第33期横浜市社会教育委員会議 第1回会議録 日  時 令和3年11月5日(金)午前10時~正午 開催場所 横浜市庁舎18階 なみき18・19 出 席 者 安藤委員、野口委員、牧野委員、中西委員、副島委員、高木委員、大橋委員、齋木委員、松島委員 欠 席 者 長尾委員 開催形態 公開(傍聴人1名) 議  題 1 教育長あいさつ 2 委員紹介 3 社会教育委員関係法令について 4 正副議長の選出 5 議事  「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律 (読書バリアフリー法)」に基づく本市取組の方向性について (1)「本市の現状」について (2)「本市の今後の方向性」について 決定事項 ・議長に牧野委員、副議長に野口委員を選出。 ・委員意見を踏まえて、「本市の今後の方向性」を修正した上で、第2回以降の会議では法制の各論に入る。 議  事 1 事務局による説明 第33期社会教育委員会議について(資料3) 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律概要(資料4) 「本市の現状」について(資料5) 「『本市の今後の方向性』について」(資料6) 2 委員意見交換 「『本市の今後の方向性』について」(資料6)について 資 料 【配布資料】 第33期横浜市社会教育委員名簿(資料1) 横浜市社会教育委員 関係法令等(資料2) 第33期社会教育委員会議について(資料3) 視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律概要(資料4) 「本市の現状」について(資料5) 「本市の今後の方向性」について(資料6) ■議事 (事務局より、第33期社会教育委員会議について(資料3)、視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律概要(資料4)「『本市の現状』について」(資料5)、「『本市の今後の方向性』について」(資料6)説明) 【事務局】  本日公務により欠席の長尾委員のご意見を紹介します。長尾委員からは、アクセシブルな書籍の充実という点に関しまして、市立図書館にあるマルチメディアデイジーなどの電子書籍について、学校図書館にも貸し出しができるという連携も進めていけるといいのではないかというご意見をいただいております。重点取組2、インターネットサービスの提供体制に関しては、GIGAスクール端末でインターネットサービスを利用するためには、アプリをいれなければならず、そのアプリを用意できるかという課題もありますが、普通学校も含めて端末でデイジー図書の再生ができるとよいのではないかというご意見です。重点取組4の広報戦略については、盲特別支援学校の卒業生の方について、在学中は行政の支援情報は手に入れやすいが、卒業してしまうとなかなかそうした情報を入手しにくいという現状があるというお話がありました。そうした点も踏まえると、戦略的な広報、必要とする情報をお届けする工夫を考えていくことが重要ではないかというご意見をいただいております。 【牧野委員】 ありがとうございました。これから皆さんでご議論いただきたいと思います。ただいま事務局から読書バリアフリー法の理念や、横浜市の現状、取組の方向性についてのご説明がありました。これから皆さんにご議論いただきたいのは、資料6の本市における取組の方向性ということについてです。 最初に私から、素人の受け止めとして、この「アクセシブルな」というのがよく出てくるのですが、何なのでしょうか。なぜカタカナか。最近カタカナが多いですが、例えばダイバーシティとインクルージョン、多様性と、包摂はいやだからインクルージョンって言っているということなのでしょうが、そこもなぜ日本語にならないのかと思ったりするのです。このことも含めて、委員の皆さんで、こういうことなのだということがあればお話いただければと思うのですが、いかがでしょうか。 【野口委員】 すごく根本的な、でもすごく重要な問いだと思います。