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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。
最終更新日 2019年7月17日
腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli ; EHEC)感染症は、ベロ毒素(Verotoxin = VT、あるいは志賀毒素:Shiga toxin = Stx)を産生する大腸菌(O157等)の感染によって引き起こされます。例年初夏から秋に多く報告されます。生の牛乳・ジュース・水・野菜等や加熱不十分なハンバーグなど、共通の食品による広域な食中毒の発生も見られます。
ベロ毒素(Verotoxin)は、ベロ細胞(Vero cell)と呼ばれる培養細胞に対して致死的に作用することから名付けられています。なお、ベロ毒素は細菌性赤痢の病原体である志賀赤痢菌(Shigella dystenteriae )1型が産生する志賀毒素と類似しているとされるため、欧米では、腸管出血性大腸菌について、志賀毒素産生大腸菌(Shiga toxin-producing Escherichia coli ; STEC)あるいはベロ毒素産生大腸菌(verotoxigenic Escherichia coli ; VTEC)の呼称もあります。腸管出血性大腸菌が産生するベロ毒素には、1型(VT1 あるいは Stx1)と2型(VT2 あるいは Stx2)とがあります。
アメリカ合衆国においては、血清型がO157:H7である腸管出血性大腸菌が多いですが、O157以外の血清型では、O26、O45、O103、O111、O121、O145の六つが多いです。
腸管出血性大腸菌(EHEC)で汚染された飲食物を経口摂取したり、患者の糞便で汚染されたものを口にする、ヒトからヒトへの二次感染で感染します。O157やO111といった腸管出血性大腸菌は赤痢菌と同様に感染力が強く、少ない菌数(50個程度)でも感染すると言われています。腸管出血性大腸菌は、ウシやブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの家畜やヒトの糞便から分離されることがあります。
患者・感染者においては、糞便から7-9日間、腸管出血性大腸菌が排出されます。また、こどもの患者・感染者の三分の一においては、糞便から3週間、腸管出血性大腸菌が排出されます。
70%エタノール、1%次亜塩素酸、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒドなどで消毒できます。
多くの場合、3-5日(2-8日のこともあり)の潜伏期の後、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢や、血便などが見られますが、無症状の場合もあります。重篤な場合には、溶血性尿毒症症候群(Hemolytic Uremic Syndrome ; HUS)や脳症が発生します。子供や高齢者など、免疫力の弱い方は、重症化しやすいので注意が必要です。
溶血性尿毒症症候群は、血清型がO157である腸管出血性大腸菌で多いです。血清型がO157以外である腸管出血性大腸菌の場合、産生するベロ毒素がVT2のみの場合が、VT1のみの場合やVT1及びVT2の場合に比べて、溶血性尿毒症症候群になりやすいです。
確定診断は、糞便からの腸管出血性大腸菌分離とベロ毒素の検出が必要です。
感染症法における取り扱いでは、全数報告対象(三類感染症)となっています。患者や無症状病原体保有者を診断した医師は直ちに最寄りの保健所(横浜市の場合は各区の福祉保健センター健康づくり係)に届出をお願いします(腸管出血性大腸菌感染症の届出基準はこちらのページから)。
「一次、二次医療機関のための腸管出血性大腸菌(O157等)感染症治療の手引き(改訂版)(外部サイト)」参照。
腸管出血性大腸菌は、汚染された食品からの感染、いわゆる食中毒の原因の一つでもあり、食中毒予防の3原則、(1)「菌をつけない(食材・手をよく洗う)」、(2)「増やさない(食品は冷蔵保存・調理後早く食べる)」、(3)「殺菌(十分な加熱、調理器具の洗浄・消毒・乾燥)」が重要です。さらに、ヒトからヒトへの二次感染を防ぐための、(4)「手洗いの徹底」が大切です。
(1)「菌をつけない(食材・手をよく洗う)」
(2)「増やさない(食品は冷蔵保存・調理後早く食べる)」
(3)「殺菌(十分な加熱、調理器具の洗浄・消毒・乾燥)」
(4)「手洗いの徹底」
また、腸管の運動を抑える働きの下痢止め薬や痛み止め薬の中にはベロ毒素が体外に排出されにくくするものがあるため、自己判断で薬を服用せず、症状がある場合は早めに医療機関を受診することが重要です。
第三種の学校感染症に定められており、病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで出席停止とされています。
2013年9月9日掲載
2015年4月22日増補改訂
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