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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2020年3月30日
本稿では、インド(印度)共和国のこどもの定期予防接種について触れます。まず、インドのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
日印両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | インドで実施 | インドで未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | 日本脳炎、 ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、 結核(BCG)、 ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、肺炎球菌感染症、 風疹、B型肝炎、 麻疹 | ヒトパピローマウイルス16型・18型による |
日本で未実施 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | 流行性耳下腺炎(ムンプス)(**)、 髄膜炎菌感染症、 A型肝炎、 インフルエンザ |
*: HPVワクチンについて、日本では女子のみ対象。
**: 流行性耳下腺炎(ムンプス)について、インドのDelhi(デリー), Goa(ゴア), Sikkim, Puducherryの4州ではMMRワクチンとして接種されています。
こどもの定期予防接種として、インドで実施されず日本で実施されているものとしては、 水痘、ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマがあります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずインドで実施されているものとしては、ロタウイルスによる感染性胃腸炎があります。なお、インドは大きな国で人口も多いので、新しいワクチンの導入時には、まず国内の一部の地域で導入し、徐々に地域を広げて全国実施とすることがよく行われます。
日本国外務省によれば、日本からの赴任者がインド入国にあたり義務づけられている予防接種はありませんが、 破傷風、腸チフス、A型肝炎、B型肝炎、日本脳炎などの免疫保持が勧められます(参考文献4)。また、インドで動物に接することが多い場合には、狂犬病の予防接種も勧められます(参考文献4)。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がインドでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTwP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTwP-HepB-Hib)があります。三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。
インドのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュールは、下の表2-1のとおりです。
なお、ワクチンではありませんが、ビタミンAが、乳幼児のビタミンA欠乏症対策としてワクチンに準じて乳幼児に投与されていますので、下の表2-1に含めました。
2017年にMR(麻疹・風疹)ワクチン及び肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)が導入されました。いずれのワクチンも一部の地域で導入され、徐々に実施地域を広げていきます。MR(麻疹・風疹)ワクチンについては、これまでインドで定期予防接種として接種されてきた麻疹ワクチンと置き換える形で導入されます。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 | B型肝炎 | HepB(0回目:医療施設での出産の場合、出生後24時間以内にできるだけ早く接種。) |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(0回目:医療施設での出産の場合、出生後15日以内にできるだけ早く接種。) | |
結核 | BCG(1回接種:1歳までにできるだけ早く接種。) | |
生後6週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(1回目)* |
B型肝炎 | HepB(1回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] | Hib[1回目]* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(1回目) | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回目) | |
肺炎球菌結合型ワクチン | PCV(1回目)*** | |
ロタウイルスワクチン | ROTA(1回目)**** | |
生後10週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(2回目)* |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] | Hib[2回目]* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(2回目) | |
ロタウイルスワクチン | ROTA(2回目)**** | |
生後14週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(3回目)* |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] | Hib[3回目]* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(3回目) | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(2回目) | |
肺炎球菌結合型ワクチン | PCV(2回目)*** | |
ロタウイルスワクチン | ROTA(3回目)**** | |
生後9ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A (1回目: 1ml) |
生後9-12ヶ月 | 麻疹・風疹 | MR(1回目) |
肺炎球菌結合型ワクチン | PCV(3回目)*** | |
日本脳炎弱毒生ワクチン | LAJEV(1回目: 指定された流行地域でのみ接種) | |
生後16-24ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(4回目) |
ポリオ経口生ワクチン | OPV (4回目) | |
麻疹・風疹 | MR(2回目)** | |
日本脳炎弱毒生ワクチン | LAJEV(2回目: 指定された流行地域でのみ接種) | |
生後18ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A (2回目: 2ml) |
2-5歳 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A (2歳(24か月)[3回目]から5歳(60か月)[9回目]まで6ヶ月毎に一回2ml投与の繰り返し) |
5歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(5回目:6歳までに接種。7歳以上では接種しないこと。) |
10歳 | 破傷風トキソイドまたは破傷風・ジフテリア | TTまたはTd(1回目) |
16歳 | 破傷風トキソイドまたは破傷風・ジフテリア | TTまたはTd(2回目) |
妊婦 | 破傷風トキソイドまたは破傷風・ジフテリア | TTまたはTd(妊娠36週未満までに4週間間隔で2回接種。但し、3年以内に以前の妊娠中のTTまたはTdの2回接種歴あれば、今回の妊娠では1回接種で良い) |