法律上、そのように使われているところもあるのですが、確かにアクセシブルな書籍等の範疇外の物はアクセシブルではないのかと言うと、実は読書支援機器で拡大したら読めるという人もいたりして、そういう使い方もアクセシブルかもしれないというのがありますし、そもそもこの「アクセシブルな」という言い方が、一般の市民にとってわかりやすいのかという問題もあるような気がします。 何をもってアクセシブルとするのか。法律上使われているから重点的な取組としてこの言葉を使う形が本当にいいのか、市民にとってよりわかりやすい形で提言していくのであれば、ちょっと違った表現で、この実体を指し示していくのも一つの方向性なのかもしれないという気がしています。 【齋木委員】 個人的に、アクセシブルな書籍と言われると、流通している書籍なのです。書店で売っているとか、古書店である程度流通しているとか、いわゆる「到達できる」っていう意味なので、この言葉を法律上どんな意図で使っているかということは、後で野口委員から説明していただければと思います。 アクセシブルと言ってしまうと、どうしても視覚障害者向けにとか、支援というような感じがしてしまうのが、ちょっと引っかかるなと思っています。例えば、著作権法上、視覚障害の人たちにのみ複製して提供してもいいという制約があるものについては守らないといけないというか、それをすっとばすことはできないわけですが、ここではそれに限定せずに、単に読み方の多様化をしましょうということですよね。字を大きくして役に立つのは、僕ももう老眼で、そろそろそっちのほうが楽だというところがあります。ディスレクシア用と言われているリーディングトラッカーなども、あなたはこれを読むのが難しいから、渡しますということではなく、現在学校図書館で導入しているところだと、普通に置いておいて、使いたい人は使ってくださいというふうにしておくと、こっちのほうが読みやすいという子は、使って読んでいる。そういうふうに、どこかで何か定義された障害の有無であったり、程度であったりというのはともかくとして、こういう読み方もありますということ。これまではこれぐらいの大きさの本で、これぐらいの大きさのフォントで、こういうふうに製本されているものというのが基本のように思われていたけれども、そうではなくてもいいではないかというような広い概念として、ここで扱っていけばいいのではないかと思いました。読み方の多様性を守るとか進める、というような言い方にしてしまえば、自分が思っているところとは一致するかなと思います。 【野口委員】 確かに「アクセシブルな」とは、アクセスできるという意味ですから、流通プロセスから見れば買えるかどうか、図書館で入手できるかどうか、という視点で見ますよね。ここの文脈というか、読書バリアフリー法では、視覚障害者等が「利用できる」というのが、この「アクセシブルな」という表現にたぶんなっているのですが、アクセシブルという言葉は非常に多義的なので、もう少しわかりやすくするのであれば、視覚障害者等が利用できる、あるいはしやすいとか、そういうふうにしてあげたほうがいいのです。ただ、齋木委員がおっしゃるように、実は文字が拡大されている本は、別に視覚障害者等でなくても読みやすいし、実は誰が読んでもいいはずなのです。市販されているものを図書館が収集した場合には、著作権の制約はないわけですから。だからそういう意味では、法律に基づいての枠組みの中で議論しているとは言いつつも、利用のしやすさというのは、実は視覚障害者等と限られた対象に限定されていない、もう少し幅広くとらえていくというとらえ方も必要な気がします。 少し先走りますが、重点取組4が広報なのですよね。アとイが上がっているが、これはどちらかというと当事者とか支援者とか、比較的限られた方にターゲットがしぼられている気がするのですが、もっと広く、市民全般に知ってもらい、利用してもらうという視点も、本当の意味で読書のバリアフリーというか、齋木委員の表現で言うと、読書形態の多様化、読書スタイルの多様化ということを促していく意味では重要かなという気がします。 【齋木委員】 3つのアクセシビリティがあるのです。コンテンツそのもののアクセシビリティというのがある。視覚情報でしか読み取れないものを聴覚情報でも読み取れるようにする。それによって目が見えなくてもアクセスできるというアクセシビリティが一つ。それから、そのコンテンツにリーチできるかどうかということ。