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最終更新日 2019年7月3日
「重症急性呼吸器症候群(SARS:Severe Acute Respiratory Syndrome )」について、世界保健機関(WHO)が2003年12月31日時点でのデータをまとめた、2002年11月1日から2003年7月31日までに発病したSARS可能性例の累計は、8096人で、その内774人が死亡しています。この累計患者数で累計死亡数を割って算出した、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の可能性例における致死率は、9.6%となっています。可能性例の累計は、2003年4月28日に5000人を、5月2日に6000人を、5月8日に7000人を、5月22日に8000人を超えました。国別の発生状況は、下の表1のとおりです。なお、日本は2003年4月12日分でWHO発表の国別「重症急性呼吸器症候群(SARS)」発生状況の表に数字が初登場しました。4月11日までは、日本はSARS確定数をWHOに報告するという方針でゼロ報告でした。4月12日からは、SARSの可能性例(但し、SARS対策専門委員会で否定された例を除く)をWHOに報告する方針になったための初登場でした。日本の数字は、SARS対策専門委員会が開かれる日などには減少する可能性のある数字でした。2003年4月14日分ではSARS対策専門委員会で可能性例は否定されて数字がゼロとなり表から日本は消えました。しかし、新たにSARSの可能性例の届け出があったことで、翌日の2003年4月15日分では、WHO発表の国別「重症急性呼吸器症候群(SARS)」発生状況の表に日本が再び登場しました。しかし、最終的には、表から日本の国名は消えました。
国 | 女性 | 男性 | 総計 | 年齢の中央値(最小値~最大値) | 死亡者数a | 致死率 (%) | 輸入例(%) | 患者となった医療従事者数 (%) | 第一例の発病日 | 最終例の発病日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オーストラリア | 4 | 2 | 6 | 15(1-45) | 0 | 0 | 6 (100) | 0 (0) | 2003年2月26日 | 2003年4月1日 |
カナダ | 151 | 100 | 251 | 49(1-98) | 43 | 17 | 5 (2) | 109 (43) | 2003年2月23日 | 2003年6月12日 |
中国 | 2674 | 2607 | 5327b | 入手できず | 349 | 7 | 分類されず | 1002 (19) | 2002年11月16日 | 2003年6月3日 |
香港(中国香港特別行政区) | 977 | 778 | 1755 | 40(0-100) | 299 | 17 | 分類されず | 386 (22) | 2003年2月15日 | 2003年5月31日 |
マカオ(中国マカオ特別行政区) | 0 | 1 | 1 | 28 | 0 | 0 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年5月5日 | 2003年5月5日 |
台湾 | 218 | 128 | 346c | 42 (0-93) | 37 | 11 | 21 (6) | 68 (20) | 2003年2月25日 | 2003年6月15日 |
フランス | 1 | 6 | 7 | 49 (26 - 61) | 1 | 14 | 7 (100) | 2 (29)d | 2003年3月21日 | 2003年5月3日 |
ドイツ | 4 | 5 | 9 | 44 (4-73) | 0 | 9 (100) | 1 (11) | 2003年3月9日 | 2003年5月6日 | |
インド | 0 | 3 | 3 | 25 (25-30) | 0 | 0 | 3 (100) | 0 (0) | 2003年4月25日 | 2003年5月6日 |
インドネシア | 0 | 2 | 2 | 56 (47-65) | 0 | 0 | 2 (100) | 0 (0) | 2003年4月6日 | 2003年4月17日 |
イタリア | 1 | 3 | 4 | 30.5 (25-54) | 0 | 0 | 4 (100) | 0 (0) | 2003年3月12日 | 2003年4月20日 |
