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サル痘(monkeypox)について

最終更新日 2018年7月23日

流行は?

1967年以来WHO(世界保健機関)が中心となって全世界で種痘(痘瘡の予防接種)を推し進めた結果、1977年を最後に痘瘡(天然痘)の患者は出現していません。現在では、痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスは、実験室の中にしか存在していないと考えられています。痘瘡(天然痘)の患者が存在しなくなったことから全世界で種痘(痘瘡の予防接種)が行われなくなって久しいです。アメリカ合衆国では、1972年に定期の予防接種ではなくなりました。日本では1976年に定期の予防接種ではなくなりました。それ以前に種痘(痘瘡の予防接種)を受けている人の痘瘡(天然痘)に対する免疫力もかなり落ちている可能性があります。

痘瘡(天然痘)に対する免疫は、サル痘(monkeypox)に対する免疫としても役立ちます。種痘(痘瘡の予防接種)は、サル痘(monkeypox)の予防にも効果があるとされています。種痘(痘瘡の予防接種)を受けた人は、サル痘(monkeypox)では死なないとされています。痘瘡(天然痘)に対する人々の免疫力が低下している状況下では、サル痘(monkeypox)に対する人々の免疫力も低下して、サル痘(monkeypox)の発生が増加する可能性もあります。サル痘(monkeypox)の名前は、最初、1958年に実験動物のサルの病気として認められたことによります。人間におけるサル痘(monkeypox)が1970年に初めて認められたのは、コンゴ民主共和国(ザイール)の1968年に痘瘡(天然痘)が根絶された地域においてでした。西アフリカ、中央アフリカの痘瘡(天然痘)が根絶された地域でサル痘(monkeypox)は認められました。サル痘(monkeypox)は、野生動物との接触が多い、西アフリカ、中央アフリカの熱帯雨林の小村で見られる、まれな人獣共通感染症です。コンゴ民主共和国(ザイール)からの報告が多いです。WHOの調査によれば、1970年から1986年までに全世界から総計400人ほどの患者発生の報告があったとされています。感染しているネズミ、リスやサルの血液・体液・病変部との接触、あるいは、感染しているネズミ、リスやサルにかまれての感染がありえます。少ないですが、人から人への感染もあります。人から人への感染は、5世代まで報告されています。

痘瘡(天然痘)が根絶されて以降の1981年から1986年までのコンゴ民主共和国(ザイール)における調査では338人のサル痘(monkeypox)患者が発生しています。種痘(痘瘡の予防接種)をうけていない人たちでは、サル痘(monkeypox)患者の致死率は、9.8%でした。種痘(痘瘡の予防接種)は、サル痘(monkeypox)を予防することに85%有効でした。患者から患者の家族が感染し発病することがあります。種痘(痘瘡の予防接種)を受けていない家族における罹患率は、9.3%です。患者の28%が、発病前の潜伏期間内に他の患者との接触があったことを認めています。ヒトからヒトへの感染については、感染している動物から感染したヒトから他のヒトへと感染する場合が大部分でした。ヒトから感染したヒトから他のヒトへと感染する場合はまれでした。

なお、コンゴ民主共和国(ザイール)での1996年1月から1997年1月までのサル痘(monkeypox)の流行の調査(参考文献2)によれば、近年になって人間における感染パターンが変化してきているとのことです。患者の73%が、発病前の潜伏期間内に他の患者との接触があったことを認めています。以前よりも人から人への感染が起こりやすくなっています。人から人への感染が以前よりも見られ、流行が1年以上続きました。この変化についても、痘瘡(天然痘)に対する人々の免疫力の低下が関係しているようです。種痘(痘瘡の予防接種)を受けていない家族が多くなってきている状況下で、家族における罹患率は、8.3%でした。サル痘(monkeypox)の病原体であるmonkeypox(サル痘)ウイルスの遺伝子にも、大きな変化は見られていません。