そのコンテンツがあってもそこに行けなければ、例えば点字図書館があるけれども、そこまで行けない人にとっては、ないも同然なので、そういうアクセシビリティ。さらにもう一つは、そういうものが存在しているということを知っているかどうかという入り口部分、コンテンツというより情報そのものへのアクセスを高めるという3つがあって、重点取組4はその3つ目ということなのかなと思います。それならば、当事者にはもちろん伝えなければいけないが、みんなが知っていたほうがいいじゃんということで、みんなに伝えましょうの方向のほうがいいのではと思います。 【牧野委員】 ありがとうございます。「アクセシブルな」ということで、齋木委員がまとめてくださいましたけど、そこに到達できるか、手に入れることができるかという問題と、手に入れたものがちゃんと読めるかということですよね、しかもそれはいわゆる視覚情報だけでなく、さまざまな手段で内容を受け止めることができるかということ、それを広く、障害を持った方だけではなくて、むしろあらゆる人がそれを知っていて、そしてお互いに配慮し合うことができるような状況になっているかどうかではないかというお話でしたが、いかがでしょうか。 【大橋委員】 当事者の立場で言いますと、読書バリアフリー法をなぜ求めてきたのかといえば、視覚障害者の「本を借りる権利」と「買う権利」を包含した法律の制定を必要としたからで、ICTの進歩に伴い読書環境が改善される状況になりつつあると感じて強く求めてきたわけです。借りる権利はサピエに30万タイトルの蔵書データがあると言っても、ひとつのテーマで深く調べようとすれば、極端な話、専門的な書物になればなるほどほとんどないに等しいと感じるぐらいです。国立国会図書館や市立中央図書館の蔵書数に比べたらはるかに少ない数なので仕方ありませんが、視覚障害者は点字図書館から借りて読むという実態が定着していることを考えますと、点訳やデイジーなどの製作した蔵書を借りることも必要としていますが、それだけで決して満足していたわけではありません。まず一般に流通しているデジタル図書などを買ってリアルタイムに読める環境を作ることを、買う権利として位置づけて、読書バリアフリー法を求めたわけです。読みたい本を買ってすぐ読めるのならば、買いたいと思うのです。そういう意味では、齋木委員のご指摘の通り、全ての人の借りる権利、買う権利とともに、出版された本の情報をいかに知るかということが大事だろうなという気はします。おおもとは借りることだけではなくて、読みたい本にどうたどり着けるか、出版業界への働き掛けも含めて、私たちは議論し、国会陳情などもやってきました。 【齋木委員】 大橋委員におうかがいしたいのですが、買ったり借りたりするためには、その本が存在しているということを知らないとできないですよね。例えばサピエ等で検索すると、こういう本が出てきます、でもこれ以外こういう本があるはずだという部分は、どういう形で情報を手に入れているのですか。 【大橋委員】 点字図書館からいろいろな、通称『テープ雑誌』と言って、今はデイジーになっていますが、そういう音声の雑誌等で新着図書情報や出版情報などを得ています。一番問題に感ずるのは、出版社が本を出版したその情報をリアルタイムに入手できないことです。出版情報をとり入れている音声雑誌もありますが多くの場合編集されている関係から、地方の小さな出版社から出版されているものなどは割愛されることも普通です。全国で郷土史家などが少部数の本を出しています。僕は盲人史を研究する会に所属していますが、この種の本の刊行を2~3年後に知って、え、そんなのが出ていたの?という感じです。だから、サピエにすでにあがっている本を検索するというのは、僕が今まで点字図書館で50年前、そこにある点訳書から選んでいた状況と変わらないのです。出版社そのものがもっと我々に情報を提供してほしい、そう思います。 【齋木委員】 例えば横浜市図書館のOPAC(蔵書検索システム)を使って、こういう分野についてどれぐらい世の中には本が出ているのだろうということを、例えば200件出てきて、うまく絞り込むなどして50件出てきた。そのタイトルにはこういうのがあって、というのは現状できているのですか。 【大橋委員】 結論から言って、ほとんど高齢者は出来ていないと思います。