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コロナウイルス感染症について

■この記事は教科書的、文献的な内容についてまとめ、多くの方が参考にしていただけるよう掲載しています。必ずしも最新の知見を提供するものではなく、横浜市としての見解を示すものではありません。■なお、本件に関して専門に研究している職員は配置されていないため、ご質問には対応しかねます。また、個別の診断や治療については医療機関へご相談ください。

最終更新日 2019年7月18日

はじめに・・・

コロナウイルスは、人や動物で感染症を起こします。人で感染症を起こすヒト-コロナウイルス(human coronavirus : HCoV)としては、下の表2のように、HCoV-229E, HCoV-NL63, HCoV-OC43, HCoV-HKU1, SARS-CoV, MERS-CoVの6種類が知られています。SARS-CoV, MERS-CoVについては、それぞれ、SARSの病原体ウイルス、MERSの病原体ウイルスです。詳しくは、当・横浜市衛生研究所ホームページの「SARS(重症急性呼吸器症候群)について」および「MERS(中東呼吸器症候群)について」をご参照ください。ここでは、主として、HCoV-229E, HCoV-NL63, HCoV-OC43, HCoV-HKU1の4種類のヒト-コロナウイルスについて触れます。

流行は?

HCoV-229E, HCoV-NL63, HCoV-OC43, HCoV-HKU1の4種類のヒト-コロナウイルスは、風邪の原因の10-15%を占めるとされます。冬季の発生が多いです。患者が咳をすることによって生じた飛沫を吸い込むことにより感染します。また、便中に排泄されたウイルスが口から入ることによっても感染します。ウイルスが付着した媒介物からも感染します。潜伏期は2-4日です。

SARS(重症急性呼吸器症候群)の第一番目の患者の発生は、中国の広東省で2002年11月のことでした。SARSは国境を越え30か国に広がりました。世界保健機関(WHO)は、最初の多発を2003年月3月12日に通知しました。SARSの流行の終息を2003年7月5日に宣言しました。SARSの流行の結果、8098人の患者が発生し、774人が死亡(致死率9.56%)しました(参考文献11)。

MERS(中東呼吸器症候群)の第一番目の患者の発生は、サウジアラビア王国(Kingdom of Saudi Arabia : KSA)で2012年のことでした。アラビア半島のサウジアラビアとUAE(アラブ首長国連邦)を中心に患者発生がみられましたが、2015年には韓国で患者発生の多発が見られました。2015年6月28日までの患者発生状況は下の表1のとおりです。

表1.MERS(中東呼吸器症候群)患者国別発生報告数・死亡者数・致死率(2012年3月から2015年6月28日まで)
患者発生報告数死亡者数致死率(%)
サウジアラビア104045944.1
韓国1813217.7
UAE(アラブ首長国連邦)811113.6
ヨルダン19631.6
カタール13538.5
オマーン6350.0
イラン6233.3
イギリス4375.0
クウェート3133.3
ドイツ3266.7
チュニジア3133.3
フランス2150.0
オランダ200.0
フィリピン200.0
アルジェリア2150.0
アメリカ合衆国200.0
エジプト100.0
イエメン11100.0
レバノン100.0
ギリシア11100.0
トルコ11100.0
オーストリア100.0
イタリア100.0
中国100.0
マレーシア11100.0
タイ100.0
137953138.5

[註]
参考文献12を参考に作成。

どんな病気?

HCoV-229E, HCoV-NL63, HCoV-OC43, HCoV-HKU1の4種類のヒト-コロナウイルスは、人に上気道炎を起こします。鼻水、鼻詰まり、のどの痛み、咳などのカゼ症状が見られ、発熱することもあります。急性中耳炎を起こしたり、喘息を増悪させたりすることもあります。少ないですが、主に乳幼児や免疫抑制のある人たちで、下気道炎、気管支炎、クループ(特にHCoV-NL63)、肺炎を起こすこともあります。胃腸炎を起こすこともあります。

病原体は?

