このページへのお問合せ
健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課
電話:045-370-9237
電話:045-370-9237
ファクス:045-370-8462
メールアドレス:kf-eiken@city.yokohama.jp
■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2019年8月15日
本稿では、インドネシア共和国(インドネシア語: Republik Indonesia、英語: Republic of Indonesia)のこどもの定期予防接種について触れます。まず、インドネシア(印度尼西亜: [略称]尼)のこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
日尼両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | インドネシアで実施 | インドネシアで未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | ヘモフィルスインフルエンザ b型菌(Hib)感染症、 結核(BCG)、 ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、 麻疹 | 日本脳炎、 ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、 膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(*)、 肺炎球菌感染症、 風疹 |
日本で未実施 | B型肝炎 | 流行性耳下腺炎(ムンプス)、 髄膜炎菌感染症、 ロタウイルスによる感染性胃腸炎、 水痘、 A型肝炎、 インフルエンザ、 腸チフス、 コレラ |
*: HPVワクチンについて、日本では女子のみ対象。
こどもの定期予防接種として、インドネシアで実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎、風疹、肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマがあります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずインドネシアで実施されているものとしては、B型肝炎があります。
日本国外務省では、日本からのインドネシアへの赴任者に対して、A型肝炎、B型肝炎、破傷風、水痘、麻疹、ポリオの免疫の保持を勧めています(参考文献1)。また、インドネシアで野外活動が多い方等には、さらに、狂犬病、日本脳炎の免疫の保持も勧めています(参考文献1)。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がインドネシアでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTwP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTwP-HepB-Hib)があります。2013年7月からインドネシアの定期予防接種に導入され始めました。このような三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP-IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。
インドネシアでは、今後、麻疹・風疹(MR)混合ワクチン、ロタウイルスワクチン(ROTA)、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)、日本脳炎ワクチン(JE)の順番で新たに定期予防接種としていくことが検討されています。
インドネシアのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年)は、下の表2のとおりです。なお、ワクチンではなく、下の表2にも含まれていませんが、この他、ビタミンAが、乳幼児のビタミンA欠乏症対策としてワクチンに準じて乳幼児に投与されることがあります。
また、下の表2において、ポリオワクチンについて、2016年4月には、ポリオ経口生ワクチン(OPV)がポリオウイルス1,2,3型に対する3価(tOPV: trivalent oral polio vaccine)からポリオウイルス1,3型に対する2価(bOPV: bivalent oral polio vaccine)へと変換されます。2016年7月には、ポリオ不活化ワクチン(IPV)が4か月児に対して導入されます。
ポリオウイルス2型については、野生株が検出されなくなって、むしろワクチン株由来のポリオウイルス2型によるポリオの発生が懸念されるため、従来の3価のポリオ経口生ワクチン(tOPV)を2型以外の2価(bOPV: bivalent oral polio vaccine)へと変換する世界的な動きとなっています(参考文献4)。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時(生後0-7日) | B型肝炎 | HepB(1回目) |
生後1ヶ月 | 結核 | BCG(1回接種) |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(1回目)** | |
生後2ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(1回目)* |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(2回目)** | |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(2回目)* |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(3回目)** | |
生後4ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(3回目)* |
B型肝炎 | HepB(4回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(4回目)** | |
(ポリオ不活化ワクチン) | IPV(1回接種)*** | |
生後9ヶ月 | 麻疹 | Measles(1回目) |
生後18ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(4回目)* |
B型肝炎 | HepB(5回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(4回目)* | |
生後24ヶ月 | 麻疹 | Measles(2回目) |
小学1年生(6歳) | 麻疹 | Measles(3回目: 8月に接種) |
ジフテリア・破傷風 | DT(1回接種: 1学年で11月に接種) | |
小学2年生(7歳) | ジフテリア・破傷風 | dT(1回目: 2学年で11月に接種) |
小学3年生(8歳) | ジフテリア・破傷風 | dT(2回目: 3学年で11月に接種) |
妊婦 | 破傷風トキソイド | TT(4週間間隔で2回接種) |
*:インドネシアでは、DTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチンで接種されます。なお、以前は、DTwP-HepBという4種混合ワクチンが接種されていました。
**:2016年4月に、 ポリオ経口生ワクチン(OPV)がポリオウイルス1,2,3型に対する3価(tOPV: trivalent oral polio vaccine)からポリオウイルス1,3型に対する2価(bOPV: bivalent oral polio vaccine)へと変換されます。
***:2016年7月に、 ポリオ不活化ワクチン(IPV)が4か月児に対して導入されます。
近年のインドネシアにおける予防接種の変遷の概略は以下のとおりです。
1956年 天然痘ワクチン開始。
1973年 BCGワクチン開始。
1974年 妊婦に対する破傷風トキソイド開始。
1976年 乳幼児に対するDPTワクチン開始。
1980年 ポリオワクチン開始。
1982年 麻疹ワクチン開始。
1997年 B型肝炎ワクチン開始。
2004年 4種混合ワクチン(DTwP-HepB)を4州で導入。
2007年 4種混合ワクチン(DTwP-HepB)を全州で導入。
2007年 ジョグジャカルタ州で不活化ポリオワクチンを導入。
2010年 Tdワクチン(小学1年、2年で一回ずつ接種)を導入。
2013年 5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)を4州(西ジャワ州、ジョグジャカルタ州、バリ州、西ヌサ・トゥンガラ州)で導入。
2014年 5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)を全州で導入。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
インドネシアは、東南アジアの南部に位置する多数の島々からなる島国です。ティモール島で東ティモールと、カリマンタン島(ボルネオ島)でマレーシアと、ニューギニア島でパプアニューギニアと陸上の国境線を持ちます。この他に海を隔てて近くの国は、パラオ、インド(アンダマン・ニコバル諸島)、フィリピン、シンガポール、オーストラリアです。このインドネシアにおける公用語は、インドネシア語です。インドネシアにおけるワクチン等のインドネシア語表記については、下の表3、表4、表5、表6のとおりです。なお、インドネシア政府のホームページでは英語表記のページも見られます(例えば、インドネシア政府保健省(外部サイト)[Ministry of Health])。
各国の予防接種
2014年6月12日初掲載
2016年4月28日増補改訂
健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課
電話:045-370-9237
電話:045-370-9237
ファクス:045-370-8462
メールアドレス:kf-eiken@city.yokohama.jp
ページID:303-286-029