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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2019年8月15日
本稿では、エストニア共和国のこどもの定期予防接種について触れます。まず、エストニアのこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施 状況 | エストニアで実施 | エストニアで未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、 結核(BCG)、 ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、 麻疹・風疹、 B型肝炎、 ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(*) | 日本脳炎、 肺炎球菌 感染症、 水痘 |
日本で未実施 | 流行性耳下腺炎(ムンプス)、 ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | 髄膜炎菌 感染症、 A型肝炎、 インフルエンザ |
*: HPVワクチンについて、日本、エストニアとも女子のみ対象。なお、エストニアでは9価HPVワクチン(9vHPV: 商品名Gardasil 9)が使われています。
こどもの定期予防接種として、エストニアで実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎、 肺炎球菌感染症、水痘があります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずエストニアで実施されているものとしては、流行性耳下腺炎(ムンプス)、 ロタウイルスによる感染性胃腸炎があります。
なお、日本国外務省は、日本からのエストニア長期滞在予定者にダニ媒介脳炎の予防接種を勧めています(参考文献5)。日本ではワクチンの入手が困難としてエストニア現地での接種を勧めています[合計3回(2回目:初回接種の1-3ヶ月後,3回目:2回目接種の9-12ヶ月後)。ダニ媒介脳炎は、エストニアでは、春から夏にかけ,森林,草地でマダニが媒介します。また、感染した家畜の生乳を飲むことで感染することもあります。2005年5月,6月にはエストニアで27例の患者発生が報告されました。これは、首都タリン市のスーパーマーケットで売られていた生のヤギの乳を飲んだことが原因と判明しました。同様の事例が少なくとも1990年,1992年,2004年にも発生しています。エストニアでは、ヤギの生乳の摂取は控えましょう(参考文献5, 6, 7)。2005-2006年にはエストニアの他、ラトビア、スロバキアでも、生のヤギの乳の摂取による集団発生が報告されています。2008年にはオーストリアで、生のヤギの乳から作ったクリームチーズの摂取により4人が発症しています。2016年には、ドイツのBaden-Wuerttembergで生のヤギの乳の摂取により2人のダニ媒介脳炎患者の発生が報告されています(参考文献7)。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がエストニアでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTaP)、ポリオの不活化ワクチン(IPV)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)、B型肝炎のワクチン(HepB)を混合したワクチン(DTaP-IPV-Hib-HepB)があります。四つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと 4回の接種が必要なところ、四つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。同様の四種混合ワクチン(DTaP/IPV)がエストニアでも使われています。
エストニアのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2018年1月1日から)は、下の表2-1のとおりです。
2018年1月1日から、ヒトパピローマウイルスワクチンが導入され、また、DTaP-Hib-IPVという5種混合ワクチン(商品名Pentaxim)に代わって、DTaP-Hib-IPV-HepBという6種混合ワクチン(商品名Infanrix hexa)が導入されました。しかし、2018年1月1日に一挙に切り替わるわけではなく、しばらくの間は、DTaP-Hib-IPVという5種混合ワクチンも定期予防接種として使用されます。以前のスケジュール(表2-2)も参考にして下さい。
B型肝炎の予防接種については、母親がHBs抗原陽性の場合と、母親がHBs抗原陰性の場合とで違います。
母親がHBs抗原陰性の場合、DTaP-Hib-IPV-HepBという6種混合ワクチン(商品名Infanrix hexa)を生後3ヶ月、生後4ヶ月半、生後6ヶ月、2歳で接種します。
母親がHBs抗原陽性の場合、誕生から12時間以内にB型肝炎ワクチン(HepB)を接種します。抗B型肝炎ウイルス免疫グロブリンも注射します。新生児が出生時体重2000g以上であれば、DTaP-Hib-IPV-HepBという6種混合ワクチン(商品名Infanrix hexa)を生後2ヶ月、生後4ヶ月半、生後6ヶ月、2歳で接種します。新生児が出生時体重2000g未満であれば、生後1か月でもB型肝炎ワクチン(HepB)を接種し、DTaP-Hib-IPV-HepBという6種混合ワクチン(商品名Infanrix hexa)を生後2ヶ月、生後4ヶ月半、生後6ヶ月、2歳で接種します。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 | (B型肝炎) | HepB(母親がHBs抗原陽性の場合、あるいはHBs抗原不明で新生児にB型肝炎感染の恐れがある場合に、誕生から12時間以内に接種。抗B型肝炎ウイルス免疫グロブリンも注射します。母親がHBs抗原陰性の場合には、いずれとも注射しません。) |
結核 | BCG(1回接種:生後1-5日で接種) | |
生後2ヶ月 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(1回目:RV1[商品名Rotarix]またはRV5[商品名RotaTeq]) |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回目)* | |
B型肝炎 | HepB(1回目)* | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(2回目) | |