人で感染症を起こすヒト-コロナウイルス(human coronavirus : HCoV)としては、下の表2のように、HCoV-229E, HCoV-NL63, HCoV-OC43, HCoV-HKU1, SARS-CoV, MERS-CoVの6種類が知られています。また、下の表2のように、人以外に感染するコロナウイルス(動物-コロナウイルス : animal coronavirus)は多種あります。

豚流行性下痢ウイルス(Porcine epidemic diarrhea virus : PEDV)は、豚流行性下痢(Porcine epidemic diarrhea : PED)の病原体です。豚流行性下痢は、家畜伝染病予防法により届出伝染病に指定されています。水様性下痢が主症状で、哺乳豚では症状が重く、発病後3~4日で死亡することが多いです。肥育豚、繁殖豚では死亡することは少ないです。豚用の予防接種のためのワクチンがあります。日本国内でも、平成25年10月には、7年ぶりの豚流行性下痢の発生が確認され、多数の県の農場での発生が続きました(参考文献6)。

(豚)伝染性胃腸炎ウイルス(transmissible gastroenteritis virus : TGEV)は、(豚)伝染性胃腸炎(transmissible gastroenteritis : TGE)の病原体です。(豚)伝染性胃腸炎は、家畜伝染病予防法により届出伝染病に指定されています。嘔吐及び水様性下痢が主症状で、哺乳豚では症状が重く、特に生後10日齢以内の哺乳豚では死亡率が高く、また、生き残っても発育不全(ひね豚)となります。豚用の予防接種のためのワクチンがあります。

豚流行性下痢に対しても、(豚)伝染性胃腸炎に対しても、豚用の予防接種のためのワクチンがあります。豚伝染性胃腸炎・豚流行性下痢混合生ワクチンもあります。哺乳豚の致死率が高いことから、哺乳豚に強い免疫を付与するために母豚に妊娠中に接種します。ワクチンを妊娠豚に2回注射することで、分娩後、哺乳豚が多量の抗体を含んだ乳汁(特に、常乳)を続けて十分に飲むことにより、口から入ったウイルスを腸内で抗体が中和し、発症を阻止又は軽くすることができます。

豚血球凝集性脳脊髄炎ウイルス(Porcine hemagglutinating encephalomyelitis virus : PHEV)は、豚血球凝集性脳脊髄炎の病原体です。成豚では感染しても無症状か軽い症状のことが多いです。主に若齢豚で脳脊髄炎を起こすことがあります。

犬コロナウイルス(canine coronavirus : CCoV)は、犬に腸炎を起こすウイルスとして、1970年代から知られています。犬コロナウイルスは、感染した犬の糞便中に多量に排泄され、他の犬の口の中に入ることで犬から犬へと感染が広がっていきます。犬が多数収容されている施設で流行が起こることがあります。食欲不振、嘔吐、下痢、脱水等が見られ、まれに死亡する場合もあります。犬パルボウイルス2型(canine parvovirus type 2 : CPV-2)、犬アデノウイルス1型、犬ジステンパーウイルス等との混合感染で死亡する場合もあります。犬コロナウイルスの糞便中への排泄は6か月間の長期となることもあります。犬コロナウイルスは、1型と2型とに分類されます。全身に感染を起こす致死性の高い変異株(CCoV2-CB/05)も知られています。また、呼吸器で感染を起こす犬呼吸器コロナウイルス(canine respiratory coronavirus : CRCoV)も存在します(参考文献1)。

猫コロナウイルス(feline coronavirus : FCoV)は、猫に腸炎を起こすウイルスです。数日下痢症状が続く猫もいれば、無症状の猫もいます。一方、全身に感染症を起こす猫感染性腹膜炎ウイルス(feline infectious peritonitis virus: FIPV)も知られています。猫コロナウイルスが遺伝子変異を起こして猫感染性腹膜炎ウイルスになると考えられています。

牛コロナウイルス(bovine coronavirus : BCoV)は、牛コロナウイルス病の病原体です。牛コロナウイルス病では、水様下痢や鼻水・咳などの呼吸器症状が見られます。