クウェート | 1 | 0 | 1 | 50 | 0 | 0 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年4月9日 | 2003年4月9日 |
マレーシア | 1 | 4 | 5 | 30 (26-84) | 2 | 40 | 5 (100) | 0 (0) | 2003年3月14日 | 2003年4月22日 |
モンゴル | 8 | 1 | 9 | 32 (17-63) | 0 | 0 | 8 (89) | 0 (0) | 2003年3月31日 | 2003年5月6日 |
ニュージーランド | 1 | 0 | 1 | 67 | 0 | 0 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年4月20日 | 2003年4月20日 |
フィリピン | 8 | 6 | 14 | 41 (29-73) | 2 | 14 | 7 (50) | 4 (29) | 2003年2月25日 | 2003年5月5日 |
アイルランド | 0 | 1 | 1 | 56 | 0 | 0 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年2月27日 | 2003年2月27日 |
韓国 | 0 | 3 | 3 | 40 (20-80) | 0 | 0 | 3 (100) | 0 (0) | 2003年4月25日 | 2003年5月10日 |
ルーマニア | 0 | 1 | 1 | 52 | 0 | 0 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年3月19日 | 2003年3月19日 |
ロシア | 0 | 1 | 1 | 25 | 0 | 0 | 入手できず | 0 (0) | 2003年5月5日 | 2003年5月5日 |
シンガポール | 161 | 77 | 238 | 35 (1-90) | 33 | 14 | 8 (3) | 97 (41) | 2003年2月25日 | 2003年5月5日 |
南アフリカ | 0 | 1 | 1 | 62 | 1 | 100 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年4月3日 | 2003年4月3日 |
スペイン | 0 | 1 | 1 | 33 | 0 | 0 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年3月26日 | 2003年3月26日 |
スウェーデン | 3 | 2 | 5 | 43 (33-55) | 0 | 0 | 5 (100) | 0 (0) | 2003年3月28日 | 2003年4月23日 |
スイス | 0 | 1 | 1 | 35 | 0 | 0 | 1 (100) | 0 (0) | 2003年3月9日 | 2003年3月9日 |
タイ | 5 | 4 | 9 | 42 (2-79) | 2 | 22 | 9 (100) | 1 (11)d | 2003年3月11日 | 2003年5月27日 |
英国 | 2 | 2 | 4 | 59 (28-74) | 0 | 0 | 4 (100) | 0 (0) | 2003年3月1日 | 2003年4月1日 |
米国 | 13 | 14 | 27 | 36 (0-83) | 0 | 0 | 27 (100) | 0 (0) | 2003年2月24日 | 2003年7月13日e |
ベトナム | 39 | 24 | 63 | 43 (20-76) | 5 | 8 | 1 (2) | 36 (57) | 2003年2月23日 | 2003年4月14日 |
計 | 4272 | 3778 | 8096 | (0-100) | 774 | 9.6 | 142(1.8) | 1706(21.1) |
a. SARSが死因の者のみ。
b. 性別が不明の者46人を含む。
c. 2003年7月11日以来、台湾では325人が除外された。検査データが不十分で除外した135人のうち、101人が死亡している。
d. 他の地区で感染した医療従事者を含む。
e. 米国では症例の定義に違いのために、2003年7月5日以後発病した可能性例について米国は報告している。