生後4ヶ月半 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(2回目)* | |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(3回目:RV5[商品名RotaTeq]の場合のみ。RV1 [商品名Rotarix]の場合は不要) | |
生後6ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(3回目)* | |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
1歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目。商品名Priorix) |
2歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(4回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (4回目)* | |
B型肝炎 | HepB(4回目)* | |
6-7歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(5回目)** |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (5回目)** | |
12-14歳 (女子のみ)*** | ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ | HPV(1回目:女子のみ。商品名Gardasil 9) |
HPV(2回目:1回目の6-13ヶ月後) | ||
13歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) |
15-17歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | Tdap(1回接種。商品名Boostrix) |
25歳以後10年毎 (25歳、35歳、・・・) | ジフテリア・破傷風 | dT(10年毎に1回接種繰り返し) |
*:エストニアでは、DTaP-Hib-IPV-HepBという6種混合ワクチン(商品名Infanrix hexa)で接種されます。
**:エストニアでは、DTaP-IPVという4種混合ワクチン(商品名Tetraxim)で接種されます。
***:2018-2019年において、HPVワクチンの対象は12-14歳の女子ですが、2020年1月1日からは、12歳の女子のみが対象となります。
エストニアのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2014年7月1日~2017年12月31日)は、下の表2-2のとおりでした。
2014年7月1日から、ロタウイルスワクチンが加わりました。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン (英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 | B型肝炎 | HepB(1回目:誕生から12時間以内に接種) |
結核 | BCG(1回接種:生後1-5日で接種) | |
生後1ヶ月 | B型肝炎 | HepB(2回目) |
生後2ヶ月 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(1回目) |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回目)* | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(2回目) | |
生後4ヶ月半 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(2回目)* | |
ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(3回目:RV5の場合のみ。RV1の場合は不要) | |
生後6ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(3回目)* | |
B型肝炎 | HepB(3回目) | |
1歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(1回目) |
2歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(4回目)* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(4回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (4回目)* | |
6-7歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(5回目)** |
ポリオ不活化ワクチン | IPV (5回目)** | |
12歳(1995-2003年生まれで B型肝炎ワクチン未接種の児のみ) | B型肝炎 | HepB(3回接種:0-1-6ヶ月) |
13歳 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回目) |
15-16歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | Tdap(1回接種) |
25歳以後10年毎 (25歳、35歳、・・・) | ジフテリア・破傷風 | dT(10年毎に1回接種繰り返し) |
*:エストニアでは、DTaP-Hib-IPVという5種混合ワクチン(商品名Pentaxim)で接種されます。
**:エストニアでは、DTaP-IPVという4種混合ワクチン(商品名Tetraxim)で接種されます。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
エストニアは、ヨーロッパの北東部で、北と西はバルト海、東はロシア、南はラトビアに接する国です。このエストニアにおける公用語は、エストニア語です。エストニアのこどもの定期予防接種のワクチン等のエストニア語による表記については、下の表3、表4、表5のとおりです。日本語の表記も併記しました。
各国の予防接種
2014年3月20日初掲載
2015年11月18日改訂増補
2018年2月21日改訂増補
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