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健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課
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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2019年9月11日
本稿では、リベリア共和国(Republic of Liberia)のこどもの定期予防接種について触れます。まず、リベリアのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | リベリアで実施 | リベリアで未実施 | |
---|---|---|---|
日本で実施 | B型肝炎、 ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、 結核(BCG)、 ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、 麻疹、 肺炎球菌感染症、 ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、 肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(*) | 日本脳炎、 風疹、 水痘 | |
日本で未実施 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎、 黄熱 | 流行性耳下腺炎 (ムンプス)、 髄膜炎菌感染症、 A型肝炎、 インフルエンザ、 腸チフス、 コレラ |
*: HPVワクチンについて、日本、リベリアとも女子のみ対象。リベリアでは地域限定で接種。
こどもの定期予防接種として、リベリアで実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎、風疹、水痘があります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずリベリアで実施されているものとしては、ロタウイルスによる感染性胃腸炎、黄熱があります。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がリベリアでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTwP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTwP-HepB-Hib)があります。このような三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP-IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。
リベリアのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2017年)は、下の表2のとおりです。なお、ワクチンではありませんが、ビタミンAが、乳幼児のビタミンA欠乏症対策としてワクチンに準じて乳幼児に投与されることがあります。また、回虫・十二指腸虫・鞭虫などによる蠕虫症対策として駆虫剤(de-worming drug: mebendazole)も投与されることがあります。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 | 結核 | BCG(1回接種:できるだけ早く生後11ヶ月未満までに接種) |
2価ポリオ経口生ワクチン | 2vOPV(1回目:できるだけ早く生後2週間 以内に接種) | |
生後6週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(1回目)* |
B型肝炎 | HepB(1回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
13価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV13(1回目) | |
2価ポリオ経口生ワクチン | 2vOPV(2回目) | |
ロタウイルスワクチン | RV(1回目) | |
生後10週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(2回目)* |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)* | |
13価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV13(2回目) | |
2価ポリオ経口生ワクチン | 2vOPV(3回目) | |
ロタウイルスワクチン | RV(2回目) | |
生後14週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(3回目)* |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)* | |
13価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV13(3回目) | |
2価ポリオ経口生ワクチン | 2vOPV(4回目) | |
(ポリオ不活化ワクチン) | IPV(1回接種)** | |
ロタウイルスワクチン | RV(3回目:製剤によっては3回目は不要) | |
生後6ヶ月 | ビタミンA | Vitamin A(1回目:後は6ヶ月間隔で生後60ヶ月[5歳]まで経口投与繰り返し。また、母親にも出産時と出産後1ヶ月に投与) |
生後9ヶ月 | 麻疹 | Measles(1回接種) |
黄熱 | YFV(1回接種) | |
(10歳の女子) | ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ | HPV(1回目:女子のみ。GAVIの援助により、2016年から中部の内陸[北方]のBong郡とNimba郡で地域限定の接種) |
HPV(2回目:1回目の6ヶ月後) | ||
14歳 | 破傷風トキソイド | TT(4回接種。1回目の4週間後に2回目。 2回目の6ヶ月後に3回目。3回目の1年後に 4回目) |
妊婦、15-45歳の女性 | 破傷風トキソイド | TT(3回接種。1回目の4週間後に2回目。 2回目の6ヶ月後に3回目。こども時代に未接種であれば、さらに2回接種[3回目の1年後に4回目。4回目の1年後に5回目]) |
*:リベリアでは、DTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチン(Pentavalent)で接種されます。
**:2018年1月から定期予防接種に導入予定。
近年のリベリアのこどもの定期予防接種への新しいワクチンの導入については、2007年に黄熱ワクチンが導入されました。2008年にDTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチンが導入されました。2014年1月に13価肺炎球菌結合型ワクチンが導入されました。
2014-2016年には、リベリアにおけるエボラ出血熱(エボラウイルス病)の流行があり、新しいワクチンの導入計画に遅れが生じました。2014年10月からロタウイルスワクチンが導入予定でしたが、2016年の導入となりました。2015年1月からポリオ不活化ワクチンが導入予定でしたが、2018年1月の導入予定となりました。
なお、GAVI(参考文献7)の援助により、中部の内陸[北方]のBong郡[county]とNimba郡[county]という地域限定で、2014年10月から、ヒトパピローマウイルスワクチンが接種開始予定でしたが、2016年からBong郡とNimba郡という地域限定で接種開始されました。
ヒトパピローマウイルスワクチンは近年開発された高価なワクチンで、発展途上国での導入は経済的に難しいです。しかしながら、GAVI(参考文献7)の援助により、ケニア(Kitui County)、ガーナ(南部のDangme West、及び、北部の Tamale Metro)、マダガスカル(Soavinandriana田園地区、及び、Toamasina 1都市地区)、マラウイ(Zomba、Rumphi)、ニジェール(Niamey II、Madarounfa)、シエラレオネ(南部州のBo)、タンザニア(キリマンジャロ州内のMoshi都市部、Moshi田園部、Hai、Siha、Romboの各県)、ラオス(ビエンチャン市、ビエンチャン県)等の発展途上国でも地域限定で導入されています。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
リベリアは、アフリカの西部に位置し、北をギニア、西をシエラレオネ、東をコートジボアール、南を大西洋に囲まれた国です。このリベリアにおける公用語は、英語です。リベリア政府のウェブページは、英語表示です。リベリアにおけるワクチン等については、後記の参考文献に示すようなホームページ等から、英語表記の情報を得ることができます。
各国の予防接種
2014年9月2日初掲載
2017年7月5日改訂増補
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