サル痘(monkeypox)は、西アフリカ、中央アフリカの限られた地域で見られてきました。ところが、2003年6月上旬、アメリカ合衆国でサル痘(monkeypox)患者の発生が確認され驚かれています。感染して発病したプレーリードッグ等との接触によって感染したものと考えられています。2003年6月10日の時点で、イリノイ州、インディアナ州、ウィスコンシン州で総計53人のサル痘(monkeypox)患者の疑い例・可能性例の発生が見られています。この53人のすべてに動物との接触がありました。51人についてはプレーリードッグとの直接あるいは濃厚な接触がありました。1人についてはGambian giant ratとの接触がありました。1人についてはウサギとの接触がありました。このウサギは、獣医の診療所で具合の悪いプレーリードッグと接触してから具合が悪くなりました。

2003年7月8日の時点では、イリノイ州12人、インディアナ州16人、ウィスコンシン州39人、オハイオ州1人、カンサス州1人、ミズリー州2人と、総計で71人のサル痘(monkeypox)患者の疑い例・可能性例・確定例の発生が見られています。この内、35人の検体からサル痘(monkeypox)の病原体であるmonkeypox(サル痘)ウイルスが検出されています。この確定例35人(100%)の主な症状は、発疹が34人(97%)、発熱が29人(83%)、呼吸器症状(咳・息切れ・のどの痛み・鼻水の内、少なくとも一つの症状)が27人(77%)、リンパ節の腫れが24人(69%)でした。水疱の出現の三日後に重症の脳炎で入院したこどもも含まれています。

サル痘(monkeypox)の病原体であるmonkeypox(サル痘)ウイルスが、どのようにしてアフリカからアメリカ合衆国に渡って来たかについて、アメリカ合衆国のCDC(疾病管理・予防センター)が中心になって調査を進めています。アメリカ合衆国でペットとしてアフリカから輸入したGambian giant rat(アフリカのげっ歯類の一種) がmonkeypox(サル痘)ウイルスに感染していて、アメリカ合衆国国内の動物を扱っている施設でこの感染したGambian giant ratがプレーリードッグを感染させた可能性があります。ウィスコンシン州の業者Aが、ウィスコンシン州のサル痘の初発患者にプレーリードッグを売っています。ウィスコンシン州の業者Aは、イリノイ州の業者Bからプレーリードッグを仕入れています。イリノイ州の業者Bは、プレーリードッグとGambian giant ratをたいへん近接して収容していました。このGambian giant ratは、2003年4月9日にテキサス州の野生動物輸入業者Cがアフリカのガーナから船便で輸入したものでした。この船便では、9種類の小型の哺乳動物が800匹ほど輸入されていて、monkeypox(サル痘)ウイルスがこの船便でアメリカ合衆国に入り込んだ可能性があります。9種類の小型の哺乳動物には、rope squirrels, tree squirrels, Gambian giant rats, brushtail porcupines, dormice(アフリカヤマネ)、 striped mice といった6種類のげっ歯類がふくまれていました。2003年4月9日にアメリカ合衆国に輸入された動物についてCDC(疾病管理・予防センター)が調査を進めていますが、一匹のGambian giant rats, 三匹のdormice(アフリカヤマネ)、二匹のrope squirrelsからmonkeypox(サル痘)ウイルスが検出されています。アメリカ合衆国のサル痘(monkeypox)患者の発病日で一番早い日付は、2003年5月15日でした。テキサス州の野生動物輸入業者Cは、Gambian giant ratをアイオワ州の業者Dに4月15日に売っています。さらに、アイオワ州の業者DはGambian giant ratをイリノイ州の業者Bに売っています。

なお、厚生労働省によれば、2003年4月9日にアメリカ合衆国に輸入された dormice(アフリカヤマネ)の内から17匹が2003年5月8日に日本に輸出されたとのことです。日本に輸入されたdormice(アフリカヤマネ)17匹の内、2003年7月3日の時点では共食い等の理由により15匹がすでに死亡していました。生存のdormice(アフリカヤマネ)2匹について、国立感染症研究所でmonkeypox(サル痘)ウイルスの検査をしました。2匹とも、PCR法、ウイルス分離試験、抗体検査で、monkeypox(サル痘)ウイルスの感染は認められませんでした。

どんな病気?