当初、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の第一例とされた患者は、2003年2月26日にベトナムのハノイの病院に入院した男性患者です。高熱と乾いた咳、筋肉痛、のどの痛みがありました。血小板減少と呼吸困難が出現し、3月2日には人工呼吸器による治療が必要となりました。このベトナムでの第一例は、47歳のアジア系米国人のビジネスマンで香港からハノイに2月23日に到着後、発病しハノイの病院に入院しています。このベトナムでの第一例は、さらに3月5日に香港の隔離施設に移送後、3月13日に死亡しました。このベトナムでの第一例の入院後、ハノイの病院では、約20人の病院従業者が同様の症状を示し、集団発生となりました。インフルエンザのような突然の高い発熱が見られました。筋肉痛、頭痛、のどの痛みも見られました。両側性の肺炎、および呼吸困難となり、人工呼吸器による呼吸管理が必要となった患者もいます。発病後、血液検査では、血小板数減少、および白血球数減少が見られました(参考文献1)。また、2月下旬になって、ベトナムのハノイの病院と同様な症状の患者の集団発生が香港のある病院の従業者にも見られました。この香港の病院での集団発生は、中国南部の広東省から出て来て発病した患者に関連するものでした。ベトナムのハノイの病院および中国の香港の病院などでの集団発生を踏まえ、2003年3月12日に、世界保健機関(WHO)は、原因不明の「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の集団発生に関する警戒警報を発しました。シンガポール、台湾、カナダ(トロント)におけるそれぞれの国の第1例は、いずれも中国・香港に旅行した人でした。
「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の患者たちの感染源を探る調査の中で、香港、ベトナム、シンガポール、アメリカ合衆国、アイルランド、カナダの患者たち11人が、香港の同じ四ツ星ホテルに同じ日(2003年2月21日)に宿泊していたことが判明しています。11人の内、9人がホテルの9階、1人が11階、1人が14階でした。この11人の中には、先に触れたベトナムでの第一例も含まれています。この11人の中で感染源となった可能性が考えられる患者Aは、家族に会うために広東省から香港に来てこのホテルの9階(911号室)に2003年2月21日に宿泊しました。2月15日には発病していて香港のホテルに宿泊した2月21日の翌日2月22日には香港の病院に入院し、3月上旬には死亡しました(参考文献6、8、9)。この香港のホテルについての情報については、日本の厚生労働省のページ(外部サイト)及び日本の外務省のページ(外部サイト)をご覧下さい(下線部をクリックして下さい)。
中国の「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の報告は、広東省、香港(特別行政区)、北京市、山西省、湖南省、四川省、広西壮族自治区、上海市、内蒙古自治区、福建省、寧夏回族自治区、河南省、甘粛省、陝西省、吉林省、遼寧省、天津市、山東省、湖北省、浙江省、河北省、安徽省、江蘇省、マカオ(特別行政区)、江西省、重慶での患者の報告でした。地図で示すと、下の図1の通りでした。香港・マカオを除く、中国本土での地域別「重症急性呼吸器症候群(SARS)」発生状況は、2003年7月11日までの集計で下の表2のとおりでした。広東省での患者発生が先行して2002年11月16日から見られました。この広東省での集団発生については、死亡した患者の肺の2検体からクラミジアが検出されたとして、中国CDC(疾病管理・予防センター)及び広東省CDC(疾病管理・予防センター)が2003年2月18日にクラミジアによる非定形肺炎が原因ではないかとしました。その後、多くの「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の患者の検体でクラミジアの検査がなされましたが大部分の検体で検出されませんでした。クラミジアが検出された中国の患者の場合、クラミジアにも感染していたが、クラミジア以外の「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の真の病原体にも感染していたのだと考えられています。
地域 | 累積患者数 | 死亡者数 | 軽快退院した患者数 | 入院治療中の患者数 |
---|---|---|---|---|
北京市 | 2521 | 192 | 2302 | 19 |
その他の省・市 | 2806 | 156 | 2638 | 0 |
総計 | 5327 | 348 | 4941 | 19 |
総計に占める割合 | 100% | 6.5% | 92.8% | 0.4% |
