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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2019年9月4日
本稿では、ブータン王国(Kingdom of Bhutan)のこどもの定期予防接種について触れます。ブータン王国は、ヒマラヤ山脈南麓に位置し、南方・東方・西方はインド、北方は中華人民共和国(チベット自治区)と国境を接します。
まず、ブータン王国のこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
両国で定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | ブータン王国で実施 | ブータン王国で未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、 結核(BCG)、 ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、 麻疹・風疹、 ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、外陰癌、 膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(*) | 日本脳炎、 水痘、 肺炎球菌感染症 |
日本で未実施 | B型肝炎 | 流行性耳下腺炎(ムンプス)、 髄膜炎菌感染症、 インフルエンザ、 ロタウイルスによる 感染性胃腸炎、 A型肝炎 |
*: HPVワクチンについては、日本、ブータンとも女子のみ対象。
こどもの定期予防接種として、ブータン王国で実施されず日本で実施されているものとしては、日本脳炎、水痘、肺炎球菌感染症があります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずブータン王国で実施されているものとしては、B型肝炎があります。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がブータン王国では見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTwP)、B型肝炎のワクチン(HepB)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)を混合したワクチン(DTwP-HepB-Hib)があります。三つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと3回の接種が必要なところ、三つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが使われてきました。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から日本でも新たに使われるようになりました。
ブータン王国のこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2015年)は、下の表2のとおりです。
なお、ワクチンではありませんが、ビタミンAが、乳幼児のビタミンA欠乏症対策としてワクチンに準じて乳幼児に投与されていますので、下の表2に含めました。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
出生時 | ポリオ経口・生ワクチン | OPV(1回目) |
結核 | BCG(1回接種) | |
B型肝炎 | HepB (1回目:生後24時間以内に接種) | |
生後6週間 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(1回目)* |
B型肝炎 | HepB(2回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(1回目)* | |
ポリオ経口・生ワクチン | OPV(2回目) | |
生後10週間 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(2回目)* |
B型肝炎 | HepB(3回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(2回目)* | |
ポリオ経口・生ワクチン | OPV(3回目) | |
生後14週間 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(3回目)* |
B型肝炎 | HepB(4回目)* | |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib) | Hib(3回目)* | |
ポリオ不活化ワクチン | IPV(1回接種:2015年7月4日から 導入されました) | |
ポリオ経口・生ワクチン | OPV(4回目) | |
生後6ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A(1回目:100,000IU) |
生後9ヶ月 | 麻疹・風疹 | MR(1回目) |
生後12ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A(2回目:200,000IU) |
生後18ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A(3回目:200,000IU) |
生後24ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTwP(4回目) |
麻疹・風疹 | MR(2回目) | |
ビタミンA経口投与 | Vitamin A(4回目:200,000IU) | |
生後30ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A(5回目:200,000IU) |
生後36ヶ月 | ビタミンA経口投与 | Vitamin A(6回目:200,000IU) |
6歳 | 破傷風・ジフテリア | Td(1回接種) |
12歳 | 破傷風・ジフテリア | Td(1回接種) |
小学6年生 (12歳、女子のみ) | ヒトパピローマウイルス16型・18型による子宮頸部癌、 外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ | HPV(1回目:女子のみ) |
HPV(2回目:1回目の2ヶ月後) | ||
HPV(3回目:1回目の6ヶ月後) | ||
15-45歳の女性 | 破傷風・ジフテリア | Td (1回目:保健医療機関来所時に)** |
Td(2回目:1回目の4週間後) | ||
Td(3回目:2回目の6ヶ月後) | ||
Td(4回目:3回目の1年後) | ||
Td(5回目:4回目の1年後) |
*:ブータン王国では、DTwP-HepB-Hibという5種混合ワクチンで接種されます。
**:Td(破傷風・ジフテリア)接種については、妊娠がきっかけの場合、妊娠中に出来るだけ早く1回目を接種。4週間間隔で妊娠中に2回目を接種。次の妊娠時に3回目を接種。次の次の妊娠時に4回目を接種。次の次の次の妊娠時に5回目を接種。
ブータン王国では、将来的には、ロタウイルスワクチン、肺炎球菌結合型ワクチン、日本脳炎ワクチンの定期予防接種への導入が検討されています。また、麻疹・風疹混合ワクチン(MR)から麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹混合ワクチン(MMR)への変更も検討されています。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
なお、ブータン王国における公用語は、ゾンカ語です。しかし、英語も使われていて、ブータン王国政府のホームページには、英語表記のページもあります。
2016年4月6日初掲載
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