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■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の情報を提供するものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、個別相談には対応しかねます。 ■渡航等に際して、当該国の最新情報や、接種対象、接種方法等の詳細が必要な場合は、外務省ホームページや大使館などで事前にご確認ください。
最終更新日 2019年8月19日
本稿では、オーストリアのこどもの定期予防接種について触れます。まず、オーストリア(墺太利:墺)のこどもの定期予防接種と日本のこどもの定期予防接種との違いを見てみましょう。
日墺の両国とも定期予防接種として実施している予防接種もありますが、一方の国でしか定期予防接種として実施していない予防接種もあります。表にまとめると、下の表1のとおりです。
実施状況 | オーストリアで実施 | オーストリアで 未実施 |
---|---|---|
日本で実施 | ジフテリア・破傷風・百日咳、 ポリオ、 麻疹・風疹、 水痘、 ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症、 B型肝炎、 ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ(*)、 肺炎球菌感染症 | 結核(BCG)、 日本脳炎 |
日本で未実施 | 髄膜炎菌感染症(MCV)、 流行性耳下腺炎(ムンプス)、 インフルエンザ、 ロタウイルスによる感染性胃腸炎、 ダニ媒介脳炎、A型肝炎 | 該当なし |
*: HPVワクチンについて、オーストリアは男女とも対象。日本は女子のみ対象。
こどもの定期予防接種として、オーストリアで実施されず日本で実施されているものとしては、結核(BCG)と日本脳炎(JapEnc)とがあります。反対に、こどもの定期予防接種として、日本で実施されずオーストリアで実施されているものとしては、髄膜炎菌感染症(MCV)、流行性耳下腺炎(ムンプス)、インフルエンザ、ロタウイルスによる感染性胃腸炎、ダニ媒介脳炎、A型肝炎があります。ダニ媒介脳炎については、オーストリアとチェコ共和国とで大人の定期予防接種となっていますが、オーストリアでは、こどもの定期予防接種ともなっています。
多数のワクチンを混合したワクチン製剤がオーストリアでは見られます。たとえば、ジフテリア・破傷風・百日咳のワクチン(DTaP)、ポリオの不活化ワクチン(IPV)、ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)のワクチン(Hib)、B型肝炎のワクチン(Hep B)を混合したワクチン(DTaP-IPV-Hib-HepB: [オーストリアでの略語表記]DIP-TET-PEA-IPV-HIB-HBV: [商品名]Infanrix Hexa, Hexyon, Hexacima)があります。四つのワクチンが混合されたワクチンがあれば、個々のワクチンではそれぞれ1回ずつだと4回の接種が必要なところ、四つのワクチンが混合されたワクチンでは1回の接種で済むことになります。接種回数が少なくなれば、こどもが注射で痛い思いをする回数も少なくなります。また、接種スケジュールの設定も容易になります。
日本でも混合ワクチンが見られます。ジフテリア・破傷風・百日咳の三種混合ワクチン(DTaP)、麻疹・風疹のMRワクチンなどです。ポリオの不活化ワクチン(IPV)についても、ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオの、四種混合ワクチン(DTaP/IPV)が2012年11月から新たに使われるようになりました。
オーストリアのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2019年)は、下の表2-1のとおりです。
オーストリアのこどもの定期予防接種では、多くの種類のワクチン接種が行われていますが、無料のものと有料のものとがあります。2014年2月から、9-11歳のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンが無料化されました。また、9-11歳のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、2013年には3回接種スケジュール(0, 1-2, 6か月)でしたが、2014年には2回接種スケジュール(0, 6か月)となりました。なお、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの1回の接種には、大人では150-200ユーロかかりますが、12-14歳では無料ではありませんが公的援助により50ユーロ程度で受けることができます。15歳以上は3回接種スケジュール(0, 1-2, 6か月)のままですが、12-14歳も2回接種スケジュール(0, 6か月)となっています。
