このページへのお問合せ
健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課
電話:045-370-9237
電話:045-370-9237
ファクス:045-370-8462
メールアドレス:kf-eiken@city.yokohama.jp
■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2021年5月21日
本稿では、オランダのこどもの定期予防接種について触れます。まず、オランダのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
日蘭の両国とも定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | オランダで実施 | オランダで未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | ジフテリア・破傷風・百日咳、 | 結核(BCG)、 |
日本で未実施 | 髄膜炎菌感染症(MenACWY)、 流行性耳下腺炎(ムンプス) | A型肝炎、 インフルエンザ |
*:HPVワクチンについては、オランダ・日本とも女子のみ対象。但し、オランダでは、2021年から男子も接種対象とする計画があります。
こどもの定期予防接種として、オランダで実施されず日本で実施されているものとしては、結核(BCG)、日本脳炎(JapEnc)、水痘、ロタウイルスによる感染性胃腸炎があります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずオランダで実施されているものとしては、髄膜炎菌感染症(MenACWY)、流行性耳下腺炎(ムンプス)があります。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がオランダでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTaP)、ポリオの不活化ワクチン(IPV)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)、B型肝炎のワクチン(HepB)を混合したワクチン(DTaP-HepB-IPV-Hib:[商品名]Infanrix Hexa)があります。四つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと4回の接種が必要なところ、四つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが見られます。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から新たに使われるようになりました。
オランダのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2020年から)は、下の表2-1のとおりです。
最近の接種スケジュールの変化としては、2019年12月16日から、妊娠22週での母親の百日咳の予防接種(dTap)が開始され、その接種を受けた母親の児については、DTaP-HepB-IPV-Hibワクチンが4回接種スケジュール(生後2、3、4、11か月)から3回接種スケジュール(生後3、4、11か月)に変更されました。また、2021年から、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの対象が女子のみから男子にも広げる計画があります。
なお、妊娠22週での母親の百日咳の予防接種(dTap)については、英国、スペイン、米国、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、イタリアなどで既に導入されています。母親だけでなく、母親からの移行抗体で出生直後から児を百日咳から守る効果が期待されています。
また、オランダでは、2020年から、60歳、65歳、70歳、75歳の人たちに23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(PPV23)を接種する計画でしたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックがあったため、重症化しやすい、より高年齢の人たちに肺炎球菌への免疫を早急につけようということで、計画が変更されました。2020年秋に73-79歳の人たちにPPV23が接種されました。
また、W群髄膜炎菌感染症については、A、C、W、Y群に対するワクチン(MenACWY)が導入された2018年が年間患者発生報告数のピークで103人でした。2019年が62人、2020年は6月までで8人でした。特に2020年は4-6月は0人でした。MenACWY接種による成果が考えられますが、2020年の減少については、新型コロナウイルス感染症対策(マスクの着用等)の影響も考えられます。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 (48時間以内) | (B型肝炎) | HepB(HBs抗原陽性の母親から 生まれた児のみ対象:1回接種)* |
生後6-9週 (2ヶ月:母親が妊娠22週で百日咳の予防接種を受けている場合には不要) | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(1回目)* | |
ポリオ | IPV(1回目)* | |
B型肝炎 | HepB(1回目)* | |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(2回目)* | |
ポリオ | IPV(2回目)* | |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 1回目) | |
生後4ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(3回目)* | |
ポリオ | IPV(3回目)* | |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 2回目) | |
生後11ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(4回目)* | |
ポリオ | IPV(4回目)* | |
B型肝炎 | HepB(4回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 3回目) | |
生後14ヶ月 | A、C、W、Y群髄膜炎菌感染症 | MenACWY(A、C、W、Y群髄膜炎菌ワクチン、1回接種) |
麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目) | |
4歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ | DTaP/IPV(1回接種) |
9歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) |
ジフテリア・破傷風・ポリオ | dT/IPV(1回接種) | |
12歳 (女子のみ**) | ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、 外陰癌、膣癌、肛門癌 | HPV2(1回目:女子のみ**) |
HPV2(2回目:1回目の6ヶ月後) | ||
14歳 | A、C、W、Y群髄膜炎菌感染症 | MenACWY(A、C、W、Y群髄膜炎菌ワクチン、1回接種) |
妊娠22週の母親 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(1回接種:2019年12月16日から開始) |
*:オランダでは、DTaP-HepB-IPV-Hib([商品名]Infanrix Hexa:2011年10月1日から導入)という6種混合ワクチンで接種されます。
**:2021年から男子にも接種する計画があります。
以前のオランダのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2018年5月1日から)は、下の表2-2のとおりでした。
2018年5月1日に、生後14か月における髄膜炎菌ワクチンが、C群に対するワクチン(MenC)からA、C、W、Y群に対するワクチン(MenACWY)に変更されました。また、2018年10月1日から14歳におけるMenACWY(A、C、W、Y群髄膜炎菌ワクチン)が導入されます。2018年には、2018年5月1日から2018年12月31日までに14歳となる人が接種対象になります。2019年には、2019年に14歳となる人が接種対象になります。なお、2018年10月から2019年6月までは、2001年1月1日から2005年12月31日までに生まれた子(14-18歳)にMenACWYが接種されました。オランダでは、C群に対するワクチン(MenC)が2002年9月から接種されてきましたが、W群髄膜炎菌感染症が2015-2017年の三年間で増加してきたため、W群を含むA、C、W、Y群に対するワクチン(MenACWY)が導入されることになりました。オランダでは、W群髄膜炎菌感染症について、2014年までは年間発生患者数は平均で4人程度でしたが、2017年には80人の患者発生がありました。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 (48時間以内) | (B型肝炎) | HepB(HBs抗原陽性の母親から 生まれた児のみ対象:1回接種)* |