下の表2に示すように、人以外に感染するコロナウイルスは多種あります。コロナウイルスが遺伝子の変異を起こすことで、それらの中から、SARS-CoVあるいはMERS-CoVのように、人に重篤な感染症を起こすコロナウイルスが出現しないかと危惧されています。

表2.コロナウイルス(coronavirus:CoV)亜科の主なウイルス
属(genus)ヒト-コロナウイルス(HCoV)人以外に感染するコロナウイルス
アルファ-コロナウイルス(alphacoronavirus)HCoV-229E,
HCoV-NL63,
(猫コロナウイルス : *)
豚流行性下痢ウイルス(porcine epidemic diarrhea virus : PEDV),
(豚)伝染性胃腸炎ウイルス(transmissible gastroenteritis virus : TGEV),
犬コロナウイルス(canine coronavirus : CCoV),
猫コロナウイルス(feline coronavirus : FCoV),
Miniopterus bat(コウモリ) coronavirus 1,
Miniopterus bat(コウモリ) coronavirus HKU8,
Rhinolophus bat(コウモリ) coronavirus HKU2,
Scotophilus bat(コウモリ) coronavirus 512
ベータ-コロナウイルス(betacoronavirus)HCoV-OC43,
HCoV-HKU1,
SARS-CoV [**],
MERS-CoV[***]
豚血球凝集性脳脊髄炎ウイルス (porcine hemagglutinating encephalomyelitis virus : PHEV),
牛コロナウイルス(bovine coronavirus : BCoV),
馬コロナウイルス(equine coronavirus : EqCoV),
ねずみコロナウイルス(murine coronavirus : MuCoV),
Tylonycteris bat(コウモリ) coronavirus HKU4,
Pipistrellus bat(コウモリ) coronavirus HKU5,
Rousettus bat(コウモリ) coronavirus HKU9
ガンマ-コロナウイルス(gammacoronavirus)なし鳥コロナウイルス(Avian coronavirus),
シロイルカ(Beluga whale)-コロナウイルス SW1
デルタ-コロナウイルス(deltacoronavirus)なしヒヨドリ(Bulbul)-コロナウイルスHKU11,
ツグミ(Thrush)-コロナウイルスHKU12,
キンバラ(Munia)-コロナウイルスHKU13

[註]
*:米国アーカンソー州において2010年3-7月に人にインフルエンザ様疾患を起こしたコロナウイルスの研究では、HCoV-OC43, NL63, HKU1とともに猫コロナウイルスも認められました(参考文献2)。
**:ハクビシン・シナイタチアナグマ・コウモリにも感染します。
***:ヒトコブラクダ・コウモリにも感染します(参考文献4, 8, 9)。

予防のためには・・・

コロナウイルス感染症を広げないあるいは、コロナウイルス感染症にかからないためには、病原体(コロナウイルス)を広げないあるいは、病原体をもらわない習慣を身に付けていることも大切だと思われます。呼吸器からの飛沫を少なくするには、マスクをする。咳・痰・くしゃみ・鼻水のときには、ティシュペーパーで口と鼻とをおおう。その後すぐに手をよく洗う。手を乾かすのは、使い捨てタオル、ドライヤー。タオルは自分専用にして他の人と共用しない。手が病原体を粘膜まで運び、粘膜から病原体が侵入している可能性も考えられます。眼・鼻・口などに触れるときには、事後だけでなく事前にも手をよく洗いましょう。トイレの後や食事の前にも手をよく洗いましょう。換気の少ない狭い空間で多人数で長時間すごすのは控えましょう。あいさつは、握手・抱擁・キスなどの身体接触を止めて、会釈や言葉だけで済ませましょう。多くの人が触る公共物に触るのは控えましょう。触ったら、すぐに手をよく洗いましょう。

HCoV-229E, HCoV-NL63, HCoV-OC43, HCoV-HKU1といったヒト-コロナウイルスについて、手など皮膚の消毒には、消毒用アルコール(70%)が有効だと考えられています。また、一般の場所で、モノの表面の消毒には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)が有効だと考えられています(参考文献10)。