また、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて、2価ワクチン(独語: 2-fach-HPV-Impfung, 商品名:Cervarix)と4価ワクチン(独語: 4-fach-HPV-Impfung, 商品名:Gardasil, Silgard)とが使われてきましたが、2016年5月以降、9価ワクチン(独語: 9-fach-HPV-Impfung, 商品名:Gardasil 9)も入手可能となり、オーストリアのこどもの定期予防接種でも用いられるようになりました。2019年には、9価ワクチン(独語: 9-fach-HPV-Impfung, 商品名:Gardasil 9)のみが推奨されるようになりました。また、2019年には、帯状疱疹ワクチンとして、これまでの帯状疱疹生ワクチン(ZVL: zoster vaccine live: 商品名Zostavax)は推奨されず、新たに、遺伝子組み換え帯状疱疹ワクチン(RZV:recombinant zoster vaccine: 商品名Shingrix)が推奨されました。Shingrixは50歳から2ヶ月以上の間隔での2回接種です。アメリカ合衆国においても、帯状疱疹ワクチンについては、ZostavaxからShingrixへの切り替えが行われています。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
生後7週~5ヶ月 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(ロタウイルスワクチン:4週間以上の間隔で製剤によりRotarixは2回接種、Rotateqは3回接種)[無料] |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)[無料]* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(1回目)[無料]* | |
ポリオ | IPV(1回目)[無料]* | |
B型肝炎 | HepB(1回目)[無料]* | |
肺炎球菌感染症 | PCV13[商品名Prevenar 13]またはPCV10[商品名Synflorix](1回目)[無料] | |
B群髄膜炎菌感染症 | MenB(1回目)[有料] | |
生後4ヶ月 | B群髄膜炎菌感染症 | MenB(2回目)[有料] |
生後5ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)[無料]* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(2回目)[無料]* | |
ポリオ | IPV(2回目)[無料]* | |
B型肝炎 | HepB(2回目)[無料]* | |
肺炎球菌感染症 | PCV13またはPCV10(2回目)[無料] | |
B群髄膜炎菌感染症 | MenB(3回目)[有料] | |
生後7ヶ月以上 | インフルエンザ | IIV(毎年1回接種。但し、8歳未満での初年度は4週間以上の間隔で2回接種)[有料] |
生後9-13ヶ月 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回接種。1回目が1歳誕生日前なら3ヶ月間隔で。1歳誕生日以後なら4週間以上の間隔で:保育園など集団生活に入る前に接種)[無料] |
生後12-14ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)[無料]* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(3回目)[無料]* | |
ポリオ | IPV(3回目)[無料]* | |
B型肝炎 | HepB(3回目)[無料]* | |
肺炎球菌感染症 | PCV13またはPCV10(3回目:2回目から6か月以上の間隔で接種します。)[無料] | |
生後13-24ヶ月 | 水痘 | VAR(4週間以上[6週間以上が好ましい]の間隔で2回接種)[有料] |
生後13-14ヶ月 | C群髄膜炎菌感染症 | MenC(1回接種)[有料] |
生後13-16ヶ月 | B群髄膜炎菌感染症 | MenB(4回目)[有料] |
生後13ヶ月 | ダニ媒介脳炎 | TBE(1回目)[有料] |
生後14ヶ月 | ダニ媒介脳炎 | TBE(2回目)[有料] |
(生後14ヶ月) | A型肝炎 | HAV(1回目:保育園など集団生活に入る前に接種)[有料] |
生後20-24ヶ月 | ダニ媒介脳炎 | TBE(3回目)[有料] |
(生後20-24ヶ月) | A型肝炎 | HAV(2回目:1回目から6か月以上の間隔で接種)[有料] |
5歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(4回目)[有料] |
7歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(1回接種)[無料]** |
ポリオ | IPV (1回接種)[無料]** | |
7-15歳 | B型肝炎 | HepB(0-1-6ヶ月の3回接種での基礎免疫、または1回接種での追加免疫)[無料] |
(7-45歳) | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(未接種または1回接種の場合、2回まで接種)[無料] |
(9-17歳) | 水痘 | VAR(接種歴や罹患歴がない場合に2回接種)[有料] |
9-11歳 (男女とも) | ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ | HPV9(1回目:9歳になったらできるだけ早く接種。商品名Gardasil 9)[無料] |
HPV9(2回目:1回目の6ヶ月後。商品名Gardasil 9)[無料] | ||
10歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(5回目)[有料] |
