぶことやサッカーが好きな子供に対して、サッカーを頑張ってくれれば良いという考え方も、サッカーだけでなく読書も好きになってほしいという考え方も、両方の考え方があって良いと思います。この話を図書館で働く人にすると、サッカーが好きな子に読書も好きになってほしいとみなさんおっしゃるのですが、あなたがサッカーを好きになってほしいと言われたらどうしますかと言うとみなさん黙ってしまうのです。サッカーを好きな先生は、運動は健康に良いからサッカーをすると良いと思うわけです。子供に対する読書へのアプローチを考える時は、そのようなことも考えた方が良いと思うのです。 私の会社の電子図書館の入口は、本が並べられたデザインではありません。図書館のように本が並べられたデザインの方が、電子図書館ということが分かりやすいとは思うのですが、本を嫌いな子供にとっては、本が並んでいないデザインの方が良いのではないかという話になったのです。本が苦手な子供が、この電子図書館を通じて、本を読むようになって、図書館にある紙の本を読むようになった事例があるようです。 本が好きで育ってきた大人が本に対して抱く印象や感情と、本を読んでいない子供が本に対して抱く印象や感情は違うと思いますので、子供に対するアプローチは時間をかけて考えなければならないなと思っています。 【牧野議長】 不登校の子どもの居場所としての図書館は前から言われていることですし、議論の入口としては、学校図書館についていろいろな議論があると思いますが、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律に基づく横浜市の取組の議論ですので、それを踏まえご発言いただけると有り難いです。 【野口委員】 今、ご提案いただいている内容は、市立図書館と連携しつつ、市の教育委員会事務局として、どう司書教諭や学校司書を育成していくかですが、市内や県内の大学には、図書館情報学の研究者がいますので、リカレント教育とまでは言わないにしても、大学と連携した取組の実施という視点もあって良いと思います。 【牧野議長】 研修の在り方について検討できないかというご意見だったと思います。今、図書館情報学の研究者というお話がありましたが、福祉の研究者も関わって研修プログラムを作るという在り方もあって良いかと思います。そういったことも大学の役割だと思いますので、ご検討いただけたらと思います。 【事務局】 重点取組を行う前提として「多様な主体との連携・協働」という視点を盛り込んでいますので、野口委員にいただいたご意見も、この前提に関わるものと受け止めさせていただきます。 【松島委員】 例えば、司書教諭や司書のアシスタントでも良いから、障害者に対するボランティアの方がいると、障害者も馴染みやすいと思います。  先ほど、子供に本を読んでほしいというお話がでていましたが、本を読める状況が整っていても、読むこと、読まないことを選択するのは、その人の権利だと思うのでそれを保障してほしいと思います。それは忘れないでいただきたいと思います。 【牧野議長】 皆さん様々な思いがおありで、私も共感するところがたくさんありますが、議論が拡散していますので、少し収斂させたいと思います。重点取組3については、専門職の研修の在り方が課題になるだろうと思います。専門に特化して狭くということでなくて、対象を広げていきながら、その中に専門職の方を取り込んでいくような研修の在り方があるのではないかということ。また、大学には専門に研究している方がいらっしゃいますので、そういった社会資源を活用しながら、研修を充実させていく必要があるということ。また専門職を取り巻く専門家とは言えないけれど、図書館の利用を促進する方の育成が必要ではないかということ。障害を持った当事者の方と一緒に研修を実施していく必要があるのではないかということ。さらにお話を伺いながら、今回読書バリアフリー法に基づいた取組なので、いわゆるマジョリティと呼ばれる健常者が、障害者の方を支援するという観点に立ちがちですが、同じ土俵に立つという感覚、一緒になって読書を推進していけるような体制づくりといったこと、例えば、図書館にボランティアとして障害をもった方がいらっしゃって読書を支援する、または仕事を一緒にしても良いし、そういうインクルーシブな関係をつくっていくということが、検討されても良いのではないかと思いました。 