【98ページ】 第7章 文化財の保存・活用の推進体制 本章では、本計画を推進するにあたり、行政の体制とその他関係者との連携について整理しました。 1節 推進体制  本市の文化財の保存・活用を進めるには、行政や文化財の所有者のみならず、それらを取り巻く市民、関係団体、民間企業や専門機関等のそれぞれが主体となって、相互に連携・協力しながら取り組む必要があります。このことは、日頃の文化財の維持管理や活用などの取組のみならず、災害発生時などにも有効です。  本計画では、文化財保護を所管する教育委員会と庁内の関連部署との連携を図るとともに、市民や関係団体、民間企業等のそれぞれが主体となって参画、相互に連携しながら、国の指導・助言、県の助言のもと、本市の文化財の保存・活用に取り組んでいきます。  なお、発災時には、文化財防災センターとの連携や支援の要請なども行い、初動対応の迅速化と連携・情報共有を図ります。 2節 行政の体制 ①文化財保護主管課 教育委員会事務局生涯学習文化財課 【事務分掌】 ■文化財の調査、保存、管理その他文化財の保護等に関すること。 ■文化財に関する資料の収集及び刊行に関すること。 ■文化財施設に関すること。 ■博物館の登録等に関すること。 ■公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団に関すること。 ■横浜市文化財保護審議会に関すること。 【体制】 職員10名(うち埋蔵文化財専門職員4名) 【99ページ】 ②歴史を生かしたまちづくり主管課 都市整備局都市デザイン室 【事務分掌】 ■都市デザインに係る企画及び調整に関すること。 ■横浜市都市美対策審議会に関すること。 ■歴史的建造物の保全活用等歴史を生かしたまちづくりに関すること。 ■景観形成に係る基本的な方針に関すること。 ■その他都市デザイン等に関すること。 ③関係部署  本計画で実施する取組について、連携する主な部署を記載します。その他の部署においても、関連する取組において連携を図ります。 表7-1 指定等文化財を所有・所管する主な関係局 関係局、環境創造局、所管する文化財、旧内田家住宅、横浜市イギリス館、山手111番館、茅ケ崎城址 等 関係局、港湾局、所管する文化財、旧横浜船渠株式会社第一号船渠、日本丸 関係局、にぎわいスポーツ文化局、所管する文化財、三溪園、旧染井能舞台、横浜市大倉山記念館、旧日本綿花横浜支店事務所棟 等 関係局、水道局、所管する文化財、横浜市西谷浄水場濾過池整水室上屋3号棟 等 表7-2 文化財の保存・活用に関連する事業・取組を実施する主な関係局 関係局、消防局、所管する文化財、文化財を対象とした防災訓練 関係局、教育委員会事務局、所管する文化財、文化財を活用した学習支援 関係局、都市整備局、所管する文化財、歴史を生かした都市空間形成 関係局、にぎわいスポーツ文化局、所管する文化財、三溪園の観光資源としての磨き上げ、横浜美術館の文化観光拠点としての機能強化、遊休不動産の創造的活用、文化財を活用した文化芸術活動 等 関係局、港湾局、所管する文化財、横浜港に関する文化財を活用した賑わい創出 関係局、環境創造局、所管する文化財、名木古木の保存、公園内における歴史的建造物の公開・活用、谷戸の原風景の保全 関係局、道路局、所管する文化財、震災復興橋梁の保全 関係局、総務局、所管する文化財、市史資料等の保存活用 関係局、各区局、所管する文化財、歴史文化に関する情報発信、地域の文化財を活用したイベント等の実施、情報発信 等 3節 行政以外の主体  本節では、本計画で実施する取組について、連携・協力が必要となる主な主体を記載します。具体的な取組を進める上で、必要に応じてその他の主体との連携・協力も行います。 ①所有者等  所有者等とは、文化財の所有者、保存団体、管理団体、技術者・技能者等を指します。 ②専門機関  専門機関とは、各分野を専門とする有識者で構成される文化財保護審議会、大学等の研究機関等を指します。主なものとして、次のような専門機関があります。 【100ページ】 ◆文化財保護に関する機関 横浜市文化財保護審議会 文化財の保存及び活用に関する重要事項を調査審議し、並びにこれらの事項について建議する教育委員会の諮問機関。 横浜市無形民俗文化財保護団体育成検討会 横浜市無形民俗文化財保護団体の認定団体の選考等にあたり、教育長に必要な助言を行う。 横浜市ミヤコタナゴ保護育成検討会 国指定天然記念物ミヤコタナゴの本市域における保護育成事業の推進に関し、次の事項について教育長に必要な助言を行う。 (1)ミヤコタナゴの生息環境調査に関すること。 (2)ミヤコタナゴの保護増殖に関すること。 (3)ミヤコタナゴの保護育成に係る市民への普及啓発に関すること。 (4)その他ミヤコタナゴの保護育成に関すること。 横浜市文化財巡回調査員 横浜市内に所在する指定・登録文化財等の現状と管理状況の把握を目的として現地を巡回し、各物件の実態を調査する。 ◆歴史を生かしたまちづくりに関する機関 横浜市都市美対策審議会 国際港都横浜にふさわしい都市の美観を高め、及び魅力ある都市景観の創造を図るための市長の諮問機関。 歴史的景観保全委員 専門家及び市民の意見を取り入れて歴史的景観の保全と活用の推進を図るために設置。 ◆大学等  文化財の保存・活用、横浜の歴史文化に関する研究・取組を行う大学や研究機関。なお、本市と神奈川大学は2020(令和2)年3月に包括連携協定を締結し、「共同研究等の充実や教育全般に係る支援・協力に関すること」として、市の歴史資料、文化財等の保存や普及啓発、調査研究を共同で実施することとしている。 ③市民・市民団体  市民・市民団体とは、横浜市居住者や市内在学・在勤者、歴史文化の保存・活用に参画する市民団体(NPO法人、市民ボランティア等)といった主体を指します。 ④関係団体・企業  関係団体・企業とは、文化財の保存・活用に参画する公益法人や民間企業等を指します。主なものとして、次のような関係団体があります。 ◆公益財団法人 横浜市ふるさと歴史財団  横浜に関係した歴史の理解に資する国内外の資料や文化財の調査、研究、収集、保管及び公開を行うとともに、歴史や文化財に関する普及啓発を行い、先人たちの歩みや積み上げてきた文化を市民共有のものとし、さらに次世代へ継承していくことで、ふるさと意識の醸成及び市民文化の発展に寄与することを目的に設立。  時代領域ごとに設置された横浜市歴史博物館、横浜開港資料館、横浜都市発展記念館、横浜ユーラシア文化館、横浜市三殿台考古館等の管理運営を行うとともに、施設同士の連携のほか、本市をはじめとする行政、大学との連携、市民との協働事業、学校訪問授業等も実施。 【101ページ】 ◆公益財団法人 三溪園保勝会  国民共有の文化遺産である重要文化財建造物等及び名勝庭園の保存・活用を通して、歴史及び文化の継承とその発展を図り、潤いある地域社会づくりに寄与するとともに、日本の文化を世界に発信することを目的に設立。  庭園及び歴史的建造物(国重要文化財10件、市指定文化財3件を含め、計17件)を所有し、それらの維持管理、公開、貸出しのほか、それらを活用した日本の伝統・文化の紹介、各種イベント等を実施。 ◆公益財団法人 横浜市芸術文化振興財団  芸術文化を総合的に振興することにより、横浜独自の魅力ある都市創造のための社会基盤の整備を推進し、もって創造性豊かで潤いと活力に満ちた市民生活の実現に寄与することを目的に設立。  横浜美術館コレクションの国内巡回展、横浜能楽堂等での企画公演等のほか、横浜美術館・横浜能楽堂による教員向けプログラム、若手アーティスト、クリエイターの支援事業等を実施。 ◆公益財団法人 横浜観光コンベンション・ビューロー  横浜市及び神奈川県を中心とする産業・技術等の情報資源や歴史的・文化的資源を活用し、国内外からの観光客の誘致・コンベンションの誘致及び開催支援等を行うことにより、横浜市及びその周辺地域における観光・コンベンションの振興を図ることを目的に設立。  「横浜観光情報」公式ウェブサイトや各種SNSの運営、外国人来訪者が滞在しやすい環境整備(多言語対応等)のほか、歴史的建造物を観光に活用するなど、市内の地域資源を生かした高付加価値コンテンツ開発等も実施。 ◆公益財団法人 帆船日本丸記念財団  海国日本の船員養成に輝かしい功績を遺した練習帆船日本丸を国際港都横浜において永く保存し、同船を公開するとともに青少年の錬成の場として活用し、併せて博物館等において、海と港と船に関する理解と知識の増進を図ることを目的に設立。  国重要文化財である帆船日本丸の保存、公開、普及啓発事業を行うほか、2022(令和4)年にリニューアルオープンした「みなと博物館」では、横浜港の歴史を体験できる、常設の体験型VR施設等を導入。 ◆公益社団法人 横浜歴史資産調査会(YOKOHAMA HERITAGE:ヨコハマヘリテイジ)  「歴史を生かしたまちづくり」の推進に資することを目的に設立。  歴史的資産の保全活用に関する調査研究、セミナーや見学会等の普及啓発を行うとともに、本市と連携し、歴史建造物の所有者支援を行うための「歴史を生かしたまちづくり相談室」を設置。  歴史的建造物を取得し、その保全活用の取組も進めており、「野毛都橋商店街ビル」を公益財団法人横浜市建築助成公社から寄贈を受け、所有している。 ⑤教育機関  教育機関とは、市民が歴史文化を学ぶ機会を提供する学校、博物館、図書館等を指します。