台湾では、台湾CDC(疾病管理センター)に対して、2003年3月17日まででは3人の「重症急性呼吸器症候群(SARS)」患者が報告されていました。内2人については、夫婦です。夫は3月8日に国立大学病院に入院し「重症急性呼吸器症候群(SARS)」とされました。夫は2003年2月には、中国広東省や香港に滞在していました。妻は旅行歴はないのですが、10日間遅れて発熱や肺炎を起こし入院しました。残りの一人は、広東省や香港に旅行して約1週間後の2003年3月8日に発熱し3月13日に入院した64歳の女性です。
SARSのアメリカ合衆国での状況については、2003年4月2日現在で、CDC(疾病管理・予防センター)が、28州から100例のSARS疑いの患者報告を受けています。100例(100%)の内、94例(94%)は、地域での感染が考えられる地域(中国本土、香港、シンガポール、あるいはハノイ)へ発病前10日以内に旅行をしている人たちです。4例(4%)は、SARS疑いの患者と家庭内での接触があった人たちです。2例(2%)は、SARS疑いの患者に対する医療に関わった医療従事者です(参考文献10)。
2003年5月22日までで、飛行中における飛行機内でのSARSの感染が、有症状のSARS可能性例が乗った35の飛行(フライト)の内、4つの飛行(フライト)で起こっています。そのうち、一番最新のSARSの感染は、3月23日のバンコク発北京行きの航空便で、有症状のSARS可能性例から隣の座席の1人に起こった感染です。SARSの感染はSARS患者の隣の座席の人に限らず起こりえます。SARS患者の座席の、7列前方の座席の人、あるいは、5列後方の座席の人が感染した例が知られています。4つの飛行(フライト)で27人の患者が生じています。27人の患者の内、22人までが、2003年3月15日、香港発北京行きのCA112便で発生しています。飛行中に飛行機の乗務員が4人感染したことが知られていますが、その内の2人までが、この香港発北京行きのCA112便での発生です。
「重症急性呼吸器症候群(SARS)」は、38度以上の発熱で発病します。悪寒や筋肉のこわばり、また、頭痛、気分不快、筋肉痛を伴うことがあります。発熱時に軽い呼吸器症状が見られる例もあります。発疹や神経学的所見、胃腸症状は通常見られません。しかし、発熱とともに下痢が見られた例もあります。「重症急性呼吸器症候群(SARS)」に見られる早期の症状をまとめると、下の表3のとおりです。
症状 | 出現率(%) |
---|---|
発熱 | 100 |
気分不快 | 100 |
悪寒 | 97 |
頭痛 | 84 |
筋肉痛 | 81 |
めまい | 61 |
筋肉のこわばり | 55 |
咳 | 39 |
のどの痛み | 23 |
鼻水 | 23 |
発熱による発病から3-7日後、下気道の呼吸器症状が始まります。痰が少ない、乾いた咳、息切れや呼吸困難です。低酸素血症となる場合もあります。患者の10-20%では、呼吸器症状は重症で、人工呼吸器による治療が必要となります。胸部X線検査では肺炎の所見が認められることがあります。しかし、一方で呼吸器症状がまったく見られず、軽い発熱のみで全快となる患者もいます。「重症急性呼吸器症候群(SARS)」患者における致死率は、年齢階層により違いがみられます。下の表4をご覧下さい。高齢者の方が患者の致死率は高いです。
年齢(歳) | 患者数 | 死亡者数 | 致死率(%) |
---|---|---|---|
0-14 | 72 | 0 | 0.0 |
15-34 | 467 | 2 | 0.4 |
35-54 | 476 | 17 | 3.6 |
55-64 | 92 | 6 | 6.5 |
65-74 | 90 | 17 | 18.9 |
75- | 56 | 16 | 28.6 |
計 | 1253 | 58 | 4.6 |
*香港衛生局資料(参考文献12)による。なお、全死亡者の68%が、SARS以外にも病気を持っている。 |
但し、表4の致死率については流行の途中において算出された数字であるので、その後も患者から死亡者が出ると考えられることから、実際の致死率は、より高い数値であると考えられます。WHOによる致死率の推計は、下の表5のとおりになっています。患者全体の年齢構成により、患者全体の致死率はかなり変動すると考えられます。
年齢(歳) | 致死率(%) |
---|---|
24歳以下 | 1%未満 |
25-44歳 | 6% |
45-64歳 | 15% |
65歳以上 | 50%以上 |
