第2章人権施策推進の考え方 1めざす社会像 ここにスローガンがあります。 「一人ひとりの市民が互いに人権を尊重しあい、ともに生きる社会」の実現 スローガンはこれで終わりです。 人権を尊重することは、すべての人が自分らしく生きていくための基本となるものです。人権問題の解決は、差別され、偏見にさらされてきた人々が被ってきた不平等や不公平を解消し、本来等しくあるべき尊厳を回復するという、より公平で公正な社会に近づくためのたゆみない営みです。 それは、差別的なものの見方・考え方を見つめ直すことから始まります。 人は、それぞれ、身体の大きさや皮膚の色も違えば、言葉、生まれ育った国や場所も異なります。そのような違いをお互いに受け入れ、多様性を認め合い、同じ人間として尊重しあうことが、差別をなくし、人権が尊重された社会に近づく第一歩です。 市民一人ひとりの人間としての尊厳が尊重され、社会生活や日常生活の中で互いに人権に対する意識を高め合うことにより、「一人ひとりの市民が互いに人権を尊重しあい、ともに生きる社会」を目指します。 2基本姿勢 (1)人権尊重を基調とした市政 一人ひとりの人権が尊重されることは、誰もが安心して市民生活を営むために欠くことのできないものです。横浜市の施策は、この考え方を基調に計画、執行しており、その意味では全てが人権と関わりがあります。 横浜市は、人権の尊重を市政運営の基調とします。 (2)差別されている当事者の立場に立つ 差別や偏見のために傷つき苦しんでいる人や「生きづらさ」を抱えている人(以下「差別されている当事者」という。)は声をあげにくい場合が多いことから、行政が積極的にその声や意見を聴く努力をしなければ、実情を見過ごしたままとなり、こうした人々の苦しみは続くこととなります。 横浜市は、差別されている当事者の立場に立ち、差別をなくす姿勢で市政運営にあたります。 (3)市政を担う職員の人権意識の向上 人権尊重を基調とした市政を運営するために、職員には豊かな、また、鋭い人権感覚が求められます。すなわち、 @人は一人ひとりがかけがえのない存在であること A誰もが尊厳と固有の権利を持っていること について十分認識をもつとともに、常に自己啓発に努めることが求められます。 全ての職員は、担当職務に習熟することはもとより、人権感覚を磨き、幅広い人権に関する理解と問題意識をもって業務の遂行にあたります。 (4)地域社会全体での取組 人権問題は、社会の問題として認識されなければ、真の解決には至りません。それぞれの分野における様々な人権に関わる課題を解決していくために、一人ひとりの市民や団体・事業者における主体的な取組を呼びかけ、地域社会全体で推進していきます。 3取組の視点 (1)人権問題を自分の問題として考える 人権問題について、他人事でなく、自分の意識や価値観に関わる問題として捉え、考えます。 様々な施策の推進も、日々の業務に対する姿勢もここから始まります。 (2)差別されている当事者の「思い」に寄り添う 差別されている当事者は、声を出せない苦しさを抱えています。そのことに気付かないことが多いだけで、「差別されている人々がいない」のでも「差別がない」のでもありません。差別されている当事者がどのような「生きづらさ」を感じ、傷ついているのか、その一つひとつを知ることが気づきとなり、解決への取組につながります。 また、差別されている当事者は複合的な困難を抱えていることが少なくありません。たとえば、障害のある人の場合、移動やコミュニケーションの困難などの日常生活上の課題に加え、就労の難しさがあるように、複合的な困難を強いられている場合が多くあります。また、識字問題のように困難が見えにくい場合もあります。特に、市民からの相談を受ける業務などにあっては、相談者の背景にある課題や複合的な困難に対する洞察が大切です。 (3)様々な立場の人々に配慮し、誰一人として取り残さない 施策を検討するにあたっては、第一に差別されている当事者の声や意見を反映し、併せて様々な立場の人々の視点から考え、それぞれの立場を理解し合いながら互いに歩みよることによって、より良い合意を目指すとともに、誰もが孤立したり排除されたりすることなく、社会に参加することを推進する努力が重要です。 (4)国内外の社会情勢の変化や市民の意見を把握し、的確に対応する 国連は、「障害者権利条約」(平成18年(2006年))、「先住民族の権利に関する国際連合宣言」(平成19年(2007年))を採択するなど常に国際的な推進役を果たしています。また、「自由権規約委員会」、「社会権規約委員会」、「女性(女子)差別撤廃委員会」などの各委員会は、締約国に対して人権に関する勧告や一般的意見を出しています。これらの動向を的確に把握し、幅広い視点から施策を推進していきます。 また、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行や厳しい経済状況は、社会的に困難な立場にある人々に、より大きな影響をもたらしています。様々な人権に関する課題を把握し、取組を的確に行っていくために、差別を受けても訴えられずにいる市民の意見等の把握に努め、的確に対応します。 (5)人権尊重の視点から、あらゆる施策・事業を常に点検・検証する かつて、ハンセン病に対する国の施策が偏見や差別に基づく人権侵害をもたらしたように、既存の法令・制度等についても人権尊重の視点から点検・検証を進めていくことが必要です。 新たな施策に取り組む場合は、人権感覚を研ぎ澄ますとともに、絶えず既存の施策の効果等を点検します。 (6)人権関係団体・NPO法人などとの協働・連携を推進する 人権問題の取組において、人権関係団体・NPO法人などが、困難を抱える人々に寄り添い、支援を行っています。 行政がその活動を積極的に支援し、連携協力関係を築いていくことは、人権問題の解決に取り組む上で重要です。人権関係団体・NPO法人などと行政の協働を推進し、社会全体での取組へと進めていきます。 (7)プライバシー保護と人権擁護とのバランスに配慮する プライバシーの保護は、人権を守る上で最も重要な要素の一つです。関係機関のみならず、市民へも人権擁護の基礎であるプライバシー保護の重要性の啓発に努めます。 一方で、プライバシーを重視するあまり、子どもや高齢者の虐待などの人権侵害を見過ごし、結果として重大な被害を生じてしまう事例が数多く発生しています。これらの情報については、早期に、かつ適正に関係機関に届くことの重要性を啓発していきます。