また、学校のカリュキュラムはコンピテンシー・ベース、探求型に変わっていますので、図書館の役割がどんどん大きくなっていくと思います。先生が多忙なこともあり、まだナレッジ・ベースになっているかもしれませんが、いろいろな人に力を借りていく必要があるということから、コミュニティ・スクールの議論が出ていて、地域の専門の方に任せていくということで、先生方も教える先生から、寄りそって探求する先生に変わっていくということになっていくことが目指されています。読書バリアフリー法の精神に基づいて、障害のある方と一緒に読書活動ができる学校の在り方ですとか、地域の方が関わりながら、学校図書館を支えていけるような仕組みづくりも必要になってくるのではないかと思いますので、ぜひそういったことも検討いただけたらと思っています。  次に重点取組4の議論に移りたいと思います。まずは、事務局から重点取組4の説明をお願いします。 【事務局】 「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法)」に基づく本市取組の方向性について」(資料1)の「重点取組4 効果的な広報・啓発戦略」を説明。  本日ご欠席の大橋委員から、重点取組4についてご意見をいただいているのでご紹介します。  各種支援情報の一元化・見える化、「誰一人取り残さない」ための情報発信について、「視覚障害者等を対象にした読書に関するアンケート調査結果の回答数があまりにも少ないと感じた。この事実は、障害者福祉関連情報が障害市民へ十分に発出されていないことを意味するのではないだろうか。読書バリアフリー法に加えて、今年の5月に、障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法が成立・施行された以上、市の発出文書の情報提供の在り方を抜本的に見直す必要がある。」といただいています。 また、地域共生社会の実現に向けた読書バリアフリーへの理解促進については、「アンケート調査の結果によれば、『それがなにか知らなかった』という回答が予想以上に多かった。市の関連部署を含めて、学校教育や社会教育現場の取り組みの弱さを如実に表したものといえる。図書館も見学などの受動的な取り組みの促進ではなく、もっと積極的に市民活動に参加して、出前の障害者サービスのデモンストレーションを行い、周知徹底を図る必要があろう。来る者は拒まず、という姿勢では、障害者の読書バリアフリーにはつながらないと思う。」といただいています。 【牧野議長】 重点取組4 効果的な広報、啓発戦略についてご議論いただきたいと思います。障害の有無にかかわらずとありますが、いわゆる健常の人も含めて、どう普及、啓発していくのかという議論になろうかと思います。苦手意識のある方への入口をどのようにしていけばよいのかという点や、必要な情報が必要な人に届くようにするという観点も含めて、ご議論いただけたらと思いますがいかがでしょうか。 【長尾委員】 重点項目3に関わる話になってしまいますが、学校司書が10年ほど前から配置されました。それ以前は、学校図書館はあるものの、教員が通常業務もある中で、学校図書館の整備や、図書の相談の対応をなんとか行っていたという状況でした。学校司書が配置され、学校図書館に常駐する人がいるということは、本当に有り難いと思いました。本校には、学校図書館として部屋がありますが、本市の特別支援学校13校、それぞれの学校を見ますと、図書館というよりは、図書コーナーというような感じの学校もあります。その中で、各校の学校司書の方が、学校の子供たちの特色を理解し、十分力を発揮して、いろいろな発信の仕方をしてくださっていています。各教員の研修のところでは、野口委員からもご発言がありましたが、横浜市では、コロナ禍ということもあり、オンラインの研修が充実しています。オンライン研修で流す動画の中に、例えば、本校の図書館の状況を図書の担当者に説明してもらうといったことも可能かとは思います。本校として協力させていただけることがあればしたいと思っています。 また、アンケート調査の中に、盲特別支援学校の図書館について、全面的に市民に開放するようにというご要望がありました。そうしたいのですが、学校図書館は、まずは、子供のため、教職員のための図書館ということや、教職員の働き方改革やセキュリティの問題もあります。