私の例で言いますと、国立国会図書館の個人登録をしています。中央図書館も利用していますが、ICTのスキルが低くてパソコンを駆使して情報を得ることはできません。牧野議長の講話でご指摘された通り、アクセシビリティとかアクセシブルなとか大半の人が本を簡単に読めるような状況になっているように感じられるかもしれませんが、イメージが先行しているようで、視覚障害者の世界ではITのスキルには個人差が大きくあり、今までの概念を一回壊して、読書バリアフリー法の目的からやり直すことが必要です。具体的には、アクセシビリティという言葉だけが先行しても、年代的な格差もあります。20代、30代、40代ぐらいの人までは特別支援学校の自活、自立教育活動でパソコンなどをある程度教わっているのでできますが、僕たちの年代ですと、自発的にパソコン教室などに通ってスキルを身に着けない限り、中央図書館の検索までうまくできないのです。ところが、中央図書館には障害者支援の担当者もいますが、レファレンスをお願いしようとしてもHPから入れますといった結果だけしか言ってもらえませんでした。仮に、僕たちが図書館に行ってパソコンによる、国立国会図書館の検索の仕方などを教えてもらえれば、たくさんの図書情報が得られてQOL(quality of life)の向上が図られるのです。健康福祉局のサービスにも全く同じこと言えまして、東京都でやっていますが、家庭訪問指導員、要するに障害者のいる家庭まで行ってパソコンを指導したり、あるいは歩行訓練も含めてしたり、そういう個々の個人に対するサービスが横浜市は非常に少ないのです。 たとえ図書館で本を読んでもらえるとわかっても、見えなくなった人が家からの歩行訓練をしてもらわない限り、図書館まで行くことができないのです。ですから、部局を超えた連携からまずはやっていかないとなりません。話のついでに、先ほど事務局から横浜市の現状の説明の最後に、点字図書館は横浜市にはないが、そういう機能というものは、横浜市全体としてはやっているのだみたいな発言がありました。私たちの団体が、視覚障害者の支援情報センター的な施設を要求していることの反論だろうと思いますが、これは行政マンの発言なのです。エンドユーザーからすると、見えなくなって、病院通いや眼科通いをしてとうとうあきらめて、仕方なく家にいるといった中で、漸くリハビリ施設にたどり着いて社会復帰していく過程を考えると、できる限りワンストップでなければ支援サービスにたどり着くまでに時間がかかりすぎます。市の職員ならば、このサービスはこっちの部署でやってということはわかっているでしょうが、エンドユーザーはわからない。そういう意味で、もう一回、縦割り行政も含めて見直して、読書バリアフリー法の新しい横浜のバージョンというものを考えてほしいと思っています。話が飛躍しましたが、現状としてはそういうところです。 【牧野委員】 ありがとうございます。今、アクセシブルな話からいろいろ広がったのですが、結果的には「行きつけない」となっていると思うのです。それをどう保障するかということに関わってくると思います。松島委員、何かご意見ありますでしょうか。 【松島委員】 買う権利、読む権利、それに一番遠いところにあるのがたぶん障害者の入所施設だと思います。入所施設では、一日中ボーっとして過ごしてしまう人があいかわらず多いと感じています。だからそこに小さくてもいいので図書館みたいなもの、入所者も近所の人も簡単に利用できる図書館を作ること、そこを今回の会議でもう少しつめていきたい。施設の状況があまり良くないところもあるので、近所の人も施設内の図書館を利用できるようにして、近所の人も施設の中を見てもらう。そして施設の人と本を読んだりして、いい関係を作る一助になると思います。 【牧野委員】 ありがとうございます。いろいろな方々がアクセスするということだけではなくて、障害を持った方々のところにも図書館があって、一般の方々もそこに行きながら交流できるような場所を作れないかというお話ですけれども、それもアクセシブルなということに関わってくるのだろうと思います。私たちの社会教育も、かつて公民館には全部図書室があって、公民館の大事な機能としては文字文化を普及するというのがあったのです。