サル痘(monkeypox)の病原体のウイルスに感染してから症状が出現するまでの潜伏期は約12日(大部分は10-14日。7-21日のこともある。)です。サル痘(monkeypox)の症状は、痘瘡(天然痘)とよく似ていますが、多くの場合で頸部やソケイ部のリンパ節の腫れが目立つ点で異なります。サル痘(monkeypox)の最初の症状は、典型的には、発熱、不快感、疲労感、頭痛、背部痛、筋肉痛、リンパ節の腫れなどです。1-3日のうちに(もっと後のこともある)、発疹が、出現してきます。発疹は最初は平たく赤いのですが、盛り上がってきます。最初は水を持つようになっていたのが膿を持つようになり、二週目のはじめころにはかさぶたになり始めます。かさぶたで被われるようになり2-4週間後にはかさぶたが剥がれ落ちます。大部分の患者は回復しますが、致死率は1-10%にも及ぶことがあります。

サル痘(monkeypox)は、患者の呼吸器の飛沫あるいは患者の体液との直接の接触を介して、患者の身近な人へと広がって行くことがあります。サル痘(monkeypox)の病原体のウイルスに汚染された患者の衣服や寝具を介して感染することもあります。

今のところサル痘(monkeypox)に対する特効薬はありません。点滴による栄養・鎮痛剤・解熱剤や二次的な細菌による感染を抑える抗生物質などが治療で使われます。

2003年6月上旬のアメリカ合衆国でのサル痘(monkeypox)患者の発生の原因となった動物たちのサル痘(monkeypox)の症状は、発熱、咳、結膜炎、リンパ節の腫れなどでした。続いて結節性の発疹あるいは水疱が出現します。死亡した動物もいますが、回復した動物もいます。

病原体は?

サル痘(monkeypox)の病原体のウイルスであるmonkeypox(サル痘)ウイルスは、orthopoxvirus属の一員です。このorthopoxvirus属には、痘瘡(天然痘)ウイルス(variola virus)、vacciniaウイルス、cowpox(牛痘)ウイルスが属しています。いずれもヒトに感染することがあります。

一般の場においては、モノの表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウムが使われることがあります。

予防のためには・・・

痘瘡(天然痘)には、種痘と呼ばれる予防接種があります。この種痘(痘瘡の予防接種)が、サル痘(monkeypox)の予防にも有効です。痘瘡(天然痘)の病原体のウイルスが生物兵器としてテロで使われた場合に備えて、アメリカ合衆国は種痘(痘瘡の予防接種)のワクチンを確保しています。日本でも種痘(痘瘡の予防接種)のワクチンを確保しています。サル痘(monkeypox)の診療や検査にあたる人は、最近種痘(痘瘡の予防接種)済みであることが望ましいです。昔、痘瘡が流行している国に入国にあたっては、3年以内に種痘(痘瘡の予防接種)を受けていることが要求されました。1回の種痘(痘瘡の予防接種)による免疫は一生は持続しません。痘瘡(天然痘)に対する抗体の値は、接種後5-10年の内に低下を見せます。

但し、アメリカ合衆国では、種痘(痘瘡の予防接種)は、こどもたちの70%で、接種後4-14日の間に39度以上の発熱が1日以上出るなどの副反応が見られました。また、アメリカ合衆国では、30万回の種痘(痘瘡の予防接種)に1回の割合で種痘(痘瘡の予防接種)後脳炎を起こし、種痘(痘瘡の予防接種)後脳炎では4分の一の患者が死亡していました。