教育委員会と色々と検討させていただいて、人的な課題やセキュリティの確保などクリアできたら、市民の方への開放ができると思いますが、現状は難しいと思います。 【牧野議長】 盲特別支援学校の学校図書館としての、活用の仕方について、教員への研修についてご意見をいただきました。安藤委員がご退席されますので、一言お願いします。 【安藤委員】 居場所というところに戻ってしまいますが、多様な子供がいる中で、どんな子供に対しても、ウエルカムな状態にしておくことで、子供がほしい情報が、手に入るようになれば良いと思うのです。 具体的には、私が見た海外の学校図書館では、多様な言語の本やデータベースが整い、さらに、読書推進プログラムが導入されていました。例えば、本の背表紙に読書レベルを表した7色に分けられたシールが貼られ、子供の読書レベルに合わせた本が選べるようになっていました。子供たちはパソコンのプログラムに自分のアカウントを入れると自分の読書状況に関する情報が見られ、自分が前回読んだ本が何かということが分かります。子供が本を読んだとき、例えば、1ページに5つ以上分からない単語があった場合には引き続き今の読書レベルの本を読み、分からない単語が4つ以下の場合は次の読書レベルの本を読むというような情報が得られます。そのような主体的な読書活動ができるようになれば素晴らしいと思います。 【牧野議長】  学校図書館でプログラムを入れられないかというようなお話と、多様な人たちが介する場としての学校図書館といったことを考えることも、可能ではないかというご意見だったと思います。先ほど長尾委員から、学校図書館を市民の方に開くことは、なかなか難しいというお話がありましたが、例えばコミュニティスクールの在り方として、特別支援学校をコミュニティスクール化して、地域の豊かな人材を活用していけるような条件ができていくかどうかということも含めて、検討いただければと思います。 【齋木委員】 「2『誰一人取り残さない』ための情報発信」には、項目が4つありますが、主眼になるのは、下の2つの項目の取組で、情報が届いていない人へのアプローチこそ大事なのではないかと思うのです。その重要性を伝えるためにも、下の2つの項目を上にして順序を入れ替えた方が良いと思うのです。 【牧野議長】  読書環境にまだ行きつかない人に対して、伝えていくことが大切であること、また、項目の順序を入れ替えることについてご意見をいただきました。 【副島委員】 図書館を使いやすくするための環境整備についてのお話も、これまで出ていましたが、そもそも図書館に使いやすい書籍があるということ、環境があるということを知らない人に対する周知が足りないというところで、ご不満があったと思います。そういった意味では2段構えになるのではないかと思うのです。まずは、どのようにして図書館等の施設があることが知ってもらうという点と、実際に施設に行って利用できることを知ってもらう点と2つあるのですが、今の資料では混在しているような気がします。分けた方が良いものでしょうか。 【牧野議長】 アクセスできない状態に置かれている方に対して、アクセスできることを周知していくことと、行った先で使えるように広報しておくことと2つあるのではないかというご意見をいただきました。 私は、もう一つあるのではないかと思っていまして、アンケート調査の中で、自分の子供がディスレクシアで、親として読書は諦めていましたというご意見がありましたが、従来の読書の在り方は難しくても、現在は新しい取組や技術があることを知ってもらい、私の子供にも使えると思ってもらうことが必要だと思います。アクセスできていない状態の人に対する周知、行った先での周知、障害のあるなしに関わらず、従来、読書をすることが難しいと思っていた方にできることを知っていただくための周知といった、3つの要素を組み込んでいただくようご検討をお願いできましたらと思います。 【事務局】 ご指摘いただいた3つの要素は、それぞれ資料に盛り込まれているものと考えていますが、分かりやすく整理ができておりませんでしたので、文言の順番を入れ替えるなど、ご意見を踏まえて修正します。 【野口委員】 今回のアンケート調査は貴重なデータで、わたしもそういった課題があるのかと把握させていただきました。