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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2019年8月20日
本稿では、カタール国(State of Qatar)のこどもの定期予防接種について触れます。カタール国は、アラビア半島から北方にアラビア湾(ペルシャ湾)に突き出るカタール半島にあり、南方はサウジアラビアと国境を接します。
まず、カタール国のこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | カタール国で実施 | カタール国で未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、 結核(BCG)、 ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、 麻疹・風疹、 肺炎球菌感染症、 水痘 | 日本脳炎、 ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(*) |
日本で未実施 | 流行性耳下腺炎(ムンプス)、 B型肝炎、 A型肝炎、 ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | 髄膜炎菌感染症、 インフルエンザ |
*: HPVワクチンについては、日本では女子のみ対象。
こどもの定期予防接種として、カタール国で実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎、ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマがあります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずカタール国で実施されているものとしては、流行性耳下腺炎(ムンプス)、B型肝炎、A型肝炎、ロタウイルスによる感染性胃腸炎があります。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がカタール国では見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTaP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)、ポリオ不活化ワクチン(IPV)を混合したワクチン(DTaP-HepB-Hib-IPV)があります。四つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと4回の接種が必要なところ、四つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。
カタール国のこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年)は、下の表2のとおりです。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 | B型肝炎 | HepB(1回目) |
結核 | BCG(1回接種) | |
生後2ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回接種)* | |
肺炎球菌結合型ワクチン | PCV(1回目) | |
1価ロタウイルスワクチン | RV1(1回目) | |
生後4ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)** |
B型肝炎 | HepB(3回目)** | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)** | |
ポリオ経口・生ワクチン | OPV(1回目) | |
肺炎球菌結合型ワクチン | PCV(2回目) | |
1価ロタウイルスワクチン | RV1(2回目) | |
生後6ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)** |
B型肝炎 | HepB(4回目)** | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)** | |
肺炎球菌結合型ワクチン | PCV(3回目) | |
ポリオ経口・生ワクチン | OPV(2回目) | |
1歳(生後12ヶ月) | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目) |
水痘 | Var(1回接種) | |
A型肝炎 | HepA(1回目) | |
生後15ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)*** |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(4回目)*** | |
肺炎球菌結合型ワクチン | PCV(4回目) | |
生後18ヶ月 | ポリオ経口・生ワクチン | OPV(3回目) |
麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) | |
A型肝炎 | HepA(2回目) | |
3-4歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(5回目) |
ポリオ経口・生ワクチン | OPV(4回目) | |
水痘 | Var(2回目) | |
11-12歳 | 破傷風・ジフテリア | Td(1回接種) |
*:カタール国では、DTaP-HepB-Hib-IPVという6種混合ワクチンで接種されます。
**:カタール国では、DTaP-HepB-Hibという5種混合ワクチンで接種されます。
***:カタール国では、DTaP-Hibという4種混合ワクチンで接種されます。
上の表2には含まれていませんが、サウジアラビアへの巡礼者や髄膜炎菌性髄膜炎の流行地域への旅行者には、2歳からA,C,Y,W-135群髄膜炎菌ポリサッカライドワクチン(MPSV-ACYW135, MPSV4)を旅行の10日前までに接種しておくことを推奨しています。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
なお、カタール国における公用語は、アラビア語です。しかし、英語も使われていて、カタール国政府のホームページには、英語表記のページもあります。
各国の予防接種
2016年3月25日初掲載
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