全体 | 14-15% |
「重症急性呼吸器症候群(SARS)」は、インフルエンザのような爆発的な感染の広がりは示しません。患者の診療にあたった病院の医療従事者あるいは患者の家族に、患者の発生が多く見られました。人から人への感染は、密接な接触が必要だと考えられています。感染者の呼吸器からの飛沫との密接な接触あるいは感染者の体からの分泌物との密接な接触が、感染のために重要な役割を果たしているのではないかと考えられています。潜伏期は2-7日ですが、多くは3-5日です。最長で10日と考えられる場合もあります。
「重症急性呼吸器症候群(SARS)」に対する特効薬は、見つかっていません。症状に応じた対症療法中心になります。対症療法中心で重症から回復した例が増えています。香港では、ステロイドと抗ウイルス剤Ribavirinとを使った治療法が試みられています(参考文献8)。
日本における「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の医師による報告の基準は、こちらをご覧ください(医師による重症急性呼吸器症候群(SARS)の届出基準はこちらのページから)。
また、獣医師については、イタチアナグマ、タヌキ及びハクビシンについてSARSにかかり、又はかかっている疑いがあると診断したときは、直ちに、当該動物の所有者の氏名等の事項を最寄りの保健所(横浜市では福祉保健センター)を経由して都道府県知事に届け出なければならないこととされています(獣医師による重症急性呼吸器症候群(SARS)の届出基準はこちらのページから)。
「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の病原体は不明でしたが、患者あるいは死亡者からの検体を材料としての研究が進められました。病原体ウイルスの分離・培養が行われました。病原体ウイルスは新種のコロナウイルス( coronavirus )です。さらに、この病原体ウイルスの検査法も開発されました。さて、WHOの感染症専門家の医師 Carlo Urbani は、2003年2月末にベトナムのハノイのフレンチ病院で原因不明の肺炎患者を診察し、WHOの西太平洋地区事務所に報告し、SARSの症候群としての定義づけに貢献しましたが、SARSのために46歳で2003年3月29日にタイのバンコクで病死しました(参考文献13)。病原体ウイルスの名前は Carlo Urbani 医師に因んだものとすべきだとの意見がありました(参考文献7)。結局、2003年4月16日、WHO等により、SARSの病原体ウイルスは、SARSウイルス( SARS virus )と名付けられました。コロナウイルス( coronavirus )の一種であることから、正式には、SARSコロナウイルス( SARS coronavirus )と呼ばれています。
SARSウイルス(SARS virus)は、プラスチックの表面で乾燥後48時間まで生存します。香港での研究では、尿中では、少なくとも24時間、便中では、少なくとも2日間生存することが判明しました。なお、下痢便中では4日間まで生存しました。
国際旅行によって感染が広がることが心配されます。「WHOが公表した重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播確認地域」を最近訪れて、心配な症状がある方は、最寄りの保健所(横浜市の場合は、福祉保健センター)にご相談ください。保健所がSARS疑いの患者を診療する医療機関のご案内をします。医療機関受診時には海外渡航したことを忘れずに告げるようにしましょう。医療機関を受診しようとする時には、医療機関にあらかじめ電話して「WHOが公表した重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播確認地域」を最近訪れて心配な症状があることを告げ、受診を予約してから、マスク着用の上、受診するようにしましょう。受診を予約することで、医療機関が予め十分な感染予防対策をすることができます。「WHOが公表した重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播確認地域」は、当該国がその地域で重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染が最近20日以内に起こったと報告している地域です。なお、「WHOが公表した重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播確認地域」は、2003年7月5日の時点で、最後まで残っていた台湾がリストから除外されたことにより、存在しません。