生後6-9週 (2ヶ月) | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(1回目)* | |
ポリオ | IPV(1回目)* | |
B型肝炎 | HepB(1回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 1回目) | |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(2回目)* | |
ポリオ | IPV(2回目)* | |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
生後4ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(3回目)* | |
ポリオ | IPV(3回目)* | |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 2回目) | |
生後11ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(4回目)* | |
ポリオ | IPV(4回目)* | |
B型肝炎 | HepB(4回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 3回目) | |
生後14ヶ月 | A、C、W、Y群髄膜炎菌感染症 | MenACWY(A、C、W、Y群髄膜炎菌ワクチン、1回接種) |
麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目) | |
4歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ | DTaP/IPV(1回接種) |
9歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) |
ジフテリア・破傷風・ポリオ | dT/IPV(1回接種) | |
12歳 (女子のみ) | ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、 外陰癌、膣癌、肛門癌 | HPV2(1回目:女子のみ) |
HPV2(2回目:1回目の6ヶ月後) | ||
(14歳)** | (A、C、W、Y群髄膜炎菌感染症) | MenACWY(A、C、W、Y群髄膜炎菌ワクチン、1回接種) |
*:オランダでは、DTaP-HepB-IPV-Hib([商品名]Infanrix Hexa:2011年10月1日から導入)という6種混合ワクチンで接種されます。
**:2018年10月1日から接種開始となります。
より以前のオランダのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年)は、下の表2-3のとおりでした。
最近の接種スケジュールの変化としては、2013年12月1日から、肺炎球菌結合型ワクチンが4回接種スケジュール(生後2、3、4、11か月)から3回接種スケジュール(生後2、4、11か月)に変更されました。また、2014年1月1日から、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが3回接種スケジュール(0、1、6か月)から2回接種スケジュール(0、6か月)に変更されました。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 (48時間以内) | (B型肝炎) | HepB(HBs抗原陽性の母親から 生まれた児のみ対象:1回接種)* |
生後6-9週 (2ヶ月) | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(1回目)* | |
ポリオ | IPV(1回目)* | |
B型肝炎 | HepB(1回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 1回目) | |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(2回目)* | |
ポリオ | IPV(2回目)* | |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
生後4ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(3回目)* | |
ポリオ | IPV(3回目)* | |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 2回目) | |
生後11ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(4回目)* | |
ポリオ | IPV(4回目)* | |
B型肝炎 | HepB(4回目)* | |
肺炎球菌感染症 | PCV10(肺炎球菌結合型ワクチン、 3回目) | |
生後14ヶ月 | C群髄膜炎菌感染症 | MenC(C群髄膜炎菌結合型ワクチン、 1回接種) |
麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目) | |
4歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ | DTaP/IPV(1回接種) |
9歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) |
ジフテリア・破傷風・ポリオ | dT/IPV(1回接種) | |
12歳(女子のみ) | ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌 | HPV2(1回目:女子のみ) |
HPV2(2回目:1回目の6ヶ月後) |
*:オランダでは、DTaP-HepB-IPV-Hib([商品名]Infanrix Hexa:2011年10月1日から導入)という6種混合ワクチンで接種されます。
肺炎球菌結合型ワクチンについては、オランダのこどもの定期予防接種スケジュールに7価ワクチン(PCV7)が導入されたのが2006年のことで、10価ワクチン(PCV10)に変更されたのが2011年のことです。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
オランダにおけるオランダ語のワクチンの略語表記については、下の表3のとおりです。英語のワクチンの略語表記と一致するものもあれば一致しないものもあり、オランダにおけるオランダ語(蘭語)の接種の記録を見るときなどには注意が必要です。例えば、DTPは、オランダ語では、ジフテリア・破傷風・ポリオ(不活化)の三種混合ワクチンですが、英語では、ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチンです。
蘭語略称 | 蘭語表記(vaccin tegen -) | 日本語表記 | 英語略称 |
---|---|---|---|
D | vaccin tegen difterie | ジフテリア | D |
T | vaccin tegen tetanus | 破傷風 | T |
KまたはaP | vaccin tegen kinkhoest | 百日咳 | PまたはPe |
PまたはIPV | geinactiveerd injecteerbaar vaccin tegen polio( geinactiveerd polio vaccin ) | ポリオ(不活化) | IPVまたはPo |
OPV | oraal polio vaccin | ポリオ(生、経口) | OPV |
Hib | vaccin tegen Haemophilus influenzae type b | ヘモフィルス-インフルエンザb型菌 | Hib |
HepBまたはHBV | vaccin tegen hepatitis B | B型肝炎 | HepBまたはHBV |
PCVまたはPneu | geconjugeerd vaccin tegen pneumokokken | 肺炎球菌(結合型) | PCV |
MenC | vaccin tegen meningokokken van serogroep C | C群髄膜炎菌 | MenCまたはMCVC |
HPV | vaccin tegen humaan papillomavirus | ヒト-パピローマウイルス | HPV |
BMR | vaccin tegen bof, mazelen en rodehond | 流行性耳下腺炎(ムンプス)・麻疹・風疹 | MMR |
B | vaccin tegen bof | 流行性耳下腺炎(ムンプス) | MまたはMu |
M | vaccin tegen mazelen | 麻疹 | MまたはMe |
R | vaccin tegen rodehond | 風疹 | R |
2013年8月23日初掲載
2014年11月14日改訂
2016年3月4日改訂
2018年9月14日改訂
2021年5月21日改訂
健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課
電話:045-370-9237
電話:045-370-9237
ファクス:045-370-8462
メールアドレス:kf-eiken@city.yokohama.jp
ページID:398-597-919