参考文献

  1. Nicola Decaro, Canio Buonavoglia; An update on canine coronaviruses: Viral evolution and pathobiology; Veterinary Microbiology(vetmic), 132, 2008(外部サイト), p. 221-234.
  2. Camila S Silva, Lisa B Mullis, Olavo Pereira Jr, Linda J Saif, Anastasia Vlasova, Xuming Zhang, Randall J Owens, Dale Paulson, Deborah Taylor, Lia M Haynes and Marli P Azevedo; Human Respiratory Coronaviruses Detected In Patients with Influenza- Like Illness in Arkansas, USA; Virology & Mycology 2014 S2(外部サイト): 004. doi:10.4172/2161-0517.S2-004
  3. International Committee on Taxonomy of Viruses (ICTV): Virus Taxonomy Assignments(外部サイト).(ウイルス分類)
  4. Ziad A. Memish, Nischay Mishra, Kevin J. Olival, Shamsudeen F. Fagbo, Vishal Kapoor, Jonathan H. Epstein, Rafat AlHakeem, Mushabab Al Asmari, Ariful Islam, Amit Kapoor, Thomas Briese, Peter Daszak, Abdullah A. Al Rabeeah, and W. Ian Lipkin; Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus in Bats, Saudi Arabia(外部サイト). Emerging Infectious Diseases(www.cdc.gov/eid), Vol. 19, No. 11, November 2013, p. 1819-1823.
  5. 農林水産省消費・安全局監修 病性鑑定マニュアル 第3版(外部サイト)
    豚流行性下痢(外部サイト)
    伝染性胃腸炎(外部サイト)
    牛コロナウイルス病(外部サイト)
  6. 農林水産省ホームページ「豚流行性下痢について(外部サイト)
    ;農林水産省「豚流行性下痢(PED)防疫マニュアル」平成26年10月24日
  7. 動物衛生研究所ホームページ「豚流行性下痢(PED)について(外部サイト)
  8. Ziad A. Memish, Matthew Cotten, Benjamin Meyer, Simon J. Watson, Victor Max Corman, Andrea Sieberg, Hatem Q. Makhdoom, Abdullah Assiri, Malaki Al Masri, Souhaib Aldabbagh, Berend-Jan Bosch, Martin Beer, Marcel A. Mueller, Paul Kellam, and Christian Drosten; Human Infection with MERS Coronavirus after Exposure to Infected Camels(外部サイト), Saudi Arabia, 2013; Emerging Infectious Diseases(www.cdc.gov/eid), Vol. 20, No. 6, June 2014, p. 1012-1015.
  9. Daniel K.W. Chu1, Leo L.M. Poon1, Mokhtar M. Gomaa, Mahmoud M. Shehata, Ranawaka A.P.M. Perera, Dina Abu Zeid, Amira S. El Rifay, Lewis Y. Siu, Yi Guan, Richard J. Webby, Mohamed A. Ali, Malik Peiris, and Ghazi Kayali; MERS Coronaviruses in Dromedary Camels, Egypt(外部サイト); Emerging Infectious Diseases(www.cdc.gov/eid(外部サイト)), Volume 20, Number 6-June 2014, p. 1049-1053.
  10. PATHOGEN SAFETY DATA SHEET(外部サイト) - INFECTIOUS SUBSTANCES: Human Coronavirus (excluding SARS-Co-V)(外部サイト): Public Health Agency of Canada.
  11. Margaux Mathis, Sylvie Briand, Thomson Prentice; Emerging and re-emerging infectious threats in the 21st century; WEEKLY EPIDEMIOLOGICAL RECORD(WER), NO. 20, 15 MAY 2015, p. 238-244.
  12. ECDC(外部サイト)(European Centre for Disease Prevention and Control); RAPID RISK ASSESSMENT: Severe respiratory disease associated with Middle East respiratory syndrome coronavirus (MERS-CoV), 18th update, 30 June 2015. Stockholm: ECDC, 2015.

2015年7月9日掲載

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