社会が発達すること、流通がどんどん進んでいく中で、図書館が小さくなっていったり、そのものがなくなっていったりということがあるのですが、今改めてこういった小さい図書館のあり方みたいなものも、当然考えていかなければならない時代なのかなと思います。 【安藤委員】 今、松島委員のおっしゃったことを聞いていて思い出したのですが、リードプログラムをやっている図書館があるのです。リードっていうのは、Reading Education Assistance Dogs、アシスタントドッグ、つまり補助犬を図書館のある一室に入れて、そこで絵本を犬に読み聞かせるというプログラムで、欧米では10年20年前からやっているらしいのです。日本でもいくつかそういうことをしている図書館があるみたいです。それは絵本になっていて、ある小学生が読むことが苦手で、音読をするとクラスの中でみんなに笑われるからいやだと、それが土曜日のたびにその図書館に行って、自分で本を読むと、犬は何も評価をせず、一言も何も言わず、ただじっと聞いてくれる。そういう環境の中で、少しずつ読むということに対して自信をつけるという、そういう絵本があって、私は知ったのです。 それは今、松島委員がおっしゃっていたことと同じことで、例えば発達障害を持っている小さいお子さんは、いろいろなお母さまにうかがうと、とにかくじっとしていないし、発達障害っていろいろあるので、じっとしていないタイプとか、すぐに大声を出しちゃうタイプとか、人にちょっかいを出しちゃうタイプとかいるので、そういうお子さんを持ったお母さまの多くは、図書館自体が行ってはいけない場所というふうに思っています。だからそういうところで、いろいろな人が行っていいというのは、アクセシビリティの一つかもしれない。もちろん中央図書館とは全く違う次元の話ですが、利用しやすい図書館、そういうのがあったら共通する考え方だと思いました。 【副島委員】 横浜市は小中学校、特別支援学校全校に学校司書が配置され、学校図書館の整備が進みはじめているというところが、すばらしい施策だと思っています。横浜市内の500いくつの学校に、そういう学校司書がいて、学校図書館があるということと、うまく連動していけたらと学校現場側としては感じています。 そもそも私が学校の中で読書活動に力を入れてきたのは、自分が担任を持っているときに、すごくシンプルに、自分が読みたい本を選べる、そして選んだ本をちゃんと読み切るという、そこを保障してあげたいと思っていたにもかかわらず、それができないお子さんがすごく多い。それにはいろいろな理由があって、外国につながるお子さんという問題も非常に大きかったのですが、ここの場ではそれはとりあげませんが、今にして思うと、本当にさまざまな障害特性があって、自分ひとりで本を読み切るところへの困難さがあったと思います。その頃は特別支援教育というのが、学校現場ではあまり浸透していなかったので、自分が無知だったということ。今だったら、どんどん違う支援ができるなと思います。学校に特別支援教育が入ってきたときに、ユニバーサルデザインといって、こういった特性を持っている子どもが困らないようにしたら、全員がやりやすかったというようなことが、今回のアクセシブルということと同じ考え方だろうなと。一つの切り口として、視覚障害者の方たちがアクセスしやすいということを考えていたら、すべての人にとってアクセスしやすい図書館になったのだという考え方が必要だということが一つ。もう一つは、求められている図書館の機能として、学校は学校として閉じていないで、学校と共存してやっていけないかなということをすごく思うわけです。本校は、図書館で特別支援、発達障害のあるお子さんが過ごしやすいよういろいろな工夫はしていますが、そういったことを広報でもいいし、地域の人に利用してくださいというのはまず第一歩かもしれないです。地域に開かれた学校図書館みたいなことも可能性としてはあるかと思うので、今ある資源を上手にうまく、有効活用できればということを今日聞いていて思いました。 【牧野委員】 ありがとうございます。教育ビジョンの策定に私が関わった自治体でも、「学校、もったいないんじゃないか」という話が出ました。歩いていける距離にあるのに、学校が終わったあとは閉じられてしまって、誰も入れない、子どもすら帰ったら遊んではいけない場所になっていると。