*:インドでは、DTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチン(pentavalent vaccineまたはfive in one)で接種されます。
**:Delhi(デリー), Goa(ゴア), Sikkim, Puducherryの4州では、MMRワクチン( 麻疹・ 流行性耳下腺炎[ムンプス]・ 風疹)で接種されます。
***:2017年から一部の州で実施。実施州を増やす予定。
****:2016年から、当初、Andhra Pradesh, Haryana, Himachal Pradesh, Odishaの4州で実施。実施州を増やす予定。
以前のインドのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュールは、下の表2-2のとおりでした。
なお、ワクチンではありませんが、ビタミンAが、乳幼児のビタミンA欠乏症対策としてワクチンに準じて乳幼児に投与されていますので、下の表2-2に含めました。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 | B型肝炎 | HepB(0回目:医療施設での出産の場合、出生後24時間以内にできるだけ早く接種。) |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(0回目:医療施設での出産の場合、出生後15日以内にできるだけ早く接種。) | |
結核 | BCG(1回接種:1歳までにできるだけ早く接種。) | |
生後6週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(1回目)* |
B型肝炎 | HepB(1回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] | Hib[1回目]* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(1回目) | |
ロタウイルスワクチン | ROTA(1回目)**** | |
生後10週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(2回目)* |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] | Hib[2回目]* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(2回目) | |
ロタウイルスワクチン | ROTA(2回目)**** | |
生後14週 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(3回目)* |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌[Hib] | Hib[3回目]* | |
ポリオ経口生ワクチン | OPV(3回目) | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回接種)*** | |
ロタウイルスワクチン | ROTA(3回目)**** | |
生後9ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A (1回目: 1ml) |
生後9-12ヶ月 | 麻疹 | Measles(1回目) |
日本脳炎弱毒生ワクチン | LAJEV(1回目: 指定された流行地域でのみ接種) | |
生後16-24ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(4回目) |
ポリオ経口生ワクチン | OPV (4回目) | |
麻疹 | Measles(2回目)** | |
日本脳炎弱毒生ワクチン | LAJEV(2回目: 指定された流行地域でのみ接種) | |
生後18ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A (2回目: 2ml) |
2-5歳 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A (2歳[3回目]から5歳[9回目]まで6ヶ月毎に一回2ml投与の繰り返し) |
5歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(5回目:6歳までに接種。7歳以上では接種しないこと。) |
10歳 | 破傷風トキソイド | TT(1回目) |
16歳 | 破傷風トキソイド | TT(2回目) |
妊婦 | 破傷風トキソイド | TT(妊娠36週未満までに4週間間隔で2回接種。但し、3年以内にTT接種歴あれば1回接種で良い) |
*:インドでは、DTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチン(pentavalent vaccineまたはfive in one)で接種されます。
**:デリー州では、MMRワクチン( 麻疹・ 流行性耳下腺炎[ムンプス]・ 風疹)で接種されます。
***:OPV(3回目)とともに接種。Assam, Bihar, Gujarat, M.P., Punjab, U.P.の6州で実施。実施州を増やす予定。
****:2016年から、当初、Andhra Pradesh, Haryana, Himachal Pradesh, Odishaの4州で実施。実施州を増やす予定。
なお、首都ニューデリーが所在するデリー州(Delhi State: NCT[National Capital Territory] of Delhi[デリー首都圏])では、麻疹ワクチンの二回目について、MMRワクチン(麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹)で接種されました。デリー州がMMRワクチンを州の定期予防接種としたのは1999年11月のことで、インドの州としては初めてのことでした。また、デリー州は、腸チフスワクチンを州の定期予防接種とする唯一の州です。腸チフスワクチンを州の定期予防接種としたのは、2004年11月のことで、2-5歳で一回接種されます。5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)については、2013年3月にデリー州の定期予防接種とされました。
5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)がインドの定期予防接種に初めて導入されたのは、2011年12月にKerala州とTamil Nadu州とにおいてです。その後、順次、全国的に導入されていきました。2015年にインド国内のすべての州で実施されるようになりました。5種混合ワクチン(DTwP-HepB-Hib)の導入前には、3種混合ワクチン(DTwP)とB型肝炎ワクチン(HepB)とが接種され、ヘモフィルスインフルエンザb型菌ワクチン(Hib)は接種されていませんでした。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
インド(India)は、南アジアにおいて、パキスタン、中華人民共和国、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマーと陸上で、スリランカ、モルディブ、インドネシアと海上で国境を接します。このインドにおける連邦公用語は、ヒンディー語(Hindi)です。英語については、連邦準公用語であり、すべての州で州の公用語となっています。インド政府のホームページは、ヒンディー語及び英語で表記されています。インドのこどもの定期予防接種のワクチン等についてヒンディー語による表記は、下の表3、表4、表5のとおりです。日本語の表記も対照して併記しました。
各国の予防接種
2014年6月2日初掲載
2016年3月11日改訂
2020年3月30日増補改訂
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