2003年6月上旬のアメリカ合衆国でのサル痘(monkeypox)患者の発生では、サル痘(monkeypox)の発病予防の目的で、2003年6月13日以来、種痘(痘瘡の予防接種)が30人に対して行われています。サル痘(monkeypox)の病原体のウイルスであるmonkeypox(サル痘)ウイルスに曝露するようなできごとを基準にして、事前の種痘(痘瘡の予防接種)が7人、事後の種痘(痘瘡の予防接種)が23人でした。事前の種痘(痘瘡の予防接種)は獣医師3人、検査室の従事者2人及び医療従事者2人でした。事後の種痘(痘瘡の予防接種)が、医療従事者10人、家庭内での接触者7人、検査室の従事者3人、公衆衛生獣医師1人、公衆衛生従事者1人、仕事での接触者1人でした。なお、事後に種痘(痘瘡の予防接種)を接種したこども1人が、種痘接種後6日後に発疹が出現しました。発疹からの検体よりPCR法でmonkeypox(サル痘)ウイルスを検出しました。このこどもの場合には、種痘接種の時期が遅すぎて、サル痘(monkeypox)の発病を予防できなかったようです。こどもの家には、病気のプレーリードッグ2匹とサル痘(monkeypox)の確定例の大人1人とがいました。一匹のプレーリードッグは、約1年この家で飼われてきましたが、二匹目のプレーリードッグが飼われるようになってから病気になりました。種痘接種の25日前に病気の二匹目のプレーリードッグが飼われるようになってから、こどもはmonkeypox(サル痘)ウイルスに曝露していた可能性があります。確定例の大人の発疹出現に12日遅れて、こどもの発疹は出現しました。

参考ウェブサイト

  1. CDC(疾病管理予防センター)ホームページ(外部サイト):CDCは、アメリカ合衆国の感染症対策を担っている機関。サル痘(monkeypox)対策についてのページがあります。CDCにアメリカ合衆国各州から報告された患者数のページ(外部サイト)もあります。

参考文献

  1. Human monkeypox in Kasai Oriental, Zaire (1996-1997) ;Weekly Epidemiological Record, No. 15, 11 April 1997, 72, p.101-104.
  2. Yvan J.F. Hutin, R. Joel Williams, Philippe Malfait, et al. ; Outbreak of Human Monkeypox, Democratic Republic of Congo, 1996-1997. ; Emerging Infectious Diseases, Vol. 7, No. 3, May-June 2001, p. 434-439.
  3. Multistate Outbreak of Monkeypox -- Illinois, Indiana, and Wisconsin, 2003. ; Morbidity and Mortality Weekly Report, June 13, 2003/Vol. 52/No. 23, p.537-540.
  4. David J. Weber and William A. Rutala ; Risks and Prevention of Nosocomial Transmission of Rare Zoonotic Diseases ; Clinical Infectious Diseases 2001;31:p.446-456.
  5. Update: Multistate Outbreak of Monkeypox -- Illinois, Indiana, Kansas, Missouri, Ohio, and Wisconsin, 2003. ; Morbidity and Mortality Weekly Report, June 20, 2003/Vol. 52/No. 24, p.561-564.
  6. Update: Multistate Outbreak of Monkeypox -- Illinois, Indiana, Kansas, Missouri, Ohio, and Wisconsin, 2003. ; Morbidity and Mortality Weekly Report, June 27, 2003/Vol. 52/No. 25, p.589-590.
  7. Update: Multistate Outbreak of Monkeypox -- Illinois, Indiana, Kansas, Missouri, Ohio, and Wisconsin, 2003. ; Morbidity and Mortality Weekly Report, July 4, 2003/Vol. 52/No. 26, p.616-618.
  8. Update: Multistate Outbreak of Monkeypox -- Illinois, Indiana, Kansas, Missouri, Ohio, and Wisconsin, 2003. ; Morbidity and Mortality Weekly Report, July 11, 2003/Vol. 52/No. 27, p.642-646.

2003年6月17日初掲載
2003年7月11日増補改訂
2003年11月13日増補

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