もったいないので、授業が終わったら開けばいいんじゃないかという話も出たのです。教育プラットフォームとして使ってもらって、図書館は開くし、地域のいろいろな方が来て使うとか、そのことも含めて学校は地域の、いわゆる文化センターみたいな位置付けになってもいいのではないかという議論が出たのです。そうした使い方もこれから考えなければいけない、従来の縦割りではない形で、使い合うようなことも考えなければいけないのかもしれません。そうすれば今のこの議論を、ある程度アクセスする、まずはそこに行きつくということに関しては、かなり柔軟に運用できるようになるのかもしれないと思いました。 【齋木委員】 学校が難しいのは、開きましょうというと不審者への不安も出てくるというところなのですよね。学校の可能性ということで言うと、本だけではなくて、図工室と調理室と理科室がある環境って、学校以外にはない。そういうところで、アクセシビリティを高めるための何かを作るみたいなことまで持っていけると、おもしろいですね。 【安藤委員】 昔は、地域開放を図書室もやっていましたよね。 【副島委員】 やっているところもあるのですが、今はどちらかというと本校もそうなのですが、同じ施設の中にあるけれども、使い分けている。こちらは子ども用の学校図書館です。こちらは市民の図書館といったように場所がわかれていたりとか。共存しているところもありますが、まだ本当の意味での連携ではないのです。 【中西委員】 副島委員におうかがいしたいのですが、学校図書館にはマルチメディアデイジーは置いておられるのですか。 【副島委員】 まだデイジーまでは置いていないです。 【中西委員】 学習障害の方とか、識字障害の方たちはどのようなご本を? 【副島委員】 先ほど、GIGAスクールの話がありましたが、教科書の会社が出している音声と文字をハイライトしていく機能であるとか、そういうようなものは利用しています。 【齋木委員】 デジタル副読本はまだそれほどですよね。 【中西委員】 デジタル教科書は義務教育の場面では配布されているみたいです。 【副島委員】 まだ使い始めたところです。 【中西委員】 私共の団体にも、今までは視覚障害者が対象だったが、学習障害の方々からも問い合わせがあって、実は図書館へ行っても何も借りられない、マルチメディアデイジーとかそういうものが、中央図書館まで行って調べるのも少し大変、ということで地域の区の図書館には何もないというお話をよくうかがいます。うちも3年ほど前にデイジー横浜文庫というのを作って、そこに文化庁の著作権フリーの認可も受けて、そこへアップして、そこから貸し出すということをしているのですが、例えば外国籍の方で、日本語が不得意で、学習障害も持っているという方にも何回かお貸ししたのですが、やっぱり学校現場で何もしてもらえないということが、すごくネックのようなのです。横浜市が全部の学校に司書を配置しているのでしたら、そういうマルチメディアデイジーとか、学習障害の方に対応する本を入れていただけるとありがたいと思います。やはり毎日の生活の中で利用できないと意味がないのですよね。どこかへアクセスして、自分で探していろいろするというのはやはりハードルが高い。特に、そういうことで悩んでいらっしゃるお母さまたちは、いろいろなところに情報を張って、どこからか門をたたけないか、何か情報がないかというのを、本当に探していらっしゃるのです。 横浜市の盲学校はとても設備がいいです。全国から見学にいらっしゃるぐらい充実した図書館で、ぜひ学校の先生も盲学校の図書館を見学して、こういうふうにそろえられないものかということを学習していただきたい。私たちは現場に月に1、2回足を運んでいるのですが、子どもたちはタブレットも各自1台持っています。ただ、それは貸与という形で与えられているものなので、勝手にソフトをインストールできないのです。本当に、宝の持ち腐れです、はっきり言って。お母さまやご父兄はまだ若い方ですが、ボーナスが出るので、どんなに高いソフトでもいいから買って、この子がなんとか活用できるようにしてあげたいと相談を受けることがあるのです。ソフトを入れるには許可がいるし、自由にならないのですよね、学校のタブレットは。