11-13歳 | A, C, Y, W135群髄膜炎菌感染症 | MCV4(1回接種)[無料] |
(13歳) | ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ | dTap-IPV(前回の7-9歳での接種がap[百日咳ワクチン]を含まないdT+IPVの接種の場合のみ一回接種)[無料]** |
15歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(6回目)[有料] |
17-60歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(10年毎に一回接種繰り返し)[有料]** |
ポリオ | IPV (10年毎に一回接種繰り返し)[有料]** | |
18-60歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(5年毎に一回追加接種繰り返し)[有料] |
50歳以上 | 肺炎球菌感染症 | まずPCV13、一年後にPPSV23(それぞれ1回接種)[有料] |
帯状疱疹 | RZV(リコンビナント帯状疱疹ワクチン[商品名Shingrix]: 2ヶ月以上の間隔で2回接種)[有料] | |
60歳以上 | ダニ媒介脳炎 | TBE(3年毎に一回追加接種繰り返し)[有料] |
ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(5年毎に一回接種繰り返し)[有料]** | |
ポリオ | IPV (5年毎に一回接種繰り返し)[有料]** |
*:オーストリアでは、DTaP-Hib-IPV-HepB([独語]:DIP-TET-PEA-HIB-IPV-HBV, [商品名]:Infanrix Hexa, Hexyon, Hexacima)という6種混合ワクチン([独語]:6-fach-Impfung)で接種されます。3回目は2回目から6か月以上の間隔で接種します。
**:オーストリアでは、dTap-IPVという4種混合ワクチン([独語]:4-fach-Impfung)で接種されます。
以前のオーストリアのこどもの定期予防接種の標準的なスケジュール(2017年)は、下の表2-2のとおりでした。
接種時期 | 予防する感染症 | 接種するワクチン(英字略語表記等) |
---|---|---|
生後7週~5ヶ月 | ロタウイルスによる感染性胃腸炎 | RV(ロタウイルスワクチン:4週間以上の間隔で製剤によりRotarixは2回接種、Rotateqは3回接種)[無料] |
生後3ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(1回目)[無料]* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(1回目)[無料]* | |
ポリオ | IPV(1回目)[無料]* | |
B型肝炎 | HepB(1回目)[無料]* | |
肺炎球菌感染症 | PCV13[商品名Prevenar 13]またはPCV10 [商品名Synflorix](1回目)[無料] | |
B群髄膜炎菌感染症 | MenB(1回目)[有料] | |
生後4ヶ月 | B群髄膜炎菌感染症 | MenB(2回目)[有料] |
生後5ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(2回目)[無料]* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(2回目)[無料]* | |
ポリオ | IPV(2回目)[無料]* | |
B型肝炎 | HepB(2回目)[無料]* | |
肺炎球菌感染症 | PCV13またはPCV10(2回目)[無料] | |
B群髄膜炎菌感染症 | MenB(3回目)[有料] | |
生後7ヶ月以上 | インフルエンザ | IIV(毎年1回接種。但し、8歳未満での初年度は 4週間以上の間隔で2回接種)[有料] |
生後9-13ヶ月 | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(2回接種。1回目が1歳誕生日前なら3ヶ月間隔で。1歳誕生日以後なら4週間以上の間隔で: 保育園など集団生活に入る前に接種)[無料] |
生後12-14ヶ月 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | DTaP(3回目)[無料]* |
ヘモフィルスインフルエンザb型菌(Hib)感染症 | Hib(3回目)[無料]* | |
ポリオ | IPV(3回目)[無料]* | |
B型肝炎 | HepB(3回目)[無料]* | |
肺炎球菌感染症 | PCV13またはPCV10(3回目:2回目から6か月以上の間隔で接種します。)[無料] | |
生後13-24ヶ月 | 水痘 | VAR(4週間以上[6週間以上が好ましい]の間隔で2回接種)[有料] |
生後13-14ヶ月 | C群髄膜炎菌感染症 | MenC(1回接種)[有料] |
生後13-16ヶ月 | B群髄膜炎菌感染症 | MenB(4回目)[有料] |
生後13ヶ月 | ダニ媒介脳炎 | TBE(1回目)[有料] |
生後14ヶ月 | ダニ媒介脳炎 | TBE(2回目)[有料] |
(生後14ヶ月) | A型肝炎 | HAV(1回目:保育園など集団生活に入る前に接種)[有料] |
生後20-24ヶ月 | ダニ媒介脳炎 | TBE(3回目)[有料] |