「WHOが公表した重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播確認地域」については、まず、2003年4月28日、最近20日間に新たな患者発生が認められなかったため、最初にベトナム(ハノイ)がリストから除外されました。また、5月1日には、20日以上、地域での感染例が出ていないことから、アメリカ合衆国とイギリス(ロンドン)とがリストから除外されました。5月14日には、20日以上、地域での感染例が出ていないことから、カナダ(トロント)がリストから除外されました。5月20日には、20日以上、地域での感染例が出ていないことから、フィリピン(マニラ)がリストから除外されました。5月21日には、台湾については、台北が伝播確認地域だつたのが、台湾の全土に伝播確認地域が拡大しました。5月26日には、カナダ(トロント)がリストに再登場しました。トロントの4病院で26人のSARS疑いおよび可能性例が発生したためでした。また、一番最近の地域での感染例が隔離されてから20日経過したことから、シンガポールがリストから5月31日より除外されました。さらに、一番最近の地域での感染例が隔離されてから20日経過したことから、広東、河北、湖北、内蒙古、吉林、江蘇、陝西、山西、天津がリストから6月13日より除外されました。また、一番最近の地域での感染例が隔離されてから20日経過したことから、香港がリストから6月23日より除外されました。さらに、一番最近の地域での感染例が隔離されてから20日経過したことから、中国の北京がリストから6月24日より除外されました。また、一番最近の地域での感染例が隔離されてから20日経過したことから、カナダのトロントがリストから7月2日より除外されました。さらに、一番最近の地域での感染例が隔離されてから20日経過したことから、最後に台湾がリストから2003年7月5日に除外され、「WHOが公表した重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播確認地域」は存在しなくなりました。
「重症急性呼吸器症候群(SARS)」が国際間で広がらないように、世界保健機関(WHO)は、2003年3月27日に、国際間の旅行について勧告を出しました。勧告は、「WHOが公表した重症急性呼吸器症候群(SARS)の伝播確認地域」の国から空路で出国する旅客の空港での審査に関するものです。空港の担当官が、旅客と面接し、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」を疑わせる症状の有無を確かめます。旅客に「重症急性呼吸器症候群(SARS)」を疑わせる発熱症状などあれば、軽快するまで出国を延期するように勧めます。該当する国がこのWHOの勧告を実施した場合には、発熱などが見られれば、該当する国からの出国を止められる可能性もあります。このWHOの勧告に従って、2003年4月17日から、香港国際空港では、出国するすべての旅客にチェックイン前に体温測定を要求することとなりました。体温が38.0度以上の場合には、医師への受診を要することとなり、SARSが疑われる場合には、出国はできません。この体温測定などのため、香港国際空港でのチェックインには以前より時間がかかるようになりました。出国の際には、早めに香港国際空港に到着するように勧められました。
なお、2003年3月29日(土曜日)午後から、香港(特別行政区)への入国にあたっては、当局から渡される健康申告書( Health Declaration )の記入を求められることになりました。記入内容としては、姓名(フルネーム)、性別、年齢、国籍、職業、入国日、入国にあたっての交通手段(飛行機、陸路、海路)、入国前7日間に滞在した国・都市の名前、発熱・咳・息切れ・呼吸困難の有無、香港での滞在住所、香港での電話連絡先などとなっていました。