ですから、そのあたりのことも考えていただきたいと思います。せっかくあるのに使えない、役目を果たしていないということがとても残念です。ソフトは買うとなると3,000円はします。ボイスオブデイジーという電子図書を読むソフトがあるのですが、アンドロイドのスマホでしたら無料のアプリもありますけど、マルチメディアデイジー対応はちょっと怪しいなという感じもします。ツールはいろいろあるので、それを自由に使えるように、せっかくあるツールを使えないというもどかしさをいつも感じるのです。そのあたりが、なんとかならないのかしらと思います。 【齋木委員】 一つの学校ではなかなか難しいと思うので、どちらかというと市として対応することだと思います。学校司書や司書教諭も関心は持ち始めているけれども、横浜市がどうというわけではなくて日本全体的に、あまりいい待遇ではなく、もともと持っている知識の範囲もばらばらだったりするので、ここにあるように、研修から始めていこうとなるかなと思います。ただ、それぞれすごくがんばっていらっしゃる方は多いですし、私がおこなっている研修でも外国籍の子がいるとどなたかが横についてサポートしてくれていますから、身につけようとしていただけるとは思います。あとは、どういうふうな形で情報を届けていくかということを考えるなら、たぶん、図書館でこういうふうにしましょうという情報と、普段から子どもたちを見ている教員に対して、こういうふうにしましょうという、2パターンあったほうがいい気はします。 【牧野委員】 ありがとうございます。今の話で、高木委員いかがですか。障害を持った方、特に学習障害を持った方のアクセスの仕方というのが議論になりましたが。 【高木委員】 一般に、アクセスしやすいという意味で言えば、最初に「知りやすい」というか、ものがあるということを知ることができて、近づいていけて、利用ができるという3段階があって、そう考えると私たちの生活の中で、例えばAmazonにアクセスすると、書籍も最近は、本にしますか、それとも電子に落としますか、と問われ、電子のほうが安くなっていたりするので、どうしようか迷うのです。それから、新しい新書が出ると、企業からメールが届いたり、ダイレクトメールの場合もあるし、電子メールの場合もあるし、そういう媒体をとおして、どんどん「知れる」ようにはなってきている。逆に、そうやっていくためには、いろいろな機能的にいろいろな問題があったり、能力の差があったり、環境も違いがあるし、その人が置かれている状況で興味があることも多様なので、そういう多様なところにそのサービスやコンテンツの選択肢が多いということがないと、「知って、近づいて、利用する」ということができにくい。ただ、横浜市がそれを全部やることは無理なので、既存のものでと考えると、やはり学校とかコミュニティの中のいろいろなものに、そういう機能をつける。ただ学校の先生や司書の先生がいろいろな障害の知識を得て、それに合わせるというのは難しいので、そういう意味では学校の先生にこれ以上、例えば発達障害の世界でも、やらなくてはいけないことはたくさんあるのですが、私たち専門家が山のように勉強してもまだ追いつかないものを、教育現場の先生たちが全部知るべきだというのは無理なので、やはりそうした人材を育成して、司書のところにそういう専門の人を配置できたらいいなと。また、先ほど福祉の入所施設に小さな図書館がというのがありましたが、それもまた建設費とか場所も難しいと考えられます。アクセスしやすいという意味では、最近私たちはネット販売すると家まで届けてくれると考えると、福祉の施設やいろいろなコミュニティのところで、リクエストをすると、移動図書館が来るというような、そうすると車が1台あれば10か所も20か所もそうしたことが可能になっていく。今あるできそうなことから、もっと柔軟にアクセスできる環境を私たちが知っているものの中から、こういうことができないかというアイデアをたくさん出すとか。例えば大学生が読み上げてくれるというのもいいのですが、子どもたちが喜ぶのって、企業が作っている声優がちゃんと作ったようなもので、最終的には企業タイアップなど、そういう形でデイジー図書も教育の中の教科書も、そういう楽しい素材があったら、子どもは何度もアクセスしたくなるのですよね。