(生後20-24ヶ月) | A型肝炎 | HAV(2回目:1回目から6か月 以上の間隔で接種)[有料] |
5歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(4回目)[有料] |
7歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(1回接種)[無料]** |
ポリオ | IPV (1回接種)[無料]** | |
7-15歳 | B型肝炎 | HepB(0-1-6ヶ月の3回接種での基礎免疫、または1回接種での追加免疫)[無料] |
(7-45歳) | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR(未接種または1回接種の場合、2回まで接種)[無料] |
(9-17歳) | 水痘 | VAR(接種歴や罹患歴がない場合に2回接種)[有料] |
9-11歳 (男女とも) | ヒトパピローマウイルス16型・18型・31型・ 33型・45型・52型・58型による子宮頸部癌、外陰癌、膣癌、肛門癌および6型・11型による尖圭コンジローマ | HPV(1回目:9歳になったらできるだけ早く接種)[無料] |
HPV(2回目:1回目の6ヶ月後)[無料] | ||
10歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(5回目)[有料] |
11-13歳 | A, C, Y, W135群髄膜炎菌感染症 | MCV4(1回接種)[無料] |
(13歳) | ジフテリア・破傷風・百日咳・ポリオ | dTap-IPV(前回の7-9歳での接種がap[百日咳ワクチン]を含まないdT+IPVの接種の場合のみ一回接種)[無料]** |
15歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(6回目)[有料] |
17-60歳 | ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(10年毎に一回接種繰り返し)[有料]** |
ポリオ | IPV (10年毎に一回接種繰り返し)[有料]** | |
18-60歳 | ダニ媒介脳炎 | TBE(5年毎に一回追加接種繰り返し)[有料] |
50歳以上 | 肺炎球菌感染症 | まずPCV13、一年後にPPSV23(それぞれ1回接種)[有料] |
帯状疱疹 | VZV(帯状疱疹ワクチン[商品名Zostavax]: 1回接種)[有料] | |
60歳以上 | ダニ媒介脳炎 | TBE(3年毎に一回追加接種繰り返し)[有料] |
ジフテリア・破傷風・百日咳 | dTap(5年毎に一回接種繰り返し)[有料]** | |
ポリオ | IPV (5年毎に一回接種繰り返し)[有料]** |
*:オーストリアでは、DTaP-Hib-IPV-HepB([独語]:DIP-TET-PEA-HIB-IPV-HBV, [商品名]:Infanrix Hexa, Hexyon, Hexacima)という6種混合ワクチン([独語]:6-fach-Impfung)で接種されます。3回目は2回目から6か月以上の間隔で接種します。
**:オーストリアでは、dTap-IPVという4種混合ワクチン([独語]:4-fach-Impfung)で接種されます。
ヨーロッパにおいて、ダニ媒介脳炎(TBE)について地域を限らず全国的に定期予防接種としている国は、オーストリアとチェコです。また、ヨーロッパにおいて、ダニ媒介脳炎(TBE)について流行地など地域を限って定期予防接種としている国は、ラトビア、フィンランドなどです。ドイツでも南部でワクチン接種が推奨されています。
オーストリアにおけるダニ媒介脳炎ワクチン(TBE)の接種法は、一歳になったら、三回の接種(FSME-Immunは0, 1-3か月後, 2回目の5-12か月後。Encepurは0, 1-3か月後, 2回目の9-12か月後)で基礎免疫を付けます。免疫維持のため、その3年後の5歳で一回接種します。その後は五年毎に60歳まで一回接種を繰り返します。60歳以後は三年毎に一回接種を繰り返します。
急いで免疫を付けたい場合、急速免疫スケジュールがあります。FSME-Immunは0,14日の二回接種、Encepurは0,7,21日の三回接種です。FSME-Immunでは5-12か月後にさらに一回接種して、Encepurでは12-18か月後にさらに一回接種して、基礎免疫が付いたとみなします。
1970年台後期から始まったオーストリアにおけるダニ媒介脳炎ワクチン(TBE)の接種の普及とともに、オーストリアにおけるダニ媒介脳炎の罹患率ははっきりと減少しました。2000年ころには、全国民における接種率は80%を超えました。オーストリア国内全体で、接種を受けていない人における年間罹患率は10万人あたり6人程度でほぼ一定しています。一方で、オーストリア国内の地域別の接種を受けていない人における年間罹患率は、南部では高率に留まる一方で、北東部で下降傾向が、低率だった西部のアルプス地域で上昇傾向が見られています(参考文献12)。接種を受けていない人における年間罹患率から推計した、2000-2011年における予防接種を全く行っていない場合のオーストリアにおけるダニ媒介脳炎の患者発生は5242人と想定されますが実際は883人の患者が発生しています。オーストリアにおけるダニ媒介脳炎ワクチン(TBE)の接種は、2000-2011年において4000人程度の患者発生を防いだと考えられます(参考文献13)。