一方で、中途で障害になった方、例えば視覚障害者の方でも、中途失明等になった方ほど、孤立しがちで、情報の入手が困難であることが指摘されています。アンケート調査に回答いただいている方は、保護者の方、また、関係団体と関わりのある方、市の機関を利用されている方が中心だったと思います。そういった意味では、孤立傾向の方のニーズが、うまくつかみ取れていないかもしれませんし、見方を変えれば、そういう方にどのように周知していくかという点が課題になると思います。大橋委員のご意見にもありましたが、アウトリーチが必要だと思うのです。広報戦略として、多くの人が行きかうような場、例えば横浜駅などに、意識的にポスターを貼るとか、それくらい大胆に行っていかなければ、本当に必要な人に届かないかもしれないと思いますので、ご検討いただければと思います。 【牧野議長】 広く広報するというのはなかなか難しいことではあると思いますが、例えばインターネットは、情報を自ら選択しなければたどり着かないということもありますので、情報を知らない人は情報を入手できないということもあります。野口委員がおっしゃったように、広く周知をするために、どういった方法とるかということが問われてくるだろうと思います。学校でも子供たちに教えることによって配慮し合う関係を作り、さらに子供から保護者に広がり、保護者間で広がることもあるかもしれません。また、自治会などの地縁団体にも情報提供しながら、回覧してもらうといった様々な取組があると思います。 情報を出すだけの取組ではなく、アクティブな、打って出るような取組も考えられたら良いと思います。また齋木委員のおっしゃったような、新しいツールを知ってもらうことも必要ではないかと思います。 【副島委員】 だれがどの図書館を利用するかを考えたときに、子供は学校図書館、親子連れは、学校図書館の一部にある教育委員会の学校支援・地域連携課が所管している市民図書室に来ることも多いと思います。大人になると公共図書館を利用すると思います。 いよいよ読書バリアフリーの取組を始めていく時に、それぞれの図書館の人がつながって、どのような環境整備をしていけばよいかについて共有できるような、研修をするなどのネットワークづくりが必要だと思います。それぞれの図書館の専門家が知恵を出し合っていけたら良いのかなと思いました。 【牧野議長】  図書館関係者のネットワークづくりというか、情報共有をすることが大事ではないかというご意見をいただきました。 【長尾委員】 困っている方は、それを補うために、情報に意図的に近づくということをすると思います。例えば、TVやCMは、意図しなくても情報として入ってくるということがあると思いますので、そういった手法についての戦略が必要なのかなと思います。野口委員がおっしゃった、横浜駅にある電子の掲示板がありますのでそこで流すといったことも待ち合わせ場所にしている方も多くいらっしゃいますので効果的だと思います。また、メディアを使うということや、選挙の投票場所として、学校が使用されていますが、その際に横断幕を掲示するなどしていますが、読書バリアフリー関連の掲示をするということもできるかもしれません。意図的に見なくても、目に入ってくる広報を行うと、広がっていくと思います。 【野口委員】 この会議は、社会教育委員会議ですので、広報という意味でも、市民が学び、学び合うという視点で、社会教育の場でこの読書バリアフリーのテーマを取り上げて、学ぶ場を作っていくということも、重要ではないかと思います。その方が、現在の図書館の利用者以外の方に知っていただくには、有効だと思いますので、可能であればぜひ検討いただければと思います。 【牧野議長】 読書バリアフリー法に基づいた取組の方向性ということで、障害者の方の情報のアクセシビリティに関する法律のお話もありましたが、国から示される方向性を最低ラインにしていただきたいと思うのです。そういった意味では、各自治体がそれを超えることを先に進めていただくと、とても有り難いし、社会を変えていく力になると思います。できればこの議論も、読書バリアフリー法に基づくということになっていますけれど、法に基づいたうえで横浜市らしさを一歩前に出ていただき、この議論がまとめられていくと良いなと思いますので、ぜひともその方向で事務局には検討いただければと思います。 終了