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健康福祉局衛生研究所感染症・疫学情報課
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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2019年9月3日
本稿では、フィンランド(芬蘭)共和国のこどもの定期予防接種について触れます。まず、フィンランドのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
日芬両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | フィンランドで実施 | フィンランドで未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、 ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、 水痘、麻疹・風疹、 肺炎球菌感染症、 ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、 肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(*) | 日本脳炎、 結核(BCG)、 B型肝炎 |
日本で未実施 | 流行性耳下腺炎(ムンプス)、 ロタウイルスによる感染性胃腸炎、 インフルエンザ、 (ダニ媒介脳炎**) | 髄膜炎菌感染症、 A型肝炎 |
*: HPVワクチンについて、フィンランド、日本とも女子のみ対象。
**: フィンランドでは、オーランド諸島でこどもの定期予防接種となっています。
こどもの定期予防接種として、フィンランドで実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎、結核(BCG)、B型肝炎があります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずフィンランドで実施されているものとしては、流行性耳下腺炎(ムンプス)、ロタウイルスによる感染性胃腸炎、インフルエンザがあります。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がフィンランドでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTaP)、ポリオの不活化ワクチン(IPV)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTaP-IPV-Hib)があります。三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。同様の四種混合ワクチン(DTaP/IPV)がフィンランドでも使われています。
フィンランドのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2018年)は、下の表2-1のとおりです。2017年9月1日、水痘ワクチンがフィンランドのこどもの定期予防接種に導入されました。生後18ヶ月と6歳での接種です。2006年1月1日以後の生まれで水痘未罹患のこどもも接種対象となります。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
生後2ヶ月 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV5(1回目:商品名RotaTeq) |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回目)* | |
10価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV10(1回目:商品名Synflorix) | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV5(2回目) | |
生後5ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(2回目)* | |
10価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV10(2回目) | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV5(3回目) | |
生後6ヶ月~6歳 | 季節性インフルエンザ | IIV(初年度の冬は1ヶ月以上の間隔で 2回、次年度の冬からは毎冬1回接種) |
生後12ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (3回目)* | |
10価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV10(3回目) | |
生後12ヶ月 (または14-18ヶ月) | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目)*** |
生後18ヶ月 | 水痘 | Var(1回目) |
4歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)** |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (4回目)** | |
6歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) |
水痘 | Var(2回目) | |
11-12歳(女子のみ)**** | ヒトパピローマウイルス16型・18型による 子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌 | HPV(1回目:女子のみ) |
HPV(2回目:1回目の6ヶ月後) | ||
14-15歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(1回接種) |
25歳以後10年毎(25歳、35歳、45歳、55歳、) | ジフテリア・破傷風 | dT(10年毎に1回接種繰り返し) |
65歳以上 | 季節性インフルエンザ | IIV(毎年1回接種) |
妊婦 | 季節性 インフルエンザ | IIV(1回接種) |
*:フィンランドでは、DTaP-Hib-IPV(商品名:Infanrix-Polio+Hib, Pentavac)という5種混合ワクチンで接種されます。
**:フィンランドでは、DTaP-IPV(商品名:Tetravac)という4種混合ワクチンで接種されます。
***:海外渡航等のためにMMRワクチンの接種時期を生後6ヶ月まで早めることができますが、その場合には生後12ヶ月以降に2回の接種(生後14-18ヶ月および6歳)をすることが推奨されます。
****:HPVワクチンについて女子が対象ですが、 2019年1月、フィンランド国立健康福祉研究所(the National Institute for Health and Welfare)が、男子も対象とするように勧告(外部サイト)を出しました。近い将来、男子も対象となると思われます。
以前のフィンランドのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2016年)は、下の表2-2のとおりでした。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
生後2ヶ月 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV5(1回目:商品名RotaTeq) |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回目)* | |
10価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV10(1回目:商品名Synflorix) | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV5(2回目) | |
生後5ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(2回目)* | |
10価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV10(2回目) | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV5(3回目) | |
生後6-35ヶ月 | 季節性インフルエンザ | IIV(初年度の冬は1ヶ月以上の間隔で 2回、次年度の冬からは毎冬1回接種) |
生後12ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (3回目)* | |
10価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV10(3回目) | |
生後12ヶ月 (または14-18ヶ月) | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目)*** |
4歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)** |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (4回目)** | |
6歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) |
11-12歳(女子のみ)**** | ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌 | HPV2(1回目:女子のみ) |
HPV2(2回目:1回目の6ヶ月後) | ||
14-15歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(1回接種) |
25歳以後10年毎(25歳、35歳、45歳、55歳、) | ジフテリア・破傷風 | dT(10年毎に1回接種繰り返し) |
65歳以上 | 季節性インフルエンザ | IIV(毎年1回接種) |
*:フィンランドでは、DTaP-Hib-IPV(商品名:Infanrix-Polio+Hib, Pentavac)という5種混合ワクチンで接種されます。
**:フィンランドでは、DTaP-IPV(商品名:Tetravac)という4種混合ワクチンで接種されます。
***:海外渡航等のためにMMRワクチンの接種時期を生後6ヶ月まで早めることができますが、その場合には生後12ヶ月以降に2回の接種(生後14-18ヶ月および6歳)をすることが推奨されます。
****:11-12歳女子でのHPVワクチンが推奨されますが、HPVワクチンの導入後2年間は13-15歳女子も接種対象とされました。フィンランドでは、HPVワクチンの導入は、2013年11月でした。HPV2(商品名Cervarix)を接種。
フィンランドのオーランド諸島(island of Aland)では、上記の他、3歳以上で、ダニ媒介脳炎ワクチン(商品名:TicoVac Junior[1-15歳の小児用]、TicoVac[16歳以上の成人用])が定期予防接種となっています。基礎免疫のシリーズは、3回のワクチン接種からなります。二回目は、一回目の1-3ヶ月後に、三回目は、二回目の5-12ヶ月後に接種します。一回目の追加接種は基礎免疫の三年後、二回目以後は五年毎に追加接種を繰り返します。ただし、60歳以上では、三年毎に追加接種を繰り返します。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
フィンランドにおける公用語は、フィンランド語(Finnish)とスウェーデン語です。フィンランドのこどもの定期予防接種のワクチン等のフィンランド語による表記については、下の表3、表4、表5のとおりです。日本語の表記も併記しました。
各国の予防接種
2014年2月18日初掲載
2014年2月19日更新
2015年1月22日増補改訂
2016年12月8日増補改訂
2019年7月19日増補改訂
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