侵襲性髄膜炎菌感染症について、オーストリアでは、毎年、20-100人の患者が発生しています。年間ではB群が50-74%、C群が10-30%を占めていて、B群とC群とが多いです。2008-2017年の10年間では、594人の患者が発生し、内67人が死亡し、致死率11.3%となっています。2017年では、20人の患者が発生し、内5人が死亡し、致死率25%となっています。20人の患者の内、12人(60%)がB群でした。
複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、複数のワクチン製剤を同じ注射器に吸い上げて混合して用いるようなことをしては、いけません。それぞれのワクチン製剤を別々の注射器に吸い上げて、できるだけ離れた部位に接種します。たとえば、一方のワクチンを右腕に接種したら、もう一方のワクチンを左腕に接種するというように接種します。限られた部位に接種しなければならない場合でも、接種部位は2.5cm以上離します。複数のワクチン製剤を同じ日に接種する場合には、接種部位が区別できるように、それぞれの接種部位について、接種の記録に、より詳細な記述が必要です。
オーストリアにおける公用語はドイツ語であり、ワクチンの略語表記については、下の表3のとおりです。英語のワクチンの略語表記と一致するものもあれば一致しないものもあり、オーストリアにおけるドイツ語(独語)の接種の記録を見るときなどには注意が必要です。
独語略称 | 独語表記 (Impfung gegen ---) | 日本語表記 | 英語略称 |
---|---|---|---|
DIPまたはD | Diphtherietoxoidimpfstoff | ジフテリア(乳幼児用) | D |
dipまたはdi, d | Diphtherietoxoidimpfstoff mit verringerter Antigenmenge | ジフテリア(思春期・成人用) | d |
TETまたはTe, T | Tetanustoxoidimpfstoff | 破傷風 | T |
dTまたはdiTe | Diphtherie-Tetanus-Toxoid-Impfstoff mit vermindertem Diphtherietoxoid-Gehalt | ジフテリア(思春期・成人用)・破傷風混合ワクチン | dT |
PEAまたはP | Pertussis(Keuchhusten)(azellulaer, Komponente) | 百日咳(無菌体) | aP |
Pertussis(Keuchhusten)(azellulaer, Komponente)(verminderter Antigengehalt) | 百日咳(無菌体、思春期・成人用) | ap | |
IPV | inaktiviertes Poliomyelitis-Vakzin (nach Salk) | ポリオ(不活化、ソークワクチン) | IPV |
OPV | orales Poliomyelitis-Vakzin (nach Sabin) | ポリオ(生、経口、セービンワクチン) | OPV |
HiB | Haemophilus influenzae Typ B | ヘモフィルス-インフルエンザb型菌 | Hib |
HBV | Hepatitis B Virus | B型肝炎 | HepB またはHBV |
HAV | Hepatitis A Virus | A型肝炎 | HepA またはHAV |
PNC13 | 13-valente Pneumokokken-Konjugat-Impfstoff | 13価肺炎球菌結合型ワクチン | PCV13 |
PPV23 | 23-valente Pneumokokken-Polysaccharid-Impfstoff | 23価肺炎球菌ポリサッカライドワクチン | PPSV23 またはPPV23 |
MEC | Meningokokken(konjugiert) | 髄膜炎菌(結合型) | MCV またはMen |
MenB | Impfung gegen Meningokokken der Gruppe B | B群髄膜炎菌ワクチン | MenB |
HPV | Humane Papillomviren | ヒト-パピローマウイルス | HPV |
MMR | Masern-, Mumps-, Roeteln-Impfung | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹 | MMR |
MMR-V | Masern-, Mumps-, Roeteln-, Varizellen-Impfung | 麻疹・流行性耳下腺炎(ムンプス)・風疹・水痘 | MMRV |
RVまたはRTV | Rotavirus | ロタウイルス | RV |
IV | Influenzaimpfung | インフルエンザ | IV |
VZV | Varizella-Zoster-Virus (水痘帯状疱疹ウイルス) | 水痘 | VAR |
FSME | Fruehsommer-Meningoenzephalitis (初夏髄膜脳炎) | ダニ媒介脳炎(tick-borne encephalitis) | TBE |
各国の予防接種
2013年10月4日初掲載
2014年11月21日改訂増補
2015年1月30日改訂増補
2016年3月2日改訂増補
2016年12月8日改訂増補
2017年4月7日改訂増補
2019年8月2日改訂増補
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