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痘瘡(天然痘)について

最終更新日 2018年7月23日

流行は?

1967年以来WHO(世界保健機関)が中心となって全世界で種痘(痘瘡の予防接種)を推し進めた結果、1977年を最後に痘瘡(天然痘)の患者は出現していません。現在では、痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスは、実験室の中にしか存在していないと考えられています。痘瘡(天然痘)の患者が存在しなくなったことから全世界で種痘(痘瘡の予防接種)が行われなくなって久しいです。アメリカ合衆国では、1972年に定期の予防接種ではなくなりました。日本では1976年に定期の予防接種ではなくなりました。それ以前に種痘(痘瘡の予防接種)を受けている人の痘瘡(天然痘)に対する免疫力もかなり落ちている可能性があります。このような状況下で痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスが生物兵器としてテロで使われた場合が心配されています。

どんな病気?

痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスに感染してから症状が出現するまでの潜伏期は約12-14日(7-17日のこともあります)です。最初の症状は、典型的には、高い発熱、悪寒、疲労感、頭痛、背部痛などです。腹痛や譫妄を伴うこともあります。2-3日のうちに、特徴的な発疹が、顔や手足を中心に出現してきます。口やのどの粘膜にも発疹は出現します。発疹は最初は平たく赤いのですが、一斉に盛り上がってきます。すべての発疹が同じ段階にあって進行していくのが特徴です。最初は水を持つようになっていたのが膿を持つようになり、二週目のはじめころにはかさぶたになり始めます。かさぶたで被われるようになり3-4週間後にはかさぶたが剥がれ落ちます。大部分の患者は回復しますが、致死率は30%にも及ぶことがあります。

痘瘡(天然痘)は、患者の唾液の飛沫あるいは唾液との直接の接触を介して、患者の身近な人へと広がって行きます。発病した最初の週には、大量のウイルスが唾液の中に出てきますので、この間に感染が広がることが多いです。最も感染力があるのは、発疹が出現してから、7-10日目までです。かさぶたが形成されるようになると感染力は急激に落ちてきます。しかし、患者からすべてのかさぶたが剥げ落ちるまで、周囲の人たちの感染の可能性はあります。かさぶたにはウイルスが含まれているので扱いに注意が必要です。痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスに汚染された衣服や寝具を介して感染することもあります。

今のところ痘瘡(天然痘)にたいする特効薬はありません。点滴による栄養・鎮痛剤・解熱剤や二次的な細菌による感染を抑える抗生物質などが治療で使われます。

麻疹や水痘の感染の広がり方と比べると痘瘡(天然痘)の感染の広がり方は遅いです。まず、家族や友人の間に感染が広がりやすいです。学校で大流行を起こすというようなことは少ないです。このことは、発疹が出現するまでは、患者から他のヒトへの感染が起こらないことによるようです。発疹に先行する高熱と悪寒とで多くの患者はベッドで安静にします。ベッドで安静にしているうちに発疹が出現して周囲のヒトに感染します。ですから家族や病院スタッフが感染してしまうことが多くなります。

病原体は?

痘瘡(天然痘)の病原体はvariola virusというウイルスです。種痘(痘瘡の予防接種)ワクチンは、生ワクチンですが、variola virusは含んでいません。vacciniaと呼ばれる別のウイルスを含んでいます。

痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスが最初に生物兵器として使われたのは、1754-1767年の北アメリカにおけるフランス・インディアン戦争において英国軍によってです。アメリカインディアンに痘瘡(天然痘)の流行を起こそうとして、痘瘡(天然痘)患者の使用した毛布を英国兵がアメリカインディアンたちに配布しました。アメリカインディアンたちに痘瘡(天然痘)の流行が起こり患者の半数以上が死亡しました。Edward Jennerが牛痘の感染により痘瘡(天然痘)を防ぐことができることを示したのが1796年のことでした。この種痘(痘瘡の予防接種)は世界中に急速に広まり、痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスの生物兵器としての使用もなくなったのでした。

痘瘡(天然痘)ウイルスは、orthopoxvirus属の一員です。同じくこのorthopoxvirus属に属するmonkeypox(サル痘)、vaccinia、 cowpox(牛痘)もヒトの皮膚などに病変を起こすことがありえますが、ヒトからヒトへの感染は少ないです。

飛沫中の痘瘡(天然痘)ウイルスは、2日以内に感染力がなくなると考えられています。かさぶたに含まれる痘瘡(天然痘)ウイルスは安定で、13年後にウイルスを分離した例もあります。一般の場においては、モノの表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが使われることがあります。

予防のためには・・・

痘瘡(天然痘)には、種痘と呼ばれる予防接種があります。痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスに接触してから4日以内に種痘(痘瘡の予防接種)を行えば、症状が軽くなったり、(昔、種痘を受けたヒトでは)発病を抑えたりする効果が期待できます。痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスが生物兵器としてテロで使われた場合に備えて、アメリカ合衆国は種痘(痘瘡の予防接種)のワクチンを確保しています。日本でも種痘(痘瘡の予防接種)のワクチンを確保しています。診療や検査にあたるヒトは、最近種痘(痘瘡の予防接種)済みであることが望ましいです。昔、痘瘡が流行している国に入国にあたっては、3年以内に種痘(痘瘡の予防接種)を受けていることが要求されました。1回の種痘(痘瘡の予防接種)による免疫は一生は持続しません。痘瘡(天然痘)に対する抗体の値は、接種後5-10年の内に低下を見せます。

痘瘡(天然痘)の患者が発生した場合には、痘瘡(天然痘)の患者の隔離とともに、痘瘡(天然痘)の患者にかかわるヒトたちに緊急の種痘(痘瘡の予防接種)が必要になります。但し、アメリカ合衆国では、種痘(痘瘡の予防接種)は、こどもたちの70%で、接種後4-14日の間に39度以上の発熱が1日以上出るなどの副反応が見られました。また、アメリカ合衆国では、30万回の種痘(痘瘡の予防接種)に1回の割合で種痘(痘瘡の予防接種)後脳炎を起こし、種痘(痘瘡の予防接種)後脳炎では4分の一の患者が死亡していました。

参考文献

  1. Donald A. Henderson, et al. Smallpox as a Biological Weapon. JAMA, June 9,1999-Vol 281,No.22 pp2127-2137.

2001年10月16日掲載

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