そういう多様性等を、ボランティアではなく、企業タイアップという形もいつかとれていくといいと思うので、そういう足がかりになるいろいろな可能性やアイデアをここで出していけると、私たちも楽しく参加できて、希望を持てるかなと思います。 【牧野委員】 ありがとうございます。基本的には、今日は、アクセシブルな、ということで、一体何がいちばん大きな問題なのかということを皆さんご議論されたのだろうと思います。簡単に言えば、まだ到達できない状況にあるのだと、そこを改善していきながら、さらにはその先へいけるような条件整備をという話になったのではと思います。また引き続き議論をできればと思います。最後、高木委員もおっしゃいましたが、「楽しく」、ですよね。楽しい関わり方というか、楽しい読書という形で展開していくと、いろいろな方々も入っていかれるようになるのではないかと思いますので、そのことも考えながら議論ができればと思います。どうもありがとうございました。 それでは、これまでの議論を踏まえまして、次回以降の会議について事務局から考え方をお示しいただけますでしょうか。 【事務局】 皆様、ありがとうございました。次回以降は、基本的には重点取組の1つ1つを掘り下げていければと考えています。その中で本日いただいたご意見で、今の重点取組の枠組みの中で議論しきれない部分もあるかと思います。そうした議論については、新たに項目を追加するとか、取組の見せ方を変えるというところを検討していきたいと思います。例えば最後、高木委員もおっしゃっていただきましたが、企業との連携などこうした視点については、重点取組のすべてに関わるようなものなので、取組の前提と言いますか、すべての取組に関して企業をはじめ、大学やさまざまな主体と連携していくことを前提としながら、重点取組を取り組んでいくという考え方にして、すべての取組に関して、いろいろな連携を検討していけるような形で今後のテーマ議論の設定をしたいと思っております。また、いただいたご意見の中で、例えば、学校での電子書籍、マルチメディアデイジーを読める環境の整備がありました。こうしたところは、まさしく重点取組の2のイのところで、もう少し掘り下げていくと思っております。情報のアクセシビリティに関しては、今の重点取組4の広報戦略にも関わるところだと思うのですが、それだけに留まらない部分もあるかと思いますので、こちらについては場合によっては別途項目を設けて、皆様にご意見をいただく機会を設けていきたいと思いますので、よろしくお願いします。 【牧野委員】 ありがとうございます。ただいま事務局から今後の考え方について方向性が示されましたけど、それでよろしいでしょうか。基本的には資料6にあります重点取組のことを検討してくのですが、今日皆さんからいただいたものを加えていきながら、適宜修正を加えていくということになるかと思いますが、よろしいでしょうか。 それでは、今日の議事はここで終了にしたいと思います。委員の皆さんから何かご意見、また言い残したことはありますでしょうか。 【大橋委員】 重点取組などでも、せっかくいろいろサービスはやっているにも関わらず、全然連携がされていない。例えば、盲特別支援学校も、他の盲学校に比べたら確かに充実はしておりますが、他の施設との連携にはほとんど活かされていない。それから、特に感じているのは、横浜市の場合、大学もありますので、大学の学生支援室など、立命館をはじめ、非常に充実していますので、学術文献的な資料の連携など、もう少し既存のものとの連携強化のあり方を議論したほうがいいのではないかと思います。社会資源の有効活用を望みます。 【牧野委員】 ありがとうございます。先ほども議論にありました、今あるものをうまく使い合いながら、サービスを拡充できないかという話もありましたので、そこも検討したいと思います。 【斎木委員】 こういう資源が実はありますみたいな、あるいは、横浜としてはこういうところで取り組んでいます、みたいなものをまとめて共有していただけると考えやすいかなと思います。ここへ行けばこういうのがあるはずだ、みたいなことだったり。 【牧野委員】 ありがとうございます。事務局は大変かもしれませんけど、可能であれば少しご準備いただければと思います。それでは、ここまでにさせていただきたいと思います。