さらに、香港及び広東省でのSARSの発生が増えていることから、2003年4月2日朝、世界保健機関(WHO)は、香港及び広東省に旅行しようとしている人たちに対して、必要な旅行以外は延期を考慮するように、勧告を出しました。翌日の2003年4月3日、日本においても、香港及び広東省に旅行しようとしている人たちに対して、不要不急の旅行を延期を考慮するように、厚生労働省と外務省とが勧告を出しました。また、2003年4月22日には、中国の北京に旅行しようとしている人たちに対して、不要不急の旅行を延期を考慮するように、厚生労働省と外務省とが勧告を出しました。翌日の2003年4月23日には、世界保健機関(WHO)が、中国の北京、山西省及びカナダのトロントに旅行しようとしている人たちに対して、必要な旅行以外は延期を考慮するように、勧告を出しました。2003年4月30日、WHOの勧告については、カナダのトロントについての勧告は取り止められ、中国の北京、山西省及び香港及び広東省についての勧告が継続することになりました。さらに、2003年5月8日、世界保健機関(WHO)は、天津、内蒙古、台北(台湾)についても勧告を出し、5月8日の時点で、必要な旅行以外は延期を考慮するようにWHOの勧告が出ているのは、台北(台湾)および中国の北京、山西省、香港、広東省、天津、内蒙古となりました。また、5月8日の時点で、台北(台湾)および中国の北京、山西省、香港、広東省、天津、内蒙古については、不要不急の旅行を延期を考慮するように、外務省が勧告を出していました。さらに、2003年5月17日、世界保健機関(WHO)は、中国の河北省についても勧告を出し、5月17日の時点で、必要な旅行以外は延期を考慮するようにWHOの勧告が出ているのは、台北(台湾)および中国の北京、山西省、香港、広東省、天津、内蒙古、河北省となりました。また、5月18日の時点で、台北(台湾)および中国の北京、山西省、香港、広東省、天津、内蒙古、河北省については、不要不急の旅行を延期を考慮するように、外務省が勧告を出していました。なお、5月21日の時点で、台湾については勧告の地域を、台北から全土へとWHOおよび外務省が拡大していました。さらに、2003年5月23日、香港、広東省については、WHO(必要な旅行以外は延期を考慮)および外務省(不要不急の旅行を延期を考慮)の勧告の地域から除外されました。山西省、河北省、天津、内蒙古については、2003年6月13日にWHO(必要な旅行以外は延期を考慮)および2003年6月14日に外務省(不要不急の旅行を延期を考慮)の勧告の地域から除外されました。さらに、台湾については、2003年6月17日にWHO(必要な旅行以外は延期を考慮)および外務省(不要不急の旅行を延期を考慮)の勧告の地域から除外されました。2003年6月17日現在、中国の北京のみがWHO(必要な旅行以外は延期を考慮)および外務省(不要不急の旅行を延期を考慮)の勧告の地域となりました。この中国の北京についても、6月24日に除外されて、WHO(必要な旅行以外は延期を考慮)および外務省(不要不急の旅行を延期を考慮)の勧告の地域は現在ありません。
「重症急性呼吸器症候群(SARS)」を広げないあるいは、「重症急性呼吸器症候群(SARS)」にかからないためには、病原体を広げないあるいは、病原体をもらわない習慣を身に付けていることも大切だと思われます。呼吸器からの飛沫を少なくするには、マスクをする。咳・痰・くしゃみ・鼻水のときには、ティシュペーパーで口と鼻とをおおう。その後すぐに手をよく洗う。手を乾かすのは、使い捨てタオル、ドライヤー。タオルは自分専用にして他の人と共用しない。手が病原体を粘膜まで運び、粘膜から病原体が侵入している可能性も考えられます。眼・鼻・口などに触れるときには、事後だけでなく事前にも手をよく洗いましょう。トイレの後や食事の前にも手をよく洗いましょう。換気の少ない狭い空間で多人数で長時間すごすのは控えましょう。あいさつは、握手・抱擁・キスなどの身体接触を止めて、会釈や言葉だけで済ませましょう。多くの人が触る公共物に触るのは控えましょう。触ったら、すぐに手をよく洗いましょう。
手など皮膚の消毒には、消毒用アルコールが有効だと考えられています。また、一般の場所で、モノの表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが使われることがあります。なお、SARSの消毒・滅菌については、こちらもご覧ください(クリックしてください)。厚生労働省のホームページには、SARSウイルスに対する消毒法の紹介のページ(外部サイト)もあります。なお、台所用合成洗剤がSARSコロナウイルスの処理に効果が高いことが実験的に確認され、家庭などでの消毒としての選択肢が増えたとして、国立感染症研究所では、台所用合成洗剤を用いた消毒法(外部サイト)も紹介しています。
2003年3月20日初掲載
2003年7月15日改訂増補
2005年9月9日改訂増補
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